Kawaii(かわいい) 日本美術 -若冲・栖鳳・松園から熊谷守一まで- 【山種美術館】
忙しくて1ヶ月ほど前のこととなりましたが、恵比寿の山種美術館で「Kawaii(かわいい) 日本美術 -若冲・栖鳳・松園から熊谷守一まで-」を観てきました。この展示は前期・後期に分かれていて、私が観たのは前期の内容でした(既に後期の内容となっています。)

【展覧名】
Kawaii(かわいい) 日本美術 -若冲・栖鳳・松園から熊谷守一まで-
【公式サイト】
http://www.yamatane-museum.jp/exh/current.html
【会場】山種美術館
【最寄】JR・東京メトロ 恵比寿駅
【会期】2014年1月3日(金)~3月2日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構混んでいて、ロッカーは空きがなく展覧会でも人だかりができるくらいでした。前期は伊藤若冲の「樹花鳥獣図屏風」が無かったのに混んでいたので、出品されている後期はますます人気が出ているのではないかと思います。なるべく時間を取って出かけることをお勧めします。
さて、今回の展示はその名の通り「可愛い」を主題にした展示です。この言葉はいまや海外にも広がっているそうですが、遡ると平安時代には既にこうした感覚があったそうです。この展示では特に可愛いとされるモチーフを3つの章に分けて、古今の日本画を中心に展示していましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
参考記事:かわいい江戸絵画 (府中市美術館)
<冒頭>
まず冒頭に趣旨説明のような感じで1点展示されていました。
85 伊藤若冲 「伏見人形図」 ★こちらで観られます
これは掛け軸で、芭蕉扇のようなものを持った坊主頭の伏見人形が7体描かれています。縦に並んでいて、皆同じポーズとなっていますが服の色が赤、緑、青と3種となっています。顔が大きく目鼻が小さいのですが、単純化されころっとした感じがほのぼのとしていました。配置も流れになっているのが面白かったです。
<第1章 描かれた子ども ― 人物の中の Kawaii>
1章は子供を描いた作品のコーナーです。古くは枕草子の中で「うつくしきもの(=可愛いもの)」として子供の例示が半数を占めるなど、子供と可愛いは強く結びついています。ここでは物語絵や風俗画、肖像画など様々な作品の中の子供が紹介されていました。
2 伝 長沢芦雪 「唐子遊び図」
これは唐子(からこ)という中国風のパンダみたいな髪型の子供達が描かれた作品で、文人が嗜むべき4つの琴棋書画に興じている様子が描かれています。下の方には絵(画)を描く子と集まって見ている子、背中を向けて書を書いている子、テーブルに琴を置く子と見ている子、その右には碁盤が置かれています。しかし囲碁は喧嘩になってしまったようで、周りで取っ組み合いしている様子で子供らしい感じがしますw また、書では頭に紙を乗せて破っているなど、文人とはかけ離れたヤンチャな姿が可愛らしく、生き生きとしていました。
6 上村松園 「折鶴」 ★こちらで観られます
これは折り鶴を折る着物の女性と、その傍らで同じように折っている少女を描いた作品です。女性は白い肌で指が長く、気品と色気が感じられます。一方の少女も賢そうで凛とした雰囲気があり、いずれも上村松園らしい女性像となっていました。
7 伊藤小坡 「虫売り」
これは明治から昭和にかけてあった虫売りという職業を描いた作品で、女性が市松模様の屋根のついた屋台で、頬かむりをして網に入れた虫を売っているところが描かれています。その傍らには買った虫籠を見る姉弟らしき子供の姿があり、喜んでいるようです。全体的に爽やかな色合いで、子供のあどけない雰囲気と共にほのぼのした作品となっていました。
この少し先には小出楢重の息子の肖像などもありました。
9 川端龍子 「百子図」 ★こちらで観られます
