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蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち (2回目感想前編)【千葉市美術館】

先週の日曜日に、千葉市美術館に行って最終日となった「蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち」を再び観てきました。既に終わった展示ですが、以前とは内容が変わっていたので再度ご紹介しようと思います。

P1010489.jpg P1010491.jpg

【展覧名】
 蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち

【公式サイト】
 http://www.ccma-net.jp/exhibition_01.html

【会場】千葉市美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】千葉駅(JR・京成)京成千葉中央駅(京成) 葭川公園駅(千葉都市モノレール)など

【会期】2012年4月10日(火)~5月20日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
結構人が多くて賑わっていましたが、大きめの作品が中心だったので混雑感はあまりありませんでした。

さて、この展示は以前もご紹介しましたが曾我蕭白が中心の展示で、その前の世代との共通点や同じ時代の京都の絵師も展示されています。作品はだいぶ入れ替えがありましたが、テーマや解説などは以前と同じでしたので、詳しくは以前の記事を読んで頂けると嬉しいです。今回は以前ご紹介した作品以外で気に入った作品をご紹介しようと思います。
 参考記事:
  蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち 感想前編(千葉市美術館)
  蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち 感想後編(千葉市美術館)


<第1章 蕭白前史>
まずは蕭白に関連した絵師のコーナーです。

7 五十嵐浚明 「富士・橋立・松島図」
これは3幅セットの掛け軸で、中央に富士、右に天橋立、左に松島の様子が描かれています。それぞれの上部には和歌が添えられていて純和風の風景&詩なのですが、どことなく中国風に観える作風でした。見下ろすような視点で描かれているのも面白かったです。

19 望月玉蟾 「維摩居士図」
これは掛け軸で、杖を持った老人が空を見上げていて、上部には舞い降りてくる逆さの鶴が描かれています。服装からはこの老人は維摩を思わせるようですが、鶴からは鶴好きの林和靖(りんなせい)を連想させるようです。太く強い輪郭線が使われていて、蕭白の画風に近いものを感じました。一方で穏やかで理知的な雰囲気の作品です。

2 山口雪渓 「人物花鳥山水図押絵貼屏風」
6曲1双の屏風で、2扇ごとに繋がる感じで様々な主題が描かれて(貼られて)いて、右から鷹とウサギ、布袋と山水、虎渓三笑、中国風の人物 虎と孔雀、牛に乗って長い棒を持った人と山水、林和靖と鶴と月などとなっています。画題が蕭白に似ているかな。
解説によるとこの作品は蕭白の作品と同じ寺にあったらしく、蕭白の初期の作風に近いそうです。しかし、繊細で静かな雰囲気の作風に思えました。


<第2章 第1部 曾我蕭白 -蕭白出現->
続いては蕭白の初期のコーナーです。

28 曾我蕭白 「李白酔臥図屏風」
6曲1双の水墨の屏風で、右隻は長い棒の先に瓢箪をつけて担いでいる子供?の後ろ姿と木々が描かれ、左隻は満月の下、地面に横になって寝ている李白が描かれています。周りは木々に囲まれていて完全に酔って外で寝てしまった感じですが、なんとも気持ちよさそうに寝ているようでした。また、濃い目の墨で描かれ樹木は豪快に描かれて、ダイナミックな感じでした。
解説によると、これは29~30歳頃に伊勢地方に滞在した際の作品のようでした。

39 曾我蕭白 「鳥獣人物図押絵貼屏風」
6曲の水墨の屏風で、元は対になる人物を描いた6曲屏風もあると考えられているようです。右から鶏、馬、雁、馬、猿、雁が描かれていて、さっと描いたような略画風です。そのデフォルメ具合が面白く可愛らしさがありました。鶏の顔などは若干細かいですが、全体的には大まかな割によく特徴を捉えていました。


<第2章 第2部 曾我蕭白 -蕭白高揚->
続いては蕭白の創作意欲が最も高まった時期のコーナーです。 カタログでは第3部に入っている作品もありますが、観た順にご紹介します。

