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MAKISHIMA NYOKYU 牧島如鳩展 ~神と仏の場所~ 【三鷹市美術ギャラリー】

吉祥寺でふぐを食べた後、1駅隣の三鷹に移って、三鷹市美術ギャラリーで「牧島如鳩展 ~神と仏の場所~」を観てきました(既に終了しています) デュフィ展の時にポスターを観て気になっていたのですが、ようやく行ったのは最終日でした。

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【展覧名】
 MAKISHIMA NYOKYU 牧島如鳩展 ~神と仏の場所~

【公式サイト】
 http://mitaka.jpn.org/ticket/090725g/

【会場】三鷹市美術ギャラリー
【最寄】三鷹駅
【会期】2009年7月25日(土)~8月23日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。


【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
元々、牧島如鳩は名前すら知りませんでした。この展覧会に興味を持ったのは、ポスターが異様な艶かしさというか、仏画とは思えない西洋っぽさを感じたからでした。そしてその勘はあってたのですが、まさかキリスト教と仏教をここまで混ぜた世界観を持っているとは思いもしませんでした…。


今回も気になった作品を通して内容をご紹介します。神と仏の~という名前の展覧会なのに、初っ端からイコンが出てきて驚きましたw

<Ⅰ イコンと仏画>
牧島如鳩は元々はハリストス正教のクリスチャンで、このハリストス正教というのは土着の宗教に寛容なところがある宗派らしいです。(一神教にもそういう宗派があるのも驚きですが…。) 牧島如鳩は日本最初のイコン画家である山下りんに学び、イコンなどを描いていたようですが、ちょうどロシア革命の頃で、牧島如鳩にとっても苦しい時代だったらしく、生活の為に仏画を始めたとの説明がありました。
このコーナーではイコン作品や生活の為に描いた仏画が並んでいて既に融合への序章といった感じでした。

Ⅰ-21 「イコン」 ★こちらで観られます
大きな瞳の聖母子像。日本人離れした画風で、角・直線・円など少し幾何学的な要素も感じました。この作品はいかにもイコンっぽいです。

Ⅰ-3 「祈祷の天使(左)」  ★こちらで観られます
Ⅰ-4 「祈祷の天使(右)」
左右で一対になっている2枚の絵画。左は花と鎖?でぶら下げた香炉みたいなのを持った天使で、右は長い蝋燭を持っています。厳粛な面持ちをしていて、宗教画ならではの雰囲気を持っていました。

Ⅰ-2 「ゲフシマニヤの祈り」
祈るキリスト像です。遠くを見つめる眼をしていて神聖さを感じさせます。また、背景からは静けさを感じました。 これもイコンなのですが、イコンにサインがあるのは珍しいとのことでした。

Ⅰ-8 「山上の垂訓」
説教をするキリスト像です。背景には海があり、寛容を想起する大きらかさがあります。また、周りには沢山の人がいて、手には小さな羊?がいました。そして、光背に梵字のようなものが描かれていました。(本当に梵字かはわかりませんが…) この辺からおや?という感じになってきました。

Ⅰ-12 「最後の晩餐」
仏のようなポーズをとったキリストが中央に座っています。眼は真っ直ぐこちらを見据え、仏のような目をしています。弟子達は悲嘆にくれている中で、キリストは薄い光を発しているようでした。この辺からキリストが仏のような雰囲気を持ち始めてきました。

Ⅰ-1 「達磨図」
この辺が生活のために描いた仏教絵画のようです。これは掛け軸で、ぎょろっとした眼やどっしりとした風体が達磨らしかったです。筆の運びも本職の仏画師のようでした。

Ⅰ-16 「仏誕図」
カラフルな仏画で、インドの絵みたいな雰囲気がありました。そう言えばこの人の作風はインドっぽい感じもするなあ。

Ⅰ-18 「涅槃」
お馴染みの涅槃図ですが画風は洋風っぽかったです。手前には狛犬?カンガルー?、らくだ、象、シロクマ?? など様々な動物がいて、こっちもボーダレスな感じでした。

