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美術のなかのこどもたち 【平塚市美術館】

前回ご紹介した平塚市美術館の特別展を観た後、常設展も観てきました。常設にも「美術のなかのこどもたち」というタイトルがあり、期間が設けられているようでした。

P1040630.jpg

【展覧名】
 夏の所蔵品展 美術の中のこどもたち
 特別展示 初公開!!川村清雄《滝》

【公式サイト】
 http://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-muse/2012204.htm

【会場】平塚市美術館
【最寄】平塚駅


【会期】2012年7月28日(土)~9月17日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
こちらは特別展より空いていて、快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はタイトルの通り子供をテーマにした作品が並ぶ内容です。また、修復され初公開となる川村清雄の「滝」という作品も合わせて展示されていましたので、詳しくは気に入った作品と共にご紹介しようと思います。
 参考記事:
  アーティストin湘南Ⅱ 高良眞木・内田あぐり・石井礼子 (平塚市美術館)
  アーティストin湘南Ⅰ  ~工藤甲人・伊藤彬・中野嘉之・山本直彰・斉藤典彦~ (平塚市美術館)


海老原喜之助 「癖馬」 ★こちらで観られます
青を背景に足を伸ばして跳ぶように走る馬と、その上で縄跳びをしている子供が描かれた作品です。馬は振り返るように体を捻り勢いを感じますが、子供は空中で止まっているかのように観えました。背景が目がさめるような青一色なので遠近感もよくわからず、シュールな感じを受けました(もしかしたら子供は馬の上じゃなくて単に奥にいるだけなのかな??)

川村清雄 「滝」 ★こちらで観られます
これが今回初公開となる作品で、これだけ子供とは関係ない作品です。
流れ落ちる白い滝がやや抽象的に思えるくらいぼんやりと描かれ、飛沫は大胆に厚塗されています。解説によるとこれは2年かけて修復されたそうで、この隣には修復前の茶色く変色していた頃の写真も展示されてました。よくここまで綺麗に修復したものだと驚くとともに、滝の下の方の烟る様子に風情を感じました。

椿貞雄 「菊子座像」
この画家は岸田劉生の門人で、岸田劉生の肖像画にも描かれている人物です。この絵は非常に写実的に、着物を着た少女が正座している様子が描かれていて、目の輝きや顔の艶などに岸田劉生の写実時代からの影響を感じます。ぱっと観た時にモデルも劉生の娘の麗子かと思いました…w
椿貞雄は他にも何点か展示されていました。いずれも独特の力強さと重厚さを感じます。

安田靫彦 「宮本二天像」
2幅対の掛け軸で、右幅は二刀流で剣を持つ宮本武蔵?の姿、左幅は両手で1本の刀を持ち突進する子供が描かれています。右幅の左端に子供の剣の切っ先が繋がっているのが面白く、場面が繋がっている感じがします。武蔵?は口をへの字にしてつまらなそうな表情をしているように観えました。真剣のようだけど稽古なのかな??

この近くには以前ご紹介した石井礼子の家の中をモノクロで平坦に描いた作品もありました。

鴫剛 「SHONAN2」
海水浴の光景を超リアルに描いた作品です。水から顔を出した時を思わせる視点で、浮き輪やゴムボートで遊ぶ子供たちを描いています。波のうねりや反射、肌や水着の質感などは写真にしか見えませんが、近づいてみると絵だと分かります。解説によると、作者は学生時代に写真のような絵は絵ではないと言われたことから、写真のように描けば絵ではないものが描けると独自の解釈で捉え、こうした写真のような絵を描いたそうです。大画面で艶やかな色合いが夏の海の楽しさや強い光を感じさせました。

この近くには高良眞木 氏の素描や、保田龍門 氏の素描と彫像もありました。

山下大五郎 「祭の森」
6面からなる襖絵で、北野天神の幟が上がる神社の周りに沢山の人々が集まっている様子が描かれています。そのほとんどは子供ですが、屋台や山車のようなものもあり、お祭りで盛り上がっているようです。画風は素朴で、ノスタルジックな雰囲気があるように思いました。祭りの楽しげな感じが伝わってきます。

この近くには濱谷浩 氏の戦中戦後の写真が並んでいました。また、以前ご紹介した工藤甲人 氏の「愉しき仲間(一)」と「愉しき仲間(二)」もありシュールで神秘的な雰囲気でした。

伊藤彬 「我が子への絵物語り(月が降りてきた)」
赤い服の女の子を抱く黒いドレスの母親と、寄り添う青い服の女の子が描かれた作品で、その左には真っ赤な円が描かれ、中にはぼんやりと腕を組んでいる女性の姿があります。 周りの木々も血のように赤く染まり、観ていると言い知れぬ不安を感じました。また、奇妙ながらも夢の中のようで、何処か懐かしさも感じられるかな。 何とも不思議で神秘的な作品でした。

最後には菅野陽 氏の白黒の版画が並んでいました。記号化されたような子供達が描かれていて、ちょっと怖いものも感じますがインパクトのある作風でした。


ということで、こちらも個性的な作品が並んでいました。特別展と同じチケットで入れますので、もし平塚市美術館に行く機会があったら、常設も観てみると良いかと思います。


 参照記事:★この記事を参照している記事
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