54 曾我蕭白 「群童遊戯図屏風」
これは2年くらい前に板橋区立美術館の展示で目玉になっていたのですぐに思い出しました。6曲1双の色つきの屏風で、子供たちが様々な遊びに興じている様子を描いた作品です。鶏を抱えたり、相撲をしたり、鰻を取っていたり、亀をめぐって喧嘩をしていたり元気一杯です。子供なのに妖怪のような顔をしていて若干キモいのも笑えますw おもり役なのか2人の着物の女性もいて、こちらは涼し気な雰囲気でした。生き生きしたエネルギーが感じられる作品じゃないかな。
 参考記事:諸国畸人伝 (板橋区立美術館)

36 曾我蕭白 「蹴鞠寿老人」
これは水墨の掛け軸で、一見すると布袋のように大きなお腹の人物画反り返って上を見上げているのか?と思いました。しかし、実はこれはお腹ではなくて寿老人の頭で、前後も逆に認識していたことに気づきました。上には蹴鞠があり、寿老人は口を開けてそれを観ているようです。姿勢や特殊な形の頭のせいかもしれませんが、騙し絵的な要素があり、まんまと引っかかりましたw

44 曾我蕭白 「寒山拾得図」 ★こちらで観られます
これは割と最近、府中市美術館で観た記憶があります。2幅対の大きめの水墨の掛け軸で、右に箒を持った拾得(じっとく)、左に岩に座って巻物を持つ寒山の姿が描かれています。爪は獣のように伸びているなどその姿は妖怪のようで、「怪醜」と呼ばれた蕭白画の真骨頂と言えるようです。濃淡の使い方や線の太さの使い分けなどもあって細部まで個性的な作品でした。
 参考記事:
  江戸の人物画―姿の美、力、奇 後期(府中市美術館)
  江戸の人物画―姿の美、力、奇 前期 感想後編(府中市美術館)

63 曾我蕭白 「唐獅子図」 ★こちらで観られます
これは2幅対の巨大な掛け軸で、1幅に1体ずつ唐獅子が描かれています。極太の輪郭や走るような筆致が豪快ですが、右の獅子はなぜか猫のような立ち方で、迷惑そうな顔に観えましたw また、左には石にしがみついて振り返って吠えるような獅子が描かれていましたが、こちらも目はあまり怖い感じではありませんでした。迫力がある画風なのにどこかトボけた感じが面白かったです。
ちなみにこれは東博の「対決-巨匠たちの日本美術」(2008年)で観たのですが、その頃はブログをやっていませんでした。次に紹介する作品も同じ展示で観た覚えがあります。

53 曾我蕭白 「群仙図屏風」 ★こちらで観られます
6曲1双の屏風で、水墨を背景に極彩色の仙人たちを描いた作品です。水墨と極彩色の組み合わせで既に異様な雰囲気ですが、描かれている仙人もかなり妖しいw 右隻には鳳凰、虎などと一緒の仙人や、龍に乗って渦巻く波風を起こしている仙人などが描かれ、白黒の仙人はちょっと目立たないかもw 左は子どもと遊ぶ仙人が目つくのですが、絶対に何か企んでいそうなニヤケ顔が怪しいw 他にもガマ仙人や西王母らしき仙女など、仙人が大集合しています。とにかく圧倒されっぱなしで、これ1枚でも行った甲斐はありました。絵も色も蕭白の魅力が詰まった作品です。私はこの作品は蕭白の最高傑作の1つではないかと思っています。


と言うことで、以前の内容よりも好みの作品が多く満足度の高い内容となっていました。後半も良い作品が多かったので、次回は下の階の展示をご紹介しようと思います。



  → 後編はこちら



 参照記事:★この記事を参照している記事


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Comment
蕭白ですか
鶏と相撲といえば闘鶏を思い浮かべました。この蕭白の絵を自分のブログの絵にしたいですね。イメージがわきました。家の祖父が結構怪談物の絵が得意でして、よく描いていた覚えがあります。

そういえば李白と言えば小説李白を読んだような気がします。

今度図書館を探してみます。
Re: 蕭白ですか
>満月さん
コメント頂きましてありがとうございます。
蕭白の作品はどれもインパクトが強いので、飲み込まれそうになりますw
妖怪でないものまで妖しい雰囲気があったりして面白いですよ。

李白は酒飲みのイメージ通りに描かれていたかなw
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