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天上の舞 飛天の美 (感想前編)【サントリー美術館】

前回ご紹介したお店に行く前に、ミッドタウンの中にあるサントリー美術館で「天上の舞 飛天の美」を観てきました。この展示は既に終了していますが、参考になる展示でしたので記事にしておこうと思います。なお、このところ帰りが遅くブログを書ける時間が少ないので、前編・後編にわけてご紹介しようと思います。

P1140388.jpg

【展覧名】
 平等院鳳凰堂平成修理完成記念 天上の舞 飛天の美
【公式サイト】
 http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2013_5/index.html

【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅/乃木坂駅


【会期】2013年11月23日(土・祝)~2014年1月13日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
最終日1日前に行ったこともあり、非常に混んでいました。

さて、この展示は平等院鳳凰堂の修理完成を記念したもので、仏像の中でも「飛天」と呼ばれる存在についてフォーカスした内容となっていました。飛天はインドから西域、中央アジア、中国、そして日本へと仏教伝来と共に浄土世界の表現として伝わり、寺院の壁や柱などに表されてきたそうで、この展示では日本の古代から中世を中心に、伝来過程の作例なども交えて展示していました。もちろん、平等院鳳凰堂に関する品も数多くあり、国宝の雲中供養菩薩像や、普段は平等院の堂内にある阿弥陀如来像後背飛天なども寺外での初公開となっていました。テーマごとに章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品をご紹介しようと思います。


<第1章 飛天の源流と伝播-インドから日本->
まず最初は飛天の伝来についてのコーナーです。飛天は本来 天人のことで、仏教の六道という煩悩世界の最上階である天道に存在し、飛翔しながら散華し、楽器を奏し、香を焚くなど仏である如来を讃え供養しているようです。 仏があるところに飛天が表されるのはこの為で、仏教が生まれたインドから西域、中央アジア、中国 と、仏像表現に伴う存在として伝わりました。ガンダーラでは西のヘレニズム文化の影響を受け、西域・中国では当地の伝統と融合しながら石窟寺院の壁画などに表されたそうで、日本に至るまでも遠くヨーロッパの要素を含めながらシルクロードを軸とした展開があったようです。ここにはそうした作品が並んでいました。

[インド・西域]
1 原品:クチャ 7-8世紀 「舎利容器 模造」
これは中国新疆のクチャ周辺から出土した舎利容器の模品で、円筒にとんがり帽子がついた形をしています。蓋には赤を地に裸の天使のようなものが4人描かれていて、側面には多くの人々が描かれています。飛天は天使のように見え、ヘレニズム・ローマからの影響を感じさせました。

この周りには石に浮き彫りになった仏像が並び、大体は仏の上に飛天が配置されていて、キリスト教美術の天使のような雰囲気でした。

[中国・朝鮮]
6 中国 北魏時代 6世紀 「飛天像」
これは笙を吹いて飛んでいる中国風の服を着た飛天で、背中に衣をなびかせ空をとんでいるような感じです。微笑みを浮かべ穏やかな雰囲気があり、解説によるとこれは飛鳥時代の日本にも通じるものがあるとのことでした。この辺の飛天になると何となく日本に近い顔立ちに思えました。

18 朝鮮 統一新羅時代 7-8世紀 「飛天文軒平瓦断片」
これは朝鮮の7~8世紀頃の瓦に表された飛天で、衣か雲のようなものが長く伸びて、片手をあげて飛んでいます。中国の品に比べると更にスピード感があり、飛びまわっている様子が感じられました。

この近くには装飾品や玉(ぎょく)に表された飛天などもありました。

[日本]
25 原品:奈良時代 天平2年〔730〕「東塔水煙 模造」
これは薬師寺東塔の先端にあった装飾の模品で、左右対称に6体の透かし彫りの飛天が表されています。逆さになって天から降りてくる飛天などが表され、周りには火炎のような雲があり、流れるような感じも出ています。塔の先端は近くで観ることができないのに、これだけ凝っているとは驚きでした。


<第2章 天上の光景-浄土図から荘厳具->
続いては飛天にまつわる様々な品を紹介するコーナーです。仏のいる浄土には飛天以外にも菩薩衆や迦陵頻伽、共命鳥などが舞い、樹木や大地には金銀瑠璃などの七宝が輝くとされています。その浄土の光景を具体的に表したのが浄土図で、そうした作品からは当代の人々が希求した理想の浄土世界を観ることができるようです。この章ではそうした浄土図と共に荘厳具など現世で浄土を再現するための品々が並んでいました。

31 「当麻曼荼羅」
中央に大きな阿弥陀如来が座り、その脇に2体の大きな菩薩像、周りには小さい菩薩衆や奏楽・舞踊する菩薩衆が描かれた作品です。上のほうには沢山の飛天が飛来する様子もあり、浄土の姿を伝えています。仏教の教えを分かりやすくビジュアライズした感じで、当時の人々がどのように極楽を捉えていたかが伺えるようでした。

36 「阿弥陀如来及び両脇侍像のうち脇侍像」
これはお腹の前で手を開いて重ねる菩薩?と手を合わせている菩薩?の仏像で、両方とも片足を背後にあげて体をひねるような変わったポーズをしています。解説によると、この2体は元々一対ではなかったと考えられるようで、舞を踊っている舞菩薩や供養菩薩を立体にしたものと思われるようです。躍動感のあるポーズが面白い作品でした。

53 「金銅宝相華唐草文幡頭」
これは透かし彫りに家のような形をした幡(仏堂内に描けられる荘厳具)で、唐草紋の中央に華籠を持つ飛天が表されています。背景の唐草紋が華やかなこともあり、優美な印象を受けました。

50 「阿弥陀三尊像」
これは中央に座った阿弥陀如来、両脇に観音菩薩と勢至菩薩が並んだ仏像で、いずれも金色に輝いています。柔らかく穏やかな体つきをして造形も優美なのですが、それ以上に面白いのが阿弥陀如来の光背で、音楽を奏でている飛天達が表されています。解説によると、これは鎌倉時代に神奈川で作られたそうで、この時期の関東における飛天光背の様相が伺えるとのことでした。なお、阿弥陀像の顔は改変されているそうで、目は象嵌されていてやや厳しい表情に見えました。体つきと顔つきで異なる印象を受ける像でした。

52 「文殊菩薩像光背(文殊菩薩騎獅像及び侍者立像のうち)」
これは旧興福寺の本尊の光背で、梵字や唐草文があり左右に翼の生えた笛を吹く飛天と笙を吹く飛天が表されています。非常に翼が力強く、躍動感が感じられるのですが、こうした飛天光背は脆いらしく現存している品は少ないようです。この近くには壊れた飛天光背の残りなどもあり、細工が精巧がゆえに強度が弱いことを物語っていました。


ということで、今日はここまでにしておこうと思います。前半も興味深い内容でしたが、後半は今回の目玉と言うべき作品がありましたので、次回はそれについてご紹介しようと思います。


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