パリ・ルオー財団特別企画展 I LOVE CIRCUS 【パナソニック 汐留ミュージアム】
前回ご紹介したお店でお茶した後、新橋のパナソニック 汐留ミュージアムで「パリ・ルオー財団特別企画展 I LOVE CIRCUS」を観てきました。

【展覧名】
パリ・ルオー財団特別企画展 I LOVE CIRCUS
【公式サイト】
http://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/12/121006/
【会場】パナソニック 汐留ミュージアム
【最寄】JR/東京メトロ 新橋駅 都営大江戸線汐留駅
【会期】2012年10月6日(土)~2012年12月16日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日16時半頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
夕方に行ったこともあってか空いていました。しかし閉館が迫っていたので若干早足での鑑賞となりました。
さて今回はジョルジュ・ルオーとサーカスについての展示です。このミュージアムではよくルオーの展示をやっている印象(というか数ヶ月前にやってたばかり)ですが、この展示では特にルオーがよく題材としたサーカスに焦点を当てた内容となっていました。3つの章に分かれた構成でしたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
参考記事:
ジョルジュ・ルオー 名画の謎 展 (パナソニック 汐留ミュージアム)
ルオーと風景 (パナソニック電工 汐留ミュージアム)
ユビュ 知られざるルオーの素顔 (パナソニック電工 汐留ミュージアム)
<第1幕◆悲哀─旅まわりのサーカス 1902-1910 年代>
まずは初期のサーカスについての作品のコーナーです。ルオーは幼少期からサーカスの世界に心奪われていたようで、道化師の姿がルオーの作品に初めて登場したのは1902年という極めて早い時期だそうです。それ以来ルオーは絶えずサーカスを描き続けたそうで、サーカスに通い、機会があれば移動サーカスも見て回ったようです。しかし、ルオーが描いたのは華やかなスペクタクルではなく、場末の貧民街に生きる人々の勇気・忍従・孤独・悲哀などだったようで、ここにはそうした作品が並んでいました。
まずはシルク・フェルナンド(シルク・メドラノ)のポスターなどがありました。これはルオーが好きだったモンマルトルのサーカスで、後のほうで詳しく説明されていました。
ジョルジュ・ルオー 「曲馬団の娘」
耳の辺りに手をあててサーカスの格好をしている曲馬師の娘を描いた作品です。控え室なのか、佇むような感じで顔はしかめっ面に見えます。水彩画ですが荒々しいタッチで重厚な印象を受けました。華やかな舞台とは裏腹の苦悩が感じられます。
この辺は道化師や客寄せの作品が並んでいました。
ジョルジュ・ルオー 「軽業師 VII」
うつむいて両手で頭を抱えるようポーズの軽業師を描いた作品です。かなり簡略化され、ぐにゃっと曲がった腕と虚ろな黒い顔が異様な感じで、顔は哀しみの表情のように見えます。黒く太い輪郭線が使われルオーらしい作風のように思いました。
ジョルジュ・ルオー 「タバランにて(シャユ踊り)」 ★こちらで観られます
右足を高く蹴り上げる「シャユ踊り」をしている踊り子を描いた作品で、これはモンマルトルのバルー・タバランという店の中のようです。反り返った足と見上げるような目線のせいか高々と上がった感じで、勢いあるタッチで動きがありました。全体的に深い青が使われているのも印象的な作品でした。
この章には他に自画像のコーナーもありました。ルオーは道化は自分自身であり人間の象徴であると考えていたようです。
<第2幕◆喝采─舞台を一巡り 1920-1930 年代>
ルオーは1917年にアンブロワーズ・ヴォラールと専属契約を結ぶと、当時 社交場となっていた華やかなサーカスに通うようになったそうです。(ヴォラールはサーカスのボックス席を所有していて、画家たちに提供していた) そしてルオーはそのスペクタクルから「色・形・ハーモニー」という自身の芸術の重要な要素を発見し、1920年以降の作品では「色・形・ハーモニー」がより一層強調されるようになりました。ここにはそうした時代の作品が並んでいました。