これは赤い頭飾りをつけた象と、その周りの9人の子供たちを描いた作品です。子供たちは周りで踊ったり、背中の籠に乗ったり、鼻を触ったりと無邪気な様子で、童話の挿絵のような目の大きな表情で描かれています。解説によると、これは戦後に「象が見たい」と東京の子供たちがインドに手紙を送って、本当に象を送って貰った時の様子だそうで、その際に港から上野動物園まで歩いて行ったらしく、多くの見物人が集まってきたそうです。また、川端龍子は子供向けの雑誌の挿絵を描いていたこともあったそうで、この絵はまさに挿絵的な作風となっていました。楽しげで躍動感のある作品です。
17 小山硬 「天草(納戸)」
これは長い黒髪に黒い着物の少女が描かれた作品で、背中に十字架のある小さなマリア像に向かって合掌しています。輪郭が太くボリューム感のある表現で、つぶらな瞳が純粋無垢な内面を感じさせます。周りは暗く、納戸の中で密かに祈る隠れキリシタンを彷彿とさせました。(タイトル的にもその主題だと推測できます) しんみりとした雰囲気の作品です。
<第2章 生きもの大集合 ― 動物の中の Kawaii>
続いては動物を描いた作品のコーナーです。
36 「藤袋草子絵巻」 ★こちらで観られます
これは擬人化された猿達の輿入れの行列を描いた作品です。この作品は以前にもご紹介したので今回はストーリーは割愛しますが、ここでは鹿に乗ったり、弓を持っていたり、神輿に乗ったり、酒盛りをして花嫁の女性を楽しまそうとしている様子が描かれています。結構のほほんとした雰囲気なのですが、この話は結構理不尽なので、可愛い猿達がどうにも気の毒に思えました。なお、この作品は会期によって場面替えがあるようです。
参考記事:お伽草子 この国は物語にあふれている (サントリー美術館)
この近くには奥村土牛の兎の絵などもありました。
25 西山翠嶂 「狗子」
これは寝ている2匹の子犬を描いた作品で、手前は白犬でチラリとこちらを見ています。もう1匹は黒っぽい犬で、ぐっすり眠っているのが気持ちよさそうです。お互い寄り添って寝ている姿は文句なしに可愛らしいのですが、どこか円山応挙に通じるものがあると思ったら、この画家はその流れを組む竹内栖鳳の娘婿だそうです。そう言われてみると確かに栖鳳にも通じるものもあるかな。円山四条派の伝統的な画題ですね。
19 野崎真一 「四季草花鳥獣図巻」
これは巻物で、朝顔やススキなどの中に白いウサギが描かれ、上を見上げています。よく観ると他にもカマキリやバッタなど様々な昆虫の姿もあり、単純化され鮮やかな色彩で描かれています。解説によると、作者の野崎真一は酒井抱一の弟子の長男として生まれて鈴木其一の門人となった人物だそうで、確実に琳派の様式を受け継いでいることが伺えました。可愛らしさよりも雅な雰囲気の作品じゃないかな。
33 守屋多々志 「波乗り兎」
これは水色の水面の上を走る白兎を描いた作品で、金色の波が立ち疾走感のある描写となっています。解説によると、波に兎は古くから絵画や工芸に取り上げられてきた主題らしく、謡曲「竹生島」の一説に基づいているそうです。兎が何とも可愛らしいと共に、表現が面白い作品でした。
この近くには伊藤若冲の鶴亀図や竹内栖鳳の鴨の絵などもありました。
53 柴田是真 「墨林筆哥」
これは全30図から成る画帖の一部で、6図が展示されていました。色紙サイズの画面それぞれに、蛙が琵琶を弾く姿と夏草、冬の富士山、傘、枇杷の枝?、藁束などが描かれています。全て濃い色合いで描かれているのですが、実はこれは漆で描かれた漆絵で、柴田是真ならではの超絶技巧となっています。特に枯れ葉の琵琶を弾く蛙はユーモアを感じさせ、画力・技術だけでなく絵そのものの面白さも素晴らしいものがありました。
参考記事:
ZESHIN 柴田是真の漆工・漆絵・絵画 (根津美術館)
柴田是真の漆×絵 (三井記念美術館)
<第3章 小さい・ほのぼの・ユーモラス ― Kawaii ってなに?>
最後の章は小さいものやほのぼのしたもの、ユーモラスなものなどのコーナーです。「可愛い」とされる要素にも色々な側面があり、それをさらに細分化して紹介していました。
