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中国 王朝の至宝 (感想後編) 【東京国立博物館 平成館】

今日は前回の記事に引き続き、東京国立博物館の日中国交正常化40周年 東京国立博物館140周年 特別展「中国 王朝の至宝」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。


 前編はこちら

P1070578.jpg


まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 日中国交正常化40周年 東京国立博物館140周年 特別展「中国 王朝の至宝」

【公式サイト】
 http://china-ocho.jp/
 http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1495

【会場】東京国立博物館 平成館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)

【会期】2012年10月10日(水) ~2012年12月24日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 3時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日13時半頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前編では漢の時代までご紹介しましたが、後半の第二会場は唐から宋までの時代のコーナーとなっていました。こちらも前編同様に同時代の2つの地域や国を比較するような感じで構成されています。

 参考記事:
  北京故宮博物院200選 感想前編(東京国立博物館 平成館)
  北京故宮博物院200選 感想後編(東京国立博物館 平成館)
  誕生!中国文明 (東京国立博物館 平成館)


<第四章 南北の拮抗 北朝vs南朝>
漢の後、三国志で有名な魏・蜀・呉の三国時代となり、それを統一して晋が生まれましたが、また分裂して五胡十六国時代という乱世が訪れました。さらにそれを北魏という国が統一したそうで、その後に続く北方民族の諸国を総称して北朝と呼ぶそうです。また、漢民族の王朝は南に逃れて宋(劉宋)・斉・梁・陳といった南朝と呼ばれる国が続いたらしく、ここにはそうした時代の作品が並んでいました。

[清新な北方文化 北朝]
北方民族の政権が興亡を繰り返した五胡十六国の乱世を収束し、439年に華北を統一した北魏は、平城を中心に従来の中国に見られなかった清新な文化を築いたそうです。しかし、その後半期には洛陽へと遷都し急速に漢化の道を歩んでいったようです。

参考3 「石造如来及両脇侍立像」 北朝 東魏時代・6世紀
これは石で出来た仏像で、三尊像形式となっていて左右対称で正面性が強く意識されているそうです。北魏は雲崗石窟などが作られたように仏教が強かったらしく、この品からもそれを伺わせました。

この辺には杯や俑などもありました。

[爛熟の伝統文化 南朝]
華北に北方民族政権が打ち立てられると、漢民族の政権は江南に逃れ建康を拠点に王朝を維持したそうです。先に挙げた宋(劉宋)・斉・梁・陳に加え呉から数えると6つの王朝が続いたことから、六朝とも呼ばれるようです。仏教や外来文化などの要素を取り入れ、漢文化からの脱却の機運も高まっていったそうです。

90 「仙人仏像文盤口壺」 南朝 三国(呉)時代・3世紀
これは三国時代の品で、中央に仏の彫像がついた壺です。壺の側面には羽人や仙草などの中国ならではの文様があり、外来と中国の思想が既に混ざっているようでした。ちょっと変わった意匠も面白いです。

少し先に進むと84「王建之墓誌」という亡くなった人の功績を書いた碑文などもありました。また、ここにも俑や壺が並びます。

91 「楼閣人物神亭壺」 南朝 三国(呉)時代・鳳凰元年(272)
壺の上にミニチュアの楼閣が乗っている品で、側面には蟹や人物を象ったものが彫刻されています。これは墓に埋葬されたものらしく、面白い形で見栄えがしました。

この近くには指輪などの細かい金細工の品も並んでいました。


<第五章 世界帝国の出現 長安vs洛陽>
南北朝の対立は隋によって300年ぶりに再び統一されましたが、僅か40年程度で滅亡し、代わりに唐が支配するようになりました。唐は都を長安に定めて繁栄したのですが、同時期に洛陽も副都として同様の繁栄を見せていたようです。この章ではその2都市についての品が並んでいました。
どうでも良い思いつきですが、戦国→秦→漢と、戦国→隋→唐のパターンは似ているような…w

[絢爛の国際都市 長安]
唐の都である長安は最盛期には100万人もの人口を擁していたそうで、外国人も常時1万人が暮らしているほどの国際色豊かな都市だったそうです。その為、進取の気風に富み、華麗な文化が花開きました。

116 「金剛神坐像」 長安 唐時代・8世紀 ★こちらで観られます
大理石で作られた密教の神仏である金剛神像です。金剛杵を振り上げあぐらをかいた姿で、髪は逆立ち勢いを感じさせます。唐時代は密教が隆盛した様子が伝わってくるようでした。唐の時代に空海らが中国に渡って日本に密教を伝えたので、今でも日本には密教が息づいていることを考えると唐の文化は凄い影響力です。

115 「女性俑」 長安 唐時代・8世紀
緑、青、黄色の3色に彩られた女性の俑で、着物の中で組んだ手の上に盆を載せた姿をしています。解説によると、この藍色の釉薬は唐三彩では珍しいとのことで、確かに青を観る割合は低いように思いました。(唐三彩では緑、赤、黄色をよく見ます)ふっくらした顔立ちで穏やかそうな雰囲気がある俑です。

[聖なる宗教都市 洛陽]
唐王朝の副都に位置づけられた洛陽は、長安の東330kmにあり、長安よりは若干規模が小さいものの、長安と同様の賑わいを見せていました。仏教や道教の信仰熱も大いに高まって、造寺造仏が興隆したそうです。

123 「天王俑」 洛陽 唐時代・8世紀
邪鬼を踏みつけている陶製の3体の仏像(4体対うちの3体)の俑で、この俑は墓を守護する役割をしているそうです。若干作りは大らかですが、強さを誇示するようなポーズに観えて迫力がありました。

洛陽のコーナーにも唐三彩の壺や俑などもありました。この時代に300km程度の距離なら、今までの王朝に比べれば2つの都市の文化は大差ないのかも??

