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ゴーギャン展2009 【東京国立近代美術館】

竹橋でお昼を食べた後、この日の目的地、東京国立近代美術館へゴーギャン展2009を観にいきました。 実はゴーギャンは大して好きではなかったりしますが、これだけ良い作品が集まるのは滅多に無いと思い、とりあえず行っておくかーくらいの勢いで行きましたw
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【展覧名】
 ゴーギャン展2009

【公式サイト】
 http://www.gauguin2009.jp/
 http://www.momat.go.jp/Honkan/gauguin2009/index.html

【会場】東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
【最寄】東京メトロ東西線 竹橋駅
【会期】2009年7月3日(金)~9月23日(水)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
 ※写真はコンパクトデジカメで撮影しました。


【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
50点程度と小規模な展示だったにも関わらず結構混んでいて、観るのに列を組んでいる感じでした。(入場制限するほどではなかったです。) 名前が有名な割りにゴーギャンの作品は国内ではあまり多く観られないせいかな。

超ざっくりと経歴を説明すると、パリで株式仲買人をしていたゴーギャンは34歳で画家になることを目指し、印象派としてスタートします。ゴッホの呼びかけに応じて、ゴッホと共同生活を始めるもすぐに破綻。その後、文明から離れてタヒチに行きます。そこで独自の境地を開いた後、一度フランスに戻りますがあまり評価されず、版画を使ってタヒチ作品をアピールします。結局、またタヒチに行って、さらに未開の島へと行きますがそこで体調が悪化してしまい生涯を閉じます。・・・とこういう感じです。今回の展示は印象派時代から晩年までちょこっとずつありましたが、作品の解説がメインで彼自身の生涯についてはあまり多くの説明は無かったと思います。40歳を超えた頃に13歳の現地妻とか、波乱万丈の人生にも説明が欲しいところなんですけどねw


章ごとに気に入った作品をご紹介。なぜかWEB上の章の名前とリストの章の名前が違うので、両方明記しておきます。上段がWEB、下段がリストの名前です。

<1章 内なる「野性」の発見> (WEBでの章の名前)
<1章 野生の開放> (リストでの章の名前)
「水浴の女たち」 ★こちらで観られます
国立西洋美術館所蔵の作品です。薄い緑の海で手を取り合う4人の女性の絵で、のんびりした雰囲気を持っいます。まだ印象派っぽい作風ですが自然と純朴な水浴が主題となっていて、既に脱文明的なニュアンスを感じました。

「馬の頭部のある静物」 ★こちらで観られます カ行→ゴーガンです。
これもブリヂストン美術館でよく観る作品ですが、ゴーギャン作品が一堂に会すると、だいぶ他と趣が違うように観えます。まだ色彩が淡くて筆致も繊細ですね。。。 ゴーギャンも日本の浮世絵や中国から影響を受けていますが、この作品には団扇や中国人形が描かれていて、生活の一部になっていたことが伺えます。

「アリスカンの並木路、アルル」 ★こちらで観られます
せっかくなので、普段、都内で観られる作品をもう1枚ご紹介。これは損保ジャパン東郷青児美術館の常設作品です。アルルはゴッホとの短い共同生活をした土地で、貴重な時期の作品と言えます。この作品ではオレンジや黄色が目立つようになりました。もう印象派を離れて、まるでフォーヴみたいな色使いになりつつあるように思います。ゴーギャン独特の平坦な色面は浮世絵の影響らしいです。

「洗濯する女たち、アルル」 ★こちらで観られます
これもゴッホとの共同生活中の作品です。川の曲線、丸まった姿勢の女性たち、それに呼応するような丸っこい積みワラ。。。ということで曲線が多い作品です。そういうシンフォニーのような画面に突如左下に頭だけよぎる女性が現れます。 まるでシャッターを押した瞬間に横切られたような作品ですw あえて協和性を乱すところが面白いです。

「海辺に立つブルターニュの少女たち」 ★こちらで観られます
かなりタヒチ時代の作風に近くなってきていて、タヒチへの予感を感じます。 画面いっぱいに2人の女性が立っていますが、その画面構成を含めて、かなり原始(プリミティブ)な感じの力強さがあります。色合いも濃くなってきてすでに印象派の雰囲気はないですね。

