横山大観展:良き師、良き友-師:岡倉天心、そして紫紅、未醒、芋銭、溪仙らとの出会い(感想前編) 【横浜美術館】
前回ご紹介したカフェに行く前に、横浜美術館で「岡倉天心生誕150 年・没後100 年記念/『國華』創刊125 周年/朝日新聞創刊135周年記念事業 横山大観展:良き師、良き友-師:岡倉天心、そして紫紅、未醒、芋銭、溪仙らとの出会い」を観てきました。この展示は既に終了していますが、参考になる展示でメモも多く取りましたので前編・後編に分けてご紹介しようと思います。なお、この展示は前期・後期で展示替えがあり、私が観たのは最終日の後期の内容でした。

【展覧名】
岡倉天心生誕150 年・没後100 年記念/『國華』創刊125 周年/朝日新聞創刊135周年記念事業
横山大観展:良き師、良き友-師:岡倉天心、そして紫紅、未醒、芋銭、溪仙らとの出会い
【公式サイト】
http://www.taikan2013.jp/
【会場】横浜美術館
【最寄】JR桜木町駅/みなとみらい線みなとみらい駅
【会期】2013年10月5日(土) ~11月24日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
混雑_①_2_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
最終日に行ったこともあり、非常に混んでいてどこもかしこも人だらけというくらい混んでいました。最近忙しくて会期末の展示ばかり観ているという悪循環になっていますw
さて、今回の展示は横浜出身で日本の近代美術に大きな足跡を残した岡倉天心の生誕150年、没後100年、「國華」創刊125年というメモリアルイヤーで、その教え子である横山大観を中心に仲間たちとの関係にスポットをあてるという内容となっていました。大観の初期から晩年にかけてテーマに沿って章分けされていましたので、詳しくは章ごとに気に入った作品を通してご紹介していこうと思います。
参考記事:五浦六角堂再建記念 五浦と岡倉天心の遺産展 (日本橋タカシマヤ)
<第1章 良き師との出会い:大観と天心>
まずは横山大観と岡倉天心についてのコーナーで、ほぼ大観の作品が並んでいました。横山大観は明治元年に水戸藩士の長男として生まれ、明治22年に東京美術学校で岡倉天心に出会いました。横浜育ちの岡倉天心は人並み外れた英語力を備え、東洋思想にも精通していて、アーネスト・フェノロサの通訳として京都・奈良の古社寺訪問に随行し、、そこで優れた美術こそ日本の特質を世界に伝える術であることに目覚めたそうです。やがて天心は日本美術の振興に力を尽くすようになり、欧米の美術に追随することなく近代性を伴う新たな日本画創造の重要性を説きました。大観はそうした天心の影響を受けたのですが、天心が怪文書によるスキャンダルで東京美術学校の校長の座を追われてしまうと、大観は橋本雅邦、下村観山、菱田春草らと共に天心に付き従って同校を離れ「日本美術院」を設立します。そして天心の理想主義を貫いた大観と春草は描線を排する「没骨法」と色彩の研究に取り組みました。しかしこれは当時「朦朧体」と揶揄されたそうで、世間的には受け入れられないものだったようです。 その後 日本美術院は運営に行き詰まってしまうと、茨城県の五浦(いづら)に移転し、大観も一家をあげて引っ越したようです。しかし貧苦の中でも理想を求める制作態度を曲げず、写実を越えて対象を捉え品格と情趣をたたえながら迫真性を持つ絵画の追求に邁進していきました。
また、天心の勧めで大観は春草とインドや欧米を旅行し、海外の美術や文化に接したそうで、その後 明治40年には朦朧体を離れた新たな境地へと向かったようです。ここにはそうした時代までの初期からの作品が並んでいました。
[天心との出会い]
