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アルチンボルド展 【国立西洋美術館】

この展示は7/8の土曜日に観てきました。まだ会期の始めのほうですが既に人気で混みあっていました。

DSC04879.jpg

【展覧名】
 アルチンボルド展

【公式サイト】
 http://arcimboldo2017.jp/
 http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2017arcimboldo.html
 
【会場】国立西洋美術館
【最寄】上野駅

【会期】2017年6月20日(火)~9月24日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
チケット売り場は結構並んでいて、中は列を組んで見るくらいの混雑ぶりでした。奇想の絵画ということで親子連れが多く訪れているようです。この手の展示は会期末に特に混むのが予想されますので、興味がある方は早めに行くことをオススメします。

さて、この展覧会は日本でもトリックアート展などでちょくちょく出品されていたジュゼッペ・アルチンボルド(1526-1593年)の日本初の本格的なもので、油彩約10点を含む30点近い過去にない規模の展覧会となっています。アルチンボルドは奇想の画家として紹介されることが多く、神聖ローマ帝国のフェルディナント1世、マクシミリアン2世、ルドルフ2世の3代の皇帝に仕え、様々な知識を元に寄せ絵のような作品や戯画的な作品を作り宮廷を沸かせました。死後しばらくすると忘れられて行きましたが、20世紀に入りサルヴァドール・ダリを始めとするシュルレアリストたちによって再発見され、シュルレアリスムの父とまで賞賛されたようです。今回はそのアルチンボルドの貴重な作品に加え、絵画の背景となる当時の宮廷の文化なども合わせて紹介されていました。展覧会は7つの章に分かれていましたので、それに合わせて簡単にご紹介しておこうと思います。

<入口付近>
アルチンボルドメーカーという自分の顔をアルチンボルド風にして表示してくれる機械があり、ここだけ撮影可能となっていました。幾重にも行列が出来ていたので私はやらないで他人のを観ていましたが、元の顔の面影もない感じが…w いい記念にはなると思います。
2017-07-08 140115

<1章 アルチンボルドとミラノ>
この章は3代の皇帝に仕える前のミラノにいた頃についてと、自画像などが展示されていました。ミラノの頃についてはレオナルド・ダ・ヴィンチの素描などがあり、間接的に影響を受けていたのではないかと紹介されていました。自画像については恐らくこの時代のものではなく61歳頃のものでしたが、体が紙になったような表現となっていてアルチンボルドの機知を感じさせるものとなっていました。

<2章 ハプスブルク宮廷>
ここは今回のメインとなる章で、前半は様々な珍品を収集し博物館のような部屋を作っていた皇帝たちのコレクション、後半はアルチンボルドの代表作「四季」と「四大元素」がズラリと部屋の四方に並んでいます。四季はその名の通り四季を代表する草花や生き物が描かれ、それが集まって人の顔になっている作品で、四大元素は風・火・土・水の4要素にまつわる生き物や品々が集まって人の顔になっています。四季と四大元素はそれぞれ似た属性で対となっていて、春と風、夏と火、秋と土、冬と水の組み合わせでお互いが向き合うように展示されていました。年の始まりである冬を皇帝の顔にしたり、巧みにマクシミリアンの頭文字Mを服に組み込んだりと謎解きのような要素があり、皇帝を賞賛するような意図となっています。四季や四大元素をも皇帝が支配するというような意味合いもあるので、究極の皇帝ヨイショと言えそうですw それにしても見事な精密さと観察力で描かれていて、当時は非常に珍しかった新大陸の品が描かれるなどモチーフだけでも博識ぶりと皇帝の威光までも表現されているようでした。

また、その先に進むと皇帝が開催した槍試合の時の衣装デザインなどが並んでいました。アルチンボルドはアートディレクターとしての役割もあり、プロパガンダとして開催される槍試合を如何に華やかに見せるかという使命も負っていたようでした。

<3章 自然描写>
ここはアルチンボルドの追随者の作品や、当時の様々な生物の詳細な素描(主にその方面で名を馳せたヤーコポ・リゴッツィの作品)などが並んでいました。アルチンボルドの追随者の荒い描写を観ると、アルチンボルドが如何に繊細かつ正確な描写なのかよく分かりますw ヤーコポ・リゴッツィの素描はかなり細かく正確さを感じるもので、当時は珍しい生き物を集めるのが権力の象徴の1つとなっていたので、こうした作品が多く生まれたようです。(科学の進歩にも繋がって行くので良い時代だったのかも)

<4章 自然の奇跡>
こちらは実在した多毛症の人を描いた作品などが並んでいました。当時は珍しい人も好奇の対象で、顔まで毛むくじゃらの多毛症の人もコレクションとして宮廷に招かれ、贈答品として扱われていたようです。当時は人権意識とか無いので、滑稽に見えて残酷な気がします。

<5章 寄せ絵>
ここは古今東西で観られる寄せ絵についてです。寄せ絵というのはアルチンボルドの四季のように様々なものを並べて他のものに見せる表現で、日本でも歌川国芳などが多くの作品を残している よくある奇想の手法です。ここでは小部屋になったところに男根を集めて顔を表すという猥雑な作品がありましたw アルチンボルドは流石に下ネタみたいなのををそのまま使うことは無かったですが、割りとインスピレーションの源としてこういうものを観ていたのかもしれません。 他にも風景画のようで風刺が込められているような作品も並んでいました。

<6章 職業絵とカリカチュアの誕生>
ここは再びレオナルド・ダ・ヴィンチの素描なども交えながらカリカチュア(戯画)が並んでいました。アルチンボルドによる作品では、本が人になったような肖像があり、その人の職業を表しているようでした。一方では悪意すら感じる滑稽さも含まれている作品もあり、この時代の宮廷ではキツめの皮肉が受けてたようです。

<7章 上下絵から静物画ヘ>
ここはアルチンボルドによる上下ひっくり返すと別のものにみえる絵がありました。器に盛られた野菜を逆さにすると男の顔に見えるというもので、これは静物画の先駆けでもあるようなことを解説していました。ちょっと大袈裟な気もしますが、確かにこの頃に静物が独立して描かれているのは珍しいと思います。


ということで、アルチンボルドについて詳しく知ることができる内容でした。夏休みにはこうした奇想の絵を集めた展覧会が多く開催されますが、さすがは西洋美術館だけあって面白おかしいだけでなくクオリティが高い内容となっていました。美術初心者にも楽しめる展示だと思いますが、混むのが予想されますので時間に余裕を持っていくと良いかと思います。


おまけ:
こちらは5年くらい前にパリのルーヴル美術館で撮影したもの。この絵にはいくつかバージョンがあるようで、今回の出品作はルーヴル美術館所蔵品は無いようでした。
DSC_0086_00001.jpg
ちなみにこの絵はモナ・リザの部屋の近くにあったのですが、誰も見向きもせずに通り過ぎていましたw もしかして追随者のものなのかな
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