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イタリア版画展―新収作品を中心に 【国立西洋美術館】

前回ご紹介した展示を観た後、同じ国立西洋美術館の常設にある版画素描展示室で「イタリア版画展―新収作品を中心に」を観てきました。

P1120647.jpg

【展覧名】
 イタリア版画展―新収作品を中心に

【公式サイト】
 http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2013italia.html

【会場】国立西洋美術館 版画素描展示室
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)


【会期】2013年9月6日(金)~11月17日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
こちらは空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、今回の展示はミケランジェロ展と同じ会期で行われ、新しく西洋美術館のコレクションに加わったイタリアの版画を展示するという内容です。いくつかシリーズ物があったりしましたが、作品同士の繋がりやテーマはそれほど感じられなかったかな。解説も少なめでしたので、簡単に気に入った作品だけご紹介していこうと思います。なお、この展示はルールを守れば写真を撮ることもできましたので、写真を使っていこうと思います。

マルカントニオ・ライモンディ 「マルス、ヴィーナスとキューピッド」
P1120658.jpg
これは戦争の神マルス、美の女神ヴィーナス、その息子のキューピッドが描かれ、マルスは足元に鎧と盾を置いて休んでいるのかな。この二人は愛人関係ですが、何だかヴィーナスは嫌そうでキューピッドも隠れているように見えました。何かの意味がありそうですが、詳しくは分からず。

サイコロ印の版画家 「ヤギに乗る子供のいるフリーズ」
サイコロ印の版画家 「[愛の勝利]のフリーズ」
P1120662.jpg
どちらも裸の子供が行進している図で、下の子供は背中に羽が生えているのでキューピッドかな? 楽器を打ち鳴らしたり仮面を被ったりと楽しげな雰囲気に見えます。作者の名前が変わっているのでサイコロ印を探したものの、画面にはなさそうでしたw

マルカントニオ・ライモンディ/アゴスティーノ・ヴェネツィアーノ(本名アゴスティーノ・デイ・ムージ) 「魔女の集会(ストレゴッツォ)」
P1120669.jpg
これはルネサンス期でも奇抜な主題の版画として有名だそうで、ライモンディが制作した版画をアゴスティーノが手を加えたと考えられるそうです。骸骨のような奇妙な怪物やどこかに行進する魔女?が不気味で動的な印象を受けます。こうした人物像にはミケランジェロやデューラーからの引用が観られるそうです。

ドメニコ・ベッカフーミ(本名ドメニコ・デッラ・パーチェ) 「ふたりの男」
P1120672.jpg
これはルネサンス期の少し後のマニエリスムの時代の作家によるもので、この2人は何をしているのか分からないようですが、奇妙なポーズをしています。喧嘩しているわけでもなさそうだし、何かを見つめているのも気になります。解説によると、こうした複雑なポーズはこの時代ならではの独特なものなのだとか。

モノグラミストM 「虚栄と死」
P1120674.jpg
これは一種のヴァニタス画(人生の虚しさを表す絵)らしく、鏡を覗くのは虚栄、後ろの砂時計を持っている骸骨は時間の経過と死を表しているようです。作者のことはよく分からないようですが、ミケランジェロ原画の版画として名高いらしく、動きのある人体表現でした。

オラツィオ・スカラベッリ 「『トスカーナ大公フェルディナンド一世とクリスティーヌ・ド・ロレーヌの結婚式』:第5の凱旋門:カント・デ・ビスケリ」
P1120693.jpg
これは何枚かあったシリーズもので、建物(凱旋門)が描かれたものが並んでいました。特にこの作品は遠近感が強くて奥へと道が続いている感じがよく出ていました。

バルトロメオ・コリオラーノ 「ユピテルの雷電に押し潰される巨人族(上部)(グイド・レーニ原画)」
バルトロメオ・コリオラーノ 「ユピテルの雷電に押し潰される巨人族(下部)(グイド・レーニ原画)」
P1120711.jpg
この作品は「キアロスクーロ木版」という複数の木版を用いて陰影を強調する技法で作られているそうで、石に彫り込まれているような感じに見えました。巨人とユピテル(ゼウス)との戦いが劇的で、バロック時代のグイド・レーニの作品を版画化したものだそうです。

ステーファノ・デッラ・ベッラ 「『死』:(5)老人を墓に連れ込む死」
P1120718.jpg
これは死を擬人化したシリーズで、砂時計を差し出す骸骨と連れ込まれていく老人の姿があります。何とも恐ろしげで、やはり砂時計といえば時間の経過を表しているようでした。

ステーファノ・デッラ・ベッラ 「」
P1120722.jpg
この男は喜劇役者だそうで、下に書かれた文字には役者としての幸運と人間としての不運が書かれているそうです。また、背景に見えるのはパリのシテ島で、パリでの成功を示唆しているとのことでした。陽気そうで卑近な感じの人物に見えました。

ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ 「『スケルツィ』:燃える頭を指し示す魔術師」
P1120728.jpg
これは夢のなかのような世界を描くカプリッチョで、魔術師?が右下に描かれた焚き火の中の頭部を指さしています。生首みたいで怖いw 様々な線や点を駆使して質感を出しているとのことでした。


ということで、様々な作品を楽しむことができました。当時の世相や寓意、宗教観など色々な要素が含まれているのではないかと思います。この美術館は常設も充実しているので、特別展を見に行く際には常設も覗いてみることをお勧めします。


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