フランシス・ベーコン展 (感想前編)【東京国立近代美術館】
先週の土曜日に、竹橋の東京国立近代美術館で「フランシス・ベーコン展」を観てきました。メモを多めに取ってきましたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

【展覧名】
フランシス・ベーコン展
【公式サイト】
http://bacon.exhn.jp/index.html
http://www.momat.go.jp/Honkan/bacon2013.html
【会場】東京国立近代美術館
【最寄】東京メトロ東西線 竹橋駅
【会期】2013年3月8日(金)~5月26日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
予想以上に多くのお客さんで賑わっていましたが、大型の作品が中心なので混雑している感じはあまりしませんでした。
さて、今回は20世紀にロンドンを中心に活動した具象画家フランシス・ベーコンの個展となっています。フランシス・ベーコンは海外では非常に高い評価を受けている画家ですが、日本では30年も前に回顧展が開かれた以外はほとんど紹介されたことはなく、没後の大規模な個展としては日本初(アジア初)の展覧会となるようです。私も名前くらいしか知らなかったのですが、今回の展示では30点程度の作品が並び、大作・代表作が出品されていました。だいたい時系列に並んでいましたので、詳しくは章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。
<1 移りゆく身体 1940s-1950s こちら/あちら>
まずは1940年代~50年代の作品についてのコーナーです。1909年にアイルランドのダブリンで生まれたフランシス・ベーコンは、1940年代には30代を迎えているので、それ以前にも画業があるのではないか?と思うのですが、ベーコンは回顧展が開催される際は1944年頃の作品をスタート地点と定めていたらしく、それ以前の作品はクオリティが高くないとして出来る限り破棄していたそうです。その為、この展示でも1945年~46年の頃の作品から始まります。 そしてこの章のタイトルにある「こちら/あちら」というのは、この時期のベーコンの作品の特徴を示しているようで、作品の多くにA地点からB地点に移行する状態にある身体が描かれていて、どちら側にいるのか判断しづらいらしく、それは人間/動物、聖/俗、こちら側/あちら側、あの世/この世といった概念にも当てはまるようです。また、ベーコンは自らの方法論を「具象画と抽象画の間の綱渡り」と定義づけていたそうで、ベーコンはダーウィンの進化論などを読んでいたので、人間は常に進化(あるいは退化)の過程にあると考えていたのかもしれないとのことでした。ここにはそうした時期の作品が並んでいます。
1 フランシス・ベーコン 「人物像習作II」 ★こちらで観られます
具象ながらもやや抽象的な画風で、オレンジ色を背景に前かがみになっている人物が叫んでいる?様子が描かれた作品です。頭は傘と棕櫚の葉に挟まれていて、青みがかった顔色と大きく口を開ける表情が不気味な印象を与えます。この叫ぶような表情はベーコンの作品によく出てくるそうで、映画「戦艦ポチョムキン」の乳母の叫びに衝撃を受けたのが影響しているようです。また、全体的にどことなくピカソ的な感じもあり、1920年代頃のピカソに影響を受けているとのことでした。怪物のような感じで異様な作品です。ちなみに傘も後の方の作品でも出てきたので、これもよく描くモチーフなのかも。
鑑賞している時に、キャプションの辺りに額のガラスについての説明がありました。今回の展示はガラスによる反射があって見づらいところも結構あるのですが、これはベーコンの意向に沿ったもののようで、ベーコンはガラスによって見るものと絵の隔たりが生まれるのを好んでいたとのことです。
2 フランシス・ベーコン 「人体による習作」
