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大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西欧絵画の400年 (感想前編)【国立新美術館】

この前の日曜日の午後に国立新美術館へ行って「国立新美術館開館5周年 大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西欧絵画の400年」を観てきました。充実の内容でメモを多めに取ってきましたので前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 国立新美術館開館5周年
 大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西欧絵画の400年

【公式サイト】
 http://www.ntv.co.jp/hermitage2012/
 http://www.nact.jp/exhibition_special/2012/hermitage2012/index.html

【会場】国立新美術館 企画展示室2E  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅

【会期】2012年4月25日(水)~7月16日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日13時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構混んでいて、場所によっては列や人だかりが出来るくらいでしたが入場規制などはありませんでした。

さて、今回の展示は世界三大美術館(諸説ありますが…)の1つとされるエルミタージュ美術館の名品を集めた展覧会となっています。エルミタージュはサンクトペテルブルク(ソ連時代はレニングラード)にあり、帝政ロシア時代から集められた品を始め300万点もの所蔵品を誇っています。元々はエカテリーナ2世が買い集めたヨーロッパの品を隠れ家として自分のために展示していたもので、ヨーロッパのルネサンス期から近代に至るまで、ヨーロッパの絵画の歴史そのものといった感じのコレクションとなっているようです。
今回の展示も時代ごとに章を分けて展示していましたので、詳しくは章ごとに気に入った作品を通じてご紹介しようと思います。


<第1章 16世紀 ルネサンス:人間の世紀>
まずはルネサンス期のコーナーです。

ティチアーノ・ヴェチェリオ 「祝福するキリスト」★こちらで観られます
黒を背景に右手を挙げ祝福のポーズを取り、左手で十字架のついた丸いガラス玉を持ったキリストが描かれています。このガラス玉は万物の支配者の象徴だそうで、キリストがその支配者であることを示しているようです。意外と大胆な筆で描かれ明暗が強く感じられたのですが、これは晩年の画風のようでした。初っ端から巨匠が出てきて驚きましたw

ロレンツォ・ロット 「エジプト逃避途上の休息と聖ユスティナ」★こちらで観られます
この人はヴェネツィア派の画家です。この絵は台の上で寝ている赤子のキリストと、その上に描かれた聖母マリア、その右隣にヨセフ、さらにその右下には手を合わせる女性(聖ユスティナ)が描かれています。実はこの聖ユスティナは3世紀頃に殉教した人物で、この絵でも胸に短剣が突き刺さっています。一方、聖家族はヘロデ王から逃れエジブトに向かう途中で、ユスティナとは明らかに時代が違っています。一種のタイムトラベラーみたいな感じの設定かな?w ちょっと変わっていて面白いです。 また、非常に色が鮮やかで、特にヨセフの赤い衣が目につきました。明暗も強く出ていたように思います。

ランベルト・スストリス 「ウェヌス」 ★こちらで観られます
横になり左手で頭を触り右手で鳩を抑えている裸体のヴィーナスが描かれた作品です。背景には円柱、その後ろにキューピッドと裸体の男性(神?マルスかバルカンかな??)と森や山などが描かれています。ヴィーナスは若々しく観えるかな。滑らかな肌で光が当たったように明るく神秘的な感じでした。

この辺は宗教や神話の作品が多かったです。その後は肖像画が中心です。

ソフォニスバ・アングィソーラ 「若い女性の肖像(横顔)」 ★こちらで観られます
この画家はイタリア貴族の娘でミケランジェロとも交流があった女流画家です。横向きの貴婦人がバラを持っていて、緑の服には非常に細かい金の刺繍が施されています。その質感や全体的な気品が素晴らしく、当時からスペインなどで賞賛されていたそうです。

レオナルド・ダ・ヴィンチ派 「裸婦」
上半身裸の女性の肖像ですが直感的にモナ・リザを模倣した作品だと分かります。手を組んでこちらを向いて微笑む様子や、背景の青味がかった風景もオリジナルに似ていますが、むしろ違いのほうが気になるかなw bunkamuraで観たサライの作品に似ていました。
 参考記事:レオナルド・ダ・ヴィンチ美の理想 (Bunkamuraザ・ミュージアム)