122 「仏坐像」 洛陽 唐時代・8世紀 ★こちらで観られます
これは座っている仏像で、龍門石窟で見つかったものだそうです。解説によると、両肩が張り、胸が分厚く上体はがっしりしているけれど腹は引き締まっているそうで、手足は伸びやかに表現されているようです。唐時代盛期の生動感に富むとのことで、どっしりとした風格がありました。


<第六章 近世の胎動 遼vs宋>
唐が滅びた後、五代十国時代という小国が興亡する時代となり、それを統一したのは宋でした。同じ頃、北方では契丹族の遼が興り宋と対峙したそうです。ここにはそうした時代の作品が並んでいました。

[奔放な北方民族文化 遼]
中国北部の契丹族の遼では北方文化を下敷きとしながら、初めは唐 後に宋から多く吸収すると共に仏教文化の影響も強く受けたそうです。民族的な情感を漂わせつつ、奔放で力強さに溢れる文化を作ったらしく、そう感じさせる品が並んでいます。

 参考記事:
  草原の王朝 契丹 ―美しき3人のプリンセス― 感想前編(東京藝術大学大学美術館)
  草原の王朝 契丹 ―美しき3人のプリンセス― 感想後編(東京藝術大学大学美術館)
  チンギス・ハーンとモンゴルの至宝展 (江戸東京博物館)

134 「銀製仮面」 遼 遼時代・10~11世紀 ★こちらで観られます
金で出来た仮面で、埋葬時に使者の顔に被せられたもののようです。つり上がった目をしていますが安らかな表情に見えるかな。眉まで細かく彫られているのが驚きでした。解説によると、地位によって仮面の素材が違ったそうで、金・銀・銅などが用いられていたようです。独自の文化性を感じる品でした。

137-3 「銀板経」 遼 遼時代・11世紀
銀板に書かれたお経で、漢字がぎっしりと書かれています。何となく読めるところもあるのが面白く、唐などの漢民族の文化からの影響を感じました。近くにはこれを収めた容器もあります。

147 「皮袋形壺」 遼 遼時代・10世紀
遊牧民の使う革袋をモチーフにした白磁の壺です。革袋の縫い目のようなものまであり、ユニークな形をしています。先端が尖った把手が鶏のトサカに見えることから鶏冠壺と呼ばれることもあるとのことでした。

132 「龍唐草文冠」 遼 遼時代・10~11世紀
鍍金された冠で、龍や火焔宝珠、唐草などの文様が打ち出されています。かなり緻密で仏教的な雰囲気があり、仏教信者が使用していたのではないかとのことでした。契丹の仏教への信仰が伝わってきます。

[精神性の漢民族文化 宋]
唐王朝の滅亡後、五代十国の乱世を納め中国内地を統一した宋は「べんけい」に都を定めました。君主の独裁制の元で、士大夫という官僚・知識層が台頭したそうで、各方面で指導的な役割を果たしたようです。また、後半期には北方の女真族の侵略を受けて臨安に都を移して王朝を復興したようです。宋は漢民族の伝統文化を深化させながら深い精神性を備えた新しい境地を切り開いたとのことでした。

151 「阿育王塔」 宋 北宋時代・大中祥符4年(1011) ★こちらで観られます
これは金色の巨大な塔の置物で、高さ120cmもあるそうです。側面には釈迦にまつわる説話がびっしりと彫られていて、水晶や瑪瑙などの丸い玉がふんだんに納められています。塔の王様とも呼ばれるそうで、圧倒的な存在感がありつつ緻密で華麗な雰囲気がありました。これは今回の展示の中で間違いなく一番の見所だと思います。

この辺には仏塔や舎利容器、小さな仏像、お経、青磁などが並んでいました。


ということで、最後の最後で凄い品が待っていました。今回はあまり興味の無い品も多かったですが、これは観ておいて良かったかな。 中国の歴史や文化もよく分かったので参考になりました。 …とは言え、まだまだ来年も中国関連の展示が続くのでもういい加減にしてほしいですがw


 参照記事:★この記事を参照している記事
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Comment
こんばんわ
中国展、三宮で僕もいってきました。
超一級の資料ばかりで堪能することができました。
たしかに中国展ばかりでは食傷気味になりますが、
異文化とのふれあいはいつも楽しいものです。
Re: こんばんわ
>雨男博士さん
コメント頂きましてありがとうございます。
この展示は巡回で今は関西なんですね。
中国文明のダイジェスト的な感じで歴史を俯瞰できるし、
同じ中国でも違いがわかるのは良かったです。

今は東京では王羲之をやっているのですが、それで中国の展示も一段落かな。
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