2 横山大観 「仏頭写生」
これは学生時代の写生作品で、目をつぶった仏像の頭が描かれていて耳の一部は破損しています。陰影がつけられ立体的な感じで、写実的に描かれています。大体は輪郭が使われているのですが、一部は輪郭を使わない表現も観られました。若い頃から高いデッサン力が伺えます。
この辺は学生時代の模写などが並んでいました。
9 横山大観 「井筒」
これは木の柵で囲まれた井戸の周りに、着物の少年と少女が顔を隠しあいながら会っている様子が描かれ、周りには白い花々が描かれています。解説によると、これは伊勢物語の「筒井筒」を題材にしたもので、幼馴染の男女が成長と共に気恥ずかしさを覚えるようになり疎遠となっていったものの、歌を詠み交わしやがて結ばれていくという話です。近づきつつも伏せ目がちな表現からは確かに恥じらいが感じられるかな。装飾的な白い花も相まって可憐な印象を受けました。
[日本美術の理想に向けて]
13 横山大観 「菜の花歌意」
これは緑の菜の花畑と空に浮かぶ三日月が描かれたもので、右下には白い蝶の姿もあります。菜の花は森に溶けこむようにぼんやりしていて、輪郭線がないように見えます。解説によると、これは若い遊女が自分を菜の花、恋しい人を蝶に例えて 早く来て欲しいという気持ちを詠んだ歌から着想を得ているようです。光や空気を日本画で表現する試みが表され、ぼんやりとしながら幻想的な光景となっていました。
17 横山大観 「迷児」
これは木炭による白黒の大型掛け軸で、5人の人物が並んでいます。左から順に孔子、釈迦、幼い日本の子供、キリスト、老子となっていて、孔子、釈迦、老子が並んでいる絵は「三教図」と呼ばれますが、これにキリストを加えたものとなっています。解説によると、これは日本の子は当時の日本人を表しているようで、どの教えに従うべきか悩んでいるのを象徴しているようです。柔らかい陰影で表され、背景はぼんやりと光輪のように見えるかな。ちょっと異色の作品だけにその題材だけでも驚きがありました。なお、大観自身は老子の自然を愛する個人主義が芸術の発展に必要だと考えていたそうです。
29 横山大観 「水國之夜」
これは川岸に積み重なるような中国の建物を描いた作品です。夜の光景らしく窓から薄っすらと黄色い光が漏れ、沢山の中の人影が写っています。 空にはぼんやりとした月が浮かび、夜の盛り場の賑わいと月や川の静けさが対照的に見えるかな。全体的に温かみが感じられ、庶民の幸せが感じられました。 解説によると、これは蘇州の街らしく、高尚なテーマではない中国への新たなアプローチと言えるようでした。
一方ではこの近くには24「阿やめ(水鏡)」や、31「虎渓三笑」といった中国の伝統的な画題の作品や、インド風の作品などもありました。
この章の最後の辺りには岡倉天心の胸像(平櫛田中の作だったかな?)や天心が書いた墨跡や手紙がありました。また、現在でも続いている天心らが創刊した雑誌「國華」の創刊号も展示されていました。
<第2章 良き友─紫紅、未醒、芋銭、溪仙:大正期のさらなる挑戦>
大正2年に岡倉天心が亡くなると、大観は日本美術院を再興し、年齢の上下や立場に関係なく個性豊かな画家に注目して院の仲間に招き入れていきました。この章ではこの時期に深く関わった今村紫紅(いまむらしこう)、小杉未醒(こすぎみせい/小杉放庵)、小川芋銭(おがわうせん)、冨田渓仙(とみたけいせん)との関わりを取り上げ、「水墨と色彩」「構図の革新とデフォルメ」「主題の新たな探求」という角度からその影響を観るという趣向となっていました。
参考記事:再興院展100年記念 速水御舟-日本美術院の精鋭たち- (山種美術館)
[水墨と色彩]
45 横山大観 「湖上の月」
