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京都―洛中洛外図と障壁画の美 【東京国立博物館 平成館】

この前の土曜日に、上野の東京国立博物館 平成館で会期末となった「京都―洛中洛外図と障壁画の美」を観に行ってきました。この展示は既に終了していますが、今後の参考として記事にしておこうと思います。期間によって前期・後期に分かれていて、私が行ったのは後期の内容でした。

P1130400.jpg

【展覧名】
 日本テレビ開局60年 特別展「京都―洛中洛外図と障壁画の美」
【公式サイト】
 http://www.ntv.co.jp/kyoto2013/
 http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1610

【会場】東京国立博物館 平成館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)


【会期】
 前期展示:2013年10月8日(火)~11月4日(月・休)
 後期展示:2013年11月6日(水)~12月1日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
会期末だったこともあり、非常に混み合っていて何処でも人だかりができていました。特に岩佐又兵衛の「洛中洛外図屏風 舟木本」は人の頭しか見えないくらいで、見るのに苦労しましたw

さて、今回の展示は室町時代から江戸時代に渡り京都の賑わいが描かれた「洛中洛外図」の作品群と、京都御所、龍安寺、二条城の障壁画が並ぶ展示となっていました。ちょっと無理矢理1つの展示にまとめられた感じもしましたが、それぞれ章ごとに優品が並んでいましたので、気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<第1部 都の姿─黄金の洛中洛外図>
今回のテーマである洛中洛外図は、京都のパノラマの中に四季を巡らせ武家の屋敷や名高い寺社、観光名所を取り上げ、そこに生活する人々を描き出した風景画のことで、その始まりは応仁の乱によって荒廃した京都の街が復興し、長らく途絶えていた祇園祭が復活した1500年頃に生まれたそうです。室町時代に描かれた洛中洛外図は3作品のみ知られていて、上京と下京を中心とする画面となっていたようですが、江戸時代には新たな姿となり、徳川家康の建てた二条城を中心とした洛西地域と、京都御所と洛東(つまり豊臣秀吉が築いた方広寺大仏殿)が対になって描かれるようになったそうです。これは徳川幕府が朝廷を飲み込み京都を支配する立場が表されたものらしく、洛中洛外図はその時代の政治的な意図を反映していたようです。ここにはそうした各時代の洛中洛外図が並んでいました。

まず最初に岩佐又兵衛「洛中洛外図屏風 舟木本」を4面の大画面で映すコーナーがありました。これは分かりやすいけど無駄にでかいw 日テレの開局記念の展示だけあってこうした映像技術を駆使した展示となっていますが、正直このスペースにもっと作品を展示して欲しかった。映像技術とかどうでもいいや。

4 岩佐又兵衛 「洛中洛外図屏風 舟木本」 ★こちらで観られます
こちらは6曲1双の屏風で、右隻は大仏殿や秀吉を祀る豊國神社、三十三間堂など四条河原付近の様子が描かれ、左隻には祇園祭の山車や御所、二条城などが描かれています。解説によると、これは東寺の五重塔から描いたと考えられるようで、かなり詳細かつ緻密に京都の様子が描かれています。人々の感情までも伝わってくるような描写で、賑わいと共に生活感もよく表されていました。
 参考記事:
  番外編 京都旅行 祇園~清水寺エリアその2
  番外編 教王護国寺 (東寺)の写真

1 「洛中洛外図屏風 歴博甲本」
これは室町時代に作られた最古の洛中洛外図屏風で、右隻は上京 左隻は下京が描かれています。上京は雪景色の愛宕山、金閣寺、龍安寺、中央に足利将軍邸があり、下京は比叡山、鴨川、御所などが描かれているようで、それぞれに名前がついています。解説によると、これは上京の幕府と下京の御所を対比することで公武の均衡した力関係を示しているようです。また、相国寺で描かれたとのことでしたが、左右の位置関係が東西逆に思えるのは現代人の感覚かなw 街には金泥の雲がたなびき、のんびりした雰囲気がありました。

