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よみがえる幻の壁画たち レオナール・フジタ展 【そごう美術館】

去年の年末から今年の頭にかけて、上野の森でやっていた展示がまた横浜に回ってきたので、最終日寸前に行ってきました。上野のとあわせると3回目かな。 その頃はブログをやってなかったので、この機会に改めてご紹介しようかと思います。

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【展覧名】
よみがえる幻の壁画たち レオナール・フジタ展

【公式サイト】
 http://www2.sogo-gogo.com/common/museum/archives/09/0612_fujita/index.html
 http://leonardfoujita.jp/index.html

【会場】そごう美術館(横浜)
【最寄】横浜駅
【会期】2009年6月12日(金)~7月21日(火)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
 ※写真はコンパクトデジカメで撮影しました。


【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日16時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
最終日が近かったせいか、そこそこ混んでいました。上野の森でこの展覧を観た方も多いかと思うので、上野の森の時との違いを説明しますと、まず上野の森にあった藤田の初期~エコールドパリ全盛時代の作品は少なくなっていました。それと、猫のコーナーが無くなっていました。全体的にちょっと減ってるなーって感じはします(そのため1時間ちょっとで回れる量になっていました) 上野の森の別館にあった修復のVTRとかも結構面白かったけど無くなってたかな。。。
しかし、逆に上野の森には無かった大作が5点ありました。私が行ったときには目玉の1つになっていた「野遊び」(志摩観光ホテル クラシック蔵)は展覧を終了していて残念な限りでしたが、それ以外の4点で乳白色の頃ともキリスト教に改宗した晩年とも違う作風を味わうことができたのは大きな収穫でした。それと、藤田の私物や教会の下絵の展示が増えているように思いました。上野のときに藤田のそろばんとかあったっけ??流石に記憶が怪しいですw
あとは大体同じ内容だったかな。上野の森のように時系列を感じなかったので、藤田をあまり知らない人にはわかりづらくなってるかも?と思いました。


もう横浜でも終わってしまいましたが巡回していくようなので、気に入った作品をいくつか紹介。上野で観た作品が多いですが、最初に受けた印象を思い出しつつご紹介しますw


「花の洗礼」
藤田と言えば独特の乳白色と細い線で描かれた絵を真っ先に思いつきますが、これは淡くも色彩豊かな作品です。というのもこの作品は1959年の作品でだいぶ歳をとった頃の作風なのです。3人の女性が姉妹か3美神のように向き合った立ち姿で花を散らしている絵で、華やかさから精神的な充実を向かえた様子が伺えます。上部に描かれた天使も藤田を祝福しているかのような絵でした。(しかしこれをしょぱなに展示するとは意外でした。。。)

・・・と、ここで「藤田嗣治」は何故「レオナール・フジタ」なのかって話ですが、(ファンの方は今更ですみません) フジタはこの絵を描いた前の年に、奥さんと共にキリスト教の洗礼を受けています。その時授かったのがレオナールという洗礼名で、これは藤田がレオナルド・ダヴィンチが好きだったのでそこからつけられたのだとか。さらに言えば、藤田はフランスに帰化していますので、戸籍上ではフランス人です。


「二人の友達」
これは乳白色の作品で(1926年)、大作「構図」を観るときに1つのヒントとなる作品です。2人の女性が肩を並べてこちらを見ながら微笑んでいます。藤田はやっぱり裸婦が素晴らしいです。親しげな目線と気品のある美しさが印象的です。

アトリエ・フジタの再現 ★こちらで観られます
リンク先の動画で結構観られます。展示序盤に藤田のアトリエを再現したコーナーがあって、周りには彼の私物が展示されています。まず再現ですが、リアルにできていて特に壁面に描かれたフレスコ画が目を引きます。これは藤田が教会を建てる際に内壁に描く前に、素早く正確さが求められるフレスコ画に慣れるため練習として描いたもの(の再現)らしいです。そして、部屋の右端には額縁がいくつも置いてあるのですが、これも藤田が作ったもの。なんと藤田は額縁も自分で作っていたようです。
そして、周りの私物などですが、教会や自分のアトリエのミニチュアは必見です。なんとも可愛らしいけれども、恐ろしく時間のかかりそうなミニチュアです。ほうきとか雑巾かけまである… 面白いです。
私物には陶磁器やら縫い物やらまであります。これも全部、藤田が作ったものです。恐るべし器用さw 結構可愛いデザインが多くて親しみやすく、彼の人となりがよく出ているコーナーでした。音声ガイドでは彼の肉声の小唄も聞けますw

