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画の東西~近世近代絵画による美の競演・西から東から~ 【大倉集古館】

この前の土曜日に神谷町の近くにある大倉集古館で、「画の東西~近世近代絵画による美の競演・西から東から~」を観てきました。

P1080434.jpg

【展覧名】
 館蔵品展「画の東西~近世近代絵画による美の競演・西から東から~」

【公式サイト】
 http://shukokan.org/exhibition/index.html#link01

【会場】大倉集古館
【最寄】六本木一丁目/溜池山王/神谷町


【会期】2013年1月2日(水)~3月17日(日) 
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日13時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていてゆっくりと観ることができました。

さて、今回の展示は大倉集古館の所蔵品展で、近代の日本画を東西に分けて紹介するという内容となっています。その為、観たことがある品が結構ありましたが、西は狩野派や円山四条派の円山応挙と呉春、東は江戸に移った狩野探幽の江戸狩野派や近代の横山大観などビッグネームの作品も展示されていました。詳しくは気に入った作品をいくつか挙げてご紹介しようと思います。(実際の展示順は東西あまり関係なかったので観た順です。) なお、作品によっては展示替えがあるようですので、お目当ての品がある方は事前にHPで確認しておくことをお勧めします。
 参考記事:作品リスト


西:竹内栖鳳 「蹴合」 ★こちらで観られます
向き合う2羽の軍鶏が闘鶏している様子が描かれた作品です。左の軍鶏は足をあげていて、左の軍鶏は身を低くして顔を伺っているようなポーズです。細密かつ気品のある作風で、軍鶏の毛のフワッとした感じがよく出ていました。

西:松花堂昭乗 「布袋各様図巻」
これは巻物で、様々な姿の布袋様が描かれた墨画です。細めの輪郭線で描かれ、にこにこして袋に座ったり、裁縫したり、大きなひょうたんを抱いていたり、本を読んでいたりと、何だかゆるキャラのような微笑ましいキャラクターです。デフォルメ具合が面白く、のんびりした感じの作品でした。
解説によるとこの作者は真言宗の僧で、小堀遠州や狩野探幽らと交わり、茶や書画にも親しんだそうで、特に書は本阿弥光悦・近衛信尹とともに「寛永の三筆」と呼ばれていたとのことでした。

西:呉春 「漁夫図」
これは6曲1双の屏風で、右隻は川辺で漁師たちが荷物を持って歩く姿が描かれ、先頭には提灯を持った人、周りには子供や犬の姿もあります。一方、左隻には川で漁をしている人々が描かれ、魚籠を持ったり大きな網を持っています。全体的にあまり色はなく、落ち着いた印象を受けるとともに、輪郭線が強めに感じました。人々の表情は穏やかで、のどかな雰囲気の作品でした。

この近くには川合玉堂の「高嶺の雲」という屏風作品もありました。

東:横山大観 「瀟湘八景 [瀟湘夜雨]」
これは8幅セットの掛け軸のうちの1つで、中国の「瀟湘」の風景が描かれた水墨画です。木々と家々、橋などが描かれているのですが、ぼや~っとしていて霧に包まれたような感じを受けました。叙情性がありしんみりした味わいのある作品です。この両脇にも同じ瀟湘八景の作品が並んでいました。

続いては2階の展示室です。2階の最初の辺りには「大津絵」のコーナーがありました。大津絵とは江戸時代に大津周辺で土産物として盛んに作られた民画で、簡略化された素朴な太めの線と明快な着色が特徴のようです。

西:「大津絵 [天狗と象の鼻くらべ]」
こちらは掛け軸で、下の方には上を向いて鼻を伸ばす象の姿があり、その鼻は上部にいる天狗の鼻に巻き付いています。天狗はちょっと困った顔をしていて、これをやるから許してくれとまんじゅうを差し出していました。簡素で漫画みたいなデフォルメが面白いのですが、これには自慢する心情を戒める意味が込められているとのことでした。

東:前島宗祐 「鶏頭小禽図」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっている作品で、赤と白の花が咲き、その細い枝に1羽の瑠璃色の鳥が逆さになってとまっています。色の取り合わせが良いせいか、落ち着いた雰囲気で、葉っぱは優美な曲線を描いていました。解説によると、この作者は狩野派の絵師で、16世紀中頃に北条氏に仕え、小田原に名を残したそうですが20点ほどしか現存していないようです。また、中国南宋の宮廷画院の花鳥の影響を受けているとのことでした。

西:伊藤若冲 「乗興舟」
こちらは以前もご紹介しましたが、久々なので再度感想をメモしました。こちらは白と黒が反転したような「拓版画」の技法で描かれた巻物で、淀川を船で下った際の情景が描かれています。川にそって並ぶ町や山などには所々に地名が描かれていて、その場所を示しているようです。独特の濃淡とざらついた質感が面白い作品でした。
 参考記事:煌めきの近代~美術から見たその時代 (大倉集古館)

西:円山応挙 「雁図」 ★こちらで観られます
これは6曲1双の屏風で、右隻は舞い飛ぶ6羽の雁と白い波、左隻は水辺で羽休めしている7羽の雁が描かれています。左右で静と動の対比になっているのが面白く、金泥で波と背景が曖昧になっているためか奥行きを感じさせました。こちらも今回の展示の見どころだと思います。

東:狩野探幽 「松竹に鶴・柳に猿図」
6曲1双の屏風で、右隻は松の木の下にいる3羽の鶴が描かれています。上を向いて口を開けたり、毛づくろい?していたり、屈んで水面をじっとみたりとそれぞれのんびりしているようです。一方、左隻には柳の木にぶら下がっている猿たちが描かれていて、異常に手が長くささっと描かれたような感じに見えます。解説によると、鶴は狩野派の伝統の型を忠実に伝え、猿は「猿猴捉月図」の形をとっているとのことでした。大胆で楽しげな雰囲気があり、子供の猿も描かれていて可愛らしかったです。

この隣には探幽の弟の安信の屏風絵もありました。


ということで、静かな中でじっくりと東西の作品を観ることができました。若冲の作品など見どころもありますので、気になる方はチェックしてみてください。


 参照記事:★この記事を参照している記事

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