暗い色調のカーテンの間に裸の男性の後ろ姿が描かれ、向こうの闇の中を覗いています。 男性は筋肉質ですが半透明でちょっと幽霊みたいな感じに見えるかな。解説によると、ベーコンのアトリエには心霊現象の本も残されていたそうで、エクトプラズムに関心を抱いていたようです。しかし、これは心霊現象を描いているのではなく、人間の不確かさを表現しているとのことでした。なお、身体の力強さはミケランジェロからの影響とも指摘されているそうで、確かに影響が感じられました。身体つきに反して儚く虚無的な雰囲気がある作品でした。
7 フランシス・ベーコン 「走る犬のための習作」
暗い背景に舗装された道を歩く白い犬が描かれた作品です。犬は半透明で幽霊のような感じで、観ていて漠然とした不安を覚えます。解説によると、これは写真家のマイブリッジの連続写真を元に制作しているそうです。また、犬はベーコンのトラウマが見て取れるそうで、ベーコンは幼い頃から動物アレルギーによる喘息に苦しめられていたそうです。しかし父親が馬の調教師だったので、常に馬や犬が身の回りにいたのだとか。
この近くにも写真を元にした作品がありました。また、立方体の枠に収まった人物を描いた作品などもあり、それも1つの特徴のようでした。
<1 移りゆく身体 1940s-1950s 聖/俗>
ベーコンは1950~60年代半ばにかけてローマカトリック教会の教皇や枢機卿を集中的に描いたそうです。そのことからベーコンはキリスト教への深い興味を持っていたと推測されますが、本人は教皇を描いたことと宗教は関係ないと否定していたようで(ベーコンは無神論者)、ベラスケスの「教皇インノケンティウス10世」を写した写真に取り憑かれていたのがきっかけだったようです。 しかし1965年に移行は宗教的なテーマを描かなくなったようで、その時期はローマカトリック教会の大きな変化があった時期(第二ヴァチカン公会議 1962~65年)と重なるそうです。ここにはそうした教皇などを描いた作品が並んでいました。
8 フランシス・ベーコン 「叫ぶ教皇の頭部のための習作」 ★こちらで観られます
黒を背景に、金色の柵のような椅子?を背にした人物が口を大きく開けて叫んでいる様子が描かれた作品です。これは教皇らしいですがまるでゾンビか亡霊のように見えましたw またもや半透明な姿で描かれていて、背景にはうっすらと部屋の奥行きを感じる白い線もあるかな。歯をむき出しにした教皇からは恐怖すら感じるのですが、こちらも先ほどの作品同様に映画「戦艦ポチョムキン」からの影響と、ニコラ・プッサンの「嬰児虐殺」が重要なイメージソースとなっているとのことでした。
9 フランシス・ベーコン 「肖像のための習作IV」 ★こちらで観られます
黒を背景に金色で枠組みされた椅子に座る教皇が描かれた作品です。身体は透けていて、口のあたりを手で抑えるようなポーズをしています。下半身は輪郭しかないため、教皇よりは金色の椅子の方が目立っているように思えました。解説によると、これは海外初の個展のために制作された8点の連作のうちの1点とのことでした。先程の教皇と違って穏やかな印象を受ける作品でした。
<1 移りゆく身体 1940s-1950s ファン・ゴッホ>
1950年代のべーコンはシリーズ作品を多く手がけた時期にあたるそうで、1つの主題を定めて色や形などの要素を変えて行き、それによって生じる差異を検証する実験のようなものだったようです。先ほどの教皇やこの後の章にあるスフィンクスのシリーズは色数が少くないのですが、ベーコンはそこに作風の制約を感じていたのか1956~1957年の「ファン・ゴッホ」のシリーズでは色彩に積極的に取り組んだようです。このシリーズはゴッホのアルル時代の「タラスコンへの道を行く画家」を選んでそれをモチーフに5点製作したそうで、ここにはそのうちの2点が展示されていました。
16 フランシス・ベーコン 「ファン・ゴッホの肖像の為の習作VI」 ★こちらで観られます
緑、黄色、オレンジ、赤の色面で色分けされた道の上で、帽子をかぶって杖を持った画家が振り返っている姿を描いた作品です。色の対比が強く、いままでの作品とだいぶ違った印象を受けますが、具象と抽象の中間のようなタッチやはっきりしない顔などはそれまでの画風の特徴があるように感じました。また、近づいてよく観るとゴッホのように厚塗りされていて、荒々しい雰囲気です。解説によると、こうした変化はこの連作に着手する前にモロッコや南仏の明るい日差しに由来しているのではないかとのことでした。