これは6曲1双の水墨の屏風で、山と湖、湖畔の家、左隻には白い月が浮かび2羽の鶴が飛んでいます。山の輪郭は線の一方をぼかす「片ぼかし」の技法が使われ、ボリューム感を出しているそうで、これは小杉未醒の技法を取り入れた大観の大正期の特徴のようです。雄大で詩情溢れる光景で、濃淡が見事でした。大観は「墨は一色で五彩がある」と言っていたそうで、まさにそれを表したような作品です。
49 今村紫紅 「海の幸山の幸」
今村紫紅は大観の五浦での制作態度に感銘を受けて奮起し、強烈な色彩で従来にない構図を用いて南画風の描法を示した画家です。これは2曲1双の屏風で、左隻に弓を構える男性が描かれ、右隻には釣り竿と魚を手に持つ女性、その脇には膝をついて壺を押さえる侍女が描かれています。これは日本の神話の山幸彦と豊玉姫命とその侍女らしく、題材自体は昔ながらのものですが、デフォルメされた背景の木や水面からは近代的な表現が感じられました。
この近くには芋銭や渓仙の作品もありました。
37 横山大観 「秋色」
これは今回のポスターにもなっている6曲1双の屏風で、左隻に2頭の鹿が描かれ1頭は伏せてもう1頭は頭の上の木を見ています。鹿は秋に雌を求めて鳴くので秋の季語らしく、画面中を赤・黄色・緑に色づいた葉っぱが埋め尽くしています。その色使いは大胆で、形もデフォルメされた感じを受けます。これは琳派(この頃はまだ琳派という概念は無いですが)の尾形光琳から着想を得たという説があるらしく、装飾的かつ鮮やかな色合は琳派風に思えました。
58 冨田溪仙 「祇園夜桜」 ★こちらで観られます
冨田溪仙は文展出品作品で大観に認められ、その誘いで院の同人となった画家で、融通無碍な画風だったようです。これは真っ暗な山を背景に篝火に照らされる桜が描かれ、花はぼんやりとしたしているものの、デフォルメされた5つの花びらと組み合わさって表現されています。非常に幻想的で、大観はこれを大変気に入って買い求めて床の間に飾っていたそうです。そして後に大観の作品(後編でご紹介します)の着想源となったそうで、確かにこれは大観の夜桜の作品を思い起こさせました。
近くにはこれを買った時の感想を書いた書も展示されていました。
ということで、この辺で半分くらいなので今日はここまでにしておきます。前半は大観が中心の内容だったかな。後半は仲間たちの作品が多く展示されていましたので、次回はそれについてご紹介していこうと思います。
参照記事:★この記事を参照している記事

【展覧名】
岡倉天心生誕150 年・没後100 年記念/『國華』創刊125 周年/朝日新聞創刊135周年記念事業
横山大観展:良き師、良き友-師:岡倉天心、そして紫紅、未醒、芋銭、溪仙らとの出会い
【公式サイト】
http://www.taikan2013.jp/
【会場】横浜美術館
【最寄】JR桜木町駅/みなとみらい線みなとみらい駅
【会期】2013年10月5日(土) ~11月24日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
混雑_①_2_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
最終日に行ったこともあり、非常に混んでいてどこもかしこも人だらけというくらい混んでいました。最近忙しくて会期末の展示ばかり観ているという悪循環になっていますw
さて、今回の展示は横浜出身で日本の近代美術に大きな足跡を残した岡倉天心の生誕150年、没後100年、「國華」創刊125年というメモリアルイヤーで、その教え子である横山大観を中心に仲間たちとの関係にスポットをあてるという内容となっていました。大観の初期から晩年にかけてテーマに沿って章分けされていましたので、詳しくは章ごとに気に入った作品を通してご紹介していこうと思います。
参考記事:五浦六角堂再建記念 五浦と岡倉天心の遺産展 (日本橋タカシマヤ)
