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知られざるタオの世界「道教の美術 TAOISM ART」 -道教の神々と星の信仰- 【三井記念美術館】

最近、自分の行った順とブログで紹介する順が違っているのですが、10日くらい前の仕事帰りに、三井記念美術館で<特別展 知られざるタオの世界「道教の美術 TAOISM ART」 -道教の神々と星の信仰->を観てきました。普段は仕事帰りには閉館してしまっていますが、8/11(火)~8/15(土)はナイトミュージアムということで20:00まで開館していました。去年もその時期にナイトミュージアムをやっていたので、毎年この時期だけやっているのかもしれません。金曜か土曜だけでも毎週この時間までやってくれればいいのに…。

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【展覧名】
 特別展 知られざるタオの世界「道教の美術 TAOISM ART」 -道教の神々と星の信仰-

【公式サイト】
 http://www.mitsui-museum.jp/exhibition_01.html

【会場】三井記念美術館
【最寄】銀座線三越前/新日本橋駅/東京駅/神田駅
【会期】2009年7月11日(土)~9月6日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
 ※写真は携帯電話で撮影しました。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間45分程度

【混み具合・混雑状況(特別な時間なので参考にならないかもしれません)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
ぐるっとパスで入館。この日は滅多に無い18時以降の開館のせいか、混んでいるほどではなかったですが、結構人がいました。 そもそも「道教」って何?って感じですが、その辺も含めて解説機やボードで説明がありました。僭越ながら簡単にご説明しますと、道教は日本でいえば神道のような民間信仰の多神教の宗教で、一応、老子が祖ということになっています。道(タオ)というのは真理のことかな。不老長寿を理想として、陰陽五行の思想に基づき、風水とかも道教です。道士という僧の格好を見て20年くらい前に流行った「来来!キョンシーズ」を思い出しましたw 詳しくはwikiなどで読んでみると面白いと思います。
 参考:道教のwiki

日本の文化にも道教が相当根深く浸透しているのが分かる展示内容になっているので、それに驚きながら観ていました。 部屋ごとに気に入った作品をご紹介します。なお、会期中に6回の展示入れ替えがあるようです。詳しくは公式ページのPDFでご確認ください。

<展示室 1> 中国古代の神仙思想/道教の成立/道教の尊像
仙人像 [羽人] ★こちらで観られます
動物みたいな顔をしていますが、合わせ襟の着物を着て手のひらを向かい合わせにして座っている姿は人のようでもあります。 これは空飛ぶ仙人「羽人」で、「羽人」は不老不死を得た者とのことでした。先述のように道教は不老長寿を目指していて、それを神仙思想というようです。 そんなことを知らなかった私は、何故古代の像はこういう動物や宇宙人のような奇怪な姿をしているのが多いのだろう… と趣旨とは違うことを考えていましたw 猫人間みたいでちょっと可愛いです。

蓬萊鏡
蓬莱山は道教の伝説です。というか、中国から来た伝説は道教の可能性大ですw 福・禄・寿の象徴らしく、真ん中には鶴・亀・松といった長寿を象徴するものも描かれていました。 鶴と亀も道教…。これは段々えらいことになってきた(><)

瑞図五山文八花鏡
ふちが8枚の花びらのようになっている鏡です。真ん中に紐を通す突起があり、その四方に山が描かれています。この突起+4つの山=5つの山は五山の聖地の象徴とのことでした。(京都五山の五山は道教の五山にちなんだのかな?と思いましたがそこまではわかりませんでした) 龍や亀、十二瑞、十二支が番で右回りに配されていておめでたい鏡でした。十二支も道教…。1つ1つの作品が勉強になります。

正統道蔵 唐玄宗御註道徳真経
現存で最古の道蔵です。道蔵ってのは道教のお経みたいなものらしく、世界に数セット(4セット?)しかない貴重なものとのことでした。お経と違うのは、図解入りで儀式のようなものが描かれているところでした。結構面白いです。

道教三尊像
道教にも三尊像があるのか!と驚きました。格好は着物を来た中国人みたいですが、顔は穏やかな仏っぽく確かに三尊像です。後ろには龍がいました。後のコーナーでよくわかりますが、道教と仏教は日本の神仏習合のようにかなり混じっている部分があり、こういう仏教っぽい作品も多くありました。1部屋見ただけで、道教がどんどん身近に感じてきたw

<展示室 2>
道教三尊像(老君)
これも三尊像です。真ん中には神格化された老子がいて、左右はお供です。仏教の影響で5世紀くらいから偶像を作り始めたとの説明がありました。老子も教祖に祭り上げられたみたいだし、その辺の流れは民間信仰らしさを感じます。台座には狛犬か獅子みたいなのがいましたが、狛犬かどうかはわかりませんでした。