この隣には色彩がより一層強い作品もありました。
<1 移りゆく身体 1940s-1950s スフィンクス>
続いてもシリーズの作品が並ぶコーナーです。ベーコンは読書家でアトリエには600冊、それ以外の場所にも570冊もの本を所蔵していたそうで、その蔵書からエジプト美術に相当の関心があったと推測されるそうです。ベーコンは「画家の生命を記録しようと思うなら、かなり省略した描き方をしないといけない。凝縮というのは洗練された単純さといって良いかもしれない。単純化と言ってもキクラデス文明の彫刻のような陳腐さへと至ってしまうのはいけない。エジプト文明の彫刻のようなリアリティへと至る単純化が必要」と語っていたそうです。また、ベーコンは1950年から51年頃に実際にエジプトも訪れたそうで、スフィンクスを題材に4点の連作を描いたそうです。ここにはそのうちの3点が展示されていました。
13 フランシス・ベーコン 「スフィンクス」
暗い背景に半透明の人の顔とぼんやりしたスフィンクスの輪郭が描かれた作品で、背景は部屋のような枠に覆われ、縦に無数の線が引かれているように見えます。顔の辺りをよく見るとシャツとネクタイをしたビジネスマンのようにも見え、スフィンクスとイメージが重なっているようでした。解説によると、ベーコンはスフィンクスの形を褒め称えていたようですが、この作品では形は曖昧になっているとのことでした。
この隣にも髑髏のような顔のスフィンクスの作品や、カラフルで肉の付いたスフィンクス(これは1970年代の作品)などもありました。 また、この辺には3~4分の映像がありベーコンのアトリエでのインタビューが流されていました。
ということで、今日はこの辺にしておこうと思います。作品はそれほど多くありませんが、あまり知らなかった画家だけにテーマや時系列で作風の違いや変遷を追えるのは良かったです。後半はまた劇的に画風が変わっていましたので、次回はそれについてご紹介しようと思います。
→ 後編はこちら
参照記事:★この記事を参照している記事

【展覧名】
フランシス・ベーコン展
【公式サイト】
http://bacon.exhn.jp/index.html
http://www.momat.go.jp/Honkan/bacon2013.html
【会場】東京国立近代美術館
【最寄】東京メトロ東西線 竹橋駅
【会期】2013年3月8日(金)~5月26日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
予想以上に多くのお客さんで賑わっていましたが、大型の作品が中心なので混雑している感じはあまりしませんでした。
さて、今回は20世紀にロンドンを中心に活動した具象画家フランシス・ベーコンの個展となっています。フランシス・ベーコンは海外では非常に高い評価を受けている画家ですが、日本では30年も前に回顧展が開かれた以外はほとんど紹介されたことはなく、没後の大規模な個展としては日本初(アジア初)の展覧会となるようです。私も名前くらいしか知らなかったのですが、今回の展示では30点程度の作品が並び、大作・代表作が出品されていました。だいたい時系列に並んでいましたので、詳しくは章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。
<1 移りゆく身体 1940s-1950s こちら/あちら>