「異国のエヴァ」「かぐわしき大地」 ★こちらで観られます
「異国のエヴァ」は次の章の「かぐわしき大地」と比較しながら観ていただきたい作品。この2作品に出てくる女性は同じポーズをとっています。異国のエヴァは少し頼りない感じがしますが、タヒチ時代の「かぐわしき大地」の女性はどっしりとしていて生命力に溢れているようです。タヒチに行ってからの作風は何しろ力強い印象があります。
ゴーギャンはアダムとイブ(エヴァ)の話や失楽園に大変関心があったようで、しばしばそのシーンが描かれています。「かぐわしき大地」の女性の顔のすぐ左には赤い羽の生えたトカゲ?がいますが、これが蛇で、女性はエヴァを表しているようです。

「純潔の喪失」 ★こちらで観られます
タヒチに旅立つ直前に描かれた作品。裸の女性が横たわり、狐っぽい動物が寄りかかっています。女性は手に花を持っているのですが、この表情や狐から純潔の喪失というタイトルを暗に示しているかのようです。 なぜか真っ赤な草原や、向こうの道から女性を眺めている人々などどこか不安な雰囲気が漂います。 不思議というか不気味な感じすらしました。。。この作品も平坦な感じがします。

<2章 熱帯の楽園、その神話と現実> (WEBでの章の名前)
<2章 タヒチへ> (リストでの章の名前)
タヒチ=文明化していない楽園と思ってきたものの、この時代でも文明化の波は着ていたようです。しかし、失われつつある独特の文化に触れて作品に取り入れ、明らかに作品に力強さとダイナミックさが増した時期だと思います。

「かぐわしき大地」
 これは上記の「異国のエヴァ」をお読みください。

「小屋の前の犬、タヒチ」 ★こちらで観られます
この頃の作品はやたらと、原色に近い赤と黄土色が多い!w 平坦な感じもさらに強くなっている気がします。(これが好みじゃない所以ですw) 素朴というよりはプリミティブという言葉が合うんじゃないかな。 ところで、ゴーギャンの作品には犬がよく出てきますが、これはゴーギャン本人を表しているとのことでした。のんびりしてますね。

「エ・ハレ・オエ・イ・ヒア(どこへ行くの?)」 ★こちらで観られます
これは次の彫像の「オヴィリ」と一緒に観て欲しい作品。同じポーズをしています。犬を抱いているのにかなり不自然な抱き方をしています。後ろで「どこへ行くの?」と見ている人に見えないように、こっそり犬を隠してるのかな?なんて思いながら観ていました。この犬は例によってゴーギャン自身のようです。そう考えると、この女性と秘密の関係なのかな?なんて妄想は膨らみますw なお、タイトルはタヒチ語で「どこへ行くの?」という意味らしいです。

「オヴィリ」 ★こちらで観られます
宇宙人みたいな原始的な偶像のような。。。奇妙な怪物の彫像です、狼っぽいのを踏みつけて子供を抱えています。野蛮なる自分のことを表現しているのかもしれません。このオヴィリはゴーギャンの墓の上にも置かれているそうです。

「パレットを持つ自画像」
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この写真は常設展にあったテレビ解説の画面を撮影しています。(常設展は許可を貰えば一部の作品以外は撮影可能です)
中世の画家か聖人か?という雰囲気をたたえています。この作品が一番好みかも。 穏やかな眼差しと厳格さが同居しているように感じました。実際のゴーギャンはこの頃は貧乏でカツカツの生活だったようです。

<「ノアノア」連作版画>
ゴーギャンはタヒチからパリに戻りますが、パリでの彼のタヒチ作品の評価は低かったようです。そこで彼は版画で魅力を伝えよう!と(確かそんな理由でした。うろ覚えですw)版画製作に取り組みました。それがこのノアノアの一連の作品です。 ノアノアっていうのは「かぐわしい」って意味です。
この版画には3つ種類があって以下のようになります。
 【自刷り】 自分で刷った1点もの。あえてぼやけた感じに仕上がっています。
 【ルイ・ロワ版】 黄色や赤が鮮やかな刷り
 【ポーラ版】 モノクロで彫り目がくっきり現れる刷り。細部まで分かりやすい
この3種類が全部揃った作品もあり、それぞれの違いをみることができます。この展示の50作品程度のうち半分くらいがこの版画でした。

