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レオナルド×ミケランジェロ展 【三菱一号館美術館】

前回ご紹介した出光美術館の展示を観た後、歩いて三菱一号館美術館まで移動して「レオナルド×ミケランジェロ展」を観てきました。(この展示は7/16に観てきました。)

2017-07-15 161445

【展覧名】
 レオナルド×ミケランジェロ展 

【公式サイト】
 http://mimt.jp/lemi/

【会場】三菱一号館美術館
【最寄】東京駅/有楽町駅

【会期】2017年6月17日(土)~9月24日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
非常に混んでいて、チケット売り場も10分くらい並びました。中は列を組んで観る感じで、たまに人だかりができるような混雑でしたが展示の最後の方になるにつれて混雑が解消されていました。

さて、この展示は誰もが知るルネサンス時代の2大巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロ・ブオナローティの「素描展」です。油彩もありますが、帰属作品や模作なので基本的には素描と資料が中心です(65点程度)。特に時系列になっている訳でなく、題材ごとに章立てされ2人の仕事や価値観を比較して行く内容となっていました。特にメモを取ってこなかったので簡単に章ごとの様子をご紹介しようと思います。

<序章:レオナルドとミケランジェロ─そして素描の力>
ここにはレオナルドの自画像(ファクシミリ版という精巧なコピー)やミケランジェロの肖像(マルチェッロ・ヴェヌスティに帰属)がありました。また、レオナルドの代表作「岩窟の聖母」のための天使の素描などもあり、精密かつ綿密な素描による準備の様子が伺えました。一方のミケランジェロは「レダと白鳥」の為の素描があり、どう観ても女性のようでしたがモデルは男性とのことです。こちらも目鼻だけを隣に描き直しているなど、入念な素描となっていました。この2点は今回の展示でも特に見どころになっていると思います。

レオナルドもミケランジェロも素描を非常に重要視していたらしく、この辺ではその言葉なども紹介されていました。

<I.顔貌表現>
ここは顔を題材とした作品が並んでいました。レオナルドは老人を描いたものや、顔や目の比率を計算しているメモのようなものがあり、人体工学的な研究が確認できます。また、レオナルドは面白いと思った顔の人に会うと一日中付け回して顔をじっくり観て、後で帰ってから素描するという逸話もあり、相当に研究熱心というか常人離れした観察力が垣間見えるエピソードでした。

<II.絵画と彫刻:パラゴーネ>
ここでは「パラゴーネ」という当時盛んに論じられた「絵画と彫刻はどっちが優れた芸術か?」という論争をテーマにしていました。レオナルドは平面を立体に見せるので絵画の方が上だと主張していたようですが、ミケランジェロは優劣をつけることはなく、自然を母として建築・彫刻・絵画の3姉妹がいるとして、お互いの争いは無意味であると考えていたようです。
ここにあった作品はやはり人物像の準備素描が多かったかな。ミケランジェロのほうは蝋で出来た彫刻の構想を練るためのものもあり、素描と同様に彫刻においても様々な検討をしていたようです。ミケランジェロはやはり彫刻家としての側面も強いだけあって、絵もレオナルドよりも肉感的というか筋肉隆々な印象を受けます。

<III.人体表現>
この章ではレオナルドとミケランジェロの直接対決とも言えるフィレンツェ政庁舎(ヴェッキオ宮殿)の壁画について紹介していました。この壁画はレオナルドが「アンギアーリの戦い」、ミケランジェロが反対側に「カッシーナの戦い」を描くという美術史上の大事件だったのですが、ミケランジェロの方は素描だけ完成したものの壁画は未完に終わりました。(その素描も今回の展示に出品なし) ここで面白いのはレオナルドも実はミケランジェロのダヴィデ像に触発されていたらしく、「アンギアーリの戦い」のための素描などには立派な肉体の人物像などが描かれていました。
一方、この章のミケランジェロの見どころは壁一面に並んだ「最後の審判」の素描群でした。これは本人が描いたものでなくジョルジョ・ギージという画家による模作ですが、キリストやマリアを中心に天使たちや天国に行く人々、地獄に行く人々、死者たちの復活など様々な場面が描かれています。その表情や肉体表現などが劇的で、これはかなり見応えがありました。

この辺で上の階は終わりで、休憩室で写真を撮ることができました。
2017-07-15 153238

<IV.馬と建築>
ここから下の階となります。ここには実現しなかったレオナルドによる建築の設計図や、馬を描いた作品が並んでいました。レオナルドは馬が大好きだったらしく足や筋肉だけを描いた作品などがあり、人物像と同じくらいの情熱が感じられます。一方でミケランジェロは点数も少なめで、レオナルドほどの馬への熱意は無かったようでした。

<V.レダと白鳥>
ここは代理対決みたいな展示で、どちらもオリジナルが失われた「レダと白鳥」の模作が並んでいました。
 参考リンク:公式サイト「レダと白鳥」に見る2人の対比
ミケランジェロのほうは割と物語に忠実で、白鳥に化けたゼウスがレダと絡み合うような官能的で優美な雰囲気の作品になっています。一方、レオナルドの作品は立った裸婦として描かれたレダが、ちょっと黒めで大きな白鳥を抱いている姿で描かれています。白鳥がどこかオッサンっぽくてゼウスのイメージそのものw 傍らには2組の双子が描かれているなど、物語のその後の顛末も暗示しています。立った姿で描くという発想に感心させられる1枚です。
ちなみにレオナルドの完成作は後の時代に不道徳ということで燃やされたのだとか。ミケランジェロの作品も意図的に失われたらしいので、時代の価値観によってどんな名画でも憂き目に合う可能性はありますね…。

<VI.手稿と手紙>
ここにはレオナルドの発明品の案をイラスト化したものや、両者の私的な手紙がありました。レオナルドは万能の天才と言われている通り、軍事や土木関係にも携わっていたのですがここには鎌のようなもので攻撃する戦車や、水車のようなものを描いたものがありました。しかし、戦車は「味方も傷つける」みたいなコメントを書いているようで、実用には向かないと考えていたようです。
ミケランジェロは手紙があり、かなり年下の男性と恋人同士みたいな内容を取り交わしていたようです。同性愛者という説があるのも納得の内容です。

<終章:肖像画>
最後はまた肖像画の素描が数点並んでいました。しかしそれだけではなく、いつもはショップとなっている1階に、ミケランジェロの未完成作(17世紀の彫刻家によって完成)が展示されていて、ここでは写真を撮ることもできました。

こんな感じ。
2017-07-15 160819 2017-07-15 1609570 2017-07-15 160932
この展示を観る時はスマフォ等撮影できるものを持っていくと良いと思います。


ということで、貴重な内容で2人の対比がよく分かる構成となっていました。とは言え、素描中心なので美術初心者にはややハードル高めかもしれません。 レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロ・ブオナローティが好きな方向けの展示と言えそうです。
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