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琳派から日本画へ ―和歌のこころ・絵のこころ― 【山種美術館】

先週の日曜日に、恵比寿の山種美術館にいって、「琳派から日本画へ ―和歌のこころ・絵のこころ―」を観てきました。この展示は前期・後期に分かれていて、私が観たのは前期の内容でした。

P1080457.jpg

【展覧名】
 琳派から日本画へ ―和歌のこころ・絵のこころ―

【公式サイト】
 http://www.yamatane-museum.jp/exh/current.html

【会場】山種美術館
【最寄】JR・東京メトロ 恵比寿駅


【会期】
 前期:2013年02月09日(土)~03月03日(日)
 後期:2013年03月05日(火)~03月31日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
意外と空いていてゆっくり観ることができました。

さて、今回は俵屋宗達から始まり尾形光琳を中心に広まった「琳派」の展示となっています。琳派という言葉ができたのは割と最近(50年くらい前?)ですが、現代でも非常に人気が高く、近現代の作家にも大きな影響を与えました。また、琳派の造詣は平安時代の料紙装飾からの影響があり、その主題にも和歌や物語が取り入れられているようです。今回の展示はそうした前後の流れを踏まえた上で「和歌」と「装飾性」をテーマに選ばれた作品が並んでいました。詳しくはいつもどおり気に入った作品を通してご紹介しようと思います。


<第1章 歌をかざる、絵をかざる ―平安の料紙装飾から琳派へ―>
まずは琳派までの流れのコーナーです。書をしたためる料紙を飾ることは奈良時代から行われていたそうで、平安時代には仮名の発達と共に華やかさを増し、金銀を多用した豪華な料紙が美麗な書を飾るようになったそうです。こうした料紙装飾の伝統を積極的に取り入れたのが琳派で、和歌も重要なテーマとして作品に取り入れられました。特に伊勢物語が重視されたようで、八橋などをモチーフにした作品が作られたそうです。ここにはそうした流れが分かる作品が並んでいました。

14 俵屋宗達・本阿弥光悦 「鹿下絵新古今集和歌巻断簡」
鹿が振り返る姿を金泥と銀泥で描いた作品です。元は20mもある絵巻でしたが分割されて断簡となったもので、ここには西行法師の「心なき 身にもあはれは 知られけり 鴫立つ沢の 秋の夕暮」という新古今和歌集の歌を、本阿弥光悦が舞うように書いています。流麗でかろやかな文字と鹿の優美さがマッチしていて、何とも優美な作品でした。
 参考記事:美しきアジアの玉手箱―シアトル美術館所蔵 日本・東洋美術名品展 (サントリー美術館)

3 藤原定信 「石山切(貫之集下)」 ★こちらで観られます
草花がうっすら描かれた料紙に雅な雰囲気の筆運びで歌が詠まれた作品です。これは元は金箔・銀箔だったそうで、若干劣化してわかりづらいですが、紙への美意識も伝わってきました。

この辺にはこうした古筆切が並んでいました。

16 本阿弥光悦 「摺下絵古今集和歌巻」
こちらは巻物で、竹、梅、芍薬などの下絵が描かれていて、その上に古今和歌集の恋歌が詠まれている作品です。デフォルメされていて滲みがあり、何とも落ち着きと風情を感じます。解説によると、字を書いた本阿弥光悦は料紙にあわせてスペースを詰めたり離したりしているようで、舞うように書かれています。また、この巻物を巻くと表面には松が描かれているそうで、中を開くと竹→梅と並ぶ松竹梅となっているようでした。王朝文化を汲んだ機知ある作品のように思えました。

22 俵屋宗達 (款) 「源氏物語図 関屋・澪標」
これは6曲1双の屏風で、1隻ずつ源氏物語の場面が描かれています。右は石山詣に向かう源氏がかつての恋人の空蝉と再会する「関屋」のシーンで、右下と左上に牛車が描かれ2人の存在をほのめかしています。一方、左隻は住吉詣に訪れた源氏が船で訪れた明石の上と会う「澪標(みおつくし)」のシーンで、浜辺に置かれた牛車を中心に沢山の人々が集まり、左上の辺りに船の姿があります。こちらも源氏と明石の上の姿は直接描かれるわけでないようですが、その存在を感じさせるようでした。やや色が薄くて平面的な感じを受けるかな。解説によると、静嘉堂文庫にある俵屋宗達の屏風(国宝)とほぼ同じ構図で工房の作品と考えられるとのことで、たらし込みやパターン化された波などにはその後の琳派に通じるものを感じました。