<第1章 良き師との出会い:大観と天心>
まずは横山大観と岡倉天心についてのコーナーで、ほぼ大観の作品が並んでいました。横山大観は明治元年に水戸藩士の長男として生まれ、明治22年に東京美術学校で岡倉天心に出会いました。横浜育ちの岡倉天心は人並み外れた英語力を備え、東洋思想にも精通していて、アーネスト・フェノロサの通訳として京都・奈良の古社寺訪問に随行し、、そこで優れた美術こそ日本の特質を世界に伝える術であることに目覚めたそうです。やがて天心は日本美術の振興に力を尽くすようになり、欧米の美術に追随することなく近代性を伴う新たな日本画創造の重要性を説きました。大観はそうした天心の影響を受けたのですが、天心が怪文書によるスキャンダルで東京美術学校の校長の座を追われてしまうと、大観は橋本雅邦、下村観山、菱田春草らと共に天心に付き従って同校を離れ「日本美術院」を設立します。そして天心の理想主義を貫いた大観と春草は描線を排する「没骨法」と色彩の研究に取り組みました。しかしこれは当時「朦朧体」と揶揄されたそうで、世間的には受け入れられないものだったようです。 その後 日本美術院は運営に行き詰まってしまうと、茨城県の五浦(いづら)に移転し、大観も一家をあげて引っ越したようです。しかし貧苦の中でも理想を求める制作態度を曲げず、写実を越えて対象を捉え品格と情趣をたたえながら迫真性を持つ絵画の追求に邁進していきました。
また、天心の勧めで大観は春草とインドや欧米を旅行し、海外の美術や文化に接したそうで、その後 明治40年には朦朧体を離れた新たな境地へと向かったようです。ここにはそうした時代までの初期からの作品が並んでいました。
[天心との出会い]
2 横山大観 「仏頭写生」
これは学生時代の写生作品で、目をつぶった仏像の頭が描かれていて耳の一部は破損しています。陰影がつけられ立体的な感じで、写実的に描かれています。大体は輪郭が使われているのですが、一部は輪郭を使わない表現も観られました。若い頃から高いデッサン力が伺えます。
この辺は学生時代の模写などが並んでいました。
9 横山大観 「井筒」
これは木の柵で囲まれた井戸の周りに、着物の少年と少女が顔を隠しあいながら会っている様子が描かれ、周りには白い花々が描かれています。解説によると、これは伊勢物語の「筒井筒」を題材にしたもので、幼馴染の男女が成長と共に気恥ずかしさを覚えるようになり疎遠となっていったものの、歌を詠み交わしやがて結ばれていくという話です。近づきつつも伏せ目がちな表現からは確かに恥じらいが感じられるかな。装飾的な白い花も相まって可憐な印象を受けました。
[日本美術の理想に向けて]
13 横山大観 「菜の花歌意」
これは緑の菜の花畑と空に浮かぶ三日月が描かれたもので、右下には白い蝶の姿もあります。菜の花は森に溶けこむようにぼんやりしていて、輪郭線がないように見えます。解説によると、これは若い遊女が自分を菜の花、恋しい人を蝶に例えて 早く来て欲しいという気持ちを詠んだ歌から着想を得ているようです。光や空気を日本画で表現する試みが表され、ぼんやりとしながら幻想的な光景となっていました。
17 横山大観 「迷児」
これは木炭による白黒の大型掛け軸で、5人の人物が並んでいます。左から順に孔子、釈迦、幼い日本の子供、キリスト、老子となっていて、孔子、釈迦、老子が並んでいる絵は「三教図」と呼ばれますが、これにキリストを加えたものとなっています。解説によると、これは日本の子は当時の日本人を表しているようで、どの教えに従うべきか悩んでいるのを象徴しているようです。柔らかい陰影で表され、背景はぼんやりと光輪のように見えるかな。ちょっと異色の作品だけにその題材だけでも驚きがありました。なお、大観自身は老子の自然を愛する個人主義が芸術の発展に必要だと考えていたそうです。
29 横山大観 「水國之夜」
