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北斎と暁斎 奇想の漫画 (感想後編)【太田記念美術館】

今日は前回の記事に引き続き、太田記念美術館の「北斎と暁斎 奇想の漫画」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。

 前編はこちら

まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 北斎と暁斎 奇想の漫画

【公式サイト】
 http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/H250506hokusai-kyosai.html

【会場】太田記念美術館
【最寄】原宿駅、明治神宮前駅

【会期】
 前期:2013年4月27日(土)~5月26日(日)
 後期:2013年5月31日(金)~6月26日(水) 
  ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前編では1~2章をご紹介しましたが、後編は3~6章についてです。若干順序が前後しているようで、最後が5章となる構成となっていました。


<Ⅲ 風景への観察眼>
3章は風景画のコーナーです。北斎は単なる名所の風景のみならず、波や風など 形にするのが難しい自然現象を描くことを試行錯誤していたそうです。一方、暁斎は北斎に比べると風景画は少ないそうですが、やはり卓越した描写力を認めることができるらしく、目の前の風景のスケッチに丹念な観察眼が光っているそうです。ここにはそうした作品が並んでいました。

83 葛飾北斎 「諸国瀧廻 東都葵ヶ岡の滝」
左側に石垣とその上の道を行き交う人々、右半分には水を湛えた池とそこから流れ落ちる滝が描かれた作品です。滝の下の波なども表現されていて、実際の風景よりも水の流れという捉えがたいモチーフを描き分けることを目的としているそうです。構図自体も面白く、北斎ならではの大胆な表現に思いました。

近くには有名な富嶽三十六景 駿州江尻など風の動きが感じられる作品もありました。

90 河鍋暁斎 「東海道 名所之内 箱根山中陰石」
手前に大きな木の根と枝が描かれ、その脇を沢山の武士が行列している様子が描かれた作品です。背景には箱根の山があり、これは14代将軍 徳川家茂の上洛を題材に制作されたそうです。木のうねりや人々の行列など複雑な構成となっているのが面白かったです。暁斎の風景画は確かに珍しいかも? この近くには写実的な風景を描いた暁斎漫画などもありました。


<Ⅳ 神仏妖怪大集合>
続いては神仏や妖怪といった目に見えない存在についてのコーナーです。2人の縦横無尽な妖怪たちが並んでいました。

122 河鍋暁斎 「暁斎百鬼画談」
ずら~~っと並ぶ妖怪たちが描かれた作品で、一つ目入道や付喪神、ぬらりひょんのような妖怪、動物のような妖怪など様々な妖怪が大行進しています。まるで実在するかのような緻密で動き溢れる表現が面白く、ここでも妖怪たちは表情豊かに生き生きと描かれていました。

117 葛飾北斎 「北斎漫画 十二編」 ★こちらで観られます
3つ目を持つ入道?やろくろ首などの妖怪たちが描かれた作品で、近くで三味線を弾く人と入道相手に何かをやり取りしている人だけは人間のようです。ろくろ首は画面の右から左へぐーーーんと首が伸びていて、画面に迫力と動きが感じられました。


<Ⅵ 知られざる画業>
北斎には代表作以外に迫力ある読本や斬新なアイディアにあふれた絵手本などまだまだ知られていない魅力的な版本も多いそうです。一方、暁斎も同様に仮名垣魯文や万亭応賀の戯作本の挿絵、教科書や教訓本の真面目な挿絵など広い画業だったようです。ここにはそうした本などが並んでいました。

197 葛飾北斎・曲亭馬琴(著) 「椿説弓張月 続編巻之六」
仙人のような人物と頭が虎で胴体が牛のような怪物が描かれた本です。周りには逃げ惑う人々などが描かれていて、既に何名か怪物にやられたらしく横たわっています。怪物には迫力があり、画面に緊迫感がありました。

215 葛飾北斎 「画本彩色通 初編」
これは絵を描くための本で、描くのに使う道具らしきものや絵の塗り方が図解入りで描かれています。「地塗りの色より濃く~」など具体的な技法が書いてあって興味深い内容となっていました。

227 河鍋暁斎・万亭応賀(著) 「権兵衛種蒔論」
天秤を担ぐ骸骨が走っているような様子が描かれた本が見開きで展示されていました。天秤には「黄」と「暇」と書かれた玉があり、もう片方には「学び」と書かれた千両箱があります。また、骸骨は「博学」という札をぶら下げていて、周りには和漢書と西洋六箇国史記と書かれたお墓があります。解説によると、これは実用を伴わない学業偏重を風刺しているそうで、多大な時間と金を費やして実益を産まずに死んでいく人間を表しているとのことでした。皮肉と髑髏が暁斎らしさを感じさせました。


<Ⅴ 躍動する身体>
最後の章は地下のコーナーです。2人はコミカルでユーモラス、そしてリズミカルな動きをした人々を描いたそうで、その根底は北斎と暁斎の人体の的確な表現があるようです。ここにはそうした躍動する身体表現が並んでいました。

155 葛飾北斎 「北斎漫画 初編」
これは北斎漫画で、右ページには釣りをする人や 喧嘩をする人とそれを止めようとする人々、左ページには槌を叩く人、臼?を作る人、車輪を作る人など様々な道具を使う職人たちが描かれているのが展示されていました。どちらも人々の動きが見て取れる感じで、ポーズが面白くて躍動的です。一瞬を捉えたような観察眼もさすがでした。

この辺には北斎漫画が並んでいました。相撲をとったり槍の訓練?をしていたり、妖怪が描かれたものもありました。

171 葛飾北斎 「北斎漫画 十二編」
こちらも北斎漫画を見開きで展示していて、紙が風に飛ばされて舞っている様子や、巻物が風で広がっている様子、他にも布が飛んだりしていて強風で大変なことになっていますw 人々も風にあおられて飛ばされた紙を追ったり、身をかがめたり、着物がまくれたりと目に見えない風の強さを感じさせるモチーフばかりです。風に対する反応の違いなども面白い作品でした。

31 河鍋暁斎 「暁斎漫画」
これは暁斎漫画で、骸骨たちが骨だけの傘を持って綱渡りしたり、喧嘩したり、集まって宴会?していたりと、様々な姿が描かれてます。右下のほうではタバコを吸っている骸骨がいて、吸ったそばから目から煙が抜けてしまっているのが可笑しく感じられました。こちらも人体骨格を知り尽くした暁斎ならではの見識とユーモアに溢れた作品です。

153 河鍋暁斎 「暁斎楽画 第四極楽の文明開化」
これは極楽が文明開化した様子を描いた作品で、洋服を着た仏?が人力車に乗っていたり、鬼が牛鍋を売っていたり、郵便局員の格好をした鬼なども描かれています。当時の世相を反映しているようで、若干皮肉がありそうな滑稽な雰囲気となっていました。
この隣にも地獄の文明開化を描いた作品がありました。散切り頭の閻魔やツノを切る鬼など、やはり当時の様子が伺えました。


ということで、2人の鬼才の作品を堪能することができました。あまり今まで意識したことは無かったですが、観ていて確かにこの2人には共通する部分は多いのかも!?と思わせるものもありました。この2人に描けない物は無さそう…w 予想以上に満足できる内容でした。


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