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マウリッツハイス美術館展 2回目【東京都美術館】

先週の金曜日の夕方に、会社帰りに上野の東京都美術館へ行って、「マウリッツハイス美術館展」を再度観てきました。この展示は以前詳しくご紹介しましたので、今回は最新の混み具合や補足的な内容となります。代表的な作品や各章の意図については以前の記事を参照して頂けると嬉しいです。

 1回目の時の記事:マウリッツハイス美術館展 (東京都美術館)

IMAG00361.jpg IMAG00331.jpg

【展覧名】
 マウリッツハイス美術館展

【公式サイト】
 http://www.asahi.com/mauritshuis2012/
 http://www.tobikan.jp/museum/2012/mauritshuis2012.html

【会場】東京都美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)


【会期】2012年6月30日(土)~9月17日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(金曜日18時半頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
金曜日の夕方18時半頃に行ったのですが、10分待ちの看板があったものの実際には待ち時間無しで入ることができました。しかし、中はやはり混んでいて2重3重の列が出来るほどでした。閉館時間まで残り30分を切る頃には若干空いていたかな。

ちなみに公式サイトではリアルタイムの待ち時間だけでなく、過去の混雑状況も分かるようになっています。私の行った金曜日の夕方も狙い目なのですが、あまり遅く行くと時間内に見切れない可能性も…。その辺を気をつければかなり役に立つ情報だと思います。
 参考リンク:
  過去の混雑状況(pdf)
  マウリッツハイス美術館展公式サイト (左上の待ち時間の所に過去の混雑へのリンクがあります)


さて、冒頭にも書きましたが、この展覧会をご紹介するのは2回目ですので、今回は補足的に以前ご紹介しなかった作品をご紹介していこうと思います。1回目はあまりの充実度に目移りしてしまいましたが、今回は落ち着いて鑑賞してきましたw やはり良い展示は2回行っておきたいものです。

 フェルメールの参考記事:
  ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年 (国立西洋美術館)
  フェルメールからのラブレター (Bunkamuraザ・ミュージアム)
  フェルメールからのラブレター 2回目(Bunkamuraザ・ミュージアム)
  フェルメール 《地理学者》 と オランダ・フランドル絵画展 感想前編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
  フェルメール 《地理学者》 と オランダ・フランドル絵画展 感想後編(Bunkamuraザ・ミュージアム)
  フェルメール 《地理学者》 と オランダ・フランドル絵画展 2回目(Bunkamuraザ・ミュージアム)
  ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画
  ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画 2回目 (国立西洋美術館)
  フェルメール光の王国展 (フェルメール・センター銀座)


<第1章 美術館の歴史>
まずはマウリッツハイス美術館についてのコーナーです。

06 アントーン・フランソワ・ヘイリヘルス 「マウリッツハイスの[レンブラントの間]」
マウリッツハイスの部屋の中に飾ってある無数の絵画が描かれた作品です。主に肖像が飾ってあるようですが、中央に大きな絵があり、何人かの人たちが死んだ人の解剖をしている様子?が描かれています。恐らくこれはレンブラントの解剖学講義の絵を画中画にしたものだと思うのですが、明暗の付け方がレンブラント風なのが面白かったです。レンブラントの絵の前には椅子が絵に向かって置かれ、絵を鑑賞した人がいたような余韻を感じました。


<第2章 風景画>
続いては風景画のコーナーです。

09 ヤーコブ・ファン・ライスダール 「漂白場のあるハールレムの風景」 ★こちらで観られます
地平線の上に建つ教会、広々とした空と平地、手前にはこの地域の重要な産業だった麻布を漂白する作業場があり、そこで働く人々の姿も描かれています。空が大きく取られているせいか開放的な印象で、平地も起伏がないので一層に広さを感じます。柔らかい光の当たる雲の表現も見事で、細かく写実的な作品でした。

12 ヤーコブ・ファン・ライスダール 「ベントハイム城の眺望」
岩山の上に建つ城を描いた作品で、山の下には川が流れています。これは作者のライスダールが旅で訪れたドイツのベントハイム城らしく、ライスダールはこの城を様々な角度から何度も描いていたそうです。解説によるとこの作品では低い位置から見上げるような視点となっていて、城はかなり高い山の頂きに建つような印象を受けるとのことでしたが、確かにそびえるような雰囲気でした。また、手前が暗く建物に光があたっているのも面白いです。
このような斬新な構図は先進的とされ、オランダ絵画の黄金時代の風景画に影響を与えたそうです。