Ⅰ-7 「誕生釈迦像」 ★こちらで観られます
赤子の釈迦が右手は天、左手は地を指差して天上天下唯我独尊と言っているシーンでしょうか。釈迦は5~6歳くらいの体型で大きく描かれ、背景に太陽のような光輪?をしょっています。周りには沢山の人が小さく描かれていて釈迦の存在感を引き立てているようでした。明るい色調で力強く、イコンのような雰囲気も漂っていました。

<Ⅱ 足利での共同生活>
このコーナーは宗教とは関係ない作品などもありました。

Ⅱ-4 「御厨風景」
普通の林を描いた風景画です。パッと観たときに梅原龍三郎みたいだなと思いました。これだけ濃い絵に囲まれていると、逆にこういう風景画も描いていたのかと驚きます。

Ⅱ-8 「奇跡者聖ニコライのおはなし」
Ⅲ-14 「郷土の義人 今村仁平」
この2つはセットで展示されていました。小さな絵巻物風で、フィルムに着色して書かれています。サンタクロースの話(煙突に入ろうとしている)と郷土の義人の話(磔になってる人とか描かれてました)です。 サンタの方には文字が無かったかな。紙芝居のように見せたのでしょうか…。色んな活動をしていますね。

Ⅱ-2 「医術」
真ん中にキリスト、右には菩薩っぽい女性、背景は野山となっていて、手前の左側では帝王切開の手術が描かれています。今まさに赤子の頭が出てくるところで結構リアルです。また、手前の右側では川から水を汲む看護婦やレントゲンを受ける着物の女性が描かれていました。 …カオスですw 時代や宗教を飛び越えていました。 看護婦や医師を聖人に見立ててるのかな? かなりキリスト教と仏教が混じってきました。

<Ⅲ 小名浜時代およびイコンと仏画の融合>
戦後、牧島如鳩は小名浜に移り住んで、ここで本格的にキリスト教と仏画が融合した作品を描いたようです。この展覧会でも驚きの多いコーナーでした。

Ⅲ-25 「龍ヶ澤大辨才天像」(だいべざいてん)
楽器を持った仏の周りに千手観音のような者がいます。これは奇跡体験や夢のおつげを絵にしたものらしく、ちょっと意味が分からないところがありますが神秘的でした。

Ⅲ-2 「三聖図」
右にキリスト、中央に釈迦がいて、左は中国風の人(老子?)が一堂に会した絵です、竹林の中で対話するかのように立っていました。3人とも澄んだ眼をしていて流石聖人です。 それにしてもこんなぶっ飛んだ絵は初めて観ましたw

Ⅲ-35 「立ち涅槃 下絵」
普通、涅槃図は釈迦が横たわってひじをついていますが、これは立ち上がった姿の涅槃図で、キリストの復活を思わせるかのようです。 また、モノクロで厳かさが強調されているように感じました。

Ⅲ-17 「一人だに亡ぶるをゆるさず 下絵」
これも衝撃の作品。6本の腕を持った千手観音のようなキリストが描かれています。 この絵の背景には最後の審判が描かれているらしく、沢山の人がいました。タイトルどおり、その多くの手で救っているのでしょうか? 

Ⅲ-4 「慈母観音像」 ★こちらで観られます
聖母子風に描かれた観音像。胸には子供を抱いています。ここまでくるともう慣れてきましたが、独特の発想ですね。神秘性や慈愛という点では、マリアと観音は近しいものを持っているのかなと思うようにもなりました。すっかり牧島ワールドにハマってましたw

Ⅲ-33 「聖母子像」
これは「慈母観音像」とは逆に仏画風の聖母子像です。キリスト教を仏画風に、仏教をイコン風に描くというのが斬新で、牧島の生い立ちと合わせて考えると彼独特の感性なのかもしれません。

