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チョコレート展 (感想前編)【国立科学博物館】

前回ご紹介したお店でお昼を済ませた後、上野の国立科学博物館で「チョコレート展」を観てきました。この展示では写真を撮ることができましたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

P1060627.jpg

【展覧名】
 チョコレート展

【公式サイト】
 http://event.yomiuri.co.jp/chocolate/index.html
 http://www.kahaku.go.jp/exhibitions/ueno/special/2012/choco/index.html

【会場】国立科学博物館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)


【会期】
 2012年11月3日(土・祝)~2013年2月24日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
展覧会が始まって2日目に行ったのですが、既に大人気でチケットを買うのに15分くらい並びました。さらに中に入ってからも大混雑で、狭くなっているところはごった返す感じでした。ボードの解説を読んだり写真を撮っている人が多いので中々進まず、思った以上に観るのに時間がかかりました。これから見に行こうとしている方はその点を留意しておいたほうが良さそうです。

チケット待ちの行列はこんな感じでした。
P1060624.jpg

さて、今回の展覧会はずばりチョコレートに関する展示です。このブログでもよく甘い物について書いていますが、私はチョコレートも大好きでこの展示の情報を見つけた時から楽しみにしていました^^; これはアメリカのシカゴにあるフィールド博物館で開催され全米を巡回した展示を元にしているそうですが、日本のオリジナル要素も多いようです。展示の流れとしては、チョコレートの原料のカカオを知るところから始まり、その性質やチョコレートの歴史、製造工程(体験型)、チョコレートに関する様々な豆知識といった感じでした。冒頭にも書きました通り、一部の作品を除いて写真を撮ることができましたので、詳しくは写真と共にご紹介しようと思います。


<プロローグ>
まずは入口付近です。

展覧会に来た人たちをチョコレートの城が待ち構えていました。大人でもワクワクする演出です。
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こちらは植崎義明 氏という方が作ったチョコレートの機関車。
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科博の入口のD51にちなんだものと思われます。通路の逆側には同じく科博のシンボルのシロナガスクジラをチョコレートで作ったものもありました。


<チョコレートの原点 カカオ>
チョコレートの城を通ってからが本編です。まずはチョコレート原料となるカカオについてのコーナーでした。

中に入るとこんな感じ。
P1060638.jpg

カカオはこの写真のように「幹生果」という幹に直接 実がなる変わった木です。学名は「デオブロマ(神様の食べ物)」というそうです。
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1年間に何千もの花をつけるそうですが、実を結ぶのはわずかなのだとか。また、寒さと乾燥に弱く、最低気温が16度を下回ったり 年間雨量が1000mm未満の土地ではよく育たないそうです。さらに直射日光にも弱いし、アーバスキュラー菌根菌という菌も必要だそうです。…そんな気難しくて貴重な植物の実をよく世界中の人が食べているものだと驚きました。 1990年代前半には天敵の菌によって引き起こされる天狗巣病がブラジルで猛威をふるい、世界2位だった生産量が1/4にまで落ち込み、現在でも世界6位まで落ちているようです。めちゃくちゃデリケートな植物なんですね。

カカオの実(乾燥させて樹脂を塗ったもの)を触ることもできました。
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年間6000もの花を咲かせるうち、実ができるのは1~2%、しかも花の命はわずか2日! 受粉には「ヌカカ」や「タマバエ」といった虫が体に花粉をくっつけて雌しべに運んでくれる必要があるので、こうした虫の存在も不可欠のようです。ちなみにヌカカも展示されていましたが、虫眼鏡でみてもよく分からないくらい小さかったです。

様々なカカオが並んでいました。DNAを調べたとこと10のグループに分けられるそうで、そのルーツは南アメリカの北部とする説が有力となってきているそうです。
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チョコレートのなめらかな口当たりは種子に含まれる脂肪のおかげらしいですが、この脂肪が昔は中々厄介な面もあったようです(詳しくは次の章で) また、カカオにはテオブロミンという苦味の元の成分があるそうで、この苦味のために動物は種子を食べないのでカカオが次の世代を残せたようです(現代の人間はめちゃくちゃ食べてますがw)


