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没後60年記念上村松園/美人画の粋(すい) 【山種美術館】

このところ最終日ギリギリに行った展覧の記事ばかりですみません。これももう終わってしまった展覧ですが、移転直前の山種美術館で「没後60年記念上村松園/美人画の粋(すい)」を観てきました。この展覧終了をもって山種美術館は千鳥ヶ淵から広尾に移転します。

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【展覧名】
没後60年記念上村松園/美人画の粋(すい)

【公式サイト】
http://www.yamatane-museum.or.jp/index.html
http://www.yamatane-museum.or.jp/doc/outline0905_japanese.pdf

【会場】山種美術館
【最寄】移転します
【会期】2009年5月23日~7月26日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
 ※写真はコンパクトデジカメで撮影しました。


【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
ここは駅から遠くて難儀するのでいつもスルーしていましたが、上村松園の展覧だし、引越しするので見納めというのも兼ねて行ってきました。中は意外と混みあっていて、特に40~70歳くらいの女性が多かったです。女性に人気がある女性画家なのかも。(上村松園はうえむらしょうえん と読み、京都生まれの女性画家です。参考wiki
上村松園の名前がタイトルになっていますが、それ以外にも伊東深水などの作品もあり、初夏から開催していた展覧会に相応しい、涼しげな美人画が勢ぞろいの展示でした。

気に入った作品をいくつかご紹介。順不同です・・・。すみません。

上村松園「春のよそをひ」
今回展示されている上村松園の美人達は、薄くて涼しげな青の着物を着ている美女が多いのですが、これもその1枚です。かんざしを触る仕草とそれを観る目線が優美です。清純さ漂う作風をよく味わえる1枚でした。かなり良かったので絵葉書を買いました。

上村松園 「つれづれ」  ★概要のPDFファイルで観られます
今回のポスターになっている絵です。膝の上に乗せた本を読んでいる青い着物を着た美人で、華美なかんざしをつけています。口に手を当てているのは笑っているのかな? 微妙に指が見えないのが品があってより美人に見えました。この展覧会にはこんな感じの雅な美人画が沢山あり嬉しい限りです。

伊東深水 「雪中美人」
伊東深水の美人画も大好きなんです(><) 6月に横浜美術館に「フランス絵画の19世紀 美をめぐる100年のドラマ」展を観にいった際に、常設展で伊東深水の作品を堪能したうえ写真に撮ってきましたが、これもかなり好みの作品。黄色い着物を着て傘を持った美人が、きりっとした顔で振り返っています。この振り返るという動作がなんとも色っぽかったです。風流な感じがします。

石本正「舞妓坐像」
金地に桜模様の赤い着物をきた女性が描かれています。やや後ろを向いて座る姿も魅力的ですが、金・赤・白が煌びやかでした。

上村松園 「牡丹雪」
絵の上半分と下半分の右半分(つまり絵の4分の3)が曇った空という大胆な構図です。左下には傘を持った2人の女性がいますが、2人ともぎっしり雪の積もった傘をさしています。冬なのに緑や青の着物をきるのかな?と思いましたが、白い雪と相まって初々しい感じがしました。

上村松園 「娘」
針に糸を通しているところを描いています。目線が1点に集中しています。これも初々しさを感じる作品でした。

上村松園 「新蛍」
この絵は凄いです(><) 団扇を持った女性が簾(すだれ)をすっと持ち上げて足元のあたりにいる蛍を見おろしている絵なのですが、女性が簾の向こうに立っているのが透けて見えるように描かれています。緑がかった透明感ある表現が素晴らしいです。 また、ぼんやりと光る蛍を見るその眼差しは慈しみを含んでいて心底美しいと感じました。今回の展覧でもかなり気に入った作品となりました。

上村松園 「春風」
蝶が飛んでいるのを見つけて振り返る美人の絵です。振り返る女性というのは美しいものですねw こういう何気ない仕草から、春めく季節を感じて喜んでいる女性の感情が伝わってくるようでした。

