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北斎と暁斎 奇想の漫画 (感想前編)【太田記念美術館】

10日ほど前の日曜日に太田記念美術館で「北斎と暁斎 奇想の漫画」を観てきました。メモを多めに取ってきましたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。なお、この展示は前期・後期に期間が分かれていて、私が観たのは前期(既に終了)の内容となっていました。

P1110164.jpg

【展覧名】
 北斎と暁斎 奇想の漫画

【公式サイト】
 http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/H250506hokusai-kyosai.html

【会場】太田記念美術館
【最寄】原宿駅、明治神宮前駅


【会期】
 前期:2013年4月27日(土)~5月26日(日)
 後期:2013年5月31日(金)~6月26日(水) 
  ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
特に混んでいなかったので、快適に鑑賞することができました。

さて、今回の展示は江戸時代の絵師 葛飾北斎と、江戸時代末期から明治にかけて活躍した河鍋暁斎という2人の鬼才を比較するような内容となっています。葛飾北斎は「北斎漫画」という有名な素描・デッサン帳を残していますが、これにはこの世の森羅万象が描きだされているそうです。そしてその北斎の特色を最も色濃く継承したのが狩野派の絵師でありながら浮世絵の世界にも深く親しんだ河鍋暁斎で、河鍋暁斎も「暁斎漫画」という作品を残しています。暁斎漫画や暁斎酔画には踊る骸骨や擬人化された蛙などユーモラスな画題や、北斎にも匹敵するほどのあらゆる題材を描いているそうで、この展示ではそうした2人の作品を並べて展示していました。画題ごとに章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。


<肉筆>
まず最初の座敷になっているスペースには肉筆画が並んでいました。

41 葛飾北斎 「雨中の虎」
これは肉筆の掛け軸で、雨の中で大きな口を開けて吠えている?赤っぽい虎が描かれた作品です。崖の上に立ち 体がよじれているようなポーズで、細かいところはちょっとよく分からなかったですが長い胴体に見えました。右下の方の足は浮いているように見えるのもちょっと不思議。迫力ある顔と色が印象に残りました。

44 河鍋暁斎 「美人観蛙戯図」
しゃがんで腕を組み、蛙たちの相撲を眺める団扇を持った美女が描かれた肉筆画です。蛙たちは擬人化されていて、周りにも応援したり蓮の茎をタバコのようにふかしている蛙の姿もあります。蛙たちは楽しそうな雰囲気で、女性も心なしか微笑んでいるように見えました。ユーモラスでのんびりした作品でした。


<Ⅰ 奇想天外 2人の鬼才>
葛飾北斎と河鍋暁斎の2人は様々な対象を緻密に観察し、2次元の世界に再現する卓越した技術力が魅力として挙げられるそうですが、2人を鬼才とまで称することができるのは作品の構想が常人には思いもよらない奇抜さと柔軟さがあるためのようです。ここにはそうした奇想天外な構想の作品が並んでいました。

14 葛飾北斎 「北斎漫画 十一編」
これは北斎漫画の一部で、1ページに4行×4列で16個、見開きで32個の面が描かれたページが展示されていました。般若や翁、天狗など様々な面が描かれ、表情豊かで正に漫画的なユーモラスな雰囲気が面白いです。解説によると、こうした面を描いた作品は暁斎漫画にも見られるとのことでした。
 参考記事:河鍋暁斎の能・狂言画 (三井記念美術館)

この辺は北斎漫画が並んでいました。

209 葛飾北斎 「一筆画譜」
これは一筆描きで描かれた鶴が、1ページに8~9羽程度描かれた冊子です。羽ばたいたり舞い降りたり、地面を突いたりと鶴の様々な動作が捉えられているのですが、全て一筆で描かれているのが驚きです。一筆でここまで生き生きと的確に表現できるのは細密描写よりも凄いかも? 少ない筆で最大限に表現する単純化にただただ驚くばかりでした。

