関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

紅型 BINGATA-琉球王朝のいろとかたち- 【サントリー美術館】

前回ご紹介したFUJIFILM SQUAREの展示を観た後、同じミッドタウンにあるサントリー美術館で「沖縄復帰40周年記念 紅型 BINGATA-琉球王朝のいろとかたち-」を観てきました。この展示は大きく分けて3つ(正確には6つ)の会期があり、私が行ったのは7/7の内容でした。

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【展覧名】
 沖縄復帰40周年記念 紅型 BINGATA-琉球王朝のいろとかたち-

【公式サイト】
 http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2012_03/index.html

【会場】サントリー美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】六本木駅/乃木坂駅


【会期】2012年6月13日(水)~7月22日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日13時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
意外と混んでいて所々に人だかりができるほどでした。女性が多かったかな。

さて、この展示は沖縄が日本に復帰して40年を記念した展示で、紅型(びんがた)と呼ばれる沖縄の衣装を取り上げた内容となっています。紅型は琉球王朝時代に王族や士族など特定の階層に用いられ発展した染色技法で、「紅」は色全般、「型」は形を示し、その技法は18世紀中頃には確立していたと考えられるそうです。沖縄の海外貿易によりもたらされた多彩な素材を元に、王府に庇護され首里や那覇で作られたそうですが、王朝の崩壊後は衰え、第二次大戦の際には大きな打撃を受けたそうです。そのため現在観られる紅型の多くは戦前に本土に渡ったそうで、今回は貴重な品々を集めた内容となっていました。

まず入口に大きな赤い紙を切り抜いた龍の型紙がありました。中国のデザインにも似ていますが、ちょっと違うようにも思えるかな。
そしてその先からが本題で、4つの章に分かれていましたので、詳しくは章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。なお、紅型にも使われる型紙とは何か?については三菱一号館美術館で行われた展示を参考にして頂ければと思います。
 参考記事:KATAGAMI Style ― 世界が恋した日本のデザイン (三菱一号館美術館)


<特別展示 琉球国王尚家に伝わる紅型衣裳>
まずは国宝がずらりと並ぶ特別展示のコーナーです。琉球が統一された15世紀以降、諸外国との交流によって琉球では文化が花開きました。中国との冊封・朝貢の関係となり、多くの漆工品や紅型が中国に献上されたそうで、当時から評価されていたことが伺えるようです。琉球王家の紅型の図案は絵師が関わり、王府の管理の下で士族の資格を与えられた紺屋が型地紙を彫って染色したそうで、素材には最上のものが使われたようです。龍や鳳凰など中国王権を象徴する模様や、枝垂れ桜、菖蒲、雪輪など日本の自然風物など珍しい外国の模様を意匠したようで、それによって王家の権威を示したとのことでした。(しかし、沖縄ならではの模様はないのだとか) ここにはそうした王家の為の紅型が並んでいました。

3 「国宝 黄色地鳳凰牡丹扇面模様胴衣 (裏)赤縮緬地」
はっぴのような形で、黄色を地に赤っぽい鳳凰や牡丹、扇などの模様のある衣です。背中を中心に同じ模様が左右反転していて、上下にも同じ模様が連続しています。これは女性用のドウジンと呼ばれる着物だそうで、色が強烈で非常に派手な印象を受けます。平面的な図面は中国風にも思えますが、ややカクカクした感じに思えました。
解説によると黄色は王家のみが仕える格式高い色で、模様にも身分によって制限があったそうです。鳳凰は王族の女性や成人前の男性が使う模様とのことでした。

ここには国宝が4点並んでいました。


<第1章 紅型の「いろ」と「かたち」>
続いては様々な色や形を紹介するコーナーです。紅型は模様の形を作り出すため、糊防染(のりぼうせん)を行い、顔料や染料で色を染める琉球の技法で、1692年に書かれた本では「形付(かたつき)」と記されていたそうですが、王朝末期には「美形」との表記があり「びんがた」に近い呼び方になったと推定されるようです。いずれも鮮やか過ぎるくらい強烈な色をしているのですが、これは強い日差しに対応できる顔料を用いているためとのことでした。ここでは地の色ごとに小コーナーに分かれて展示されていました。