14 ヘリット・ベルクハイデ 「狩りに向かう貴族たちのいる、ホフフェイフェル池のほとり」
政治の中心であるハーグ(マウリッツハイスのある街)を背景に、馬に乗った貴族たちが並ぶように進む様子を描いた作品です。沢山の犬を連れていて、どうやらこれは狩猟(鷹狩)に行く一行のようで、当時 鷹狩が許されていたのは総督の家だけだったので、かなり高い地位の人々の姿のようです。お互いに話をしたりして優雅な雰囲気があり、歩道に水たまりがあることから雨上がりの風情が表現されているようでした。


<第3章 歴史画(物語画)>
下階の最後は歴史画のコーナーです。ここには以前ご紹介したフェルメールの「ディアナとニンフたち」もあります。

16 ペーテル・パウル・ルーベンス 「聖母被昇天(下絵)」 ★こちらで観られます
これはアントワープ大聖堂を飾る祭壇画の構図を決めるために描かれた作品で、完成作はフランダースの犬でネロが追い求めていた作品だそうです。聖母マリアが亡くなって3日目に天に迎えられたという話を題材にしていて、上を向いて胸に手をあてるマリアと、冠を被せようとする天使など沢山の天使や見上げる人々が描かれています。モチーフの流れるような配置が面白く、劇的な雰囲気がありました。また、全体的に素早く描かれた感じがしましたが、色合いや柔らかい肌の表現はルーベンスらしさを感じました。

17 レンブラント・ファン・レイン 「スザンナ」 ★こちらで観られます
前かがみで自分の髪を両手で抑える裸婦が、顔だけこちらに振り向いた姿で描かれています。これは旧約聖書の一場面で、2人の長老に水浴を覗かれ脅されたものの、貞節を貫いたというスザンナを描いているそうです。こちらを向いている顔は驚いて(むしろ、何やねん!と不審がって)見え、白い肌の体は艷やかでした。

このすぐ近くにフェルメールの「ディアナとニンフたち」があります。


<第4章 肖像画と「トローニー」>
エスカレーターを登り中階は「トローニー」という画家が自由に制作した肖像画のコーナーです。フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」はこの章の最初にあります。

「真珠の耳飾りの少女」は絵の前の列で5分くらい待ったと思いますが、以前に比べてすんなり見られたと思います。逆に、列の横で離れて見る人は以前より増えていたかも。閉館直前にこの絵の前に再び戻ってきたのですが、閉館5分前でも混んでいて、3分切った辺りから快適に観られましたw そのお陰で細部まで観られたし、だいぶ満足できました。

22 アンソニー・ヴァン・ダイク 「アンナ・ウェイクの肖像」「ペーテル・ステーフェンスの肖像」
2枚セットの夫婦の肖像で、右は織物商・美術愛好家のペーテル・ステーフェンスの肖像、左には妻のアンナの肖像が向き合うように展示されています。ステーフェンスは、金色の豪華かつ緻密な手袋を手につけ黒衣に白いフリルの姿で、アンナは羽根飾りを持ってこちらを見つめています。2人とも理知的な雰囲気で微笑んでいるようにも見えるかな。真珠の光沢など細かい質感も見事に表現されていました。
解説によると、通常の夫婦の肖像では左が男で右が女性となるのですが、これは既に完成していたステーフェンスの肖像に対になるようにアンナの絵が描かれたので、男女が逆になっているようでした。

28 ホーフェルト・フリンク 「椅子の傍らの少女」
これはレンブラントの弟子の作品で、暗い背景に白い服を着た女の子が椅子に手をかけている様子が描かれています。首から長い鎖で繋がった金の鈴?(水晶がついていて、ガラガラのようなもの)を下げ、あどけない顔をしていて可愛らしいです。身なりがよく身分の高い家の子なのかな? 表現も面白くて、師匠レンブラントに似た巧みな光の表現で女の子に光があたったような感じでした。ちなみにこの絵の椅子にはオマルを出し入れするところがあるとのことです。