7 「洛中洛外図屏風 池田本」
こちらは6曲1双の屏風で、右隻に方広寺 左隻に二条城が描かれた江戸時代の典型的な構図となっています。鮮やかな緑と立体的な厚みのある金雲が華やかな印象で、街路をジグザグに描き町家を多く描くなど、その繁栄ぶりを強調しているそうです。また、右隻には山鉾巡行らしきものが練り歩き、右隻の左のほうには東福院和子の入内の行列があるなど、人々もぎっしり描き込まれていました。豪華絢爛で重厚な作品です。


<第2部 都の空間装飾─障壁画の美 1 王権の象徴─京都御所>
続いては洛中洛外図に描かれた建物の中を飾った障壁画についてで、御所、龍安寺、二条城について章分けされていました。戦国時代の織田信長・豊臣秀吉・徳川家康といった天下人たちは京都御所を始め公家たちの屋敷を建て、金銀を朝廷に贈ることで京都支配の正当性を認めさせていたようです。さらに政治的な影響力を持った寺院への後援となり、自らは安土城・聚楽第・二条城といった巨大な城を築くなど稀に見る建築ブームと言える状態だったようで、建物の内部は天下人の意向を表すように金箔を張り巡らせた豪壮で華麗な障壁画で飾りたてました。建物や各部屋は機能や役割によって序列が定められ、障壁画はその序列に応じた画題や技法が使われたそうで、これらの障壁画に絵筆をふるったのは信長・秀吉に仕えた狩野永徳や、家康に使えた狩野探幽など狩野一門の一流の絵師たちだったようです。ここにはまず御所の障壁画が展示されていました。
 参考記事:番外編 京都旅行 京都御所

8 狩野孝信 「賢聖障子絵」 ★こちらで観られます
これは10枚の障壁画で、前期後期で半分ずつ?展示されていたようで全体ではもう少し枚数が多いセットのようです。ここには全部で32人の中国の賢人・聖人(展示で観たのは20人くらい)が描かれていて、後水尾天皇の御所の紫宸殿(最も重要な儀式を行う建物)に飾られていたそうで、太い輪郭で描かれた人物像が並びます。不思議と皆右向きの立ち姿で描かれているのですが、これは20人の目線の先に天皇の玉座があった為のようです。ずらりと並ぶ姿は壮観で、狩野派らしい作風に思えました。

9 狩野永徳 「群仙図」 ★こちらで観られます
これは秀吉の命によって建てられた仙洞御所(天皇退位後の御所)の寝殿を飾った襖絵で、17面がずらりと並んでいました。仙洞とは世俗を離れた仙人の住む場所のことで、ここには沢山の仙人たちが描かれ、膝の上に蛙を載せる蝦蟇仙人や口から何か(己の分身)を飛ばす鉄拐仙人、鶴に乗った仙人(控鶴仙人?)などユニークな仙人たちがのんびりと暮らしている様子が描かれています。輪郭は太めで、永徳といえば豪放なイメージですが、こちらの作品では穏やかな雰囲気がありました。結構ボロボロなのがちょっと残念。


<第2部 都の空間装飾─障壁画の美 2 仏法の荘厳─龍安寺>
続いては龍安寺についてのコーナーです。まず大きな部屋に4Kの映像で有名な枯山水庭園の四季の様子が流されていました。いずれの季節も見応えがありますが、私が好きなのは秋かな。これもやけに映像に力が入っていましたが、このスペースがあったらもっと作品を…w
 参考記事:番外編 京都旅行 金閣寺エリアその2

