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奇跡のクラーク・コレクション展-ルノワールとフランス絵画の傑作- (感想後編)【三菱一号館美術館】

今日は前回の記事に引き続き、三菱一号館美術館の「奇跡のクラーク・コレクション展-ルノワールとフランス絵画の傑作-」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。


 前編はこちら

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【展覧名】
 奇跡のクラーク・コレクション展-ルノワールとフランス絵画の傑作-

【公式サイト】
 http://mimt.jp/clark/

【会場】三菱一号館美術館
【最寄】東京駅・二十橋前駅・有楽町・日比谷駅

【会期】2013年2月9日(土)~2013年5月26日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(祝日15時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
前編でもルノワールを中心とした印象派のコレクションをご紹介しましたが、後半はアカデミズムを挟んで再び印象派の作品が並ぶ構成となっていました。


<伝統と革新 アカデミズムの画家たち>
こちらは日本ではあまり紹介されないアカデミズムの画家のコーナーです。

47 ジェームズ・ティソ 「菊」
上半分は白や赤、オレンジなどの菊が一面に咲いていて、下半分はしゃがんで植木鉢を直している黄色い帽子とドレスの女性が描かれています。女性はこちらを見上げていて、ちょっと怪訝そうに見えるかなw この画家は女性の華麗な服を繊細かつ鮮やかな色で描いて人気になったそうで、こちらの作品でも精緻に描かれています。また、菊はこの頃のロンドンで流行っていたそうで、大気汚染に負けない強さが人気だったそうです。アカデミスムらしい華やかな雰囲気がありました。

近くにはアンリ・ファンタン=ラトゥールのバラを描いた作品もありました。

42 ウィリアム=アドルフ・ブグロー 「座る裸婦」
洞窟のようなところで膝を曲げて座る(体育座りを崩したような感じ)女性が描かれた作品です。複雑な手足の組み方で、頭には青い布をかぶり、ちょっと物憂げな表情に見えます。非常に理想的な女性美で、解剖学的にも正しく描かれているらしく瑞々しい人体表現となっていました。

41 ジャン=レオン・ジェローム 「蛇使い」
青い装飾的な壁を背景に、身体に大蛇を巻きつけて芸をする裸の少年と、壁にもたれかかってそれを見ている男たち(兵士?)を描いた作品です。細やかに描かれていて実景のように見えますが、これは写真などの資料を参考にトプカプ宮殿の壁とエジプトのモスクの床を組み合わすなどして描かれているそうです。また、人々の着ている物や武器も様々な民族のもので、そもそもトルコには蛇使いの伝統もないとのことでした。とは言え、タイルの装飾の壊れかけた感じや色合いも見事で、異国趣味への憧れが感じられました。


この辺りで下の階へと移動します。


<光の絵画 印象派の画家たち>
続いては再び印象派のコーナーです。

24 カミーユ・ピサロ 「道、雨の効果」
奥へと続く道と、その両脇に建つ家々を描いた作品で、道には男性と犬、向こうからやってくる2人の人物(女性?)などの姿も描かれています。空はどんより暗く、路面は男の姿を反射して、雨が降った感じを受けます。さりげない表現ですが、雨の湿気まで感じられそうなところが好みでした。

この辺にはシスレーの作品などもありました。

28 カミーユ・ピサロ 「ルーアンの港、材木の荷下ろし」
港に停泊する大きな黒い蒸気船を描いた作品で、向かい側にも多くの船が停泊し、それぞれが煙を吐いています。遠くには煙突などもあり、手前の煙、奥の煙、白い蒸気などが揺らめき合っているのが面白い光景です。これだけ色々な煙を描くのは印象派ならではじゃないかな。風の流れまで表現しているような作品でした。

ピサロは新印象主義の点描の作品もありました。


<ドガ 古典と印象派を繋ぐ画家>
続いては、エドガー・ドガのコーナーです。ここは数点ですが、ドガらしい題材の作品が並んでいました。
 参考記事:ドガ展 (横浜美術館)
  
37 エドガー・ドガ 「稽古場の踊り子たち」
横長の作品で、右のほうではベンチに腰掛けてタイツを直す踊り子と、手足を投げ出して休んでいる踊り子が描かれています。左奥の方には窓際で足を挙げてバレエの練習をしている女性たちの姿があり、日常の練習風景といった感じです。やけにモチーフが上の方に寄っているような構図で、踊り子の配置が連続した流れのように見えました。また、華やかな舞台ではなく練習風景を描くという点がドガらしい感じを受けました。

この辺にはドガの自画像や競馬を題材にした作品も並んでいました。


<印象派からポスト印象派へ>
続いては印象派以降の画家のコーナーです。ここも点数は少なめですが、メアリー・カサットやロートレック、モリゾなどが並んでいました。

31 メアリー・カサット 「闘牛士にパナルを差し出す女」
赤いマント?と黒い帽子の闘牛士が、透明なグラスを持った女性と向い合っている様子が描かれた作品です。男性の顔は親しげな感じで、女性を見ているようです。解説によると、これはカサットがスペイン滞在中に描いたものだそうで、土地の風俗が描き表されているとのことです。筆致と暗い色調にベラスケスからの影響があるとのことで、確かに似た雰囲気があるかな。色の明暗が劇的に感じられました。

この辺にはロートレックの油彩や数少ないベルト・モリゾの静物などもありました。


<終章>
最後の章のタイトルはメモするのを忘れていました^^; 最後はルノワールの名品が並ぶコーナーでした。

58 ピエール=オーギュスト・ルノワール 「シャクヤク」 ★こちらで観られます
赤々した沢山の芍薬が花瓶に入っている様子を描いたもので、緑の葉っぱと共に溢れんばかりに生き生きと表現されています。花の赤とピンク、テーブルクロスの白、背景の青など色彩が軽やかかつ豪華で、華麗な印象を受けました。

68 ピエール・オーギュスト・ルノワール 「手紙」
赤いドレスの女性と、沢山の赤い花を乗せた帽子をかぶる白いドレスの女性が並んで座り、赤いドレスの女性は手紙を書いているようです。2人で相談しながら書いているのか、穏やかで仲がよさそうな感じを受けます。背景は赤い水玉に緑の壁で、女性たちの赤や白の服が一層明るく感じられました。

65 ピエール・オーギュスト・ルノワール 「鳥と少女(アルジェリアの民族衣装をつけたフルーリー嬢)」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっている作品で、右手に隼をとめ、左手でカーテンをおさえる少女が描かれています。この子が着ている服はアルジェリアの民族衣装らしく、こちらを見て微笑む表情は非常に可憐でエキゾチックな感じを受けました。解説によると、こちらの少女のモデルはハッキリとはわかっていないようでした。

最後にはボナールも1点ありました。


ということで、見どころの多い展示でした。日本人の好きな印象派、しかも明るく色鮮やかな作品が多いので、美術のことはよく分からないという方にも楽しめる展示ではないかと思います。今季お勧めの展示です。


 参照記事:★この記事を参照している記事

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Comment
アドバイスありがとうございました
クラコレ、行ってみたくなりました。
東京駅にも近く、また憧れのコンドル博士建築の
三菱1号館でもありますから、ぜひ行こうと思います。
学会の疲れを、印象派の絵画で癒すことが出来ればと
考えています。
Re: アドバイスありがとうございました
>雨男博士さん
コメント頂きましてありがとうございます。
三菱一号館美術館は建物自体も魅力がありますね。
併設カフェのカフェもおすすめですよ。
是非楽しんできて下さい^^
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