<展示室 3> 関帝廟(かんていびょう)など道観(どうかん)(道教の寺院)の写真展示 等
「三清 玉清元始天尊」、「三清 上清霊宝天尊」、「三清 太清道徳天尊」
3人の肖像画が並んでいました。これは道教の寺院の「道観(どうかん)」に持参して儀式に使うものらしいです。そのため、使い込んでいるので保存状態が良くないとのことでした。(それが逆に生々しい感じがします。) 絵のタッチとしては教科書に出てくる聖徳太子の絵を想起するものがあったかな。3人から迫力を感じました。

<展示室 4> 道教の神々/日本における道教の影響
円山応挙「蓬萊山図」 ★こちらで観られます
先述の通り、蓬莱山は道教で、その影響は日本にも及びました。これは応挙の作で、細かくて優雅な感じの作品です。手前の水流は淡い色だけど力強い印象がありました。鶴が二羽、松などおめでたい取り合わせも道教の影響でしょうね。

三井高就「荘子図」
額縁のような円の中に眠り込んでいる人が描かれています。その円からひじだけが出ていて、額縁から飛び出したように見えるので騙し絵展のトロンプルイユを思い出しました。
顔は非常に細かく描かれているのに服はさらさらっと描かれた感じでした。気持ちよさそうに眠り込んでして、夢と現実のはざまにいるような雰囲気の絵でした。

十王図 4 幅の内 3 幅
十王って道教にもいるのか!?と驚きました。流石に仏教だと思ってたのですが…。(十王というのは5番目の王が有名な閻魔大王です。) 道教と仏教の十王はほとんど差が無いとのことでした。手前で鬼が亡者を拷問したり、紙を亡者に渡していて、閻魔は手を組んでじっと見ているようでした。 絵も面白いですが、文化というのは面白いなーと興味津々で観ていました。

面然大士図 [焔口餓鬼]
狂気を感じるおどろおどろしい餓鬼の絵です。妖気が漂っていて、鬼太郎の妖怪レーダーがビンビンに反応しそうw 菩薩の化身が上部にいて、餓鬼の後ろには小さな文字で、天道・人道・餓鬼道・地獄道・畜生道・修羅道と書かれていました。完全に仏教と混じってますね。六道は流石に仏教の影響だと思いますが日本の神仏習合のような現象が中国でも起こっていたのかと思うと益々面白いです。

狩野芳崖筆 「蝦蟇仙人図 [模写]」  李鐵拐図 [模写]
これは顔輝の作品を狩野安信が模写したものをさらに芳崖が模写した作品です。左は背中に蝦蟇蛙がのている蝦蟇仙人、右は口から自分の分身が出ている鉄拐仙人です。去年、東博で「対決-巨匠たちの日本美術」の雪舟vs雪村のコーナーに雪村の蝦蟇鉄拐図がありましたが、それを思い出しました。魂が飛んでいく様子とかSFですねw

楊津「関聖帝君像」 ★こちらで観られます
この関聖帝君というのは三国志の関羽を神格化した神です。目が細くてひげが風でなびいています。ちょっと太っていますが目つきが鋭く威厳がありました。 関羽を神格化したという話は知っていましたが、そんなところも、日本の○○神社みたいな神格化ですね。

三浦梧門「鐘馗壌魔図」
五月の節句でよく観る鐘馗様も道教らしいです。彼も神格化された人で、元は科挙の試験に落ちて自殺した人らしいです。(私にはそっちのほうが衝撃の事実でした) 皇帝が病気になったとき、夢に現れて邪鬼を退治し、病気を平癒させたという伝説から神となりました。この絵も刀を持っていて足元で邪鬼を押さえつけていました。何故か目線が別の画面外にあったのが印象的でした。

安倍晴明蘇生図
最初の方に書きましたが、陰陽や風水は道教です。この絵は安倍晴明が死んだときに閻魔大王に頼んで生き返してもらったという話を描いています。閻魔にひざまづいている安倍晴明がかかれ、不動明王や、小さい亡者をいたぶっている鬼も描かれてていました。そんな伝説も初めてしりましたが、この絵に描いてあるもの全ても道教の範疇…。恐るべしです。

浦島絵巻
これは浦島太郎としては2番目に古い巻物らしいです。よく知られた物語とちょっと違って、最後は鶴に生まれ変わって亀の化身である乙姫と結婚するハッピーエンドになっているのだとか。かなり素朴な絵で庶民向けだったらしいですが、長寿や縁結びとしておめでたいものだったようです。浦島って長寿と言われれば長寿ですね。その発想は無かったw

<展示室 5> 道教の経典/陰陽道・道教と星の神々
狩野永納 「泣不動縁起 [模本]」
全体的に深い青色で鮮やかな絵です。妖怪が舞い飛んでいて、坊さん達が話しています。陰陽の儀式かな? もう道教も仏教も神道も何でもござれになってよくわかりませんw