84 伊藤若冲 「托鉢図」
これは大きな鉢を持って行列している黒い衣の僧侶たちを描いた作品です。ぎっしりつまって歩いていて簡略化されているのですが、1人1人の表情が少しずつ違っているのが面白いです。ゆるキャラ的な雰囲気で、ちょっと可笑しさが感じられました。
59~78 「紅板」
小型の紅入れが20点ほど展示されていて、これらは女性が外出先で化粧直しをするために使われたものです。象牙、漆塗り、金属製など様々な材質が使われ、かなり精密な細工で肉眼で鑑賞するにはちょっと大変なくらいです。女性用らしく蝶や花、鳥などが描かれていて可憐で洒落た雰囲気がありました。化粧道具を可愛く飾るのは今も昔も変わらないのかも。
83 川﨑小虎 「伝説中将姫」
これは六曲一双の屏風に当麻寺の縁起にまつわる伝説上の姫君を描いた作品で、お告げで蓮の中から出た糸を洗ったところ五色の糸が出てきて、それを使って曼荼羅を編んだというシーンです。ここでは髪の長い白い衣の女性たちが井戸の周りで手を合わせて糸を洗おうとしている様子が描かれ、周りには白い蓮の花が咲いています。全体的に清純な雰囲気があり、可愛いというよりは厳かな感じにも思えました。
続いては2室です。
94 谷内六郎 「ほ ほ ほたるこい」 ★こちらで観られます
これは昭和45年に小学生向けに刊行された学研の「学習 絵本シリーズ」のうちの1冊で、全国的に知られるわらべうたを題材にした絵が描かれています。4つ展示されていたのですが、特に好みだったのがこの絵で、笹を持った浴衣の男の子と団扇を持った女の子が描かれ、周りは青くそこに無数の蛍の光が描かれています。蛍に夢中になって追いかける姿が可愛らしいとともに、郷愁を誘われました。 谷内六郎の作品はほのぼのしていながら心に響くので好みです。
参考記事:横須賀美術館の常設 (2013年08月)
最後には熊谷守一の作品のコーナーなどもありました。
ということで、様々な可愛い絵画を楽しむことができました。これは特に美術の知識がなくても楽しめる展示じゃないかな。後期は伊藤若冲の「樹花鳥獣図屏風」もあるし、癒されたい人におすすめの展示です。
参照記事:★この記事を参照している記事

【展覧名】
Kawaii(かわいい) 日本美術 -若冲・栖鳳・松園から熊谷守一まで-
【公式サイト】
http://www.yamatane-museum.jp/exh/current.html
【会場】山種美術館
【最寄】JR・東京メトロ 恵比寿駅
【会期】2014年1月3日(金)~3月2日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
結構混んでいて、ロッカーは空きがなく展覧会でも人だかりができるくらいでした。前期は伊藤若冲の「樹花鳥獣図屏風」が無かったのに混んでいたので、出品されている後期はますます人気が出ているのではないかと思います。なるべく時間を取って出かけることをお勧めします。
さて、今回の展示はその名の通り「可愛い」を主題にした展示です。この言葉はいまや海外にも広がっているそうですが、遡ると平安時代には既にこうした感覚があったそうです。この展示では特に可愛いとされるモチーフを3つの章に分けて、古今の日本画を中心に展示していましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
参考記事:かわいい江戸絵画 (府中市美術館)
<冒頭>
まず冒頭に趣旨説明のような感じで1点展示されていました。
85 伊藤若冲 「伏見人形図」 ★こちらで観られます
これは掛け軸で、芭蕉扇のようなものを持った坊主頭の伏見人形が7体描かれています。縦に並んでいて、皆同じポーズとなっていますが服の色が赤、緑、青と3種となっています。顔が大きく目鼻が小さいのですが、単純化されころっとした感じがほのぼのとしていました。配置も流れになっているのが面白かったです。
<第1章 描かれた子ども ― 人物の中の Kawaii>
