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生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 感想後編 【国立新美術館】

前回の感想前編では【第Ⅰ部 華やぎのジュエリー】をご紹介しましたが、今回はその続きです。
今日は【第Ⅱ部 煌きのガラス】をご紹介

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まずは概要のおさらい。

【展覧名】
 生誕150年ルネ・ラリック─華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ
 Rene Lalique A Retrospective

【公式サイト】
 http://www.tokyo-np.co.jp/event/lalique/index.html
 http://www.nact.jp/exhibition_special/2009/03/lalique.html
 http://pr.enjoytokyo.jp/090529lalique/

【会場】国立新美術館
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】2009年6月24日(水) ~ 9月7日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
 ※写真はコンパクトデジカメで撮影しました。


【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
今回はⅡ部の方が内容盛り沢山でした。ガラスの方がラリックらしさを感じます。
コーナーごとに気に入った作品を紹介。(展覧のコーナーがかなり細分化されていますので、メモを取ってなかったコーナーもあります。すみませんが、そこは再度行った時にでも書こうと思います。)

【第Ⅱ部 煌きのガラス】
<1.ガラスへの扉>
花瓶《白鳥》
前回のおさらいですが、ラリックのデザインはアール・ヌーボー的な左右非対称から左右対称へ、カラフルなものから単色のグラデーションへと作風を変化させていきます。
しかし、このあたりはアール・ヌーボーとアール・デコの境目あたりなのかなと感じる作品が多くありました・。

<2.ふたつの時代、ふたつの顔>
 アール・ヌーヴォーのなごり
ここはメモを取ってませんでした。またの機会に・・・。

 アール・デコの展開
このコーナーの花瓶が一番面白いところかな。先日行ってきた、ラリック美術館で観た作品に似ている作品も多かったです。
 参考記事:ラリック家の女神たち 【箱根ラリック美術館】 

花瓶《つむじ風》あるいは《渦巻のレリーフ》 ★公式サイトで観られます。
透明地に黒い渦が描かれているのは観たことがありましたが、3色揃ったのは初めて観ました。深々と掘り込まれたかのような、渦巻き模様がダイナミックで力強さを感じます。

三足鉢《シレーヌ》
女性の髪と両足が水滴のようになっていて流水のような印象がある作品でした。女性の美しさと水の涼しさを併せ持っているようでした。

花瓶《カメ》
亀の甲羅のような模様をもつ花瓶(壷?)です。これの緑色を観たことがありますが、今回の展示品はオレンジ色です。ってか、めっちゃオレンジw どうやったらこんな鮮やかな色が出るんだろう?と思ってました。この頃からラリックも色ガラスを使うようになり、さらに作品の幅が広がったようです。

花瓶《蛇》
花瓶の周りを蛇がとぐろを巻いている作品です。これもラリック美術館に色違いがあるかな。うろこがリアルでちょっとこわいですw

花瓶《バッタ》
爽やかな淡い青色をしていて、一体感のある作品です。バッタが可愛かった(><)

なお、ここのコーナーで説明がありましたが、ラリックの作品にはオパルセントガラスと呼ばれるガラスがよく使われます。これは乳白色のガラスで、オパールを半透明にしたように見えるのでオパルセントガラスと呼ぶらしいです。多分、ラリックの作品が透明だったらここまで魅力を感じなかったかも?と思うくらい、このオパルセントガラスは高貴さを醸し出しています。単色グラデーションの作風はここに極まったのかなと思います。


<3.創作の舞台裏>
スケッチ帳
色々とラリックの私物があって、とりとめもなくアイディアを書かれたスケッチブックなどがありました。これはフランスでも展示されたことがない世界初公開の品らしいです。ラリックの素描以前のスケッチが見られるのは貴重かもしれません。
このコーナーにさらっと説明があったと思いますが、デザイン画を実際の作品に仕上げた職人達は作品に名前を残していないのだとか。これだけの仕事をしてちょっと可哀想かも。。。と思いましたが、みんな「Lalique」のサインをしていたのだとか。ブランドなんですね。

<4.シール・ペルデュ>
シール・ペルデュとは何ぞや?って話ですが、これは、まず蝋で作品を形作った後、それを耐火石膏で固めます。その後、熱を加えて脱蝋し、代わりにガラスを注ぎこみ、最後に石膏を割って作品が出てくるという技法の名前が「シール・ペルデュ」です。最後に石膏を割るので1つの型で1点の作品ができないので貴重なものになります。

気付け薬用小瓶《シレーヌ》
この作品は驚愕しました。水の中の歪みを観ているような感覚に陥りました。また緑色で品のある美しさを感じます。

シール・ペルデュ花瓶《四組のセキセイインコ》 ★公式サイトで観られます。
これを蝋で最初に作っているのか~ と思って見ていると、こんな細かいところは蝋だと折れちゃうんじゃないか?なんて思いながら観ていました。ちょっと歪んでいる感じがしたのは気のせいかな??

