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近代日本洋画の魅惑の女性像―モネ・印象派旗挙げの前後― 【泉屋博古館分館】

前回ご紹介したお店でランチを取った後、六本木一丁目に近い泉屋博古館分館で「近代日本洋画の魅惑の女性像―モネ・印象派旗挙げの前後―」を観てきました。この展示は前期・後期に分かれているようで、私が観たのは前期でした。

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【展覧名】
 近代日本洋画の魅惑の女性像―モネ・印象派旗挙げの前後―

【公式サイト】
 http://www.sen-oku.or.jp/tokyo/program/index.html

【会場】泉屋博古館分館
【最寄】六本木一丁目/神谷町

【会期】2012年7月7日~9月23日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
行った時は丁度、解説ツアーが行われていたためロッカーが満杯になっていましたが、混んでいるわけではなく快適に鑑賞することができました。

さて、今回の展示は泉屋博古館分館の開館10周年の記念展だそうで、館所蔵の近代洋画の展覧会となっていました。充実度を③にしたのは点数がそんなに多くないためですが、好みの作品がありましたので、詳しくは気に入った作品と共にご紹介しようと思います。なお、展覧会には一応章分けのようなものがありましたが、特に境目などは無かったので章分けは間違って記載しているかもしれません。


<魅惑の女性像>
まずは女性像のコーナーでした。

小磯良平 「踊り子二人」
2人のバレリーナが楽器に囲まれて立っている様子を描いた作品で、どうやら練習の間の休みを描いているようです。1人はこちらを観て腰に手を当て、もう1人は左を見ています。さっと描いたような所と写実的な所があり、色合いが強いせいか華やかな印象を受けます。女性がこちらを向いた一瞬を思わせる作品でした。

中川紀元 「少女」
真っ黒を背景に描かれた花束を抱え帽子をかぶる水色のワンピースの少女像です。大胆な筆跡が残っていて、フォーヴィスム的な雰囲気があります。特にドレスの皺の表現は流れるようで好みでした。

岡田三郎助 「五葉蔦」 ★こちらで観られます
木々を背景に、団扇を持った浴衣の女性がこちらを見ている肖像です。「五葉蔦」というのは麻を用いた文様のことだそうで、花か蜘蛛の巣を思わせる文様の着物を着ています。こちらを伺うような女性の顔は清純な印象で、団扇には蝶と植物が琳派風に描かれているとのことでした。夏に相応しい爽やかな印象の作品でした。


<モネ 印象派旗揚げの前後>
タイトルにもなっているモネは2点ありました。

クロード・モネ 「モンソー公園」 ★こちらで観られます
公園の風景を書いた作品で、右上に赤い花をつける大きな木があり、左に木々に隠れた建物が描かれています。中央には公園を散歩する人々の姿があり、穏やかな光景です。やや曇っているような感じに見えましたが、モネらしい光の表現に思いました。解説によると、日傘を持って歩いている女性は義理の娘のアリス・オシュデとその娘と推定されるそうです。


<個性豊かな風景画と浅井忠の世界>
続いては風景画のコーナーです。リストを観ると、ここの浅井忠の作品だけ入れ替えがあるのかも?

藤島武二 「室戸遠望」
これは以前ご紹介したかな。縦長の作品で、手前にジグザグに連なる岩が描かれ、奥には青々した海と空が広がります。水平線がかなり高めに描かれているためか、海の広さを感じました。岩に打ち寄せる白い波と海の青の取り合わせが鮮やかで美しいです。
 参考記事:藤島武二・岡田三郎助展 ~女性美の競演~ (そごう美術館)

児島善三郎 「残雪」
簡略化された風景画で、雪の残る田んぼや緑の丘などが描かれています。色の取り合わせや構図が面白く、リズムを感じさせます。爽やかでのんびりした雰囲気でした。解説によると、児島善三郎の作品は代々木時代(前期・後期)、留学時代、国分寺時代(前期・後期)、荻窪時代と分けられるそう、これは国分寺時代(前期)の作品だそうです。

