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歌舞伎-江戸の芝居小屋- (感想前編)【サントリー美術館】

前回ご紹介した展示を観た後、ミッドタウンのサントリー美術館にハシゴして「歌舞伎-江戸の芝居小屋-」を観てきました。この展示は会期が6つに細分化されていて、私が行ったのは第3期の内容でした。メモを多目にとってきましたので、前編・後編にわけてご紹介しようと思います。

P1090037.jpg

【展覧名】
 歌舞伎座新開場記念展 歌舞伎-江戸の芝居小屋-

【公式サイト】
 http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2013_1/index.html

【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅/乃木坂駅


【会期】2013年2月6日(水)~3月31日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日16時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
意外と混んでいて、場所によっては人だかりが出来ていました。ちょうど松本幸四郎氏のトークショーも開催されていたので、それの影響かな?
 参考リンク:松本幸四郎スペシャルトークショー ~私と歌舞伎のこれから~

さて、今回の展示は2013年4月に新開場を迎える第五期歌舞伎座を記念した展示で、歌舞伎の歴史や歌舞伎役者、それを支えてきた人々についての内容となっています。私は歌舞伎を観たことが無いのですが、歴史についても曖昧なところがあるので、きっちり知っておきたいと期待して観てきました。展覧会は3章に分かれていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。なお、冒頭に書いたように期間が細分化されていますので、お目当ての品がある方は予め作品リストを確認しておくことをお勧めします。
 参考リンク:出品リスト


<第1章 劇場空間の成立>
まずは歌舞伎の歴史についてのコーナーです。歌舞伎の芝居小屋は江戸時代の人々にとって非日常の世界へと誘う夢の空間だったそうで、この章ではその祖とされる出雲阿国の舞台姿や、京の名所として芝居小屋を捉えた絵画などが並び、歌舞伎の舞台小屋に関する内容となっていました。

4 「阿国歌舞伎草紙」 ★こちらで観られます
能舞台で踊る女性と楽器を演奏する人々、周りにはそれを見ている人が描かれている作品です。黒髪で派手な格好をしているのは出雲阿国のようで、全体的に楽しげな雰囲気が漂います。解説によると、周りの楽器は能を踏襲した、笛・小鼓・太鼓で、三味線を入れない初期の構成となっているとのことでした。
この出雲阿国(出雲大社の巫女と称した)の踊りが「歌舞伎踊り」で、それが江戸時代初頭頃に大流行したようです。今の歌舞伎は女性は出ませんが、初期の頃は遊女歌舞伎などが盛んに行われていたようです。(風紀を乱すとして後に遊女歌舞伎は禁止されました)

この部屋の中央には何故かロザリオが展示されていて不思議に思ったのですが、当代の新奇な物を求めた歌舞伎者たちは、宣教師からもたらされたロザリオを異国趣味のアイテムとして装身具に取り入れていたそうです。まさに時代の最先端のファッションだったようです。

6 「阿国歌舞伎図屏風」 ★こちらで観られます
こちらはやや経年劣化している6曲1双の屏風で、北野社での出雲阿国の「茶屋遊び」という演目の様子を描いています。中央辺りに男装して刀を担ぐ出雲阿国の姿があり、歌舞伎踊りを踊っています。この演目があまりにも人気になったため、出雲阿国の芸そのものが歌舞伎踊りの名で呼ばれるようになったそうで、大勢の人々がそれを鑑賞していました。解説によると、入口あたりに茶屋のようなものがあり、これは芝居茶屋の先駆けとも言えるものとのことでした。

この近くには「洛中洛外図屏風」(京都の街を俯瞰した絵)も展示されていました。四条河原には芝居小屋が描かれていて、当時賑わっていた様子が伺えます。出雲阿国たちは北野社などを拠点としていたようですが、追随者は四条河原を拠点としたそうです。

17 「四条河原遊楽図屏風」
こちらは6曲1双の屏風で、四条河原の遊行の様子が描かれた作品です。右隻には舞台の中央に美少年の姿があり、それを中心に若し歌舞伎を踊る白い衣装の若者たちが描かれています。こちらには当時高価だった三味線を持った人物も描かれていて、三味線は出雲阿国の一座では使われたという記録はないらしいので、彼らは追随者のようです。また、観客席には公家の女性の姿もあり、広い階層に支持されていたことが伺えます。
一方、左隻には花見をしたり遊女たちが踊っている様子などが描かれていて、四条河原は一種のテーマパークのようだったのかもしれません。楽しげでその活気が伝わって来ます。それにしても若いイケメンの芸に入れ込む女性というと… 今で言えばジャニーズみたいなものかなw