この近くには今回のポスターにもなっている30 酒井抱一「秋草鶉図」もありました。これは結構よく観る気がしますが非常に良い作品です。

25 尾形乾山 「八橋図」
これは尾形光琳の弟の乾山が描いた八橋図です。陶芸で有名な乾山ですが絵も描いていて、大らかな作風が特徴かな。こちらには4つしか橋が無いように見えますが、その周りには杜若が咲き、伊勢物語の歌らしきものもの書かれていました。かなり簡略化されて落書きみたいなくらいにデフォルメされていて、これはこれで面白さを感じますw

23 尾形光琳 「四季草花図巻」 ★こちらで観られます
四季を題材にした作品で、額装されて2つの季節が展示されていました(展示替えで他の季節も見られるようです。) 牡丹、立葵、杜若などがかかれ、若干くすんだ色合いに劣化していますが、デフォルメされた曲線の花が優美な雰囲気です。解説によると、これは弘前藩の津軽家に伝わったものらしく、牡丹が最初に描かれているのは津軽家の家紋が牡丹であることと関係があるようでした。

近くには28酒井抱一の「月梅図」や3幅セットの35酒井鶯蒲「紅白蓮・白藤・夕もみぢ図 1」、(本阿弥光悦の孫の光甫のサインが入っているが、実際には抱一の養子の酒井鶯蒲が描いた)なども展示されていました。


<第2章 歌のこころ、絵のこころ ―近代日本画の中の琳派と古典―>
続いては琳派の影響についてのコーナーです。明治30~40年頃に尾形光琳を見直す動きがあったようで、大正頃になると俵屋宗達にも注目が集まったそうです。その憧れと研究は横山大観や下村観山、菱田春草らの日本美術院の画家に端を発したそうで、ここには近世以降の琳派学習が垣間見れる作品が並んでいました。

39 下村観山 「老松白藤」 ★こちらで観られます
六曲一双の金屏風に、大きな松の幹と枝、そこに垂れ下がる白い藤の花が描かれています。金地は金属のような光沢で輝き、そこに鮮やかな松の緑が映えています。単純化されて華やかな雰囲気は確かに琳派を思わせるかな。解説によると、木の上の方はあえて描かず、木の大きさを強調しているようでした。

隣には大観の作品もありました。

42 小林古径 「采」(しゅうさい)
赤々とした柿の実と枝葉が描かれた作品で、下の方には柴垣も描かれています。柿の枝にはたらしこみの技法が使われ、柴垣には大和絵の手法が使われているようで、全体的にはすっきりとした印象を受けました。単純化され、葉っぱや柿の色なども琳派と共通するものを感じます。

49 速水御舟 「紅梅・白梅」
2幅対の掛け軸で、右は赤い花を咲かす紅梅、左は細い月を背景に咲く白梅が描かれています。細くカクカクした長い枝が繊細な印象をうけるかな。左右で向き合うような配置で背景には薄っすらと雲があり、夜に静かに咲いているような感じを受けました。

52 加山又造 「濤と鶴 (小下絵)」
黒と銀でうねる海を表し、その上に金色の鶴が無数に飛んでいる様子が描かれた作品です。意匠化された波や鶴、色合いなどはまさに琳派的で、躍動感と流れを感じました。これはこの山種美術館のエントランスにある陶板壁画の下絵とのことでした。

この近くには川端龍子の八ツ橋の屏風も展示されていました。続いて第二会場です。

54 上村松園 「詠哥」 ★こちらで観られます
筆と短冊を持って振り返る着物の女性を描いた作品です。やや口を開いて誰かと話しているようにも見えるかな。松園らしい上品では華やかな美人画で、色合いも鮮やかでした。確かに松園にも琳派的な要素があるかも。

この近くには松岡映丘の「春光春衣」も並んでいました。


ということで、私は琳派が大好きなので楽しめる内容となっていました。それほど琳派の作品が多いわけではないですが、その雰囲気は伝わってきます。後期は内容が変わるようですが、気になる方はぜひどうぞ。


 参照記事:★この記事を参照している記事
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