「アージュ・メカニック」
沢山の子供たちが汽車や飛行機、車といったメカの模型で遊んでいる様子を描いた絵です。これも「花の洗礼」と同じような画風で描かれています。藤田の作品はこういう絵と乳白色の2つの画風の作品をよく観ますが、最初のうちは同一人物の作品とは思えませんでした。この絵もちょっと萌え入ってるしw 

「フランスの冨」
横8×縦6で合計48の正方形に分かれている絵で、それぞれのマスの中にはフランスの富を象徴する絵が描かれています。シャンパンとか医療とかモナリザとか・・・ ちょっと漫画チックですw フランスをいかに愛していたかわかる作品でした。

「ノルマンディーの春」
これを観にきたといって良いかも。前述の通り残念ながら「野あそび」の展示は終わっていましたが、こちらも中々の作品。 林檎の木(桜かも?)の下でピクニックしている3人の女性が何とも穏やかです。寝そべっている女性の隣には犬もちょこんと伏せていて可愛らしいです。 この絵は1936年に描かれたらしく、ちょうど乳白色と洗礼した頃の中間のような作風でした。あまり観る機会がない作風なので貴重でした。

「イヴ」
藤田はアダムとイブや失楽園の話が好きだったようで、それを題材とした作品をいくつか描いています。そういえば、ゴーギャン展でもゴーギャンがアダムとイブに深い興味を持っていたと解説を聞いたばかりでした。よほど芸術家を刺激する題材なんですね。 この絵は林檎を持ったイブと上からそそのかす蛇の様子が描かれていて、何枚も同じ構図の絵があるのが興味深かったです。

「闘争 I」「闘争 II」 ★こちらで観られます
今回の目玉はなんと言ってもこの闘争と構図です。1枚が3m×3mと巨大で、彼自身が認める大作です。この作品のために藤田はいくつもの仕事を断って、50人以上もの筋肉質なモデルを雇いスケッチを描いたのだとか。相当気合を入れて出来映えにも満足していたのに、人手に渡るうちに行方不明となり長い間倉庫に丸めて放置されていたらしいです。なんとも勿体無い話です。
「闘争」という名前からして荒々しいんだけど、作品からもそれを感じます。特に真ん中でバットのように棒を持って振り回しそうな男が目に付きます。こいつ今にもパワフルなスウィングしそうw そしてその近くでレスリング?してる連中とか、とにかく肉弾戦の様相で、褐色の肌も相まって力強い(というか暴力的な)イメージがありました。

「ライオンのいる構図」「犬のいる構図」 ★こちらで観られます
こちらは「闘争」と対を成す作品。闘争が地獄ならこちらは天国です。藤田作品の集大成のようで、モデル達からは明るさと生気を感じました。この「構図」の2枚はよく観ると、藤田作品にゆかりのある人たちがいます。先ほどの「二人の友達」も登場し、人脈も含めて集大成の様相です。そのせいか、全体的に楽しげな感じが漂っていました。沢山のモデルがいて隅々まで観てきましたが、全体的に自然と上へ上へと視点が行くつくりになっているらしいです。

この4枚が揃うのは今回の一連の展覧が初めてだそうで、かなり貴重な経験でした。周りにはこの作品のためのスケッチがあるので、それと比較しながら観るのも面白いです。

平和の聖母礼拝堂 ★こちらで観られます
藤田は洗礼後、ラベルの絵を描いていたシャンパン会社の社長の協力を得て、ランスに礼拝堂を建てます。そこは彼のステンドグラスやフレスコ画などで埋め尽くされているらしいです。 さすがにそれを展示するのは無理なので、教会内部のVTRや素描、ステンドグラスの再現などがありました。 80歳くらいの藤田にこの仕事は相当きつかったようで、完成して1年くらいで生涯を閉じたようです。 最後は信仰に生きた藤田としてはこの教会こそが最高傑作なのかも?と思いました。


ということで、藤田の洗礼後と構図・争闘がメインになっているのは上野と同じでした。この展覧のおかげで藤田への理解が深まったように思います。貴重な経験でした。
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