浅井忠 「秋林」
黄色に染まる林の中、道を行く大原女が小さく描かれている作品です。抑えられた色調で点描のようなタッチで繊細に描かれ、秋の情緒を感じさせました。
浅井忠は水彩が4点ありました。第1展示室はこの辺で1周です。


<岸田劉生と梅原龍三郎>
第2展示室の最初は岸田劉生と梅原龍三郎の作品が並んでいました。

岸田劉生 「四時競甘」
岸田劉生は洋画だけではなく日本画も描いていたのですが、これは初公開となる掛け軸です。カボチャや葡萄、桃、ビワ?、柿、ザクロなど様々な果物・野菜が並んでいる静物で、上から下へと流れるように配置されているのが心地よく感じられます。色も鮮やかで、好みの作風でした。

岸田劉生 「二人麗子像(童女飾髪図)」 ★こちらで観られます
これは油彩で、赤い着物のおかっぱの少女が鏡を持って座っていて、傍らにはその子の髪の毛を整えている赤と黄色の着物の女の子が描かれています。これは岸田劉生の作品によく出てくる娘の麗子と友達の松(鵠沼時代の近所の漁師の娘)だそうで、2人とも人形のように愛らしい顔をして微笑んでいます。解説によると、これは伝 顔輝の寒山拾得図を思い起こすとのことで、確かに寒山拾得のような卑近な雰囲気がありました。

梅原龍三郎 「北京長安街」
高い位置から見渡すように描かれた北京長安街の風景画です。緑の木々の間に赤い屋根や門がぽつぽつと並び、補色関係のためか色の対比が鮮やかに見えます。簡略化された感じの表現も独特で面白かったです。
梅原龍三郎は点数が多めで、風景画は4点ほどありました。

梅原龍三郎 「薔薇図」
画面いっぱいに花瓶に入った薔薇が描かれた作品です。赤、ピンク、白の花が、青地に花模様の花瓶に入っていて、右には1つ落ちた花?のようなものも描かれています。ややぼんやりしつつも、ボリュームがあり色の強いタッチで華やかな作品です。解説にもありますが、師のルノワールからの影響を感じさせました。
梅原龍三郎の花の静物は他にも3点ありました。

<魅惑の女性像(人物像)2>
最後は再び女性像のコーナーでした。とは言えそれ以外の主題も多かったかな。

坂本繁二郎 「二馬壁画」
壁画のような大きな作品で、岩場に2頭の馬が描かれています。1頭は後ろ向きで前足を上げて立ち上がるような姿勢をしていて、もう1頭は静かに直立しています。全体的に淡く水色や薄紫がかった色合いが幻想的で、いかにも繁二郎といった作品でした。これは繁二郎が好きな人には見応えがあると思います。

和田英作 「こだま」
暗い森の中、白い衣を身につけた裸婦が両手を両耳にあてて耳を澄ましている様子を描いた作品です。この女性は半人半獣だそうですが、人間っぽく見えます。自分の声のこだまに驚いているところだそうで、唇を開き眼を丸くしている感じでした。解説によると、これは和田英作がルーヴル美術館で反響する音を聞いた自分の体験に基いて描いたそうです。

藤島武二 「幸ある朝」 ★こちらで観られます
光の差し込む鎧戸の側に立ち、花の入った花瓶の隣で手紙を読む女性を描いた作品です。ぼんやりしているのでハッキリとはわかりませんが、心なしか女性は微笑むように見え、温かく優しい光と相まって幸福感が伝わってきました。
これも先述の「室戸遠望」と同じ展覧会でご紹介したかな。

この辺には小さな果実を描いたルノワールの「静物」などもありました。

岡鹿之助 「三色スミレ」
3つのスミレが花瓶に入った静物画です。白、緑、薄い青の花で、三角を描くように配置され背景は緑です。全体的にざらついた質感で静かな雰囲気に思えました。

この作品の隣にあった熊谷守一の作品も良かったです。


ということで、小点ながらも中々面白い作品が観られたと思います。ここはあまり近代洋画の展示をやっていない気がするので、コレクションを観る良い機会かもしれません。ぐるっとパスの券で展示を見られるのもお得な感じです。


 参照記事:★この記事を参照している記事


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