<5.1925年アール・デコ博覧会>
立像《噴水の女神》 ★公式サイトで当時の写真と女神像が観られます
この展覧会の圧巻はこのコーナーだと思います。「現代装飾美術産業美術国際博覧会」でメイン会場の中央広場に建てられたガラス製の野外噴水《フランスの水源》を飾った、16種類の噴水の女神像のうち12種類が出品されています。
当時、8角形の噴水に、16段の女神像で、8×16=128体の女神像があったというのが驚きです。ぱっと観た感じ、噴水の女神は庭園美術館の玄関の作品を彷彿します(その作品については次に触れます)  よく観ると、1つ1つの女神のポーズや大きさが違い、それぞれにはセーヌ川の橋の名前がついているとのことでした。
これだけの質・量を国内で観るチャンスって中々無いと思います。

<6.皇族・王族とラリック>
デザイン画-朝香宮邸正面玄関 ★参考記事
何やら見覚えがあるぞ?と思ったら庭園美術館の玄関にある女神像のデザイン画です。結構見慣れている作品のデザイン画だけに、感激しました。
この頃すでにラリックの作品は王侯貴族に相応しい品格の高い作品と認識されていたようで、当時の皇族がお土産に持ち帰った作品などもありました。

<7.香りの小宇宙>
コティ社からの依頼で、ラリックは本格的に香水瓶の製作に取り掛かっていきました。今までも結構観てきたつもりですが、ラリックの香水瓶は多くの種類があるらしく、観たこと無い作品が大半でした。

 コティの香水瓶
ここはメモを取ってませんでした。またの機会に・・・。

 挑戦的デザイン
香水瓶《彼女らの魂》ドルセー社
日本刀のツバを思わせるデザインでした。おそらく、そこから着想を得たんじゃないかな?

香水瓶《青春》
中に人が閉じ込められているかのようなデザインでした。こういうデザインの発想って、どうやって思いつくんだろうと感心してました。

<8.装いのガラス>
装飾品にもガラスを使った作品があり、ガラスなのにあたかもジュエリーみたいな印象を受けました。

 アクセサリー
ブローチ《背中合わせの人物》
緑色が美しい作品で、観る角度によって輝きが違うように見えました。もう宝石みたいなw

 化粧道具
ここはメモを取ってませんでした。またの機会に・・・。

<9.スピードの世紀>
カーマスコットも大好きなジャンルです。ここも結構観たことある(のと同じような)作品が多かったですが、機知に富んだデザインが多くて面白いです。

カーマスコット《彗星》
絵文字で表すと、 Σ三☆ こんな感じで、彗星の名に相応しいデザインです。☆マークが可愛いw

カーマスコット《大トンボ》 ★以前、ラリック美術館の記事でご紹介した作品とよく似ています。こちら
実際にクラシックカーにつけられて展示されているのが嬉しいです。この作品はかなり大事にされたそうで、どこかにいく場合は、普通に走っているときは外しておいて、目的地に近づいた時だけ取り付けていたのだとか。気持ちはよくわかりますw それにしても茶目っ気あるデザインですね。

カーマスコット《クリュセイス》 ★以前、ラリック美術館の記事でご紹介した作品とよく似ています。 こちら
風の流れを感じるようで、色気のあるポーズが最高です(><) 私の中ではラリック作品の中でもかなり好きなデザインです。ちょっとずつ違うデザインがあるのがわかって嬉しかったです。

<10.室内のエレガンス>
テーブル・センターピース《二人の騎士》 ★公式サイトで当時の写真と女神像が観られます
この作品もかなりの見所かと。2人の長い髪の騎士?が馬に乗り今まさにぶつかりそうな感じです。この繊細さと力強さを併せ持った作品はラリックの魅力を凝縮しているかと思います。いずれ北澤美術館も行ってみたいなあ。。。

常夜灯《二羽の孔雀》など
これも日本刀のツバを思わせるデザインでした。ラリックは日本美術からの影響が強かったので、この時代でもまだそういう部分が残っているのかなーなんて思いながらみていました。

<11.テーブルを彩るアート>
グラス・セット《トウキョウ》
ここは一般向けに売られた作品のコーナーだったと記憶しています。そのせいかちょっと簡素なものが多かったかも。
この作品は東京の名前がついていたのですが、どこら辺が東京なのかはわかりませんw 水玉模様みたいです。


ということで、かなりざっくりと紹介してもかなりの量になりました。質・量ともにこれだけの展示は滅多にないと思いますので、最高の展覧会だと思います。
既にちょっと混んでいますので、会期末に近づくにつれてどんどん混みそうな予感がします。ご興味ある方はお早めにどうぞ。。。

↑の記事にもリンクを張りましたが、今まで書いた記事にラリック作品の写真なんかもありますので、興味がある方はこちらも読んでいただけると嬉しいです。

 参考記事のまとめ
  箱根ラリック美術館 館内の案内
  ラリック家の女神たち 【箱根ラリック美術館】
  東京都庭園美術館の写真その1

なお、後日再度ラリック展に行ってきました。紹介しきれなかった作品を一挙に紹介しました。
 こちらです。→ ラリック展 2回目感想前編


この後、美術館内のカフェでお茶して→鑑賞無料の公募展→フジフイルムフォトギャラリー→森美術館(万華鏡)というコースでした。中々にハードスケジュールでしたが、次回以降はそれらについてご紹介します。




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