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Paris、パリ、巴里 - 日本人が描く 1900-1945 【ブリヂストン美術館】

前回ご紹介した展示を観た後、ブリヂストン美術館で「Paris、パリ、巴里 - 日本人が描く 1900-1945」を観てきました。

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【展覧名】
 Paris、パリ、巴里 - 日本人が描く 1900-1945

【公式サイト】
 http://www.bridgestone-museum.gr.jp/exhibitions/

【会場】ブリヂストン美術館
【最寄】JR東京駅・銀座線京橋駅・日本橋駅・都営浅草線宝町駅


【会期】2013年3月23日(土)~6月9日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていてゆっくり観ることができました。

さて、この展示はテーマ展示で、いつもの常設作品と若干の他の美術館の所蔵品を合わせ、日本人洋画家のフランス・パリ留学時代をテーマにした内容となっていました。だいたいは常設中心の展示ですので、今回は私が「初めてみる作品」(他の美術館の所蔵品など)と、「最近入れ替わって展示されたと思われる作品」を中心にいくつかご紹介しようと思います。(代表的なコレクションというわけではありません。代表的なものは公式ページで確認できます)
 参考リンク:現在展示中の収蔵作品


<第1章 パリ万博から第一次世界大戦まで1900-1914>
まずは1900年代初頭のコーナーです。

8 藤島武二 「ヴェルサイユ風景」
こちらは藤島武二が38歳から4年間にわたるヨーロッパ留学(前半の2年間はパリ、後半はローマ)に行った際に描いた、ヴェルサイユ宮殿の庭の風景です。左上にごく薄いピンクの建物があり、手前に壺や植木が描かれています。全体的に赤みがかっているのは夕方なのかな?? 手前は物が多いですが奥が広々した感じで、空の色と相まって爽やかな雰囲気でした。

5 浅井忠 「読書」
こちらは女性が本を読んでいるところを描いた肖像画で、浅井忠がパリ郊外のグレーにいた頃に、ホテルの中で和田英作と共に描いたそうです。女性は手に本を持ち目を閉じるような静かな表情で、全体的に柔らかい光が感じられました。リラックスした雰囲気を感じる作品です。

6 和田英作 「読書」
こちらは先述の浅井忠の作品と同じ時に描かれた作品で、浅井忠よりも横からの構図となっています。背景は暗めで、全体的にどっしりとした重厚感があるかな。こちらも静けさを感じますが、思慮深そうな雰囲気に思えました。2人の作品を並べることで作風の違いを楽しめる面白い趣向です。(※浅井忠の作品の展示は5/3まで)

12 満谷国四郎 「坐婦」
こちらは満谷国四郎の2回目のパリ訪問時(37歳)の作品で、テーブルに向かい椅子に座る女性が本を読んでいる様子が描かれています。顔は簡略化されていて、テーブルの上には薄いピンクのチューリップ?の花束が入った花瓶とオレンジが乗った皿が置かれています。柔らかい色合いで、色の明るさを感じるかな。解説によると、それまでの暗い写実的な画風から大きく変わり画面が明るくなっているそうです。印象派やポスト印象派の影響を受けているようで、確かにそのように見えました。

7 岡田三郎助 「臥裸婦」
これは岡田三郎助が4年間の留学から帰国する直前に描いたもので、草むらで仰向けになって体を反り、頭の後ろで腕を組む裸婦が描かれています。透き通るような白い肌をしていて、淡い草の色などと共に清純そうな感じを受けるかな、解説によるとこれは師匠のラファエル・コランの影響を受けているようで、コランや黒田清輝に通じるものを感じました。また、身体がだいぶ反り返っているのは岡田三郎助の大胆な試みと言えるとのことでした。


<第2章 黄金の1920年代と両大戦間期1918-1945>
続いては1918年から第二次大戦頃までの内容となっていました。

29 遠山五郎 「婦人読書図」
緑のチェックのワンピースを着た女性が膝に広げた本を読んでいる様子を描いた作品です。目を閉じるかのような表情で、顔は赤みがかっているせいか生気を感じ、どことなくルノワール風にも見えるかな。何故かキスリングもちょっと彷彿とします。(画風は似ていませんが…) 対比的な色使いでありながら落ち着いた雰囲気があり、独特な面白さがありました。

