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平家物語画帖 諸行無常のミニアチュール 【根津美術館】

この前の祝日に表参道の根津美術館に行って、「平家物語画帖 諸行無常のミニアチュール」を観てきました。なお、この展示には前期・後期があるようで、私が行ったのは後期の内容でした。

P1060111.jpg

【展覧名】
 コレクション展 平家物語画帖 諸行無常のミニアチュール

【公式サイト】
 http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html

【会場】根津美術館
【最寄】表参道駅


【会期】2012年9月8日(土)~10月21日(日) 
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間40分程度

【混み具合・混雑状況(祝日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
小さな画帖が多いのでたまに列になる所もありましたが、基本的にはあまり混むこともなく快適に鑑賞することができました。

さて、今回は根津美術館のコレクション展で平家物語をテーマにした内容となっています。平家物語は平家一門の盛衰を語る軍記物語の最高傑作で、13世紀半ばことには成立していたと考えられるそうです。その後の文芸に与えた影響は大きく、この展示では平家物語を120図の扇形の紙に絵画化した平家物語の画帖を中心に、平家物語に取材した作品が並んでいました。点数自体はあまり多くないので充実度は③にしましたが、貴重な品が並んでいましたので簡単に会場の雰囲気をご紹介しようと思います。

まず最初に屏風があり、その後に壁にそって遠大な画帖が並んでいました。

「平家物語画帖」 ★こちらで観られます
今回の展示のメイン作品で、金箔を散らした料紙に扇状の絵が描かれた作品です。文字が書かれた帖と絵が描かれた帖が交互に並んでいて、上帖40図、中帖41図、下帖39図に渡って平家一門の栄枯盛衰を物語っています。画風は大和絵で細やかに描かれていて、文字も流麗で非常に美しく雅な雰囲気です。
当時の合戦や話し会う様子などが逸話を交えながら進められていくのですが、まず上帖で印象的なシーンとしては、鵺(ぬえ)のような怪物退治(実際の鵺退治の話はその10年後)や、物の怪のシーン(特に平清盛の庭にドクロが集まったシーン)、馬の尻尾にネズミが一晩で巣を作る怪異など、ちょっと不思議な逸話が並び、その他には富士川の戦いの際に水鳥が一斉に羽ばたいたのを源氏の軍勢が来たと思って逃げ出したという有名な話もありました。
続いての中帖で気になったシーンは、木曾義仲の家臣である手塚光盛が斉藤実盛を討つ場面で、生首を首実検している様子が描かれていました。斉藤実盛は老いを恥じて髭を染めていたので、それを洗い落としてようやく誰だか確認できたようです。
その後しばらく進むと、生食(いけずき)に乗った佐々木高綱と磨墨(するすみ)に乗った梶原景季が先陣を争う宇治川先陣争いの様子も描かれていました。この1番手争いでは佐々木が先に行った梶原に馬の腹帯が緩んでいると声をかけ、梶原がそれを直しているうちに佐々木が抜け出すという話です。これは日本画でよく観る主題なので要チェックです。中帖には他にも巴御前の戦いや木曾義仲の最期、源義経のひよどり越えなど有名なシーンが多めでした。
最後の下帖は海でのシーンが多く、特に有名なのは那須与一の話です。扇に向かって弓を構える射落とす場面で、その場の緊張感が感じられます。さらに進むと壇ノ浦の戦いでの安徳天皇と平時子の入水のシーンや、入水から1人助かった建礼門院徳子が出家して大原に隠棲し、後白河法皇がそこを訪れる様子を描いた場面などもありました。
前期後期で展示品が分かれているので話が飛ぶのが残念でしたが、劇的な場面を観られたのは良かったです。なお、こちらの作品と同じような図がベルリン国立アジア美術館に59図、徳川美術館に60図、遠山記念館に36図伝わっているとのことでした。

この近くには那須与一の話をパロディ化した宮川長春の「見立那須与一図」や曽我物語図屏風(鎌倉初期頃の仇討ちの話)などもありました。 これを観た後、一旦前の部屋の画帖と反対側の展示に戻りました。

平頼盛 「厳島切(無量義経断簡、手鑑文彩帖所収)」
青~紺の料紙に金字で3行だけ書かれた断簡で、3行目には「無量義経」と書かれています。解説によるとこの断簡は平清盛の異母弟の平頼盛が書いたそうで、貴重なもののようでした。結構字が綺麗です。

この辺にはいくつかこうした断簡がありました。また、鵺に似た怪物を象った冷泉為恭「小督仲国図(諸図貼交画帖のうち)」などもあります。

「保元平治物語図扇面」
これは今回初公開の品だそうで、平家物語画帖と同一の集団の作と考えられる作品です。 色紙のようなものに扇形の絵が貼られていて、確かに扇は先ほど観た画帖と同じサイズです。また、展示されていたそれぞれのシーンの隣には他の作品の写真が展示されていたのですが、かなり似た構図の作品が他にもあるようで、平家物語画帖と共有したシーンもありました。転用しているところやタッチからも同じ集団の作というのも頷けました。

「平家琵琶 銘 和国」
木で出来た琵琶とバチがセットで展示されていました。平家物語の成立と流布には琵琶法師が大きく関わっていたようで、彼らの語りは平曲と呼ばれ、伴奏の際にこうした平家琵琶が使われたそうです。雅楽の琵琶に似ていますが、それに比べると一回り小さいようでした。胴の辺りに細かい彫刻もあり優美な琵琶でした。
…余談ですが平家物語と琵琶というと耳なし芳一を連想しますが、実際に琵琶法師たちと平家物語は深い関係があったようですね…。


この先の展示室2は今回は禅僧の名筆展となっていました。上の階は常設ですが、展示室5で平家物語に関する面の展示もやっていました。平家は色白で上品な顔であるのに対して、源氏は戦で焼けて赤っぽい顔で、ちょっと怖いくらいの勇ましさがあります。どうも平家には滅びゆく美しさ・妖しさがあるようで、源平でこれだけ違う印象を受けるのが面白かったです。


ということで、今後の作品鑑賞に参考になりそうな展示でした。特に平家物語画帖はこの機に観ることができて良かったです。日本画や歴史に興味がある方向けの展示だと思いますが、気になる方はチェックしてみてください。


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