<チョコレートをめぐる歴史>
続いてはチョコレートの歴史のコーナーです。

こんな感じで年表などもありました。
P1060672.jpg
B.C.2000年頃からマヤ地域で飲み物として飲用されはじめ、200~600年頃に交易によって中南米に広まり、1400年頃にアステカ帝国でカカオの飲用が広がったようです。そして1521年にスペインがアステカを征服すると、カカオはスペインに伝えられ、やがてヨーロッパに広がっていくことになります。

この辺にはマヤやメキシコの道具(石臼や皿、壷、香炉、神像、ネックレスなど。いずれも撮影禁止)が並んでいました。マヤではカカオを飲む際に唐辛子なども入れていたようです。…あまり美味しくはなさそうですw また、15世紀アステカではカカオは流通通貨としても使われたそうで、1粒でトマト1つ、20粒で雄の鶏1匹と引き換えにできたようです。大きさや硬さが便利だったから使われていたようですが、偽カカオが出回るほどだったのだとか。

侵略によってスペインに伝わったカカオは、健康によく誰も知らなかった味が人々を夢中にさせ、スペインでは100年近く門外不出となったようです。しかしスペイン王フェリペ3世の王女アナがルイ13世に嫁ぐとフランスに伝わりヨーロッパ各国に伝わっていきます、するとカカオは不足するので、各国は支配下に置いた土地からもカカオが出荷させるようになり、ヨーロッパに広く供給されるようになりました。チョコレートのために何百万人もの労働力が必要で、カカオ作りはもっぱら先住民が奴隷として従事していたようです。
また、スペイン人がヨーロッパにカカオを伝えてまもなく、それに砂糖を加えることを思いついた人がいたそうです。地域によって様々な作り方があったようで、焙炒してバラやシナモン、アーモンドを加えるなど試行錯誤されたようです。

1600年代~1700年代のヨーロッパではコーヒーハウスやチョコレートハウスが軒を連ね、政治問題を議論したり賭け事をする場となったそうで、これはロンドンのコーヒーハウスの様子です。
P1060700.jpg

当時のヨーロッパでチョコレートを飲む際に重視されたのは「泡」だったそうで、その泡を立てるためにこうした道具が用いられました。この棒はモリーニョという道具だそうです。
P1060707.jpg
上のほうにあるのはチョコレートポットで、紅茶やコーヒーのポットと決定的に異なるのは、
 ・取っ手が必ず注ぎ口と直角になっている。
 ・蓋には開閉式の穴が開けられている(モリーニョを通してあわ立てるための穴)
だそうです。この先にもこの特徴のチョコレートポットが並んでいます。

チョコレートポットやチョコレートカップのコレクションも並んでいました。
P1060715.jpg P10607421.jpg
古いものからつい数年前のものまで、様々な時代や国の品々が並んでいます。

特に豪華だったのがこの18世紀後半のオーストリアのカップ。
P10607641.jpg
カップは「トレンブラーズタイプ(カップの底にくぼみがあるタイプ)」と「マンセリーナタイプ(カップを受ける部分に立ち襟がついているタイプ)」というのがあるようで、これは後者かな。

その後は、現代に繋がるチョコレートの工業化についてのコーナーで、ここには何人かのチョコレートに関する発明家の説明がありました。

まずクンラート・バンホーテンというオランダの人物がココアとココアバターの発明をしました。それまでお湯に溶かしたカカオは脂肪のため油っぽく、美味しいものではなかったようですが、カカオ豆からできるカカオマスの脂分を減らし、粉末状にしたココアパウダーを発明することに成功したようです。これによって後に固形チョコレートが可能となり、さらにアルカリ溶液を混ぜることでマイルドな香りとブラウンの色合いとなったそうです。

