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没後70年 竹内栖鳳(後期) 【山種美術館】

この前の土曜日に、恵比寿の山種美術館へ行って、会期末となった「没後70年 竹内栖鳳」の後期展示を観てきました。この展覧会は既に終わっていますが、後期も素晴らしい内容だったのでご紹介しておこうと思います。

P1070059.jpg

【展覧名】
 没後70年 竹内栖鳳

【公式サイト】
 http://www.yamatane-museum.jp/exh/exhibitions2012/70.html

【会場】山種美術館
【最寄】JR・東京メトロ 恵比寿駅


【会期】
  前期:2012年09月29日(土)~10月28日(日)
  後期:2012年10月30日(火)~11月25日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
最終1日前だったこともあって混んでいました。しかし、大型の作品も多いので何とか自分のペースで観られる程度だったかな。

さて、この展示はつい最近にもご紹介しましたが、前期・後期で入れ替えがあるので再度足を運んでみました。各章の構成や説明は以前と同じですので、今回は説明等は省略して、気に入った作品についてのみ記載しておこうと思います。(今回は後期のみ展示の品や以前ご紹介しなかった作品について書いていきます) 構成や説明を知りたい方は前期の記事をご参照頂けると嬉しいです。
 参考記事:没後70年 竹内栖鳳 前期 (山種美術館)


<冒頭>
まず冒頭は前期同様に「班猫」が展示されていました。何度観ても気品があって美しい猫です。


<第1章 先人たちに学ぶ>
続いては栖鳳の先人のコーナーです。

5 円山応挙 「龍ぎん起雲図」
暗闇から首を出している龍を描いた作品です。上の方に手があり、画面をうねるように渦巻いてます。目はギョロっとしていて険しい表情で、周りの雲は濃淡で表現し稲光もありました。解説によると、通常なら墨を塗り残して表現する目や稲光などのハイライト部分に白色を使い、墨もこすりつけるように馴染ませるなど従来にない手法を試みているようです。それが離れて観ると立体感の表出に繋がっているようで、異様な迫力がありました。

9 森狙仙 「春風猿語図」
桜の樹の枝に掴まって遊ぶ4匹の猿と、その猿にしがみつく1匹の仔猿が描かれた作品です。動きが豊かで猿のやんちゃな感じが出ていて、その毛並みはフワフワして可愛らしさもありました。解説によると、この絵師は狩野派に学んだのですが、応挙に影響を受けて写実的な動物画を手がけたそうです。特に猿が得意だったそうで、「猿描きの狙仙」として名を馳せていたとのことでした。

この辺には雀を描いた応挙の小さな襖絵もありました。


<第2章 竹内栖鳳の画業>
続いては今回の主役の栖鳳のコーナーです。

16 竹内栖鳳 「雲龍」
上方の雲の間から龍が出てくる様子を描いた作品で、周りは雲を引いているように観えます。顔は穏やかそうですが、細かく描かれて風格を感じさせました。解説によると、栖鳳は明治20年代に応挙の画風に倣った作品を制作していたようで、これもそれにあたるそうです。応挙と同じく毛に金泥を使っているようですが、墨線の上に金泥を重ねている点など、古典にアレンジを加えているとのことでした。確かに先ほどの応挙の作品にもちょっと似た雰囲気がありつつ別物のような感じを受けました。

18 竹内栖鳳 「百騒一睡」
これは6曲1双の屏風で、右隻は伏せて寝ている洋犬と、その周りで戯れている3匹の子犬達が描かれています。そして左の方からは4羽の雀が近寄ってきています。一方、左隻には凄い数の雀が描かれていて、稲を刈り取った後の田んぼに群れをなして集まっていました。雀達は様々な姿で描かれていて、タイトル通り騒がしそうな感じです。左右の対比が面白い作品でした。 なお、雀は栖鳳がライフワークのように描いていたとのことでした。

20 竹内栖鳳 「虎・獅子図」
こちらは6曲1双の金屏風で、右隻に寝そべる虎、左隻には岩に乗っているライオンが描かれています。いずれも実際の虎とライオンをリアルに描いていて、険しい表情で迫力のある雰囲気です。これは明治33年の渡欧の際にアントワープなどで初めて観た本物を熱心に写生したものがもとになっているようで、唐獅子や日本画の虎とは違う、真に迫るものがありました。

この先しばらくは前期展示とほぼ同じ内容でした。

35 竹内栖鳳 「柿の実」
これは前期にもありましたが改めてじっくり観てきました。簡素な画風で描かれた柿の枝と4つの柿の実の絵で、この章の前半にあるような写実的なものからだいぶ単純化が進んでいます。オレンジ色が深く生命力を感じさせ、大きく湾曲した枝の形も面白い効果を出していました。

44 竹内栖鳳 「みみづく」
これも前期にもあった掛け軸です。樹の枝にとまるミミズクが描かれていて、かなり簡略化され淡い色彩となっています。ミミズクのキョロっとした目が可愛らしく感じられました。この作品もデフォルメ具合が面白かったです。


<第3章 栖鳳をとりまく人々>
最後は栖鳳の弟子や同門の画家のコーナーです。とは言え、栖鳳の作品も混じって展示されています。

58 菊池芳文 「花鳥十二ヶ月」
この画家は幸野楳嶺の元で栖鳳と共に修行した人物で、この作品は後期では1~6月が展示されていました。特に好みなのは5月で、雲の中に現れた満月と、その手前で滑空している鳥が描かれています。余白の取り方や配置が面白く、広々とした空間を感じさせました。

29 竹内栖鳳 「蹴合」 ★こちらで観られます
これは2羽の軍鶏が向き合って戦っている様子が描かれたもので、足を出して相手を掴むように襲いかかっています。戦いの瞬間を捉えたような緊張感がありつつ、滲みを使った色とりどりの毛が華やかな雰囲気に思いました。

55 竹内栖鳳 「雄風」
これは2曲1双の屏風で、右隻はソテツの木の横でじっと左のほうを見ている虎、左隻はソテツの木の下で寝そべっている虎が描かれています。先ほどの虎の絵と違って、簡略化され淡い色彩で描かれていて、胡粉でもかかっているのか?というくらい柔らかい色でした。太めの輪郭線で描いているのも滑らかな印象を受けました。

続いて第二会場です。

26 竹内栖鳳 「絵になる最初」 ★こちらで観られます
紫の着物を脱ぎかけている女性が、口の前に左手を出して顔を隠し恥ずかしがっている様子が描かれた作品です。滑らかな肌で初々しい雰囲気の女性で、その仕草も可愛らしく見えます。また、着物は紫地に青や金銀泥で模様をつけ、華やかな雰囲気がありました。解説によると、この着物は人気が出たそうで、高島屋が「栖鳳絣(せいほうがすり)」として売りだしたそうです。この作品の隣には羽織に仕立て直した栖鳳絣も展示されていて、絵に描かれた模様が忠実に再現されていました。


ということで、後期も充実した内容でした。「絵になる最初」などもあったので、後期の方が好みの作品が多かったかも? 図録も1000円と手頃なものがあったので、図録を買いました。もう終わってしまいましたが、今後も参考になる展示でした。


 参照記事:★この記事を参照している記事
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