この章の最初あたりで絵画作品のある部屋と資料などの部屋に分かれていたので、資料から観ていきました。サーカス風の凝った部屋の中では映像が流され、当時の様子を説明していました。また、その奥の部屋は当時の写真や雑誌、プログラム、などが展示されていて、壁に開いた穴を覗きこむという変わった趣向となっていました(見世物小屋みたいな感じ?) ルオーがよく通った庶民的なシルク・フェルナンド(シルク・メドラノ)の他に、当時唯一の常設サーカスのシルク・ディヴェール(冬のサーカス)、シャンゼリゼ通りのエレガントなシルク・デデ(夏のサーカス)など様々なサーカスがパリにはあったようです。その先の部屋にも招待状やレコードなどが展示されていて当時の流行具合を伺わせました。
一通りサーカスの資料展示を観た後、再び絵画作品を見て回りました。
ジョルジュ・ルオー 「自分の顔をつくらぬ者があろうか?」(『ミセレーレ』第8図に基づく類作)
やや首を傾げた感じでうつろな顔をした人物が描かれた作品です。頬がこけていてボーっとしているような表情が絶望しているようにすら感じられ、悲哀が現れているようでした。中々印象深い表情です。
ジョルジュ・ルオー 「ピエロ」
窓辺に座るピエロの横向きの肖像で、その背景の窓の外にはルオーがよく描く塔があり、聖書の風景となっているようです。非常に厚塗りされていてざらついた質感で、横から見るとその凹凸がよく分かります。その色合いのせいか明るい印象を受けました。
解説によると、この作品は1937年のパリ万国博覧会の際にパリ市がルオーから直接購入したのだとか。
この辺はピエロの作品が多かったかな。「流れる星のサーカス」という本や「サーカスを描いた画家たち」という新進作家の展覧会のカタログなどもありました。
ジョルジュ・ルオー 「小さな女曲馬師」
真横を向く馬に乗った青いスカートの少女(曲馬師)を描いた作品です。こちらも厚塗されてざらついていて重厚さもあるのですが、少女の雰囲気のためかその表情はよく観えなくてもどこか可憐な印象を受けました。
この辺は女曲馬師の作品が並んでいました。横向きの似たような構図の作品が並びます。
ジョルジュ・ルオー 「曲芸師(『パリの情景』[エミール・ポール版])」
異常に長い手(足より長い)の男性が両手を挙げている様子を描いた作品です。これはジャグリングをしているそうですが、投げているものは描かれていません。また、このポーズはキリスト教美術の伝統的な「オラント(祈り)」のポーズらしく、劇的な印象を受けました。
この辺には似た構図の作品がいくつか展示されていました。
ジョルジュ・ルオー 「曲馬団の女王(サバの女王)」
冠にような飾りをつけた女性の肖像で、目を見開き歯を見せる表情をしています。それが威嚇するような顔に見えて凄い形相です。太い輪郭と力強い色合いで表現されていることもありインパクトがありましたw
ジョルジュ・ルオー 「傷ついた道化師」 ★こちらで観られます
ルオーにしては大きめの作品で、3人の帽子をかぶったサーカスのメンバーが描かれています。これは傷ついた道化師を2人が家まで連れて帰っているところのようで、頭上には月が浮かんでいます。強い色合いと荒々しいタッチで描かれているのですが、不思議と静かな雰囲気がありました。解説によると、これはキリスト教が主題の「エクソドゥス(故郷を追われる流浪の人々)」と同じ構図で描かれているそうで、ちょっと意味深な感じでした。
ジョルジュ・ルオー 「小さな家族」
こちらも大きめの作品で、部屋の中で三人のサーカスの男たちがくつろいでいる様子が描かれています。お互いに話しながら安らかな一時を過ごしているようで、穏やかな印象です。ここまで観た悲哀のある作品とは違った雰囲気の作品でした。
<第3幕◆記憶─光の道化師 1940-1950 年代>
