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アーティスト・ファイル2013―現代の作家たち 【国立新美術館】

昨日(日曜)の午後に六本木の国立新美術館で「アーティスト・ファイル2013―現代の作家たち」を観てきました。

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【展覧名】
 アーティスト・ファイル2013―現代の作家たち

【公式サイト】
 http://artistfile2013.nact.jp/
 http://www.nact.jp/exhibition_special/2012/af2013/index.html

【会場】国立新美術館
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅


【会期】2013年1月23日(水)~4月1日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日15時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて自分のペースでゆっくり観ることができました。

さて、今回の展示は毎年恒例の現代アートのグループ展です。昨年は見忘れてしまったのですが、ほぼ毎回観ているので今年も楽しみにしていました。今年は海外作家3人を含む8人の展示で、1人ずつ部屋が分かれていましたので、入口から順に全アーティストの感想を書いていこうと思います。
 参考記事:
  アーティスト・ファイル2011―現代の作家たち (国立新美術館)
  アーティスト・ファイル2010―現代の作家たち (国立新美術館)
  アーティスト・ファイル2009 (国立新美術館)


<ヂョン・ヨンドゥ>
まずは韓国人のアーティストのコーナーです。この人は世界にはリアリティだけではなくファンタジーに満ち溢れていることを表現しているそうで、現実とファンタジーが混在する子供の世界を題材にした作品が展示されていました。それは5~7歳の子供が描いた絵を作家の解釈を入れながら出来る限り実写化するというもので、写真に写ったモデルは子供と大人の間である10代の人々のようでした。

ヂョン・ヨンドゥ 「[ワンダーランド]より お母さんの庭」
黄色や紫、青のフリルのようなものが付いた服を着て踊る少女の写真です。背景には家があり、右側には十字架が草むらに刺さっています。すぐ近くにこれの原画とも言える少女の描いた絵があったのですが、ポーズも含めてよく再現されています。まさに少女の想像の世界を実写化したような作品でした。

ヂョン・ヨンドゥ 「[ワンダーランド]より 白雪姫」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている作品で、数字の0のような形の大きなオブジェの中に裾の長いピンクのドレスの女性(等身もかなり長い)が収まるように立っています。その脇には青い服の男性が驚くようなポーズをしていて、周りには子供たちが女性を取り囲むような感じで女性を見ています。これは白雪姫の場面なのかな?? ファンタジー劇の一場面のような感じで、やはりこれも子供の絵をアーティストならではの解釈を入れて再現していました。

この部屋にはそうした原画と写真のセットの作品が並んでいました。また、次の部屋には老人たちにインタビューする映像作品もありましたが、こちらはいまいち理解出来ませんでしたw


<東亭順>
続いては東亭順(あずまていじゅん)という方のコーナーです。こちらには部屋に段組された大きな木枠があり、そこに中古のシーツを使った絵画?が嵌めこまれて並んでいました。ニスとオイルをたらしこんで滲みを作っているそうで、花がらのシーツなどにぼんやりとした色がつけられています。意外と明るい印象を受け、面白い発想です。しかし、それ以上に驚くのがその後ろにあった作品で、これは無数のピン(数万本?)が壁に刺さっているもので、先ほどのシーツの染みのない部分の形を表しているようです。壁のかなり上のほうにまでピンが打たれていて、恐ろしく手間がかかっているようでした。驚きの作品です。


<國安孝昌>
続いては國安孝昌(くにやすたかまさ)という方のコーナーです。こちらには部屋を覆うほどに細めの丸太と陶ブロックで出来たオブジェが並んでいます。規則正しく渦巻くように置かれ、その飛び出した丸太などから木で出来た龍のようにすら思えました。力強さのある圧巻の作品です。


<中澤英明>
続いては中澤英明(なかざわひであき)という方のコーナーで、このアーティストだけ後半に再登場します。ここには暖色系の無地を背景にした子供の顔を描いた絵画作品が並び、真正面を向いている姿が多いです。それぞれのタイトルは職業や表情、着ている服など端的に特徴を表すようなものとなっていました。

中澤英明 「子供の顔-兵隊さん」
赤いベレー帽と緑の軍服を着た子供を描いた作品です。確かに子供っぽさを感じるのですが、こちらを見る目はどこか落ち着きがあり結構威厳があるように思いました。

中澤英明 「子供の顔-おっさま」 ★こちらで観られます
青いシャツを着たふっくらした顔立ちの坊主頭の子供を描いた作品です。まっすぐこちらを見ているのですが、何故か目の周りにくまのようなものが…。タイトルのように、子供というよりはオッサンといった風貌かなw あまり可愛くないですが、面白い作品でした。