天文成象
この展覧会のサブタイトルには「星の信仰」という言葉がありますが、このコーナーには天文関連の作品が多くあります。これは日本初の実測星図で、星と星の間には線が引かれて星座を描いていました。結構、しっかりした星図みたいです。(しかし、何故いきなり星図?という疑問はすぐに解けます) 近くには天球儀もありました。

校正北斗本命誕生経序
擬人化した北斗九星の像です。北斗七星じゃないの?死兆星でもあるの??と思いましたが、確か何も解説は無かったと思います。 格好はキョンシーに出てくる道士そのもので、キョンシーのお札に書かれてある呪文のようなのも描かれていました。星も崇拝の対象だったんですね。それで星図を作ったのか!と納得しました。

谷文晁「五星廿八宿神形図巻」
星や星座の神々を描いたものです。亀に乗っている神、天秤を持っている神、馬の阿修羅みたいな神、牛に乗っている神、鳳凰みたいなのに乗っている神など様々でした。星占いのマスコットみたいな感じだったんでしょうかね??

<展示室 6> キトラ古墳天文図および壁画四神図写真展示
ここはキトラ古墳の壁画の写真のコーナーでした。白虎や尻尾が長くて蛇のような玄武が描かれていました。これは陰陽五行に基づいているそうです、また、天文図の写真もありました。これは不正確で写し間違いがあるようですが東洋でも最も古い天文図の1つらしいです。

<展示室 7> 星宿信仰の展開
土佐光芳 「九曜星図」
9枚の神の絵がずらーっと並んでいます。日、月、火星、水星、木星、金星、土星の7星に、日食・月食(羅こう)、彗星(計都)を含めた9星でした。日と月は似ていて、馬が足元から出てる神とあひるっぽい鳥が出ている神でした。他にも明王みたいな赤い四本の手の神や、牛に乗った老人、琵琶のような楽器をひいてる女性、書き物をしている女性、ほとんど同じような2人の神(3面の赤い顔で三つ目の明王? 頭の上の蛇の数が1匹か3匹かの違いでした) と言う感じで、様々な神が描かれていました。どれがどれだか分かりませんが、信仰の対象としてここまでキャラ付けされていたとは知りませんでした。

七星如意輪観音像
柄杓方に輝く北斗七星の下に、足を崩して座る如意輪観音がいて、周りには眷属と思われる者がいます(かすれててよく分かりません) もう道教なの仏教なのかよくわかりませんw 色んなものが混じっている感じです。如意輪観音を観てたら3月頃の三井寺展を思い出しました。

星曼荼羅図
仏を真ん中に、北斗七星、九曜星、十二宮、二十八宿の化身が円になっているのが描かれている曼荼羅です。ここで驚くのが十二宮です。これは星占いの十二宮(ギリシア神話のやつ)と同じとのことでした。どうやら6世紀くらいには中国に伝わっていたようですが、まさか日本にも伝わっていたとは知りませんでした。サソリとか当時の日本人に分かるのかよw 本当に道教の多様性には驚きっぱなしです。

大将軍神坐像
頭が大きい神像です。あちこちにノミの跡があって逆に力強さがありました。

作品名は忘れましたが、七夕に関する作品もいくつかありました。(もうそれくらいでは驚きませんw) しかし、七夕の話も元は両性具有の神が男女の神に分裂した話だったという話は初耳でした。その2人が1つになるというのは神聖なことらしいです。陰陽思想とも関係あるのかな?と思いながら観ていました。


ということで、驚いたことだけ書いたつもりが超長文になりました。こんな感じで驚きの連続で、まさかここまで道教は我々の文化に根付いているとは知りませんでした。今後の東洋美術を観る上でもだいぶ参考になると思われ、中国と日本の文化のつながりをずっしり感じる展覧でした。 説明が多いので理解度4にしましたが情報量が半端じゃないですw
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Comment
No title
私もこのお盆期間に2回目の道教展示を見に行きました。
展示替えに合わせて3回は行かないと、東京での展示品全てを見ることができないです。
そして2回も行っておきながら、まだ記事を書いていないことが今判明。
TBしようとしたら、記事が観賞記録の4行だけしかなかったです。

電話帳のような図録も買ったので、何とか記事にしたいと思います。
Re: No title
3回は流石に厳しいですが、私ももう1回くらいは行きたかったかも。
これだけ参考になる展示は貴重なので、図録を買おうか悩んだのですが閉館間際で買わず終いでした。
いつも私の気づかなかったことを書かれているので、memeさんの記事も楽しみにしています^^
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三井記念美術館で開催中の 特別展「知られざるタオの世界 道教の美術―TAOISM ART-道教の神々と星の信仰-」に行って来ました。 7月11日に始まって早々に出かけたにも関わらず、今頃感想を…とにかく色々見所あり過ぎていくらまとめようとしても、まとまらない。...
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