まずは1940年代~50年代の作品についてのコーナーです。1909年にアイルランドのダブリンで生まれたフランシス・ベーコンは、1940年代には30代を迎えているので、それ以前にも画業があるのではないか?と思うのですが、ベーコンは回顧展が開催される際は1944年頃の作品をスタート地点と定めていたらしく、それ以前の作品はクオリティが高くないとして出来る限り破棄していたそうです。その為、この展示でも1945年~46年の頃の作品から始まります。 そしてこの章のタイトルにある「こちら/あちら」というのは、この時期のベーコンの作品の特徴を示しているようで、作品の多くにA地点からB地点に移行する状態にある身体が描かれていて、どちら側にいるのか判断しづらいらしく、それは人間/動物、聖/俗、こちら側/あちら側、あの世/この世といった概念にも当てはまるようです。また、ベーコンは自らの方法論を「具象画と抽象画の間の綱渡り」と定義づけていたそうで、ベーコンはダーウィンの進化論などを読んでいたので、人間は常に進化(あるいは退化)の過程にあると考えていたのかもしれないとのことでした。ここにはそうした時期の作品が並んでいます。
1 フランシス・ベーコン 「人物像習作II」 ★こちらで観られます
具象ながらもやや抽象的な画風で、オレンジ色を背景に前かがみになっている人物が叫んでいる?様子が描かれた作品です。頭は傘と棕櫚の葉に挟まれていて、青みがかった顔色と大きく口を開ける表情が不気味な印象を与えます。この叫ぶような表情はベーコンの作品によく出てくるそうで、映画「戦艦ポチョムキン」の乳母の叫びに衝撃を受けたのが影響しているようです。また、全体的にどことなくピカソ的な感じもあり、1920年代頃のピカソに影響を受けているとのことでした。怪物のような感じで異様な作品です。ちなみに傘も後の方の作品でも出てきたので、これもよく描くモチーフなのかも。
鑑賞している時に、キャプションの辺りに額のガラスについての説明がありました。今回の展示はガラスによる反射があって見づらいところも結構あるのですが、これはベーコンの意向に沿ったもののようで、ベーコンはガラスによって見るものと絵の隔たりが生まれるのを好んでいたとのことです。
2 フランシス・ベーコン 「人体による習作」
暗い色調のカーテンの間に裸の男性の後ろ姿が描かれ、向こうの闇の中を覗いています。 男性は筋肉質ですが半透明でちょっと幽霊みたいな感じに見えるかな。解説によると、ベーコンのアトリエには心霊現象の本も残されていたそうで、エクトプラズムに関心を抱いていたようです。しかし、これは心霊現象を描いているのではなく、人間の不確かさを表現しているとのことでした。なお、身体の力強さはミケランジェロからの影響とも指摘されているそうで、確かに影響が感じられました。身体つきに反して儚く虚無的な雰囲気がある作品でした。
7 フランシス・ベーコン 「走る犬のための習作」
暗い背景に舗装された道を歩く白い犬が描かれた作品です。犬は半透明で幽霊のような感じで、観ていて漠然とした不安を覚えます。解説によると、これは写真家のマイブリッジの連続写真を元に制作しているそうです。また、犬はベーコンのトラウマが見て取れるそうで、ベーコンは幼い頃から動物アレルギーによる喘息に苦しめられていたそうです。しかし父親が馬の調教師だったので、常に馬や犬が身の回りにいたのだとか。
この近くにも写真を元にした作品がありました。また、立方体の枠に収まった人物を描いた作品などもあり、それも1つの特徴のようでした。
<1 移りゆく身体 1940s-1950s 聖/俗>
ベーコンは1950~60年代半ばにかけてローマカトリック教会の教皇や枢機卿を集中的に描いたそうです。そのことからベーコンはキリスト教への深い興味を持っていたと推測されますが、本人は教皇を描いたことと宗教は関係ないと否定していたようで(ベーコンは無神論者)、ベラスケスの「教皇インノケンティウス10世」を写した写真に取り憑かれていたのがきっかけだったようです。 しかし1965年に移行は宗教的なテーマを描かなくなったようで、その時期はローマカトリック教会の大きな変化があった時期(第二ヴァチカン公会議 1962~65年)と重なるそうです。ここにはそうした教皇などを描いた作品が並んでいました。
8 フランシス・ベーコン 「叫ぶ教皇の頭部のための習作」 ★こちらで観られます
黒を背景に、金色の柵のような椅子?を背にした人物が口を大きく開けて叫んでいる様子が描かれた作品です。これは教皇らしいですがまるでゾンビか亡霊のように見えましたw またもや半透明な姿で描かれていて、背景にはうっすらと部屋の奥行きを感じる白い線もあるかな。歯をむき出しにした教皇からは恐怖すら感じるのですが、こちらも先ほどの作品同様に映画「戦艦ポチョムキン」からの影響と、ニコラ・プッサンの「嬰児虐殺」が重要なイメージソースとなっているとのことでした。