186 河鍋暁斎 「骸骨の首引き」
お互いの首に縄をつけて引っ張り合う骸骨たちが描かれ、隣にもそれを見物して驚く仕草の骸骨の姿があります。線だけの白黒の作品ですが、まるでレントゲンで透視したように肉体の動きを感じるのが面白いです。骨の形も解剖学的で、想像力で補っているとは思えないほどにリアルでした。骨格のことをよほど知っていないとこれは難しそう。

この隣にも茶を飲む骸骨たちを描いた作品がありました。ちょっとキモいけどおかしくて楽しい作品です。河鍋暁斎の骸骨作品はよく観るので、お得意の画題だったと思われます。
また、少し先には古代ギリシャ彫刻のラオコーンの解剖図などもあり、骨や筋肉の動きまで把握した上で人体を描いているのが伺えました。

8 河鍋暁斎 「狂斎画譜」
これは本に描かれた作品で、真っ赤な体の仁王が、屈んで鼻の穴に指を突っ込んで変な顔をしている様子が描かれています。これは子供を笑わせようとしているそうですが、こんな変な顔の仁王は観たことありませんw 本来怖いイメージなので、この発想にも遊び心を感じました。


<Ⅱ 戯れる動物たち>
葛飾北斎と河鍋暁斎の違いが際立って見受けられるのは動物の表現だそうです。北斎は哺乳類、鳥類、爬虫類のみならず空想上の動物まであらゆる種類の動物を描きだそうとしていました。一方、河鍋暁斎は写実的な表現に優れているものの、カエルや象、もぐらなどが人間さながらに豊かなポーズや表情をしているところに一番の魅力があるそうで、解説では まるで鳥獣戯画が近代に甦ったかのようだと評していました。ここにはそうした2人の動物画が並んでいました。

40 葛飾北斎 「狆」
長い毛を持った狆(ちん)という犬を描いた作品です。首に赤い帯のようなものをつけて鞠で遊んでいます。狆はペットして愛玩されたそうですが、ここでは爪が長く顔もちょっと妖怪みたいな奇怪さがありましたw フサフサした毛並みの表現も面白かったです。

この辺には北斎漫画などが並び、魚や昆虫、鳥などが描かれていました。

62 葛飾北斎 「北斎漫画 十編」
北斎漫画が見開きで展示されていて、米俵が積まれているところに沢山の着物を着た擬人化されたネズミが描かれています。運び出したり帳を観ていたり、何かを引っ張っているなど作業しているようです。ネズミは目が鋭くてあまり可愛くはなかったですが、想像力豊かに描かれていました。

50 河鍋暁斎 「今昔未見 舶来虎真図」
金網と柵に囲まれた中、上空に鶏の姿があり、その下にそれに襲いかかる豹が描かれています。大きく口を開けていて獰猛な印象を受けるかな。解説によると、これは1860年に両国で開催された豹の見世物を書いたもので、題名では虎となっていますが、これは当時は虎と豹を混同されていたためのようです。しかし、絵の左上にある文には豹が正しいとの認識が書かれているとのことで、暁斎が博学だったのが伺えるエピソードでした。

この辺には象の見世物を描いた作品もありました。

68 河鍋暁斎 「暁斎漫画」
暁斎漫画が見開きで展示されていて、擬人化された蛙たちが描かれています。蒲を持ったり棒を持ったりして戦うポーズをしていて、これは歌舞伎の仮名手本忠臣蔵の各場面を演じているそうです。蛙も暁斎がよく擬人化した生き物ですが、表情豊かでどこか憎めない愛嬌を感じました。


ということで、今日はこの辺までにしておきます。この2人の作品は本当に千変万化で発想豊かなものばかりで、観ていて見入ったり笑ってしまったり非常に面白いです。変な気取りが無く、ひたすら絵が好きだった感じも受けました。後半も楽しめましたので、次回は残りの内容をご紹介します。



  → 後編はこちら



 参照記事:★この記事を参照している記事

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