28 「中村座歌舞伎図屏風」
これは江戸時代の中村座の正面を描いた作品で、役者名の描かれた看板や、中村座のシンボルの隅切銀杏、絵看板、沢山の花などで飾られています。かなり多くのお客さんで賑わっているようで、解説によると描かれているお客さんの衣装は当時の流行の様子も詳しく伝えているとのことでした。こちらも人々の熱狂を感じます。

この辺で中村座についての解説もありました。歌舞伎は京都から江戸に伝わり、1624年に猿若勘三郎こと中村勘三郎は京橋と日本橋の間の中橋に中村座の前身である猿若座を作ったそうです。(先ほどの中村座を描いた作品はそれから100年以上経った頃の姿のようです。)また、中村座、市村座、守田座は江戸三座と呼ばれた公認の座だったそうです。

少し進むと舞台の中の様子を描いた作品もありました。その頃はまだ能舞台の様式を引きずっているようでしたが、花道などが出来たようです。また、遠近感を強調して描かれている点や観客も描かれているのが特徴のようでした。

53 「校正新刻 三座猿若細見図」
江戸三座は天保の改革の頃に、当時江戸の辺境の地だった浅草に強制移転させられたそうで、これはその頃の地図のようなものです。町名は猿若町となり、他の2座も並んでいるのがわかり、左から中村座(猿若座)、市村座、守田座の控櫓の河原崎座となっています。また、他にも人形の結城座、薩摩座の名も近くにあり、役者の家も軒を連ねています。解説によると、幕府はこうした芝居小屋をまとめて管理しようとしたそうですが、狭い地域に密集したため一層に賑やかになったとのことでした。

続いては明治期のコーナーです。明治5年(1872年)になると明治政府は江戸三座以外も希望があれば興行を公認するようになり、新しく劇場を創設したい者は願い出るようにと通達したそうです。すると12代目守田勘弥はいち早く反応し、新富町に劇場を移転しました。そして明治8年になると守田座は新富座へと名前を変えたそうです。

67 「東京新富座真図」
これは3枚続きの絵で、新富座の様子が描かれています。屋根を透視したような描写で、建物の中では勧進帳の演目が行われているようです。解説によると、これは「額プロセニアル・アーチ縁式舞台」というものだそうで。大勢の人々で賑わっている様子が見えます。また、この劇場には当時最新のガス灯も配備してあったそうで、夜芝居を可能にするなど時代の先端を行っていた様子が伝わって来ました。

続いては歌舞伎座についての品が並んでいました。

70 藪崎芳次郎 「東都名勝図絵 歌舞伎座」
明治22年(1889年)11月に、政治家で小説家の福地源一郎と、金融業者の千葉勝五朗らによって木挽町に歌舞伎座(第一期)が建てられたそうで、これはそれを描いた作品です。クラシック様式の洋風建築で3階建てとなっていて、見た目は歌舞伎のイメージと違っているように思いました。しかし、これは世界と肩を並べるほどの劇場を目指していたためのようで、中は檜造りで舞台幅は23.6mもあり、収容人数は1824席、シャンデリアもあったそうです。かなりモダンな感じを受ける建物でした。ちなみにこけら落としには当時の名役者が揃っていたようです。

その先には戦後のマッカーサーの歌舞伎再開の祝辞や、歌舞伎の台本などが並んでいました。また、1期から4期までの写真も展示されていて、明治44年に外観を純和風にした第2期、2期焼失後にすぐに再建が始まったものの完成間際で関東大震災で被災し、大正13年末に完成した第3期、昭和26年に復興した第4期(60年続いた)といったように変遷もわかるようになっていました。精巧な模型も置いてるので分かりやすいです。


ということで、長くなってきたので今日はここまでにしようと思います。私は元々 歌舞伎に興味があったわけではなかったのですが、当時の人々の熱意や楽しげな雰囲気が伝わってきました。後半も興味深い内容となっていましたので、次回は残り半分をご紹介しようと思います。


  → 後編はこちら


 参照記事:★この記事を参照している記事
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