29 レンブラントの工房による模写 「首あてをつけたレンブラントの自画像」
横向きでこちらを振り向くような若い頃のレンブラントの自画像… と思ったら工房による模写のようです。首の辺りに金属の首あてがあり、光を反射しています。解説によるとレンブラントはこの首あてをよく描いたそうで、素人目にはレンブラント作品そのものに見えますw 髪のあたりが若干柔らかめに見えるかな?? 本人の作でなくても十分な力量を感じる作品でした。

33 レンブラント・ファン・レイン 「羽根飾りのある帽子をかぶる男のトローニー」 ★こちらで観られます
豪華な羽根飾りのついた帽子を被り振り返る男性像です。首には金属の首あてがあり、口を少し開いて何か話しかけているように見えます。若干嫌そうな表情にも見えるw 暗い中に黒い服を着ているのですが、耳飾りと肩掛けに光が反射し、顔に光が当たっているためか、明るめに見えるのが面白かったです。
解説によると、このファッションは当時のものではなく画家の想像で描いたものなのだとか。レンブラントの肖像とも考えられたようですが、現在ではトローニーと考えられているようです。


<第5章 静物画>
さらにエスカレーターを登り上階の最初は静物画のコーナーです。

35 アーブラハム・ファン・ベイエレン 「豪華な食卓」
テーブルに乗った様々なものが描かれた静物で、水差し、カニ、ぶどう、桃、レモンなどなど、まさに豪華な食卓と言えるモチーフです。写実的かつ精密に描かれていて、中央の銀製の水差しにはイーゼルに向かう画家も描かれているほどリアルです。解説によると、左の方にある時計は限りある人生と時の経過を表し、豪華な食卓は節度を心がけるようにと警告しているとのことでした。一見豪華でも人生の儚さを表現しているようで面白いです。


<第6章 風俗画>
最後は当時の様子が伝わってくる風俗画のコーナーです。

44 ヘリット・ファン・ホントホルスト 「ヴァイオリン弾き」
肩を顕にしてヴァイオリンを弾く、赤い羽根飾りの帽子を被った女性が描かれています。歯を見せて笑っていて、ちょっと品がないですが、色気があります。解説によると、はだけた肩は性的な誘いを意味し、頭の羽根飾りは虚栄と欲望の象徴だそうです。また、カラヴァッジョに影響を受けているらしく、確かにそれが感じられました。表情や肌の色、明暗などがそれっぽく見えます。

45 ヤン・ステーン 「牡蠣を食べる娘」
手に牡蠣を持ち、上目遣いでこちらを見る赤い服の女性が描かれた作品です。黙々と食べている最中のようにも見えますが、当時は牡蠣は媚薬とされていたそうで、塩はその効果を高めると考えられていたようです。また、背後にカーテンに隠れるベッドがあるらしく、それを知るとちょっと意味深な表情に見えてきましたw ステーンの作品はこういう皮肉的な感じがあって面白いです。


ということで、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」だけでなく他の作品にもかなり満足できる内容でした。混んでいて大変ですが、美術好きの人は是非どうぞ。こんな機会は滅多にありませんからね。

おまけ:
イメージキャラクターになっている女優の武井咲が着た「真珠の耳飾りの少女」の衣装。
IMAG00401.jpg IMAG00411.jpg
つくづくよく再現していると思いますが、イメージキャラクターの人選にいささかの疑問が…w 


 参照記事:★この記事を参照している記事


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Comment
No title
こんばんは♪

2回目…私も行きたいと思いつつ、そろそろ混雑が半端なさそうで
迷っていたら…もうすぐ8月も終わってしまいますね。。。
昼に行って大混雑でしたので、やっぱり落ち着いて夜に行きたいなぁと…

そうそう、あのイメージキャラクターの必要性はかなり疑問ですね(^_^;)
Re: No title
>naotomomoさん
コメント頂きましてありがとうございます。

経験則で都美は金曜の夜が狙い目だとは思っていたのですが、
前週の混雑表があったので、うまいこと並ばずに済みました。
とは言えそろそろ会期末。これからは本当に込むかもしれませんね。
1度ご覧になられているのであれば金曜の夜も良いと思いますよ。

あのイメージキャラクターの女優はそんなに似てないしなあ…w
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