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よみがえる不朽の名作 土門拳の『古寺巡礼』 【FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)】

日付が変わって昨日となりましたが、土曜日の夕方に六本木のミッドタウンにあるFUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)で、よみがえる不朽の名作 土門拳の『古寺巡礼』を観てきました。この展示は2期に分かれていて、私が観たのは後期(第2部)の内容でした。

P1110422.jpg

【展覧名】
 よみがえる不朽の名作 土門拳の『古寺巡礼』
 第二部:『古寺巡礼』-浄土と禅宗世界への憧れ-平安後期から桃山

【公式サイト】
 http://fujifilmsquare.jp/detail/1306140123.html

【会場】FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)
【最寄】六本木駅/乃木坂駅


【会期】
 第一部:『古寺巡礼』-仏教文化の開花-飛鳥~平安前期
  2013年6月14日(金)~2013年6月27日(木)

 第二部:『古寺巡礼』-浄土と禅宗世界への憧れ-平安後期から桃山
  2013年6月28日(金)~2013年7月10日(水)
    ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていてゆっくり鑑賞することができました。

さて、今回の展示は著名な写真家の土門拳の仏教美術の写真に焦点を当てた内容となっています。土門拳は明治42年(1909年)に山形の酒田に生まれ、6歳の時に東京に移り住み横浜で育ったそうです。中学の時は画家を志望していたようですが、営業写真館の門下生を経て昭和10年(1935年)に日本工房に入社し、報道写真を撮り始めました。昭和14年(1939年)に室生寺を訪れると、魅せられて生涯を通してのテーマとなり、古寺巡礼の契機となったそうです。戦後になると土門拳はカメラ雑誌の審査員となりアマチュア写真家の指導を行うなど多大な影響を与え、伝統文化・人物・社会性の高いテーマなど、多岐にわたって代表作を残しました。昭和38年(1963年)には今回の展示のタイトルにもなっている「古寺巡礼」を刊行し、昭和43年(1968年)に脳出血の後遺症で右半身不髄となってからも長期休養後に車椅子で撮影を再開したそうです。さらに「古寺巡礼」の第5集の完成後も室生寺を撮り続けたそうで、「女人高野室生寺」を刊行しました。その後、昭和58年(1983年)に全作品を酒田市に寄贈し、現在では土門拳記念館に展示されているとのことです。展覧会にはそうしたお寺や仏像などの写真が並び、第二部は平安後期から桃山時代に作られたものが写されていました。詳しくは気に入った作品をいくつか挙げながらご紹介しようと思います。

土門拳 「妙喜庵待庵」
千利休が作ったと考えられる茶室で、元は天王山に作ったものを京都に移築してきたそうです。2畳しかない部屋に掛け軸が掛かっている様子が写されていて、壁などは古びた感じがします。掛け軸の書は流麗な印象で、部屋は直線直角が多い幾何学的な雰囲気でした。2畳の狭い部屋なのに広がりを感じ、静かな風格が漂っているようでした。

土門拳 「龍安寺」
有名な枯山水の庭を斜めに見る構図で撮った写真です。結構広々した感じで、所々に浮かぶ岩と白い石が、川の流れや一種の小宇宙のような趣でした。渋いです。
 参考記事:番外編 京都旅行 金閣寺エリアその2

土門拳 「室生寺」
これは今回のポスターにもなっている作品で、仏像の横顔のアップが写されています。目を閉じて穏やかな表情で、やや表面は剥落しているので時間の経過を感じさせます。真っ暗な背景だったせいか、時間が止まったような静けさを湛えていました。

土門拳 「永保寺会開山堂外陣 東面三手先詰組・北面海老虹梁」
これは鎌倉時代末期の唐様建築の「開山堂」の梁などを撮った2枚の写真で、お互いに木が組み合っている様子がアップで取られています。整然と規則正しく並ぶ幾何学性が美しく感じられ、梁を撮った写真も優美な線を描いていました。これは写真家の目の付け所も凄いと思います。

土門拳 「嵯峨野石仏郡」
これは樹の根元に7体程度の石仏が並んでいる様子が撮られた写真です。石仏や木の表面には苔が生えていて、石仏の顔は判別がつかないくらい摩耗してるなど悠久の時を感じさせます。画面全体に侘びた雰囲気があり、目に見えない湿気か冷気のようなものが写っているように思えました。

土門拳 「中尊寺大日如来坐像(一字金輪)全身・面相」
右手を握り、その中に左手の人差し指を入れる「智拳印」を結んでいる中尊寺の大日如来坐像を正面から撮った写真と顔だけのアップ写真です。冠をかぶり光背を背にしているのですが、いずれも優美な雰囲気で、全体的に丸みを帯びたふくよかな感じを受けます。解説によるとこれは藤原末期の作品だそうで、豊満な肉体に色気があるとのことでした。遠くを見渡すような目も印象的です。

土門拳 「中尊寺金色堂内陣正面全景」
阿弥陀如来を中心に観音菩薩・勢至菩薩が両脇に立ち、周りには地蔵菩薩や四天王(持国天・増長天)が並んでいる様子が撮られた写真です。すべて金色に輝いているのですが、ギラギラした感じではなく、神々しくも落ち着いた雰囲気で静かに光を放っています。周りの柱や須弥壇の装飾も華麗な細工が施されていて、藤原三代の栄華が偲ばれるようでした。
 参考記事:中尊寺の写真 (番外編 岩手)

土門拳 「三十三間堂内陣 千体千手観音立像群」
金色に輝く千手観音がズラリと並んでいる様子が撮られた写真です。やや斜め下から観た構図で、その数の多さが際立って感じられました。金色でこれだけの数の立像がいるのに静謐で整然とした雰囲気なのも興味深かったです。
この近くには三十三間堂の風神雷神を撮った写真もあり、特に雷神の顔のアップはまるで生きているかのような迫力がありました。
 参考記事:番外編 京都旅行 祇園~清水寺エリアその2

土門拳 「平等院鳳凰堂 大棟南端鳳凰詳細」
これは鳳凰堂の左側の鳳凰をアップで撮ったものです。今まさに飛び立たんとするような躍動感あふれる姿勢で、表情もキリッとしていて風格が感じられます。胸前だたりは金色の部分が残っていて、昔は金色だったのかなと想像させました。


ということで、満足度の高い写真展となっていました。仏教美術もこうして観せられるとまだまだ魅力に気づいていなかったのだと痛感させられた気がします。写真家独自の視点なども含めて興味深い内容でしたので、写真や仏教美術が好きな方は是非どうぞ。


 参照記事:★この記事を参照している記事


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