22 小出楢重 「パリ・ソンムラールの宿にて」 ★こちらで観られます
これは小出楢重のわずか5ヶ月程度のフランス留学の際に描かれた作品で、窓から外を望む構図で、道沿いに背の高い建物が軒を連ねる様子が描かれています。結構大胆なタッチで、素早く描かれているように見えるかな。解説によると、小出楢重は友人への手紙の中で「フランスには芸術がない」とこぼしていたそうですが、パリへの留学によって絵の具が伸びやかになったのがわかるとのことでした。

31 佐伯祐三 「コルドヌリ(靴屋)」
こちらは佐伯祐三の1回目のパリ時代の作品で、白壁の靴屋の入口が描かれています。壁は風化したような重厚感があり、扉の辺りには沢山の靴がかけられていて、扉の上に「CORDONNERIE」と黒々と書かれています。後の作品と比べてみると全体的にはスッキリした感じですが、壁の質感が独特で気に入りました。なお、このお店を描いた作品は少なくとも4点はあるのだとか。

32 佐伯祐三 「休息(鉄道工夫)」
赤い壁を背にして四角いテーブルに向かって酒を飲む3人の男達が描かれた作品です。これはパリで描いたのか東京で描いたのか分からないようですが、顔つきは西洋人っぽくて、労働者らしい風貌です。背景の赤と相まって労働者の逞しさ・力強さが伝わってくるようでした。

33 佐伯祐三 「広告貼り」
これは2度目のパリ時代の作品で、建物の壁が広告で埋めつくされている様子が描かれています。赤字や黒地で文字が書かれているのですが、広告は積み重なるような感じを受けるかな。よく観ると左下の方に1人の人物がぽつんと立っていて、それがかえって物悲しい印象になっているように思いました。

34 佐伯祐三 「レストラン(オデル・デュ・マルシェ)」 ★こちらで観られます
これはこの美術館所蔵の佐伯のカフェの絵とおなじカフェで描かれたもので、一目で同じ店であることが分かります(この絵の隣に展示されている) 店内は黒い服の人物が座っている以外は空席で、右上は広告が埋め尽くしています。佐伯らしい重厚な色彩の一方で文字が軽やかなリズムを生んでいるように見えるかな。ぽつんとしているお客さんはちょっと寂しい感じにみえました。

24 坂本繁二郎 「パリ郊外」
カーブした道をこちらに向かってくる黒い帽子をかぶった女性を描いた作品です。周りには背の低い建物が立ち並び、左の建物は壊れています。全体的に黄土色っぽい感じで、ぼんやりして女性の顔も定かではないですが、そのせいか落ち着いた雰囲気がありました。解説によると、坂本繁二郎はパリではモンパルナスに住んでいたようですが、風景画は市街より郊外、もしくはブルターニュ地方を好んだとのことでした。のんびりしていて幻想的な作品でした。

40 伊原宇三郎 「椅子によれる」
楽譜を持って椅子に腰掛ける白い布を頭にかぶせた裸婦が描かれた作品です。どっしりとした肉付きで、一目でピカソの新古典主義時代の作品からの影響が見て取れます。陰影が強く力強い生命感がありました。

38 岡鹿之助 「魚」
窓の外に広がる海とそこに浮かぶヨットを背景に、窓際におかれた籠とその中に入った魚、海老、レモンなどを描いた静物画です。その手前にも黒いお盆に乗った小エビや、ヒラメなどが描かれているのですが、いずれも平面的で立体感がありません。素朴派的な描き方というよりかはキュビスム的な要素を感じるかな。点描のようなざらついた質感も面白く、遠近法なども無視した独特の味わいのある作品でした。

19 藤田嗣治 「カルポーの公園」
木々の立ち並ぶ雪景色の公園を高い位置から見下ろすように描いた作品です。公園には黒っぽい服を着た人々が無数に描かれ、縄跳びで遊んだりベンチで休んだり、乳母車の周りで談笑していたりとくつろいだ雰囲気があります。解説によると、実際にはこの頃は第二次大戦が迫りつつあった時期のようですが、絵の中ではそれを感じさせません。また、藤田といえば乳白色の画風ですが、この絵ではそれとは違い印象派のようなタッチで厚塗されているのも意外でした、藤田がいくつかの描き方を使いこなしていたのを示しているようです。

藤田も数点展示されていました。


ということで、今回は観たことがない作品が結構多めでした。特に佐伯祐三の好みの作品が観られて良かったです。会期も長めですので、ご興味があるかたはチェックしてみてください。


 参照記事:★この記事を参照している記事

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