最後は晩年のコーナーです。ルオーの晩年の道化師は、愛と犠牲を体現するキリスト的な人物像と一体化していったそうで、後年になるにつれ色彩は輝きを増し、最後は光のなかに融解していくような感じになったようです。特に1950年以降はオレンジや黄色など一層鮮やかな暖色系が登場し、色彩の交響曲と言われる一連の生命の賛歌へと到達したそうです。
それでもルオーはテーマを変えることなく、道化や踊り子を描き続けたそうで、やがて主題として特別な意味を持つ彼らの表現は顔だけに集約し、そのほとんどが正面向きに描かれたそうです。ここにはそうした時期の作品が並んでいました。
ジョルジュ・ルオー 「アルルカンの顔」
正面を向き歯を見せて笑っているピエロを描いた作品で、背景には月のようなものが描かれています。全体的に黄色っぽい画面で、かなり凹凸があり質感が独特です。その色合いの明るさや表情から、喜びが感じられるように思いました。
ジョルジュ・ルオー 「貴族的なピエロ」
腰に手を当てて正面を向くピエロを描いた作品で、青い服を着ていて、背景には太陽が描かれています。その色合いの鮮やかさと相まって、非常に堂々とした雰囲気の理知的な人物像で、確かに貴族的な気高さを感じます。解説によるとこのピエロには4つのボタンがあるそうで、一説では特別なピエロにだけ4つボタンが描かれたそうです。ルオーが道化師をキリストのように崇高なものとして描いていたのが伺えるような作品でした。
この隣にもよく似た表情のピエロの作品がありました。
ジョルジュ・ルオー 「うつろな夢」
やや横向きの男性の顔を描いた作品で、これは1920年代の自画像から構図を取ったそうです。やや抑えた色味で、ちょっと含みのある微笑みを浮かべていて、これは1940年代のルオーの道化師の特徴のようです。また、光と影の色彩の巧みさが後年のルオーらしいとも解説されていました。
ということで、ルオーがサーカスの絵に込めたもののみならず、この時代のサーカスについても詳しく知ることが出来ました。ルオー以外にもサーカスを題材にした作品を残した画家は多いので、これは貴重な機会でした。もう会期も残り少ないですが、ルオーが好きな方はチェックしてみて下さい。
おまけ:
このミュージアムの前で行われている毎年恒例のイルミネーション。飾り付けも毎年大体同じかな。



参照記事:★この記事を参照している記事

【展覧名】
パリ・ルオー財団特別企画展 I LOVE CIRCUS
【公式サイト】
http://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/12/121006/
【会場】パナソニック 汐留ミュージアム
【最寄】JR/東京メトロ 新橋駅 都営大江戸線汐留駅
【会期】2012年10月6日(土)~2012年12月16日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日16時半頃です)】
混雑_1_2_3_④_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
夕方に行ったこともあってか空いていました。しかし閉館が迫っていたので若干早足での鑑賞となりました。
さて今回はジョルジュ・ルオーとサーカスについての展示です。このミュージアムではよくルオーの展示をやっている印象(というか数ヶ月前にやってたばかり)ですが、この展示では特にルオーがよく題材としたサーカスに焦点を当てた内容となっていました。3つの章に分かれた構成でしたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
参考記事:
ジョルジュ・ルオー 名画の謎 展 (パナソニック 汐留ミュージアム)
ルオーと風景 (パナソニック電工 汐留ミュージアム)
ユビュ 知られざるルオーの素顔 (パナソニック電工 汐留ミュージアム)
<第1幕◆悲哀─旅まわりのサーカス 1902-1910 年代>
まずは初期のサーカスについての作品のコーナーです。ルオーは幼少期からサーカスの世界に心奪われていたようで、道化師の姿がルオーの作品に初めて登場したのは1902年という極めて早い時期だそうです。それ以来ルオーは絶えずサーカスを描き続けたそうで、サーカスに通い、機会があれば移動サーカスも見て回ったようです。しかし、ルオーが描いたのは華やかなスペクタクルではなく、場末の貧民街に生きる人々の勇気・忍従・孤独・悲哀などだったようで、ここにはそうした作品が並んでいました。
