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モネ ユトリロ 佐伯と日仏絵画の巨匠たち フランスの美しき街と村のなかで 【ホテルオークラ アスコットホール】

前回ご紹介した大倉集古館の展示を観た後、ホテルオークラのアスコットホールで「第19回 秘蔵の名品アートコレクション展 モネ ユトリロ 佐伯と日仏絵画の巨匠たち フランスの美しき街と村のなかで」を観てきました。

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【展覧名】
 第19回 秘蔵の名品アートコレクション展
 モネ ユトリロ 佐伯と日仏絵画の巨匠たち フランスの美しき街と村のなかで

【公式サイト】
 http://www.hotelokura.co.jp/tokyo/special/art2013/

【会場】ホテルオークラ アスコットホール
【最寄】六本木一丁目/溜池山王/神谷町


【会期】2013年8月7日(水)~9月1日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日15時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
それほど混んでいたわけではありませんが、多くのお客さんで賑わっていました。

さて、この展覧会は毎年夏に開催されるチャリティの展覧会で、毎回テーマを変えながら今回で19回目となります。今年は19世紀後半から20世紀前半にかけてのパリとその近郊を描いた作品が95点ほど並んでいました。構成はいくつかの章に分かれていましたので、詳しくは気に入った作品とともにご紹介していこうと思います。
 参考記事:
  東京美術学校から東京藝術大学へ 日本絵画の巨匠たち (ホテルオークラ アスコットホール)
  文化勲章受章作家の競演 日本絵画の巨匠たち (ホテルオークラ アスコットホール)
  第15回秘蔵の名品アートコレクション展 ~日蘭通商400周年記念 栄光のオランダ絵画展~ (ホテルオークラ アスコットホール)
  

<第1章 19世紀パリの画家たち-自然と都会の共演>
まずは19世紀のパリの画家のコーナーです。19世紀中頃はパリの大改装によって中世の名残が消えていく一方、新たな技術と産業に支えられた近代的な市民生活が繰り広げたそうです。そしてこの大都会の絵画芸術も変わっていき、かつての古代・神話を描いた時代は終わり同時代の都市生活そのものが絵画の主題となっていきました。ここにはそうした時代の作品が並んでいます。

クロード・モネ 「菫の花束を持つカミーユ・モネ」
これはモネの最初の妻カミーユを描いた作品です。長椅子に腰掛け濃紺の服を着て、頭には赤い花と飾りがあり、左手に紫のスミレを持ってこちらをじっと見つめています。背景のカーテンや椅子も含め全体的に落ち着いた色合いで、やや重厚感がありました。可憐な雰囲気の女性像です。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 「帽子をかぶった二人の少女」
これはパステルの作品で、上の方は描きかけみたいな感じになっていました。白い帽子に赤いリボンを巻いた少女が2人描かれ、左の子は右の子の耳元に近づいて内緒話をしているように見えます。若干粗めな描写に見えましたが、可愛らしい雰囲気がありました。

この近くにはジュール・シェレのポスターやロートレックのリトグラフなどもありました。


<第2章 フランス郊外へ 1 郊外の森と庭へのプロムナード 光と影を描いた画家たち>
続いてはパリ近郊の村や南仏を描いた作品のコーナーです。

岡鹿之助 「積雪」
中央に川が流れる小さな町を描いた作品で、奥には山があり全体的に雪景色となっています。ルソーを思わせる素朴な作風ですが、橋の直線や三角の屋根など幾何学的な要素も多いかな。あまり影はなく平坦な印象を受けます。人っ子一人いない静かな雰囲気の作品でした。

モーリス・ド・ヴラマンク 「雪の村」
暗雲立ちこめる空の下、雪の積もった家とその前の雪道が描かれ、雪は泥が混じって黒っぽくなっている様子が描かれています。厚塗りされた大胆な筆跡がそのまま残っているため、描いた時のスピードが感じられます。この色合い・手法・題材はヴラマンクがよく手がけたものだと思いますが、印象的な強い色合いが好みです。

ヴラマンクは他にも2点あり、いずれも好みでした。その先にはロートレックのポスター(桟敷席の女性を描いた作品、カンカン踊りをしている女性たちを描いた作品)などもありました。

クロード・モネ 「橋から見たアルジャントゥイユの泊地」
これは高いところから見下ろすように川の停泊地を描いた作品です。やや暗く夕暮れの様子のようで、素早い筆致で簡素ながらも光が揺らめくように描かれていました。郷愁を誘う風景です。

クロード・モネ 「睡蓮」
これは水面に咲く睡蓮の花と葉が描かれた作品で、水面はもえたつように揺らめいています。とは言え、モネの睡蓮にしてはまだ具象的な感じで、ぽつんとした印象がありました。

この隣にも睡蓮を描いた作品があり、他には太鼓橋を描いた作品もありました。
 参考記事:番外編 フランス旅行 ジヴェルニー モネの家


<第2章 フランス郊外へ 2 ヴァカンス-南仏の陽光と日本への帰国>
続いては主に日本人の作品の並ぶコーナーです。(フランス人の作品もあります) 1910年~30年の頃、パリに滞在していた日本人画家は200人以上だったそうで、ここにはそうした画家の作品も並んでいました。

田中善之助 「坂道の家(カーニュ)」
坂の斜面に並ぶ家々と木々を描いた作品で、赤茶色で幾何学的な家は見た目からしてセザンヌからの影響を感じさせます。また、この地はルノワールが晩年に過ごした場所らしく、そういえばこういう風景の作品を見たことがあるような…(うろ覚え) 色合いが強めで、構成や配置も面白く力強い印象を受けました。

