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現代の写実。ホキ美術館名品展 (感想後編)【ホキ美術館】

今日は前回の記事に引き続き、ホキ美術館の「現代の写実。ホキ美術館名品展」の後編をご紹介いたします。(後編は実際には常設のコーナーです。 前編には特別展の様子も記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。)


 前編はこちら


P1060392.jpg

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【展覧名】
 現代の写実。ホキ美術館名品展

【公式サイト】
 http://www.hoki-museum.jp/exhibition/index.html

【会場】ホキ美術館
【最寄】土気駅

【会期】2012年5月26日(土)~11月11日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(平日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前編では1階と地下1階の半分までご紹介致しましたが、後編では地下2階のギャラリー9までの感想となります。(ギャラリー2以降は常設展示です)

 参考記事:
  ホキ美術館開館記念特別展 感想前編(ホキ美術館)
  ホキ美術館開館記念特別展 感想後編(ホキ美術館)


<ギャラリー3 常設展>
ギャラリー3は野田弘志 氏などの巨匠や中堅作家の作品が並ぶコーナーです。

野田弘志 「刺繍模様に薔薇」
丸い花瓶に入ったオレンジ、白、ピンク、薄い黄色などの花を描いた作品です。背景には長方形と菱形を組み合わせた刺繍の布があり、その長方形の中に収まるように花が配置されているのが面白いです。花瓶はポツンと置かれた感じで、静かな印象を受けました。

この辺はこうした花瓶に入った花を描いた作品が何点かありました。また、以前ご紹介した裸婦像の「THE-10」と黒いドレスを着た女性像の「聖なる者 THE-1」は対になるように展示されていて目を引きます。

津地威汎 「航跡・・・夜明け」
これは3枚セットの作品で、海の上に暗い雲が浮かび、中央からは日が昇ってくるような強い光を感じる一方、所々に船の灯りらしきものも見えています。水平線は低めで、赤やオレンジ、黄色、紫など様々な色に染まる空は広々として雄大な雰囲気です。また、この作品はここまで観てきた作品のなかでも特に絵画的な感じで、細かい点描で表現されているのが特徴的でした。どこか神秘的な作品です。

磯江毅 タイトル失念…
これは白黒で、病院のストレッチャーのようなものに仰向けで寝ている男性を描いた作品です。腰から下は白い布で覆われていて、背景は暗く、男性は生きているのか死んでいるのか分かりませんでした。ちょっと安らかな顔に見えるかな…。静かで厳粛な印象も受けました。

島村信之 「朝靄」
モヤが立ち込める湖と石が転がる湖畔を描いた作品です。水面の反射や光が照らすモヤなどが神秘的で、朝の空気感が伝わってくるようでした。

この辺は島村信之 氏や青木敏郎 氏の作品などが並んでいました。


<ギャラリー4 常設展>
続いては細長い通路のような展示室で、新人作家のコーナーのようです。

高橋和正 「ひととき」
光の差し込む窓を背景に、ベッドでうつ伏せになっている女性が描かれた作品です。肘をついてうつむき、物思いに耽っているように見えます。また、全体的に観ると光に包み込まれるように明るく、その為か安らいだ雰囲気があるように思いました。

Adolf Sehring 「Garden in Spring」
壺の置かれた石柱と 階段のある 庭が描かれた作品です。道の脇にはピンクの花々が描かれ、奥には日の当たる木々も描かれています。手前は暗くて奥が明るいせいか、日差しが強く感じられました。また、こちらの作品は絵画的な感じで、所々に白い点が打たれて木漏れ日が差すような効果がありました。

この近くには以前ご紹介したDario Companileの食べかけの西瓜を描いた作品も並んでいました。


<ギャラリー5 常設展>
ギャラリー4の奥にあるギャラリー5は、打って変わって板谷波山などの陶器が並ぶコーナーです。板谷波山は胡粉がかかったような淡い文様が特徴で、一度観れば一目で彼の作品の特徴が理解できると思います。また、他にも深見陶冶 氏の直線と曲線を組み合わせた現代アート的な作品や、伊東慶 氏の丸みが美しい作品なども並んでいました。意外と見応えのあるコーナーです。