まずはシルク・フェルナンド(シルク・メドラノ)のポスターなどがありました。これはルオーが好きだったモンマルトルのサーカスで、後のほうで詳しく説明されていました。
ジョルジュ・ルオー 「曲馬団の娘」
耳の辺りに手をあててサーカスの格好をしている曲馬師の娘を描いた作品です。控え室なのか、佇むような感じで顔はしかめっ面に見えます。水彩画ですが荒々しいタッチで重厚な印象を受けました。華やかな舞台とは裏腹の苦悩が感じられます。
この辺は道化師や客寄せの作品が並んでいました。
ジョルジュ・ルオー 「軽業師 VII」
うつむいて両手で頭を抱えるようポーズの軽業師を描いた作品です。かなり簡略化され、ぐにゃっと曲がった腕と虚ろな黒い顔が異様な感じで、顔は哀しみの表情のように見えます。黒く太い輪郭線が使われルオーらしい作風のように思いました。
ジョルジュ・ルオー 「タバランにて(シャユ踊り)」 ★こちらで観られます
右足を高く蹴り上げる「シャユ踊り」をしている踊り子を描いた作品で、これはモンマルトルのバルー・タバランという店の中のようです。反り返った足と見上げるような目線のせいか高々と上がった感じで、勢いあるタッチで動きがありました。全体的に深い青が使われているのも印象的な作品でした。
この章には他に自画像のコーナーもありました。ルオーは道化は自分自身であり人間の象徴であると考えていたようです。
<第2幕◆喝采─舞台を一巡り 1920-1930 年代>
ルオーは1917年にアンブロワーズ・ヴォラールと専属契約を結ぶと、当時 社交場となっていた華やかなサーカスに通うようになったそうです。(ヴォラールはサーカスのボックス席を所有していて、画家たちに提供していた) そしてルオーはそのスペクタクルから「色・形・ハーモニー」という自身の芸術の重要な要素を発見し、1920年以降の作品では「色・形・ハーモニー」がより一層強調されるようになりました。ここにはそうした時代の作品が並んでいました。
この章の最初あたりで絵画作品のある部屋と資料などの部屋に分かれていたので、資料から観ていきました。サーカス風の凝った部屋の中では映像が流され、当時の様子を説明していました。また、その奥の部屋は当時の写真や雑誌、プログラム、などが展示されていて、壁に開いた穴を覗きこむという変わった趣向となっていました(見世物小屋みたいな感じ?) ルオーがよく通った庶民的なシルク・フェルナンド(シルク・メドラノ)の他に、当時唯一の常設サーカスのシルク・ディヴェール(冬のサーカス)、シャンゼリゼ通りのエレガントなシルク・デデ(夏のサーカス)など様々なサーカスがパリにはあったようです。その先の部屋にも招待状やレコードなどが展示されていて当時の流行具合を伺わせました。
一通りサーカスの資料展示を観た後、再び絵画作品を見て回りました。
ジョルジュ・ルオー 「自分の顔をつくらぬ者があろうか?」(『ミセレーレ』第8図に基づく類作)
やや首を傾げた感じでうつろな顔をした人物が描かれた作品です。頬がこけていてボーっとしているような表情が絶望しているようにすら感じられ、悲哀が現れているようでした。中々印象深い表情です。
ジョルジュ・ルオー 「ピエロ」
窓辺に座るピエロの横向きの肖像で、その背景の窓の外にはルオーがよく描く塔があり、聖書の風景となっているようです。非常に厚塗りされていてざらついた質感で、横から見るとその凹凸がよく分かります。その色合いのせいか明るい印象を受けました。
解説によると、この作品は1937年のパリ万国博覧会の際にパリ市がルオーから直接購入したのだとか。
この辺はピエロの作品が多かったかな。「流れる星のサーカス」という本や「サーカスを描いた画家たち」という新進作家の展覧会のカタログなどもありました。
ジョルジュ・ルオー 「小さな女曲馬師」
真横を向く馬に乗った青いスカートの少女(曲馬師)を描いた作品です。こちらも厚塗されてざらついていて重厚さもあるのですが、少女の雰囲気のためかその表情はよく観えなくてもどこか可憐な印象を受けました。