上村松園 「桜可里」
「桜狩」と書くとちょっと無粋な感じもしますが「桜可里」と書くと可憐な女性のようですw 5月に川村記念美術館で同じタイトルの絵を観てきたのを思い出しました。
2人の女性が描かれていて、後ろの女性は侍女ではないかと思います。川村記念美術館の作品と比べると左右が逆になった感じの配置になっていますが、よく似ています。特に、侍女が画面の外に視線を向けているのが共通していて、これも絵の外に世界が広がっているような奥行きを感じます。

喜多川歌麿 「青桜七小町 鶴屋内 篠原」
この展示は少数な割には幅広い美人画があって、浮世絵もありました。細くすらっとした手が色っぽい美人画でした。

鳥居清信 「社頭の見合」
いかにも鳥居派の浮世絵らしい作風を持った作品でした。何人かの女性が向き合って立っているのですが、皆すらっとした8等身をしていてスタイル抜群でした。むしろ外国人みたいw

上村松園 「蛍」  ★概要のPDFファイルで観られます
先ほどの「新蛍」と雰囲気が似ている作品です。こちらは蚊帳を張っている女性が足元で光る蛍を見ています。やはり蚊帳の部分は透けていて、左袖が蚊帳の向こうに見えます。蚊帳という夏独特の寝具と蛍が涼を感じさせる作品でした。

上村松園 「夕べ」
これは絵葉書を買いました。これも先ほどの「新蛍」と似ている作品です。蛍はいませんが、すらっとした立ち姿で、簾を右手で軽く押し広げる女性が描かれています。(この簾も透けています) 青い着物と団扇が夏を感じさせ、上目遣いでうつむき加減の顔には微笑みも見えます。上村松園の清らかな画風が極まったように感じる作品でした。それにしても上村松園は女性の美しさを熟知した女性ですね・・・。

小早川清 「美人詠歌図」
蝋燭の元で歌を書いている美人画です。左手で紙をもって、凛とした顔つきで筆を運んでいます。その表情も魅力的ですが、結った長い後ろ髪と白いリボンみたいなのが可愛いかったです。読む・書くという所作は萌えポイントなのかなあw

村上華岳 「裸婦図」  ★概要のPDFファイルで観られます
この裸婦図はまるで菩薩のような慈愛に満ちた顔をしています。その一方で丸みを帯びた体とポーズが女性らしく、薄絹のような衣が艶かしさを漂わせています。この裸婦図の隣にはこの絵にまつわる逸話が紹介されていました。要約すると、人生に悲観し自殺を考えていたコーヒー店勤務の女性が、この絵を観たときに母と姉を思い出し思いとどまったというエピソードでした。 この慈愛に満ちた目が人の命をも救ったとは…。そう思うと一層神々しく思えました。

池田輝方 「夕立」
結構大きな屏風作品。特に右の屏風が気に入りました。夕立にあって門の下に雨宿りにきた人々が描かれていて、髪を整える女性や、布を絞っている女性、外の様子を見ている男性など夕立の時の人々の仕草がよく現れていました。今も昔も同じような仕草をしていているなーと思い、親密な感じすらしました。

橋本明治 「秋意」
太い輪郭が目立つ作風です。肘掛にひじを置いてこちらを振り返る女性が描かれています。振り返るという所作も萌えポイントですねw 女性は猫みたいな目をしていて思わず目が合ってしまいました。

和田英作 「黄衣の少女」
この人はラファエル・コランの弟子らしく、絵は写実と印象派の間のような洋画です。赤い背景に、黄色いノースリーブを着た褐色の肌の女性が手を組んでいます。その目はどこかをじっと見つめているのかな。少しうつろな感じもします。 


ということで、よく考えると春夏秋冬のシーンで美人を楽しめる展覧会でした。1時間ちょっとで回れる規模でしたが、これだけ良質な作品が一堂に会するとは嬉しい誤算でした。もっと早く観にいっていれば2回目も行ったんだろうなあ。かなり満足できました。


山種美術館は次の展示から広尾に移るらしいです。
新しくなった山種美術館:http://www.yamatane-museum.or.jp/news.html
地図をみるとまた駅から遠いw 10分なら許容範囲かなあ。カフェとかできるみたいだし綺麗な感じがします。楽しみです。

おまけ:山種美術館からお堀の周りの道を通って帰る途中に撮った写真です。千鳥ヶ淵は桜で有名ですが夏も中々綺麗です。

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せみが2匹並んで鳴いていました
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