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Fun with Collection 2012 彫刻の魅力を探る 【国立西洋美術館】

前回ご紹介した「手の痕跡 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描」を観た後、下階で同時開催(ロダンとブールデル展のチケットが必要)の「Fun with Collection 2012 彫刻の魅力を探る」も観てきました。

P1070878.jpg

【展覧名】
 Fun with Collection 2012 彫刻の魅力を探る

【公式サイト】
 http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2012fun.html

【会場】国立西洋美術館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)


【会期】2012年11月3日(土・祝)~2013年1月27日(日) 
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日13時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_②_3_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
こちらはロダンとブールデルの展示と続きになっているので、混み具合もほぼ同じで快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は美術品が並ぶ展示とは趣きが異なっていて、普段見ている彫刻はどのように作られているのかを知ることができる内容となっていました。彫刻作品は同じ銅像がいくつもあったり、同じものが大理石になっていたりと疑問に思われる方もいらっしゃるかと思いますが、この展示ではその謎を分かりやすく解明してくれます。こちらでも写真を撮ることができましたので、何枚か使って簡単にご紹介して置こうと思います。


入口に素材の違う4つの頭部像が並んでいました。
P1070886.jpg
右から順に粘土原型、テラコッタ(粘土でつくった素焼きの焼き物)、ブロンズ、大理石となります。


制作はまずはデッサンから始まるようです。
P1070890.jpg
デッサンを行うことでモデルの造形的特徴を理解・把握し整理するのだとか。上の階でロダンとブールデルも素描は大事にしていたと解説を読んできたばかりなので納得。

そして粘土。こちらで原型となる像を作っていきます。
P1070887.jpg
大まかに肉付けした後、細かい表情をつけていくそうです。升目状の跡はこの後の工程によるものです。
この辺にはヘラなどの道具も展示されていました。

続いては粘土で出来た塑像の型(雌型)を取る作業です。
P1070895.jpg
塑像の前と後ろで大きく2つに分け、さらに細かく分割した線にそって「切り金」という薄い金属版を差し込んでいきます。(先ほどの粘土像の升目状の後は切り金の跡のようです。)そして水で溶いた石膏を隅々まで行き渡らせ、補強や細かい調整を行なってこうした雌型ができます。

その後は雌型を使って石膏像を作っていく工程が紹介されていました。
P1070898.jpg
石膏像はまず雌型から石膏を外しやすくするために離型剤を雌型に塗った後、石膏を溶いて雌型に流しこみ、さらに石膏に浸したスタッフを全体に貼り付けて補強するようです。雌型を合わせて固定して1日待って乾かし、乾いたら雌型を外していきます。
こちらの像だと雌型の線が見えるのですが、通常はこれを削るのに対して、ロダンやブールデルの作品にはこれを残しているものもあるそうです。

続いてこちらはテラコッタ。
P1070901.jpg
テラコッタも石膏と同様に雌型を使って作られていて、雌型を合わせて内側から粘土を貼っていき、乾いて少し硬くなったら雌型を剥がし、そしてガス窯で焼き上げます。テラコッタは結構色が独特で好みです。

そしてこれは大理石へのコピー。
P1070905.jpg
大理石はまず石切り(石割り)を行い適度な大きさにして、その後は「星取り」という地道な作業を行いながら作っていきます。この写真の星取り機で高さ・位置を記録し、それと見比べながら彫っていくようです。気が遠くなる工程ですね…。最後にヤスリやサンドペーパーで仕上げていきます。

こちらはロスト・ワックス法というロウを使う技法で作っているブロンズ像。先ほどの雌型を使って蝋原型を作った後、蝋原型に細かい修正を行い、こうした「湯道」というブロンズの通り道が作られます。
P1070920.jpg
さらにこれを鋳型材で覆い鋳型を作り、鋳型の周囲に焼成窯を築いて焼成していきます。この辺の過程は結構複雑なので文章では説明しきれませんが、映像を観ると様々な工夫が凝らされていて面白かったです。最後に色をつけて完成。

この辺にはそうした作業に使う道具類も展示されていました。また、製作工程の映像を観ると各道具をどのように使っているかも分かりました。


ということで、作品自体はほとんどありませんが、分かりやすくて非常に参考になる内容となっていました。色々素材はありますが、大理石は一番大変そうです…。今後の彫刻鑑賞にも役立つと思いますので、ロダンとブールデル展を観に行かれる方はこちらもじっくり観てくることをお勧めします。



 参照記事:★この記事を参照している記事

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Comment
こんばんは
いつも楽しく拝見させて頂いております。
コメントは初めてかも?ですね。
はじめまして
タイムリーな記事をありがとうございます。
といいますのも~今月末に国立西洋美術館へ行きたいと
予定を立てております。

おかげさまで予習させて頂いているようで
とてもうれしいです^^
静岡県立美術館のロダン館は何度も行ったのですが
こちらは初めてなので楽しみです。
Re: こんばんは
>手打ちそば蕎友館 井出明久さん
コメント頂きましてありがとうございます。
いつもご愛読頂きましてありがとうございます。私もちょくちょく貴サイトを拝見しております^^
こちらの展示はロダンとブールデルの魅力がよく分かる展示となっていました。
ただ、期間は1/27となっているので、その点はご留意ください。

>静岡県立美術館のロダン館
私はこちらに行ったことがないのですが、地獄の門などもある所ですね。
いずれ行ってみたいなあ…。
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