<ギャラリー6 常設展>
ギャラリー6から地下2階で、ここは階段下にあるコーナーです。

中山忠彦 「燭台のある部屋」 ★こちらで観られます
光沢のある豪華なドレスを着て立つ女性を描いた作品で、背景には燭台が置かれています。写実的ではあるのですが、そのドレスのためかどことなくルノワールを彷彿とさせます。薔薇色の頬をした女性は、気品ある姿で昔の貴族のような雰囲気がありました。

この辺は中山忠彦 氏の作品が並び、女性像が他に2点ありました。いずれもこの作品と同様の印象を受けます。


<ギャラリー7 常設展>
続いては原雅幸 氏のイギリスの風景を描いた作品が並ぶコーナーです。

原雅幸 「Footpath to Pooh Bridge」
枯れた木々が両脇に立ち並ぶ道を描いた作品で、枝がトンネルのように道を覆っています。シャープな画風で、細い枝が針のように見えるほど緻密に描かれていました。枯れ木なのに鬱蒼とした感じで、奇妙なリアルさとファンタジー的な要素があるように思いました。

この章の原雅幸 氏の作品を観ていると、寂寞とした雰囲気の作品が多いように思えます。


<ギャラリー8 常設展>
こちらは人の15人の巨匠・中堅の「私の代表作」が並ぶコーナーで、絵の隣に解説ボタンが付けられています。

五味文彦 「木霊の囁き」
暗い闇を背景に、1本の木とその周りの草が描かれた作品です。そびえ立つような木は神々しいほどの存在感で、周りの緑も生命感に溢れて覆い尽くさんばかりでした。緑鮮やかで神秘的な作品です。

小尾修 「跡」
女性のスケッチが飾られた壁を背景に、両手を曲げて立つ裸婦が描かれ、手前にはゆりの花々が入ったタライ?を載せた椅子が描かれています。右の方にも女性の肖像画が飾られていて、部屋のドアは開いているのかな。四角や直線が多い部屋の構図が面白く、解説によると刻一刻と変わっていく人の痕跡を描いているとのことでした。

中山忠彦 「楽興」
ソファに横たわる紅のドレスの女性を描いた作品で、その脇には弦楽器があり 手には花を持っています。背景には青~緑の装飾的な文様があり、補色関係のためか赤が鮮やかに見えます。その為、女性は華やかさと知的な雰囲気があるように思いました。

この近くには諏訪敦 氏の「untitled」(★こちらで観られます)などもありました。


<ギャラリー9 常設展>
最後は新人女性作家のコーナーで、一番奥のほうにあります。

廣戸絵美 タイトル失念…
これは建物の内部を描いた作品で、打ちっぱなしのコンクリートの壁や階段の踊場などが描かれています。無機質ながらも光を照り返す壁の質感が豊かで、階段などの幾何学的なモチーフが多く描かれていたのも面白かったです。白、黒、灰色といったモノトーンな色合いが中心なのに明るく柔らかい雰囲気に思えました。


ということで、今回も驚かされる作品が多くて楽しめました。写実的でも絵画ならではの叙情性があるのが面白かったです。この展示はもうすぐ終わってしまいますが、今後も所蔵品の展示が続くと思いますので、気になる方はこの先の展示もチェックしてみてください。

おまけ:
近くの昭和の森の写真。中途半端な時期に行ったので、今回は特に見所はありませんでしたw ちょっとだけ花壇に花が咲いているくらいかな。
P1060380.jpg P1060383.jpg
かなり広いのでのんびりできる所です。

 参考記事:
  昭和の森の紅葉


 参照記事:★この記事を参照している記事

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