「ナヴェ・ナヴェ・フェヌア(かぐわしき大地)」 ★こちらで観られます
これは自刷りです。これだけだとわかりづらいですが若干ぼやけた感じがしました。

「マナオ・トゥパパウ(死霊が見ている)」
13歳現地妻を描いた作品。それってロリコンなのではw タヒチでは夜は死者たちの世界と考えられていたらしく、丸くなっておびえているところを描かれています。胎児のような格好で、周りには円の絨毯がしかれていてまるで子宮を描いているかのようでした。

<3章 南海の涯(は)て、遺言としての絵画> (WEBでの章の名前)
<3章 漂泊のさだめ> (リストでの章の名前)
結局、パリの居場所を失ったゴーギャンはもう帰らないつもりで再度タヒチに向かいます。そこでまた貧乏生活していたところに、娘の死の知らせが舞い込み、絶望したゴーギャンは自殺すらも考えたようです。そしてその遺言として最高傑作「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」を描くことになります。その後、さらなる未開の地を求めていくのですがそこで最後を迎えたようです。

「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」 ★こちらで観られます
リンク先にかなり詳しい解説があるので、それを読めばおおよそのことがわかると思いますが、一言で言えばこの作品は彼の集大成です。今まで使ってきたモチーフやポーズを駆使し、右側から左側に向かって誕生から死、再生までを描いています。
この絵を観て真っ先に目に付くのが林檎をもぎ取っている人と青い女神像です。もぎ取ってる人は生命感があるので、これが命の象徴なのかな?と思いながら見ていました。 逆にボーっと浮き上がるような青色の女神は死を連想しました(実は再生の神らしいです) 1枚の中に彼のすべてを注ぎ込み、生死という根源的なテーマを扱ったこの作品は、文句無く最高傑作だと思います。139cm×374cmという作品の大きさからも圧倒的なオーラが漂っていました。ビデオやボードで詳しい解説を見られるので、深く理解できると思います。

「ファア・イヘイヘ(タヒチ牧歌)(タヒチの田園)」  ★こちらで観れます
名前の表記を統一してくれw これは「我々は~」からの派生作品らしいです。ファア・イヘイヘというのはめかしこむことを意味してたと思います。なんか一気に作風が変わったような…。昔の壁画を思わせるような色調に変わっているように感じました。

「浅瀬(逃走)」 ★こちらで観れます
青い馬に乗っているのは死霊らしいです。後ろの腕をあげて馬に乗っている若者を死の世界に導いているのでしょうか。若者の左上には「かぐわしき大地」にも出てきた羽のあるトカゲが飛んでいます。どこか爽やかさも感じるこの作品は彼が既に死を覚悟してたのでは?という感じすらうけました。

「女性と白馬」
紅葉のような赤い木々、3人の女性は白い服を着ていたり白馬に載っています。そして一際目を引くのが丘の上にある白い十字架です。どことなく死を暗示するものの、穏やかさを感じるこの作品から、完全に死を迎え覚悟があったのではと思いました。結局このあたりが最晩年の作品となり、この丘に埋葬されたようです。墓に前述のオヴィリが置かれているようです。

参考;ヒヴァ=オア島のゴーギャンの墓


ということで、大して好きでもないと言ってた割には、「我々は~」を観られただけでも価値がある内容だと思いました。色々と知らなかったこともあったので収穫は大きいかな。 ゴーギャン好きの方は是非いってみてください。

おまけ:常設の2Fで、平山郁夫氏が浮世絵で「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」を再現するというビデオを共に、これが飾られていました。観にいかれた際は、こちらも合わせてご覧下さい。
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この後、常設展で許可をとって写真を撮ったのですが、著作権に抵触する可能性があるとの注意書きがあるので残念ながら公開は見送ります。。。以前撮った美術館周辺の写真はこちら

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