15-16 「琴棋書画図襖」
これは龍安寺の方丈の間の旧襖絵をその場を再現するように部屋を囲う形で展示されていたもので、文人が嗜むべきとされていた琴、棋(囲碁)、書、画の4つを題材にしていて、そのうち「書」の襖絵は失われてしまっているようです。金地を背景に中国風の人々が巻物を広げていたり、従者が琴を持っていたり、碁に興じていたりとのんびりとした光景です。いずれも太い輪郭で岩などは力強く描かれている一方で、花などは可憐な印象を受けます。恐らく狩野派の作風だと思いますが、全体的に雅な作品となっていました。

14 「列子図襖」 ★こちらで観られます
これは4面の襖絵で、金地を背景に中国風の人々が右から2番めの襖に描かれた人を見ているようです。これは風を操って空を飛んでいる列子の姿らしく、人々は列子に指をさしていたり お互いに話しているような動きのあるポーズをしています。解説によると、この作品は明治維新の頃の廃仏毀釈によって海外に流出したようで、今はメトロポリタン美術館の所蔵となっているそうです。また、この隣には同様に海外に流出した「群仙図襖」(★こちらで観られます)もありましたが、こちらは英国人の尽力によって龍安寺の元へ戻ったそうです。この2作品はそれ以来久々の顔合わせということで1つの見どころとなっていました。


<第2部 都の空間装飾─障壁画の美 3 公儀の威光─二条城>
最後は二条城の障壁画のコーナーで、ここが一番圧巻の展示方法となっていました。二条城は狩野探幽をリーダーに3000枚にも及ぶ障壁画・襖絵を描いたそうで、ここにはその一部を再現して展示していました。
 参考記事:
  二条城展 (江戸東京博物館)
  番外編 京都旅行 二条城

19-1 狩野尚信 「桜花雉子図 二の丸御殿 黒書院二の間」 ★こちらで観られます
19-2 狩野尚信 「楼閣山水図 二の丸御殿 黒書院二の間」
これは15代将軍慶喜が大政奉還の考えを発表する前に近臣に述べたと言われる黒書院二の間の障壁画で、部屋全体に金地を背景とした白い桜が描かれています。上下2段となっていて、上は水辺の建物や松などを描いた楼閣山水図なのですが、上は遠近感がある一方で下段は大和絵風の平面的な画面に思えました。金地に白い花は非常に可憐で、雅な雰囲気の空間となっていて、この展示方法には驚きました。

18-1 狩野尚信 「松桜柴垣禽鳥図 二の丸御殿 黒書院一の間」
18-2 狩野尚信 「楼閣山水図 二の丸御殿 黒書院一の間」
こちらは将軍が執務を行う黒書院一の間の障壁画で、やはり上下2段の構成となっています。上段は桜や舞い飛ぶ燕が描かれ、下段は水辺の桜や、正面に描かれた雪を被った堂々たる松、左側には楼閣と水辺の風景なども描かれていました。つまり黒書院の障壁は雪解けの早春から始まり、春爛漫、夏へと向かう時期といった感じに季節の移り変わりまでもが描かれているようです。 こちらも先ほどの二の間と同じく雄大ながら雅な感じがして、戦国時代の荒々しい絵に比べて太平の世に相応しい表現に思えました。

20 狩野探幽 「松鷹図 二の丸御殿 大広間四の間」 ★こちらで観られます
最後は大広間四の間の障壁画で、ここは大名が揃って将軍に謁見する部屋です。緑鮮やかな巨大な松が描かれ、松には大きな鷹がとまっていて威厳を感じさせます。解説によると、鷹は武家を象徴する鷹狩を題材としているようで、支配者の権威を示しているようです。圧倒されるような松のボリュームと共に鷹の緊張感が将軍との謁見の場所に相応しい雰囲気でした。


ということで、作品数は少ないですが貴重な作品を見ることができました。とは言え映像コーナーが無駄に広いので、ちょっとそこは残念だったかな。後半の黒書院の再現などは見事だっただけに惜しい感じです。かなり混雑していましたが参考になる内容でした。


 参照記事:★この記事を参照している記事
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