この辺は女曲馬師の作品が並んでいました。横向きの似たような構図の作品が並びます。
ジョルジュ・ルオー 「曲芸師(『パリの情景』[エミール・ポール版])」
異常に長い手(足より長い)の男性が両手を挙げている様子を描いた作品です。これはジャグリングをしているそうですが、投げているものは描かれていません。また、このポーズはキリスト教美術の伝統的な「オラント(祈り)」のポーズらしく、劇的な印象を受けました。
この辺には似た構図の作品がいくつか展示されていました。
ジョルジュ・ルオー 「曲馬団の女王(サバの女王)」
冠にような飾りをつけた女性の肖像で、目を見開き歯を見せる表情をしています。それが威嚇するような顔に見えて凄い形相です。太い輪郭と力強い色合いで表現されていることもありインパクトがありましたw
ジョルジュ・ルオー 「傷ついた道化師」 ★こちらで観られます
ルオーにしては大きめの作品で、3人の帽子をかぶったサーカスのメンバーが描かれています。これは傷ついた道化師を2人が家まで連れて帰っているところのようで、頭上には月が浮かんでいます。強い色合いと荒々しいタッチで描かれているのですが、不思議と静かな雰囲気がありました。解説によると、これはキリスト教が主題の「エクソドゥス(故郷を追われる流浪の人々)」と同じ構図で描かれているそうで、ちょっと意味深な感じでした。
ジョルジュ・ルオー 「小さな家族」
こちらも大きめの作品で、部屋の中で三人のサーカスの男たちがくつろいでいる様子が描かれています。お互いに話しながら安らかな一時を過ごしているようで、穏やかな印象です。ここまで観た悲哀のある作品とは違った雰囲気の作品でした。
<第3幕◆記憶─光の道化師 1940-1950 年代>
最後は晩年のコーナーです。ルオーの晩年の道化師は、愛と犠牲を体現するキリスト的な人物像と一体化していったそうで、後年になるにつれ色彩は輝きを増し、最後は光のなかに融解していくような感じになったようです。特に1950年以降はオレンジや黄色など一層鮮やかな暖色系が登場し、色彩の交響曲と言われる一連の生命の賛歌へと到達したそうです。
それでもルオーはテーマを変えることなく、道化や踊り子を描き続けたそうで、やがて主題として特別な意味を持つ彼らの表現は顔だけに集約し、そのほとんどが正面向きに描かれたそうです。ここにはそうした時期の作品が並んでいました。
ジョルジュ・ルオー 「アルルカンの顔」
正面を向き歯を見せて笑っているピエロを描いた作品で、背景には月のようなものが描かれています。全体的に黄色っぽい画面で、かなり凹凸があり質感が独特です。その色合いの明るさや表情から、喜びが感じられるように思いました。
ジョルジュ・ルオー 「貴族的なピエロ」
腰に手を当てて正面を向くピエロを描いた作品で、青い服を着ていて、背景には太陽が描かれています。その色合いの鮮やかさと相まって、非常に堂々とした雰囲気の理知的な人物像で、確かに貴族的な気高さを感じます。解説によるとこのピエロには4つのボタンがあるそうで、一説では特別なピエロにだけ4つボタンが描かれたそうです。ルオーが道化師をキリストのように崇高なものとして描いていたのが伺えるような作品でした。
この隣にもよく似た表情のピエロの作品がありました。
ジョルジュ・ルオー 「うつろな夢」
やや横向きの男性の顔を描いた作品で、これは1920年代の自画像から構図を取ったそうです。やや抑えた色味で、ちょっと含みのある微笑みを浮かべていて、これは1940年代のルオーの道化師の特徴のようです。また、光と影の色彩の巧みさが後年のルオーらしいとも解説されていました。
ということで、ルオーがサーカスの絵に込めたもののみならず、この時代のサーカスについても詳しく知ることが出来ました。ルオー以外にもサーカスを題材にした作品を残した画家は多いので、これは貴重な機会でした。もう会期も残り少ないですが、ルオーが好きな方はチェックしてみて下さい。
おまけ:
このミュージアムの前で行われている毎年恒例のイルミネーション。飾り付けも毎年大体同じかな。



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