これは川岸に積み重なるような中国の建物を描いた作品です。夜の光景らしく窓から薄っすらと黄色い光が漏れ、沢山の中の人影が写っています。 空にはぼんやりとした月が浮かび、夜の盛り場の賑わいと月や川の静けさが対照的に見えるかな。全体的に温かみが感じられ、庶民の幸せが感じられました。 解説によると、これは蘇州の街らしく、高尚なテーマではない中国への新たなアプローチと言えるようでした。
一方ではこの近くには24「阿やめ(水鏡)」や、31「虎渓三笑」といった中国の伝統的な画題の作品や、インド風の作品などもありました。
この章の最後の辺りには岡倉天心の胸像(平櫛田中の作だったかな?)や天心が書いた墨跡や手紙がありました。また、現在でも続いている天心らが創刊した雑誌「國華」の創刊号も展示されていました。
<第2章 良き友─紫紅、未醒、芋銭、溪仙:大正期のさらなる挑戦>
大正2年に岡倉天心が亡くなると、大観は日本美術院を再興し、年齢の上下や立場に関係なく個性豊かな画家に注目して院の仲間に招き入れていきました。この章ではこの時期に深く関わった今村紫紅(いまむらしこう)、小杉未醒(こすぎみせい/小杉放庵)、小川芋銭(おがわうせん)、冨田渓仙(とみたけいせん)との関わりを取り上げ、「水墨と色彩」「構図の革新とデフォルメ」「主題の新たな探求」という角度からその影響を観るという趣向となっていました。
参考記事:再興院展100年記念 速水御舟-日本美術院の精鋭たち- (山種美術館)
[水墨と色彩]
45 横山大観 「湖上の月」
これは6曲1双の水墨の屏風で、山と湖、湖畔の家、左隻には白い月が浮かび2羽の鶴が飛んでいます。山の輪郭は線の一方をぼかす「片ぼかし」の技法が使われ、ボリューム感を出しているそうで、これは小杉未醒の技法を取り入れた大観の大正期の特徴のようです。雄大で詩情溢れる光景で、濃淡が見事でした。大観は「墨は一色で五彩がある」と言っていたそうで、まさにそれを表したような作品です。
49 今村紫紅 「海の幸山の幸」
今村紫紅は大観の五浦での制作態度に感銘を受けて奮起し、強烈な色彩で従来にない構図を用いて南画風の描法を示した画家です。これは2曲1双の屏風で、左隻に弓を構える男性が描かれ、右隻には釣り竿と魚を手に持つ女性、その脇には膝をついて壺を押さえる侍女が描かれています。これは日本の神話の山幸彦と豊玉姫命とその侍女らしく、題材自体は昔ながらのものですが、デフォルメされた背景の木や水面からは近代的な表現が感じられました。
この近くには芋銭や渓仙の作品もありました。
37 横山大観 「秋色」
これは今回のポスターにもなっている6曲1双の屏風で、左隻に2頭の鹿が描かれ1頭は伏せてもう1頭は頭の上の木を見ています。鹿は秋に雌を求めて鳴くので秋の季語らしく、画面中を赤・黄色・緑に色づいた葉っぱが埋め尽くしています。その色使いは大胆で、形もデフォルメされた感じを受けます。これは琳派(この頃はまだ琳派という概念は無いですが)の尾形光琳から着想を得たという説があるらしく、装飾的かつ鮮やかな色合は琳派風に思えました。
58 冨田溪仙 「祇園夜桜」 ★こちらで観られます
冨田溪仙は文展出品作品で大観に認められ、その誘いで院の同人となった画家で、融通無碍な画風だったようです。これは真っ暗な山を背景に篝火に照らされる桜が描かれ、花はぼんやりとしたしているものの、デフォルメされた5つの花びらと組み合わさって表現されています。非常に幻想的で、大観はこれを大変気に入って買い求めて床の間に飾っていたそうです。そして後に大観の作品(後編でご紹介します)の着想源となったそうで、確かにこれは大観の夜桜の作品を思い起こさせました。
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