この近くにはルノワールの作品もありましたが、いまいちピンとこなかったw


<第3章 パリ-ユトリロと佐伯 1 モンマルトルの丘のユトリロ-セーヌ川右岸の町並みに見る視線>
続いては今回の展覧会のタイトルにも入っているユトリロと佐伯に関するコーナーです。まずはユトリロの作品が並びます。
 参考記事:モーリス・ユトリロ展 -パリを愛した孤独な画家- (損保ジャパン東郷青児美術館)

モーリス・ユトリロ 「雪の中のムーラン・ド・ラ・ギャレット」
これは丘の上に建つ風車が描かれた作品で、手前には雪の中を行き交う人々が描かれています。ややラフに描かれていてこれがユトリロの作品だと気づくのにちょっと時間がかかってしまったw 当時のモンマルトルの様子が伺えました。

このコーナーには8枚のユトリロが並び、モンマルトル界隈の様子が描かれていましたが、気に入ったものは特にありませんでした…。


<第3章 パリ-ユトリロと佐伯 2 モンパルナス界隈の佐伯祐三-セーヌ川左岸の町並みに見る視線>
続いては今回の展示のもう1人の主役である佐伯祐三のコーナーです。

佐伯祐三 「セーヌ河の見える風景」
セーヌ川とその周りの街を高いところから見下ろすように描いた作品で、空は暗く左の方は何故かはっきりせず赤茶色をしています。これは1924年の作品なのでヴラマンクから厳しい批評を受ける頃の作品だと思いますが、どこか沈んだ雰囲気に見えました。

佐伯祐三 「アンドレ・ド・リュー・ド・シャトー」
これはモンパルナスの街を描いた作品で、「TABAC」と描かれた看板の店などが壁が独特の質感で描かれ、うらぶれた感じが出ています。全体的にどっしりした色彩で重厚な印象を受けました。

佐伯祐三 「レ・ジュ・ド・ノエル」
これは2階建ての赤茶の壁の建物を描いた作品で、1回は緑色の壁で大きく黄色い文字でレ・ジュ・ド・ノエル(仏語)と描かれています。お店の中がガランとしていますが酒場のようです。建物は風化した感じのマチエールが面白く、佐伯ならではの作風となっていました。


<第4章 描かれ、構図となったパリとセーヌ川 - パリに憧れた日本人画家たちと共に>
続いては佐伯祐三以外の日本人画家や外国人画家のコーナーです。

荻須高徳 「パリ風景」
これはパリのアパルトマンらしき建物を描いた作品で、手前は坂道のようになったレンガ>が描かれています。壁はくすんでいてレンガにはイタズラ描きのようなものあるようで、建物からは顔を出している人が何人か見えます。建物の質感が面白く、これもうらぶれた感じが出ていました。佐伯祐三とは友人で、画風も似ています。

ジャン・デュフィ 「セーヌ川とパリ」
これはラウル・デュフィの弟の作品で、高い位置から見下ろすようにセーヌ川の両岸が描かれています。エッフェル塔の姿もありそれより高い視点になっているように見えるのがちょっと不思議。水彩のように淡い色彩でさらっと輪郭を軽やかに描くのはラウル・デュフィとよく似た画風でした。(というか兄の作品かと思ったw)


<第5章 エコール・ド・パリと1920-1930年代にパリで活躍した画家たち - 麗しき麗人>
最後は「エコール・ド・パリ」と総称されるパリに集まった異邦人画家達のコーナーです。特に女性を描いた作品が中心となっていました。

アメデオ・モディリアーニ 「若い女の胸像(マーサ嬢)」 ★こちらで観られます
細長の顔と首の女性が描かれた作品で、目は青くアフリカの彫刻のような顔立ちをしています。こうした特徴はモディリアーニならではで、個性的な作風です。背景はちょうど女性を中心に右が青緑、左が茶色に分かれていて、静かな雰囲気がありました。
この作品は松岡美術館の常設作品ですが、この近くにはキスリング、ドンゲン、シャガール、藤田嗣治などの松岡美術館の所蔵品が並んでいました。
 参考記事:エコール・ド・パリ展 (松岡美術館)

藤田嗣治 「2人の裸婦」
これは腰掛けている裸婦と立っている裸婦が描かれた作品で、細い輪郭線と胡粉のような乳白色で陰影がつけられています。藤田がパリで人気となった頃の画風で、藤田というとこうした画風が有名だと思います。スラっと描かれた輪郭が優美な印象でした。
 参考記事:よみがえる幻の壁画たち レオナール・フジタ展 (そごう美術館)

近くには赤十字が所有する「佛印メコン廣野」という作品もありました。
 参考記事:
  日本赤十字社所蔵美術展 -人道と平和への想い-(千葉県立美術館)
  日本赤十字社所蔵アート展 東郷青児、梅原龍三郎からピカソまで (損保ジャパン東郷青児美術館)

児島虎次郎 「西洋婦人像」
ソファに腰掛けて膝の上に本をおいてこちらを見ている婦人を描いた作品です。赤と青の線が入った服を着ているのが装飾的に感じられ、背景に花模様があるのもそう感じさせました。女性は強い目をしていて若干怒っているような顔にも見えましたw 好みの作風です。


ということで、今年も楽しんできました。肝心のユトリロに気に入るものがあまり無かったのと、後半は松岡美術館の品が多かったので目新しい感じはあまりしませんでしたが、日本人画家の作品などは好みでした。会期も残り少ないので、気になる方はお早めにどうぞ。

 参照記事:★この記事を参照している記事


 
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