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ジョセフ・クーデルカ展 (感想前編)【東京国立近代美術館】

前回ご紹介した東京国立近代美術館の常設を観る前に、企画展の「ジョセフ・クーデルカ展」も観てきました。こちらは既に終了した展示ですが、今後の参考になりそうな内容でしたので前編・後編に分けて記事にしておこうと思います。

P1140397.jpg

【展覧名】
 ジョセフ・クーデルカ展

【公式サイト】
 http://www.momat.go.jp/Honkan/koudelka2013/

【会場】東京国立近代美術館
【最寄】竹橋駅


【会期】2013年11月6日(水)~2014年1月13日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
最終日に行ったこともあり、非常に混んでいてチケット購入に10分ほどかかりました。

さて、今回の展示は旧チェコスロヴァキア生まれで現在でも世界的に注目されている写真家ジョセフ・クーデルカの個展となっていました。ジョセフ・クーデルカは1938年に生まれ、航空技師として働きながら1960年代初頭に写真を発表しはじめました。そして知人の紹介で手がけるようになった演劇写真を通じてチェコスロバキアの写真界にその存在を知られることになり、1967年に技師の仕事を辞めて独立しました。しかし、その翌年の1968年にチェコスロバキアの自由改革路線「プラハの春」が推進されると、急速な自由化を危惧したワルシャワ条約機構軍によって首都プラハは侵攻を受けることとなりました。そしてその時にジョセフ・クーデルカが撮った写真は匿名のまま西側諸国に配信され大きな話題となり、それがきっかけで1970年に彼は祖国を去りました。当初イギリス、その後にフランスに亡命し、そこを拠点にチェコスロバキア時代から取り組んでいた「ジプシー」シリーズや、亡命後にヨーロッパ各地で撮影された「エグザイル」シリーズなどのシリーズを発表していきます。それらの作品は詩的でありながら独特の強さを持つイメージによって、ささやかな人生の陰影を捉えつつ、20世紀という時代を巡る文明論的な奥行きをも備えた作品として評価されたそうで、一躍欧米でその名が知られるようになりました。この展示では初期から現在に至るまでの作品が一堂に会する内容で、時代やシリーズごとに章分けされていました。 詳しくは各章ごとにご紹介していこうと思います。なお、今回は作品リストがなく、作品名が分からないものもありましたので作品単位ではなく章単位でご紹介していこうと思います。
 参考記事:ジョセフ・クーデルカ 「プラハ1968」 (東京都写真美術館)


<1 初期作品 Beginnings 1958-1961>
まずは初期の作品です。1961年1月にプラハのセマフォル劇場のロビーで開催されたデビュー展は、当時無名の23歳の学生が並外れた感覚を備えた写真家であることを示していたそうで、全体を通したテーマは無かったものの記憶に刻み込まれるような美的な力があったそうです。初期作品はフォルムが際立っているものの、その後の特徴の萌芽が見て取れるそうで、ここにはその頃の作品が並んでいました。

横長の画面の写真が多く、確かにテーマがバラバラで、砂浜で佇んでいる黒い衣のシスター?の写真や、ぬかるみの道とその前を歩く2人の人影、砂浜に転がっている鉄条網が絡まったもの 等、どこか寂しげでぽつんとした印象を受ける作風のように思えました。23歳が撮ったとは思えないほど詩的で内面的な感じです。一度展覧会を観た後に見返してみると、後の作品とも繋がりがあるというのも何となく分かる気がしました。


<2 実験 Experiments 1962-1964>
ジョセフ・クーデルカ1962年から2年間、月刊誌「劇場」の表紙を担当していたそうで、ディレクターの示唆によって最初の年はグラフィックシンボルのシリーズ、翌年は顔をモティーフとするシリーズが制作されました。いずれも人物や風景の写真をもとに要素を切り詰め、フォルムを強調して極端なハイコントラストでプリントされているらしく この実験の成果は後の仕事に確実に受け継がれているそうです。

ここには人の顔や人の姿を撮った写真が並んでいたのですが、かなり単純化された抽象絵画のような作風で、真っ白な背景にシルエットがあったり、真っ黒な背景に白い顔が写っているなど、これは写真なのか?(レイヨグラフみたいなもの?)と驚きました。影絵のようでもあり、ちょっと奇妙な雰囲気の作品もあったかな。 まさに実験的な作品です。


<3 劇場 Theater 1962-1970>
1960年代、劇場はクーデルカの人生と仕事において重要な役割を果たしていたそうで、当時いくつかの劇場や月刊誌「劇場」の為の撮影に携わっていました。様式化への志向を発展させ、写真のグラフィック的な側面を打ち出すようになったのは「門のむこう」劇場との密接な共同作業を行っていた頃だそうで、当時の写真には抽象的なグラフィックの力が備わっており、演出家の創作意図や演劇の芸術的なメッセージを明瞭に伝えているようです。

ここには「ユビュ王」や「3人姉妹」などの劇中の写真が並んでいて、やはり単純化されたかのように写っています。何人かの人が一緒に写っている写真ではそのシーンを象徴しているような場面が写っていて、劇の内容が伝わってきそうな感じです。先ほどまでの作品と比べると表情が豊かで動きがあるかな。やはり白黒のハイライトの使い方は強めに感じました。


ということで、今日はここまでにしておこうと思います。前半は若い内から既に才能を持っていたことがわかると共に、抽象的な表現で報道のようなリアルを撮っていたわけではないというのが意外でした。後半はさらに代表作などが展示されていましたので、次回はそれについてご紹介していこうと思います。



 参照記事:★この記事を参照している記事

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