[黄色地]
先述のように黄色地の紅型は王族の服で格式が高いものですが、この辺は黄色地の服が何着も並ぶ貴重な内容でした。

14 「黄色地雲に松梅鶴流水菖蒲模様衣裳」
黄色地に青と緑の松、その下に青と赤の梅の花と鶴、下の方には菖蒲が描かれた紅型で、意匠化され同じ場面が連続しています。色合いが補色関係になっていることもあり強い色合いですが、洒落た意匠で気品を感じました。

16 「黄色地流水に網干魚籠菊紫陽花模様衣裳」
黄色地に釣った魚を入れる魚籠(びく)と三角の網が描かれ、その周りにアジサイや紅葉がある模様の紅型です。川が流れる様子もあり、雅で日本風の雰囲気に思えます。隣にはこの服の模様に似た型紙があり、紙を模様の形に細かく繰り抜いて糸て張っていました。

[白地]
続いては白地の紅型です。白地は王族や士族などで多く用いられたようです。

26 「白地流水蛇籠に桜葵菖蒲小鳥模様衣裳」
白地に水辺の菖蒲、その上に小鳥が飛んでいる様子が模様となっている紅型です。やはり赤、青、黄色などが多用され色鮮やかに見えます。しかし、意匠は日本の小袖を彷彿とするような流水や網目などで、涼し気な雰囲気がありました。また、胴体部分にはパターン化された模様が上下左右4回繰り返されているのですが、絶妙な配置で鳥が群れて池が広がるような繋がり方となっていました。隣には型紙もあるので、デザインを深く楽しむことができます。

この近くの白地の紅型を見ていると、どれも日本に比べて色は強めで、模様もぎっしりしているように思えてきました。

[青地]
続いては青地です。琉球では琉球藍が自生していたこともあり、青地が一番多く作られたそうで、士族らが着ていたようです。

101 「浅地波頭に鶴桜模様衣裳」
ダイナミックに渦巻く渦潮と波濤、その周りに色とりどりの桜、その上に鶴が飛んでいる様子が模様になった紅型です。地の青が空や海を思わせ、渦潮によく合う色合いです。こうしたデザインは他に類が観られないようですが、凄い勢いを感じる面白い着物でした。
この近くには子供用の小さな着物も何点かあります。大人用の生地を仕立て直したものらしく、大人の着物のように綺麗にパターンが並ぶことはないようでした。

[花色地]
続いては花色地というピンク色の地のコーナーです。これは中国から輸入したエンジが無いと作れないそうで、上流士族の女性が着ていたそうです。

54 「花色地斜格子に橘梅扇文箱模様衣裳」
ピンク地に格子模様があり、その上に菊、たちばな、梅、扇などが描かれています。格子の中は網目状で、かなり細かい表現です。全体的にピンクなこともあって、華やかな雰囲気のある着物でした。隣には型紙もあります。

ピンク地は落ち着いたピンクで優美な印象の着物ばかりでした。上流階級向けのためか細かい模様の意匠が多いように思いました。

少し進むと紅型の出来るまでの工程説明や原材料などもあります。そしてさらに進むと青地の作品が再度並んでいました。

137 「紺青地菊に扇模様衣裳」
深い青地に菊や2枚セットの扇が何セットか散らされたような模様の紅型です。扇は白に赤い花模様なのですが、開き具合や角度のせいか扇が蝶のように観えるのが面白いです。また、解説によるとこの青は藍ではなくベロ藍と呼ばれる少し赤みを帯びた人口顔料とのことでした。

近くには緑地の紅型もありました。

[染分地]
153 「染分地遠山に椿柴垣梅桜菖蒲模様衣裳」
緑、紫、黄色、赤の雲で色分けされた「染分地」と呼ばれる模様の紅型です。雲の中には柴垣と椿(緑雲)、菊(紫雲)、桜(黄雲)、菖蒲(赤雲)が描かれ日本的な情緒が漂います。解説によるとこれは四季のある日本への憧れが表されているそうです。非常に大胆な色合いと意匠の作品でした。