これがバンホーテンのココア缶。ここから味がよくなっていったんですね。
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さらにその後スイスのフランソワ・ルイ・カイエによっていた板チョコレートが発売され、同じくスイスのダニエル・ピーターが粉末ミルク混ぜたミルクチョコレートを発明します。ダニエル・ピーターの発明にはアンリ・ネスレ(ネスレ社の始祖)の助けがあったようで、やがてダニエル・ピーターとフランソワ・ルイ・カイエの会社は合併され、ネスレミルクチョコレートを製造するようになったそうです。現在でもネスレからカイエブランドの板チョコは発売されているのだとか。

他にも口溶けをよくする精錬(コンチング)の設備を発明したスイスのルドルフ・リンツ(リンツ社の始祖)や、粘度を下げて流動性を良くすることに成功したヘルマン・ボールマンなども紹介されていました。スイスはこれらの技術によって製造技術と売上で世界トップになったようです。
一方、イギリスのチョコレート産業はフライ、キャドバリーといった実業家がスイスに学んで発展させ、アメリカではミルトンハーシーという人が世界最大のチョコレート工場を作ったそうです。こうしてチョコレートは美味しさが増し工業化が進みました。


<チョコレートと日本>
続いては日本のコーナーです。チョコレートは1797年に長崎の遊女が「しょくらあと」を貰い受けたという記録があるそうで、これが日本で最初のチョコレートのようです。その後、明治時代に入ると1873年に岩倉具視たちがパリ郊外のチョコレート工場を視察し、1878年にはチョコレートの新聞記事や広告も続々と出てきたようです。大正時代には森永製菓や明治製菓がチョコレート工場を設備し大量生産を始めるのですが、1937年にカカオ豆に輸入制限令が発令され、1940年には薬用を除き輸入が停止したようです。戦後になると米軍放出のチョコレートや代用のグルチョコというものが出回り、1951年以降にはカカオ豆が輸入され始め、チョコレートの生産が発展していきました。バレンタインにチョコレートを贈る風習も日本のメーカーが仕掛けた戦略であることなども紹介されています。


これは1915年の芥川製菓という会社のチョコレートの型。
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欧米では鉄を使いますが、日本では入手困難だったので、木の彫刻に漆を塗っているそうです。

この先には森永、明治、グリコといったお菓子メーカーのポスターや昔のチョコ、当時のCMなどを展示していました(ここは撮影禁止) Lookやチョコボール、ポッキー、コアラのマーチ、キノコの山とたけのこの里などもあり、お馴染みの面々です。キノコの山はアポロが売れなかったので、その設備を有効活用しようとして生まれたというエピソードもありました。(ちなみに私はキノコ派ですw)また、コアラのマーチは465種類もあるそうで、その絵柄の一覧がありました。


ということで、今日はここまでにしておこうと思います。普段よく食べているチョコレートですが、こうして詳しく知ることができる機会はあまりないので、チョコレート好きにとっては楽しくて参考になる展示だと思います。後半はさらに体験型の展示がありましたので、次回はそれについてご紹介しようと思います。



  → 後編はこちら



 参照記事:★この記事を参照している記事

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Comment
No title
おはようございます。
チョコレート展やってるんですかあー!
これ、見てみたいです。
上野は近いから行ってみよっかなー!(^^)!
No title
こんにちは!

チョコレート展、先日行ってきました。
始まったばかりの雨の平日だったので、空いているかと思いきや…
もしかしたらその前に行ったメトロポリタン展より混んでいたような(^_^;)
(見やすさの問題なので撮影している方が多いせいもあるんでしょうね…)

私もそのうちアップしたいと思っています!
Re: No title
>onorinbeckさん
コメント頂きましてありがとうございます^^
こちらの展示は観ているだけでチョコレートが食べたくなる展示でしたよw
思った以上にチョコレートって手間暇かかっているんだなあと感心させられます。
ご興味あるようでしたら是非足を運んでみて下さい^^ 混んでいるのでご用心を…。
Re: No title
>naotomomoさん
コメント頂きましてありがとうございます^^
この展示は始まったばかりなのにすごい人気ですね。
確かにメトロポリタン展より混雑感がありました(というかチケット渋滞してますしw)

しかし写真も撮れるし美味しそうなグッズはあるしで、今後もますます人気がでそうですね。
naotomomoさんの記事も楽しみにしています^^
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