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天皇陛下御在位二十年記念 日本藝術院所蔵作品展 【東京藝術大学大学美術館】

前の記事でご紹介した「コレクションの誕生、成長、変容―藝大美術館所蔵品選―」の後、同じ東京藝術大学大学美術館で「天皇陛下御在位二十年記念 日本藝術院所蔵作品展」を観てきました。これは無料で入れる展覧会でした。(これも終わっています。)

DSC_2526.jpg


【展覧名】
 天皇陛下御在位二十年記念 日本藝術院所蔵作品展

【公式サイト】
 http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2009/geijutsuin/geijutsuin_ja.htm
 http://www.geijutuin.go.jp/news/H21heikatenji.htm

【会場】東京藝術大学大学美術館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)
【会期】2009年7月18日(土)-8月16日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
作品充実度と満足度が3なのは小規模な展示で、観た覚えがあるものがいくつかあったからです。この展覧は恩賜賞受賞作品26点と日本藝術院賞受賞作品の合わせて60点程度の展示で、1時間くらいで回れる内容でしたが、日本画、洋画、彫像、工芸品、書と多岐に渡る作品がありました。

気に入った作品をジャンルごとにご紹介。無料の展覧なのに全作品の写真入りのパンフレットが貰えたので思い出しやすいです。
 ※webでも作品が観られますが、リンクが貼れないタイプですので、以下の検索から興味のある作品名で検索してみてください、
 検索:http://www.geijutuin.go.jp/index.shtml

<日本画>
東山魁夷 「光昏(こうこん)」
雄大な富士山と、大和絵のように少しぼやけた感じの紅葉した木々の絵です。優美で郷愁を誘われました。

山辰雄 「沼」
夜の沼を描いた作品。真っ暗なようで、沼の周りの木々は細かく描かれていました。空には描かれていない月が水面にくっきり写っています。全体的に青い画面であるのも手伝って、静けさを感じる作品でした。

稗田一穂 「月影の道」
住宅街の下り坂から月を見ている絵です。大きな月とそれを囲うようにたつ木々や家々が、住宅街育ちの自分にはほっとする風景でした。奥のほうは上り坂のようにも見えて、その先が空の月の横を通るかのようでした。散歩中の犬や猫(ちょっと警戒してそう)も微笑ましいです。それにしても、これって日本画なんですね。

杉山寧 「暦」
今回のポスターの作品です。オレンジのベールのようなものを被った青い服の女性が赤ちゃんを抱いています。画面を立てに分割する黄色いラインや、足元からめくれ上がるような白い三日月状の光?など、どこの空間か分からない不思議さがありました。女性がじっとみつめる先もどこか分からず色々謎めいていました。

川春彦 「朝明けの湖」
極彩色の空と湖を描いた作品。フォーヴ派より濃い色彩だと思います。雲からは大気の流れを感じました。神々しい感じもしますがちょっと怖いかもw

清水達三 「翠響」
靄が立ち込めた山中にある谷川を描いています。結構大きな絵で、目の前にある風景のような感覚すらありました。画面右側に見える川は流れの早さを感じさせ、靄の静けさの中で川のせせらぎが聴こえそうな雰囲気でした。

<洋画>
野村守夫 「丘にある街」
ぎっしりと建物が描かれた町の中、1つだけ背の高い教会が目を引く風景画です。紫色の空や全体的な薄い青色から氷のような透明感のある美しさを感じました。おとぎの国のような風景です。

國領經郎 「呼」
シュルレアリスムの作品かな? ピラミッド型の砂山の頂点に杭が打たれ、その上には鷲がとまっています。その上には青い空に白く細い月が浮かび、さらに上空(手前に見える)には、翼を広げた鷲が杭に向かって飛んでいる様子が大きく描かれています。 これらはすべて縦に一列に並んでいるようにも見えました。舞飛ぶ鷲から自由で力強いものを感じると共に、どこか現実を超えたものを感じました。

伊藤清永 「曙光」
ルノアールの作風に近いかなと思いました。背を向け全身鏡に向かった裸婦が化粧をしているところかな? 真珠のような肌と鏡の反射で顔が映る構図が魅力的でした。

楢原健三 「漁港夜景」
障子を開けて夜の漁港を観た感じの構図が面白い作品。まるで旅館にきたようなw 中央にある灯台の光が縦に走っていたり、町の光が旅情を誘いました。

<彫塑>
平櫛田中 「霊亀随(れいきずい)」
これは入ってすぐあたりにある作品なのですが、めっちゃ存在感がありました。 杖をつく爺さんの彫像で、色がついているのでかなりリアルです。そして、でかい! 顔はちょっと頑固そうな感じもします…。物珍しさにぐるっと周って観て、袖の中を覗き込んでみたら、袖の中のほうが着物の柄より派手だったw

<工芸>
浅藏五十吉 「佐渡の印象」
私が佐渡のイメージは?と聞かれたら、トキか金山って答えますw この作品も、大きな皿にトキが緑の松と共に描かれていました。焼き物とは思えない、鮮やかな色でした。

藤田喬平 「ガラス飾筥春に舞う」
横浜美術館の常設や東京国立近代美術館工芸館の「近代工芸の名品 花」展でも藤田喬平の作品を観てきましたが、この人の作品は何度観てもガラスでできているとは思えないです。蒔絵っぽい…。夢を入れるドリームボックスです。

<書>
新井光風 「明且鮮」
私は書道をやっていたくせに、全く書は分からないのですが、この作品はダイナミックな筆運びで目をひかれました。字というか象形文字?w 真ん中は「且」の字に見えるし、右も「明」に見える気がするので、タイトルどおり書いているのかもしれません。豪放さが好みでした。


という感じで、本当に色々な作品がありました。何となく堅そうなタイトルの展覧会でしたが、どの作品も革新性を感じさせるもので、驚きがあって楽しめました。
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Comment
No title
こんにちは。
私も藝大コレクションのついでに行ったのですが、無料のこちらの方が印象に残った作品が多かった。
杉山寧の暦、パンフレットになるだけのことはありますね。
日本画の方がいいのが多かったように思います。

ところで最近の記事では、この2つの他に三井と大倉にも行ったのですが。
江戸時代までの作品って色がどうも・・・。
色があせてるというか。
明治以降のものには、いいなあと思うものがあるのですが江戸ましてや鎌倉とかになると。
色がほとんどないなあと思っちゃって。
古い時代のものはどのように観ているのですか?

今度、東博の皇室の名宝に行く予定ですが、若冲や唐獅子観ても「何だかなあ」となりそうです。
近世のものは私に向いてないのかなあ。

では、また。
Re: No title
この展示は全体的に斬新な雰囲気で、無料なのに結構面白い作品がありましたね(少ないですが) 

確かに昔の作品は保存状態が悪くて色あせていたりしますね。私もそういう作品は苦手ですw ですが、若冲とかなら結構鮮やかだと思いますよ。
さらに古い時代のものは、後世への影響などを考えながら観るのが好きです。大和絵が浮世絵に影響を与えて、その浮世絵が印象派などに影響を与えたという感じで、ルーツ探しも一興です。 日本美術は遊び心がある作品によく会えるし中々面白いですよ。
とはいえ、苦手なジャンルは私にもあるので、好きなものから観ていけばいいやって思ってますw
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