<第2章 17世紀 バロック:黄金の世紀>
続いては17世紀のコーナーです。バロックの作品が並び、オランダ・フランドルが多かったかな。

ヤコブ・ファン・オースト(1世) 「ゴリアテの首を持つダヴィデ」
大きなゴリアテの首を持ち、大きな剣を担ぐ金髪の少年ダヴィデを描いた作品です。ゴリアテの額には石がめり込んでいるのがちょっとリアルw ダヴィデは振り返るようなポーズで、ヒョウ柄のバッグのようなものを下げていたのですが、その毛の質感の表現が見事でした。ドラマチックな雰囲気の作品です。

ペーテル・パウル・ルーベンス 「虹のある風景」★こちらで観られます
手前に地べたに座ってくつろぐ羊飼いらしき男女や周りの人々、犬や羊などが描かれています。背景には村の家々や山などがあり空には虹がかかっていました。のんびりして理想的な風景ですが、虹がかかっているのはこうした平和な黄金時代が一時の幻に過ぎないと示しているとのことでした。

ペーテル・パウル・ルーベンス 「ローマの慈愛(キモンとペロ)」★こちらで観られます
後ろ手を鎖につながれた裸の老人が若い女性の乳を吸っている様子を描いた作品です。ちょっと驚くシーンですが、これは餓死の刑を受けたキモンに娘のペロが乳を与えているシーンらしく、慈愛の場面とされているそうです(その割には父親はマッチョな身体をしていますがw) 劇的な明暗で肉付きや色などルーベンスならではの雰囲気がありかなり良かったです。解説によると、これはルーベンスの古典主義時代の作品だそうで、ルネサンスに由来する安定感のある構図や緻密な描写が特徴とのことでした。

アンソニー・ヴァン・ダイク 「自画像」★こちらで観られます
黒い服を着て腰に手を当てる若い男性が描かれた肖像画で、これはヴァン・ダイクの自画像だそうです。予想以上にイケメンで解説では優美で気品があるとのことでしたが、ちょっと神経質そうにも観えるかな。サテンのコートの光の表現なども含めて落ち着いた雰囲気がありました。ちなみにヴァン・ダイクは貴族の娘と結婚して良い暮らしぶりだったようです。

ダーフィト・ライカールト(3世) 「農婦と猫」★こちらで観られます
農家の老婆が赤ちゃんのように布に包まれた猫を抱きかかえ、スプーンでおかゆをあげている様子を描いた作品です。嬉しそうな顔をしている老婆に対して猫は無表情であまり喜んでないような…w それが可笑しくて可愛くもありました。 一説によるとこれは五感のうち味覚を表した寓意ではないかとのことでした。どちらかというと何かの皮肉でもありそうに思いますがw

ウィレム・クラースゾーン・ヘダ 「蟹のある食卓」
テーブルの上に置かれた銀の皿に乗った蟹や、ガラスのカップ、銀の水指、中国の陶器などを描いた静物画です。どれも質感豊かで布の表現などは特にリアルです。写実的でこの時代ならではの作風でした。

ヤン・ステーン 「結婚の契約」
沢山の人が集まる室内で、膝をついて懇願するような姿勢の帽子をかぶった男と、悩んだような仕草の女性、男性の向く先には女性の裾を引っ張る老婆、その後ろに怒るようなポーズの老人が描かれています。周りにはそれを見ながら鳥かごを持った男や、猫を抱いた少女など何やら意味ありげな感じです。解説によるとこれは身ごもった女性の両親に結婚することで許しを請う様子らしく、現代で言えばできちゃった結婚でしょうかw 左のテーブルには割れた卵なども描かれ寓意的な意味があるようでした。 ヤン・ステーンらしい皮肉や可笑しさ、教訓などを含んでいそうな作品でした。

レンブラント・ファン・レイン 「老婦人の肖像」★こちらで観られます
手を組んで座る老女を描いた作品です。左下の方を見ていますが目は虚ろで、何か考え込んでいるような感じに見えます。明暗は強めですがよく観るレンブラントの作風とはちょっと違うように思いました。後期の作品らしく年代的に苦しい破産の時期かな。


と言うことで、前半から巨匠の作品が並ぶ内容となっていました。ロシアならではの作品というよりは、ヨーロッパの絵画の歴史を一気に辿っていくような感じです。後半はさらに面白い内容となっていましたので、次回は残りをご紹介しようと思います。


   → 後編はこちら



 参照記事:★この記事を参照している記事


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