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モネ、風景をみる眼―19世紀フランス風景画の革新 (感想後編)【国立西洋美術館】

今日は前回に引き続き国立西洋美術館の「国立西洋美術館×ポーラ美術館 モネ、風景をみる眼―19世紀フランス風景画の革新」についてです。前編には混み具合も記載していますので、前編をお読みになっていない方はそちらから読んで頂けると嬉しいです。

  前編はこちら

P1140631.jpg

まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 国立西洋美術館×ポーラ美術館 モネ、風景をみる眼―19世紀フランス風景画の革新

【公式サイト】
 http://www.tbs.co.jp/monet-ten/
 http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2013monet.html

【会場】国立西洋美術館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)

【会期】2013年12月7日(土)~2014年3月9日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日13時半頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
前編では2章までご紹介しましたが、後編では3~5章について書いていきます。なお、前編同様にこの記事で使用している写真は以前に西洋美術館の常設展示で撮影したものです。今回の展示は特別展なので撮影はできません。

 参考記事:
  ポーラ美術館コレクション展 印象派とエコール・ド・パリ 感想前編(横浜美術館)
  ポーラ美術館コレクション展 印象派とエコール・ド・パリ 感想後編(横浜美術館)
  ポーラ美術館の常設(2010年秋)
  ポーラ美術館の常設(2009年春)


<Ⅲ 反映と反復>
3章は2章と同じく風景画を中心に、象徴的要素のある作品が並んでいました。印象派の活動が終焉を迎えると、時代は彼らの自然主義を批判し、より内面的な表現を求める象徴主義が活発になっていったそうで、後期のモネは連作形式やモティーフの反復、水面の反映像などを用いつつ、自然に内在する造形や詩的な喚起力を絵画空間における装飾的、象徴的要素として活かし始めたそうです。ここにはそうしたモネの作品や象徴主義の画家の作品が並んでいました。

55 56 クロード・モネ 「グラジオラス」
ほぼ同じような絵画が2点 同じ構図で描かれていて、日本の陶器らしき花瓶に黄色いグラジオラスの花が一輪入っている様子が描かれています。縦長で平面的な感じで、モティーフも含めて当時ブームだった日本美術から影響を受けているようです。背景は萌え立つような抽象的な感じで、空間なのか壁なのか分かりません(この辺も日本っぽく感じるかな) 色合いのせいか象徴主義の作品との共通点もあるように思いました。

59 クロード・モネ 「陽を浴びるポプラ並木」 ★こちらで観られます
DSC_6231.jpg
これは水辺のポプラ並木を描いた連作の1つで、手前に背の高い木3本、その奥にはS字のカーブに並ぶ並木が見えています。そのリズムが何とも心地よく、明るい色彩から陽光が感じられました。爽やかな雰囲気なので人気のシリーズです。

65 クロード・モネ 「セーヌ河の朝」
DSC_17874.jpg
川とその両岸の木々を描いた作品で、川の上で描いたと思われる視点となっています。水平線が曖昧になるくらいぼんやりした明るさが今までの強い光とは違った印象を受け、象徴性の感じられる作品のようでした。

この近くにはコローの「ナポリの浜の思い出」や シャヴァンヌの「貧しき漁夫」、ピカソの「海辺の母子像」、ルドンの「ヴィーナスの誕生」などもありました。いずれも素晴らしい作品なので、モネ展としてではなくそれ相応の展覧会として出して欲しいかなw


<Ⅳ 空間の深みへ>
続いては下階の4章で、モネが晩年に魅せられた水面の表現についてです。モネはジヴェルニーで後半生を過ごし、自宅の庭、特に睡蓮の池を中心として数多くの作品を残りました。当初は描き込まれていた周囲の草木や太鼓橋はモネの目から姿を消し、やがて光と影が揺らめく水面だけで画面を覆うようになりました。ここにはそうした水面を描いた作品や、モネが敬愛し共同で展示を行ったロダンの水に関する作品、世紀末に隆盛したアール・ヌーヴォー(のガレのガラス器)などが並んでいました。 …うーん、ちょっと無理矢理な感じが…。モネ展って言わなきゃ良いのにw
 参考記事:番外編 フランス旅行 ジヴェルニー モネの家