9 フランシス・ベーコン 「肖像のための習作IV」 ★こちらで観られます
黒を背景に金色で枠組みされた椅子に座る教皇が描かれた作品です。身体は透けていて、口のあたりを手で抑えるようなポーズをしています。下半身は輪郭しかないため、教皇よりは金色の椅子の方が目立っているように思えました。解説によると、これは海外初の個展のために制作された8点の連作のうちの1点とのことでした。先程の教皇と違って穏やかな印象を受ける作品でした。
<1 移りゆく身体 1940s-1950s ファン・ゴッホ>
1950年代のべーコンはシリーズ作品を多く手がけた時期にあたるそうで、1つの主題を定めて色や形などの要素を変えて行き、それによって生じる差異を検証する実験のようなものだったようです。先ほどの教皇やこの後の章にあるスフィンクスのシリーズは色数が少くないのですが、ベーコンはそこに作風の制約を感じていたのか1956~1957年の「ファン・ゴッホ」のシリーズでは色彩に積極的に取り組んだようです。このシリーズはゴッホのアルル時代の「タラスコンへの道を行く画家」を選んでそれをモチーフに5点製作したそうで、ここにはそのうちの2点が展示されていました。
16 フランシス・ベーコン 「ファン・ゴッホの肖像の為の習作VI」 ★こちらで観られます
緑、黄色、オレンジ、赤の色面で色分けされた道の上で、帽子をかぶって杖を持った画家が振り返っている姿を描いた作品です。色の対比が強く、いままでの作品とだいぶ違った印象を受けますが、具象と抽象の中間のようなタッチやはっきりしない顔などはそれまでの画風の特徴があるように感じました。また、近づいてよく観るとゴッホのように厚塗りされていて、荒々しい雰囲気です。解説によると、こうした変化はこの連作に着手する前にモロッコや南仏の明るい日差しに由来しているのではないかとのことでした。
この隣には色彩がより一層強い作品もありました。
<1 移りゆく身体 1940s-1950s スフィンクス>
続いてもシリーズの作品が並ぶコーナーです。ベーコンは読書家でアトリエには600冊、それ以外の場所にも570冊もの本を所蔵していたそうで、その蔵書からエジプト美術に相当の関心があったと推測されるそうです。ベーコンは「画家の生命を記録しようと思うなら、かなり省略した描き方をしないといけない。凝縮というのは洗練された単純さといって良いかもしれない。単純化と言ってもキクラデス文明の彫刻のような陳腐さへと至ってしまうのはいけない。エジプト文明の彫刻のようなリアリティへと至る単純化が必要」と語っていたそうです。また、ベーコンは1950年から51年頃に実際にエジプトも訪れたそうで、スフィンクスを題材に4点の連作を描いたそうです。ここにはそのうちの3点が展示されていました。
13 フランシス・ベーコン 「スフィンクス」
暗い背景に半透明の人の顔とぼんやりしたスフィンクスの輪郭が描かれた作品で、背景は部屋のような枠に覆われ、縦に無数の線が引かれているように見えます。顔の辺りをよく見るとシャツとネクタイをしたビジネスマンのようにも見え、スフィンクスとイメージが重なっているようでした。解説によると、ベーコンはスフィンクスの形を褒め称えていたようですが、この作品では形は曖昧になっているとのことでした。
この隣にも髑髏のような顔のスフィンクスの作品や、カラフルで肉の付いたスフィンクス(これは1970年代の作品)などもありました。 また、この辺には3~4分の映像がありベーコンのアトリエでのインタビューが流されていました。
ということで、今日はこの辺にしておこうと思います。作品はそれほど多くありませんが、あまり知らなかった画家だけにテーマや時系列で作風の違いや変遷を追えるのは良かったです。後半はまた劇的に画風が変わっていましたので、次回はそれについてご紹介しようと思います。
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