1章は子供を描いた作品のコーナーです。古くは枕草子の中で「うつくしきもの(=可愛いもの)」として子供の例示が半数を占めるなど、子供と可愛いは強く結びついています。ここでは物語絵や風俗画、肖像画など様々な作品の中の子供が紹介されていました。
2 伝 長沢芦雪 「唐子遊び図」
これは唐子(からこ)という中国風のパンダみたいな髪型の子供達が描かれた作品で、文人が嗜むべき4つの琴棋書画に興じている様子が描かれています。下の方には絵(画)を描く子と集まって見ている子、背中を向けて書を書いている子、テーブルに琴を置く子と見ている子、その右には碁盤が置かれています。しかし囲碁は喧嘩になってしまったようで、周りで取っ組み合いしている様子で子供らしい感じがしますw また、書では頭に紙を乗せて破っているなど、文人とはかけ離れたヤンチャな姿が可愛らしく、生き生きとしていました。
6 上村松園 「折鶴」 ★こちらで観られます
これは折り鶴を折る着物の女性と、その傍らで同じように折っている少女を描いた作品です。女性は白い肌で指が長く、気品と色気が感じられます。一方の少女も賢そうで凛とした雰囲気があり、いずれも上村松園らしい女性像となっていました。
7 伊藤小坡 「虫売り」
これは明治から昭和にかけてあった虫売りという職業を描いた作品で、女性が市松模様の屋根のついた屋台で、頬かむりをして網に入れた虫を売っているところが描かれています。その傍らには買った虫籠を見る姉弟らしき子供の姿があり、喜んでいるようです。全体的に爽やかな色合いで、子供のあどけない雰囲気と共にほのぼのした作品となっていました。
この少し先には小出楢重の息子の肖像などもありました。
9 川端龍子 「百子図」 ★こちらで観られます
これは赤い頭飾りをつけた象と、その周りの9人の子供たちを描いた作品です。子供たちは周りで踊ったり、背中の籠に乗ったり、鼻を触ったりと無邪気な様子で、童話の挿絵のような目の大きな表情で描かれています。解説によると、これは戦後に「象が見たい」と東京の子供たちがインドに手紙を送って、本当に象を送って貰った時の様子だそうで、その際に港から上野動物園まで歩いて行ったらしく、多くの見物人が集まってきたそうです。また、川端龍子は子供向けの雑誌の挿絵を描いていたこともあったそうで、この絵はまさに挿絵的な作風となっていました。楽しげで躍動感のある作品です。
17 小山硬 「天草(納戸)」
これは長い黒髪に黒い着物の少女が描かれた作品で、背中に十字架のある小さなマリア像に向かって合掌しています。輪郭が太くボリューム感のある表現で、つぶらな瞳が純粋無垢な内面を感じさせます。周りは暗く、納戸の中で密かに祈る隠れキリシタンを彷彿とさせました。(タイトル的にもその主題だと推測できます) しんみりとした雰囲気の作品です。
<第2章 生きもの大集合 ― 動物の中の Kawaii>
続いては動物を描いた作品のコーナーです。
36 「藤袋草子絵巻」 ★こちらで観られます
これは擬人化された猿達の輿入れの行列を描いた作品です。この作品は以前にもご紹介したので今回はストーリーは割愛しますが、ここでは鹿に乗ったり、弓を持っていたり、神輿に乗ったり、酒盛りをして花嫁の女性を楽しまそうとしている様子が描かれています。結構のほほんとした雰囲気なのですが、この話は結構理不尽なので、可愛い猿達がどうにも気の毒に思えました。なお、この作品は会期によって場面替えがあるようです。
参考記事:お伽草子 この国は物語にあふれている (サントリー美術館)
この近くには奥村土牛の兎の絵などもありました。
25 西山翠嶂 「狗子」
これは寝ている2匹の子犬を描いた作品で、手前は白犬でチラリとこちらを見ています。もう1匹は黒っぽい犬で、ぐっすり眠っているのが気持ちよさそうです。お互い寄り添って寝ている姿は文句なしに可愛らしいのですが、どこか円山応挙に通じるものがあると思ったら、この画家はその流れを組む竹内栖鳳の娘婿だそうです。そう言われてみると確かに栖鳳にも通じるものもあるかな。円山四条派の伝統的な画題ですね。
19 野崎真一 「四季草花鳥獣図巻」