この辺は染分地が何点か並んでいました。
この辺で上階は終わりで続いて下階です。階段を降りると30分ほどのVTRがあり、紅型の制作風景を流していました。硬く締まった豆腐を乾かしたものを台にして型を彫り、彫り抜いたら糸掛して漆を塗って補強する様子や、防染糊はもち米と糠を4:1に混ぜて作る様子など、実際の作業を観ると気が遠くなるような手間がかかっているのがわかります。型紙を衣に当てて防染糊を塗っていくのですが、地染めの時は柄の部分に糊を塗るのが難しそうでした。

下階には染地型と白地型の2種類の型紙のコーナーがありました。模様を残し地を彫るのが白地型で、模様の形に彫り抜き地を残すのが染地型のようです。

168 「黄色地垣根に薔薇模様裂地」、169 「垣根に薔薇模様白地型紙」
白地型紙とそれを使った着物のセットです。黄色地にじぐざぐの垣根に薔薇が咲いた模様で、色の対比もあり華やかな印象を受けます。紅型の型紙は裏表無く使用出来るそうで、上下逆の模様も可能とのことでした。

この辺は型と着物がセットで展示されていました。


<第2章 もうひとつの紅型 ― 筒描>
続いて2章は筒描というものを取り上げたコーナーで、ここは3点程度と点数少なめです。紅型には円錐状の袋(ホイップクリームの袋みたいなもの)に入れた米糊を絞り出して模様を描き、地染めを施す「筒描」という技法があるそうです。この筒描は型を使わずにフリーハンドで描かれるようで、おおらかな雰囲気の作風とのことでした。この辺にはそうした作品が並んでいました。

186 「浅地鶴亀松竹梅模様風呂敷」 ★こちらで観られます
青地に竹の輪を中心に松や梅が描かれた風呂敷です。ダイナミックに描かれていて意匠も面白く、中心には鶴と亀の姿もありました。おめでたくて勢いを感じます。

この辺には防染糊を出していく糊袋もありました。デコレーションケーキを作る袋みたいな感じですw


<第3章 初公開 松坂屋コレクションの紅型衣裳>
最後は松坂屋がデザインの研究を目的として集めたコレクションのコーナーで、その多くはかつて岡田三郎助が収集したものだそうです。貴重なコレクションが並んでいました。
 参考記事:藤島武二・岡田三郎助展 ~女性美の競演~ (そごう美術館)

202 「白地稲妻に鶴亀梅の丸模様衣裳」
黄色、赤、青、エンジのガンジ型と呼ばれる稲妻紋や、丸紋のようになった鶴、亀、梅、雪輪のようなものなどが描かれた紅型です。稲妻は昔から子供の健やかな成長を祈るもののようですが、これは結構大きめの衣裳に思えます。色鮮やかで散らされた丸紋がリズミカルに観えました。

この辺にはお碗、食籠、お盆などの漆工品も展示されていました。

223 「水色地菱草花に熨斗模様衣裳 (裏)水色地梅楓尽くし模様」 ★こちらで観られます
水色地で、表面は菱形や草花などが散らされた模様の紅型です。それに対して裏地は異なるモチーフで、びっしりと梅と葉っぱ?などが描かれていました。表は涼しげに観えましたが裏はちょっとやりすぎな感じが…w 裏表でだいぶ違う印象を持ちました。

215 「花色地霞雪輪鶴亀に枝垂桜燕模様衣裳」
ピンク地に枝垂れ桜、翼広げた燕、丸紋となった鶴や亀などが描かれています。燕は流麗なフォルムが優美で動きを感じる姿勢をしていました。これは子供用に仕立て直しているようですが、面白い意匠でした。


ということで、日本の着物とはまた違った印象を受ける展覧会でした。私は紅型というものを知ったのがつい最近だったので、かなり参考になりました。また、紅型は沖縄の歴史にも深く関わっているので、それも含めて興味深い内容でした。


 参照記事:★この記事を参照している記事

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