Ⅲ-34 「千手千眼マリア」
ちょっと怖い絵ですw 大きく見開いた眼をしたマリアが描かれているのですが、額には第三の眼も描かれています。周りには無数の手のひらがあり、その掌には目があります。これは千の慈眼、千の慈手を持つ千手観音とマリアの融合みたいです。 ついに融合化が始まってどっちの宗教の作品か分からなくなってきましたw

Ⅲ-24 「大自在千手観世音菩薩」 ★こちらで観られます
これはポスターの作品。これがきっかけでこの展覧に行きました。実物は等身大で迫力があります。この絵の隣には牧島如鳩がこの絵を描いているところが描かれている作品がありました。

Ⅲ-6 「禹とノア」
禹(う)というのは中国版のノアみたいな人です。右にノア、左に禹が向き合って、天に感謝の祈りを捧げているようです。元々別の話を1つの話として融合させているようでした。 どんどん融合しますw

Ⅲ-9 「魚藍観音像」 ★こちらで観られます
大漁を祈って描かれた作品らしいです。真ん中に大きな観音がいて、左上からはマリアが天使を連れて降りて着ています。右上からは同じように菩薩が天女を連れてきています。 オールスターみたいになってますw これだけ強力な聖女達が揃ったおかげか、この絵を飾ったら大漁が続いたとのことです。どこからのご利益なんだろ??

<Ⅳ 足利・東京放浪>
Ⅳ-9 「山水図」
切り立った渓流の山水画です。彼独特の色合いのように思えます。それにしてもこの人のタッチはどれだけバリエーションがあるんだろうか…。西洋風だったり日本風だったりします。

Ⅳ-5 「井熊とし像」
リアルな肖像画です。何となく岸田劉生のデロリを思わせるような雰囲気でした。普通の絵も描くんですねw

Ⅳ-8 「鹿島橋より見た赤城山」
大きな山と画面いっぱいに広がる川が描かれていました。これは西洋風です。

Ⅳ-25 「高津戸峡」
印象派~フォーヴの時代を思わせるような渓流の絵でした。本当にこの人は多彩です。

Ⅳ-7 「沐浴図」
これはシュルレアリスムっぽさを感じました。沢山の裸婦が水辺や風呂?で沐浴しています。解説では北方ルネサンスの均整の取れた裸婦達と説明していました。北方ルネサンス…。もはやこの人をジャンルでくくるのは無理ですねw

<Ⅴ 願行寺に庵を結ぶ>
Ⅴ-5 「極楽鳥」
これは衝立で、カラフルな鳳凰のような鳥が描かれています。鮮やかな明るい色調で、大空に舞い上がる躍動感がありました。

Ⅴ-6 「ぶっぽうそう」
これは「極楽鳥」の裏面で、対照的にモノクロな水墨画で描かれています。侘びた感じの木に、フクロウのようなぶっぽうそうが留まっています。静かな雰囲気でした。 また、この作品には穴があいていたので、実際に使ってたんでしょうね。

Ⅴ-15 「涅槃(未完)」
絶筆です。未完で色が塗られていませんが、細かい絵が描かれていました。ここまでこの人の作品を観てきてそのパワーに圧倒されましたが、絶筆のこの作品にもそのパワーが息づいているようでした。

判子
これは作品じゃないですが、出口付近に判子が飾ってありました。ポスターにも判子が押されていたので、ポスターの該当部分を写真で撮ってきました。これは「牧島如鳩」という名前を絵を使って表現していて、中には卍や十字が含まれています。かなり牧島如鳩に似つかわしい判子ですね。
P1060905.jpg


ということで、独特の世界観があって非常に興味深い内容でした。最近、道教展伊勢神宮展で、道教と仏教、神道と仏教という習合はなんとなく理解できましたが、まさかキリスト教と仏教が融合するとは、聖☆お兄さんもビックリの世界観でしたw 冒頭の解説で、牧島如鳩自身の言葉として「500年後の人に見て欲しい」というのがありましたが、100年後でも十分驚きでした。あと400年したら研究者もこういう宗派があったのか?!と思うんじゃないかなw
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