<利部志穂>
続いては(かがぶしほ)という方のコーナーです。ここは部屋全体が作品と言った感じで、頭上に鉄パイプが並び、そこに針金でできた作品が巻き付いていたり、足元には大きな髪を折って作ったような作品が並んでいます。工業製品や不要になったものを使って空間表現しているようで、意味はわかりませんが雑然とした感じに思いました。解説によると、この方は人間の生命よりもずっと長い時間の世界を表現しているそうで、鑑賞者の見つけた形が沢山のものの見え方の1つであるように、人間の存在も長い長い時間の中のほんの一部なのかもしれないとのことでした。


<ナリニ・マラニ>
続いてはインドを代表する女性アーティストのナリニ・マラニという方のコーナーです。この方は現代インドの政治的軋轢や女性の人権問題を始めとする社会問題をテーマにしているそうです。

ナリニ・マラニ 「内在する他者との分裂」 ★こちらで観られます
暗い部屋の中にあるオレンジ地を背景にした14枚のパネルから成る作品で、内蔵や骨、へその緒などの人体を思わせるモチーフと人々が浮遊するように無数に描かれています。ざらついた感じのタッチで生命をテーマにしているのかな? 解説によるとこちらにはインドのミニチュアールや浮世絵のモチーフ、現代の大衆文化的なイメージが描かれ、絵の中に登場する2人の巨大な女性は女神のように崇められたり、でなければ男性社会の中で虐げられ人権を無視される、女性の在り方に憤る作者の希望を託しているのではないかとのことでした。

ナリニ・マラニ 「消失した血痕を探して」
こちらは部屋の中央の頭上に5本の大きな透明のシリンダーが並び、そこに絵が描かれ回転している作品です。部屋の両脇にはプロジェクターがあり、光とアニメーションを映し出しています。インドの神や宗教的なモチーフ、謎の生き物などが登場し、重低音の不穏なBGMと相まって不気味な雰囲気でした。暴力や戦争をイメージしているのかな?


<中澤英明>
ここで再び中澤英明 氏のコーナーがありました。

中澤英明 「子供の顔-一つ目小僧(園児服)」
顔の真ん中に1つ目のある子供の肖像です。瞳は2つあり、白目の部分は赤くなっています。他の子供の肖像は普通の顔なのに、2点だけ1つ目の作品があって、ちょっと不気味w 何故か幼稚園児の服を着ているのも謎でした。何を意図しているのだろう??


<志賀理江子>
続いては志賀理江子(しがりえこ)という方の写真作品が並ぶコーナーです。この方は仙台空港に近い北釜という所で活動しているそうで、海岸で撮影された写真などが展示されていました。暗めの背景に石や人物を撮った大きな写真が、看板のような大きなパネルとなって並び、迷路のように林立する独特の展示方法となっています。それらの写真からは神秘的で土着のシャーマニズムのような雰囲気を感じ、自然と人間の営みを表しているように思いました。

<ダレン・アーモンド>
最後はイギリスのダレン・アーモンドという方のコーナーです。主に2部屋あり、1つ目は暗い部屋の中に映像作品が点在し、ピアノの悲しげな音楽が流れています。映像は老いた女性の顔、社交ダンス?をする人々の足元、噴水のようなものとなっていて、さらに光で風車を形作ったものも展示されています。一見すると何のことか分からなかったのですが、解説によるとこれは作者の祖母が入院している時に作ったものらしく、彼女は朦朧とした意識の中で、若いころに夫とダンスをしたことを思い出し、「早く死んで夫の元に行き、また一緒に踊りたい」と呟いたそうです。また、彼女は新婚旅行でリゾート地を訪れたようで、こちらにある噴水や風車の作品、ダンスなどはそうした思い出を表しているようでした。ダンスを見つめるように展示された祖母の顔の映像はちょっと悲しげで、思い出の中に紛れ込んだような部屋でした。

2つ目の部屋は写真の作品で、世界各地の風景を満月の光で捉えたシリーズが並んでいました。長時間露光で撮っているので結構明るく見えますが、幻想的な写真が並んでいました。

ということで、今年も個性的な作品が並んで楽しむことが出来ました。興味のある方は足を運んでみると面白いかと思います。国立新美術館では来週から第16回文化庁メディア芸術祭(2013年2月13日~2013年2月24日)も開催されますので、一緒に見に行くのも良いかもしれません。
 参考リンク:第16回文化庁メディア芸術祭


 参照記事:★この記事を参照している記事


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