72 クロード・モネ 「バラ色のボート」 ★こちらで観られます
ピンク~朱色の明るい色のボートに、ピンクのドレスを着た2人の女性が乗って舟遊びしている様子が描かれた作品です。周りは緑や茶色で水面を表し、渦がうねるような感じに見えます。岸か水面か曖昧な感じになっているところが抽象的で、筆もかなり大胆なタッチとなっていました。

近くにはモネと同様に日本美術から影響を受けたガレの花器や、ロダンの作品もありました。

75 クロード・モネ 「睡蓮」 ★こちらで観られます
これはモネの作品の中でも最も有名な連作の1つで、水に浮かぶ睡蓮の葉っぱと花が描かれています。水面には反射した木が映っていて、全体的にまだ精緻な感じを受けすっきりした印象を受けます。この隣にはその9年後に描かれた睡蓮が展示されていたのですが、そちらはオランジュリー美術館の習作と考えられるらしくかなり大胆で作品自体も大型となっていました。
 参考記事:番外編 フランス旅行 オランジュリー美術館とマルモッタン美術館

少し先にはロダン展(モネと2人で開催)のカタログなどもありました。ロダンはこの時、新作だった「カレーの市民」をモネの主要作品の前に置いたそうで、そのことについてモネと怒鳴り合いの喧嘩になったそうですが、その後も2人の親交は続いたそうです。


<V 石と水の幻影>
最後は1890年代から1900年代にかけてモニュメンタルな建造物を描いた幻想的な都市風景を描いた作品のコーナーです。

87 クロード・モネ 「国会議事堂、バラ色のシンフォニー」 ★こちらで観られます
これはロンドンに行った際に描いたイギリスの国会議事堂で、全体的にピンクと水色の色合いで霧がかった感じとなっています。国会議事堂はシルエットとなっているのが幻想的で、どちらかと言うと建物より大気を描いたようにも感じられられました。

この近くには同じくロンドンのウォータールー橋を描いた作品もありました。

86 クロード・モネ 「ルーアン大聖堂」
これは繰り返し描いたルーアン大聖堂の連作の1つで、午後の夕日の時間帯の大聖堂が描かれています。ぼんやりとした陽光を感じる一方で、重厚なゴシック様式の大聖堂が描かれているため、堅牢さと揺らめくような光が合わさった面白さがありました。これは連作を並べてみるとより面白いのですが、今回は1点のみなのがちょっと残念。

90 クロード・モネ 「サルーテ運河」
これはヴェネツィアで描いた作品で、運河とその両脇の家や壁が描かれています。水面には景色がぼんやりと反射して抽象性があるる一方で、建物は意外とくっきり描かれていてその表現の違いがその後の作品を考えると興味深かったです。

最後にはシニャックやマルタン、ドンゲンなどの作品もありました。また、松方コレクションの松方幸次郎とモネの交流についての解説などもありました。


ということで、実際にはモネ展というよりは印象派とその前後の時代展といった趣きで、西洋美術館の常設とポーラ美術館の常設が一気に観られるような展示でした。逆に言うと、わざわざこのタイトルで特別展にする必要があったのかな?という感じで、普段の西洋美術館の常設で観られるものが半分くらいありました。(今は改装中です) とは言え、良い作品が多いのは確かなので、これを機に美術館に足を運んでみようという方にはお勧めできる展示だと思います。


 参照記事:★この記事を参照している記事
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Re: No title
>コメント頂いた方
コメント&フォロー頂きましてありがとうございます。
おっしゃるとおり、モネは見ていて和むものがありますよね。
それなのに当時は革新的かつ斬新だったというのも興味深いところです。

最近、忙しくて更新が滞っておりますが、出来る限り観てきたものをフィードバックしたいと思いますので
今後ともよろしくお願い致します。
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