これは巻物で、朝顔やススキなどの中に白いウサギが描かれ、上を見上げています。よく観ると他にもカマキリやバッタなど様々な昆虫の姿もあり、単純化され鮮やかな色彩で描かれています。解説によると、作者の野崎真一は酒井抱一の弟子の長男として生まれて鈴木其一の門人となった人物だそうで、確実に琳派の様式を受け継いでいることが伺えました。可愛らしさよりも雅な雰囲気の作品じゃないかな。
33 守屋多々志 「波乗り兎」
これは水色の水面の上を走る白兎を描いた作品で、金色の波が立ち疾走感のある描写となっています。解説によると、波に兎は古くから絵画や工芸に取り上げられてきた主題らしく、謡曲「竹生島」の一説に基づいているそうです。兎が何とも可愛らしいと共に、表現が面白い作品でした。
この近くには伊藤若冲の鶴亀図や竹内栖鳳の鴨の絵などもありました。
53 柴田是真 「墨林筆哥」
これは全30図から成る画帖の一部で、6図が展示されていました。色紙サイズの画面それぞれに、蛙が琵琶を弾く姿と夏草、冬の富士山、傘、枇杷の枝?、藁束などが描かれています。全て濃い色合いで描かれているのですが、実はこれは漆で描かれた漆絵で、柴田是真ならではの超絶技巧となっています。特に枯れ葉の琵琶を弾く蛙はユーモアを感じさせ、画力・技術だけでなく絵そのものの面白さも素晴らしいものがありました。
参考記事:
ZESHIN 柴田是真の漆工・漆絵・絵画 (根津美術館)
柴田是真の漆×絵 (三井記念美術館)
<第3章 小さい・ほのぼの・ユーモラス ― Kawaii ってなに?>
最後の章は小さいものやほのぼのしたもの、ユーモラスなものなどのコーナーです。「可愛い」とされる要素にも色々な側面があり、それをさらに細分化して紹介していました。
84 伊藤若冲 「托鉢図」
これは大きな鉢を持って行列している黒い衣の僧侶たちを描いた作品です。ぎっしりつまって歩いていて簡略化されているのですが、1人1人の表情が少しずつ違っているのが面白いです。ゆるキャラ的な雰囲気で、ちょっと可笑しさが感じられました。
59~78 「紅板」
小型の紅入れが20点ほど展示されていて、これらは女性が外出先で化粧直しをするために使われたものです。象牙、漆塗り、金属製など様々な材質が使われ、かなり精密な細工で肉眼で鑑賞するにはちょっと大変なくらいです。女性用らしく蝶や花、鳥などが描かれていて可憐で洒落た雰囲気がありました。化粧道具を可愛く飾るのは今も昔も変わらないのかも。
83 川﨑小虎 「伝説中将姫」
これは六曲一双の屏風に当麻寺の縁起にまつわる伝説上の姫君を描いた作品で、お告げで蓮の中から出た糸を洗ったところ五色の糸が出てきて、それを使って曼荼羅を編んだというシーンです。ここでは髪の長い白い衣の女性たちが井戸の周りで手を合わせて糸を洗おうとしている様子が描かれ、周りには白い蓮の花が咲いています。全体的に清純な雰囲気があり、可愛いというよりは厳かな感じにも思えました。
続いては2室です。
94 谷内六郎 「ほ ほ ほたるこい」 ★こちらで観られます
これは昭和45年に小学生向けに刊行された学研の「学習 絵本シリーズ」のうちの1冊で、全国的に知られるわらべうたを題材にした絵が描かれています。4つ展示されていたのですが、特に好みだったのがこの絵で、笹を持った浴衣の男の子と団扇を持った女の子が描かれ、周りは青くそこに無数の蛍の光が描かれています。蛍に夢中になって追いかける姿が可愛らしいとともに、郷愁を誘われました。 谷内六郎の作品はほのぼのしていながら心に響くので好みです。
参考記事:横須賀美術館の常設 (2013年08月)
最後には熊谷守一の作品のコーナーなどもありました。
ということで、様々な可愛い絵画を楽しむことができました。これは特に美術の知識がなくても楽しめる展示じゃないかな。後期は伊藤若冲の「樹花鳥獣図屏風」もあるし、癒されたい人におすすめの展示です。
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