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上村松園-美人画の精華- 【山種美術館】

先週の祝日に山種美術館で「上村松園-美人画の精華-」を観てきました。この展示は前期・後期に分かれていて、私が観たのは前期の内容でした。(9/26以降は後期の内容となります。)

DSC08517.jpg

【展覧名】
 上村松園-美人画の精華-

【公式サイト】
 http://www.yamatane-museum.jp/exh/2017/uemurashoen.html

【会場】山種美術館
【最寄】恵比寿駅

【会期】2017年8月29日(火)~10月22日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
予想通り結構な混み具合で、たまに人だかりが出来ている作品もありました。山種美術館では定期的に上村松園展が行われますが、毎回人気を集めていて特に会期末は混むので、早めに行っておきました。

さて、この展示は京都で活躍した女性画家である上村松園を冠するタイトルとなっていますが、山種美術館が所蔵する上村松園の作品は18点なのでそれだけという訳ではなく、美人画を得意とした画家達による作品も合わせて紹介するという内容となっています。特にメモは取ってきませんでしたが、構成は4つの章に分かれていましたのでそれに沿って簡単に内容を振り返ってみようと思います。
(過去に上村松園については詳しく書いた記事がいくつかあるので、上村松園の詳細を知りたい方はそちらをご参照ください。特に国近美が網羅的な展示でした)

 参考記事:
  上村松園と鏑木清方展 (平塚市美術館)
  和のよそおい -松園・清方・深水- (山種美術館)
  上村松園展 (東京国立近代美術館)
  上村松園 素描、下絵と本画 (川村記念美術館)
  没後60年記念上村松園/美人画の粋(すい) (山種美術館)


<第1章 上村松園-香り高き珠玉の美->
まず最初に上村松園の作品が並んでいます。今回は山種美術館の上村松園コレクションは全て出品されているので、それらがズラッと並ぶのは壮観です。特に見どころはポスターにもなっている「新蛍」で、蚊帳を張る女性がふと足元にいる蛍に気づいて目を向けるという光景が描かれています。こうした穏やかで清廉な印象を受けるのが上村松園の特徴とも言えると思うのですが、上村松園は「女性は美しければよい、という気持ちで描いたことは一度もない。一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵こそ私の念願とするところのものである」と語っていたそうで、鑑賞者の気持ちも清らかにするような絵を目指していたようです。この章ではその目指したものが十分に体験できると思います。また、「新蛍」では技巧的な意味でも見どころで、女性の着物が蚊帳の向こうに透けて見えるというのが面白いです。これは「夕べ」でも観られる表現で、上村松園の得意な技法とも言えそうです。

他に注目して観たいのが女性たちの髪型と服装です。上村松園は和髪に愛着があったそうで、各身分の女性の髪型を丁寧に描き分けています。また、着物も身分や季節感に合ったものとなっていて、女性だからこそのこだわりが瑞々しい表現に繋がっているのは間違いないと思います。昔は女性が画家として生計を立てるというのは非常に辛いものがあったようですが、そうした苦労は画面に出さず 己が美しいと思った理想的な女性像を描いているように思いました。 ちなみに上村松園は良い絵を描く人は人格も素晴らしいと考えていたそうです。 上村松園はきっとそういう人だったのかもしれませんが、有名画家にはとんでもない変態と畜生が揃っているので賛同は出来ないかなw


<第2章 文学と歴史を彩った女性たち>
こちらは文学や歴史をテーマにした美人画が並ぶコーナーです。ここにも1点だけ上村松園の作品があり、この展覧会で唯一撮影可能となっていました。

上村松園「砧」
20170918 140910
こちらは元禄期の女性を描いているようです。そうと言われないといつの時代か素人には分からないですが、髪型や服装がその時代の風俗を表しているようでした。

ここには小林古径の「清姫」などもありました。安珍・清姫伝説を題材とした作品で、能では「道成寺」として有名な話ですが、小林古径の自由な発想力が面白い作品です。他にも森田曠平の「出雲阿国」や片岡球子の「北斎の娘おゑい」といったインパクトのある強い画風の作品などもあり、多彩な画風の作品が並んでいました。


<第3章 舞妓と芸妓>
ここは点数もそれほどなかったのですが、タイトル通りに舞妓と芸妓をテーマにした作品が並んでいます。ここで最も目を引くのは小倉遊亀の「舞う(舞妓)」と「舞う(芸者)」の2点じゃないかな。小倉遊亀も女性画家ですが、躍動的で力強い雰囲気の作風なので上村松園とはだいぶ異なります。小倉遊亀の目指した方向性もまた面白くて圧倒されました。
ここには美人画の名手として名高い伊東深水の作品などもありました。


<第4章 古今の美人-和装の域・洋装の華>
この章だけ前期・後期の入れ替えがあるようです。
ここは江戸時代の作品からかなり最近まで幅広い時代の作品が並んでいます。鈴木春信や鳥居清長といった美人画のパイオニアから、大首絵で人気を博した喜多川歌麿、明治期の錦絵で活躍した月岡芳年、菱田春草や伊藤小坡、鏑木清方、伊東深水など女性像に定評がある巨匠たちの作品が並びます。ここで私が一押ししたいのは月岡芳年の「○○さう」と書かれた「風俗三十二相」です。生活の中にある様々な感情を描いたこのシリーズは、非常に親近感を覚えて、単に美しいだけでなく愛らしさを感じさせます。凄い傑作です。
 参考記事:
  没後120年記念 月岡芳年 感想後編(太田記念美術館)
  東京国立博物館の案内(2009年11月)
  江戸東京博物館の案内(絵画編 2009年12月)

他にも和田英作の「黄衣の少女」なども好みの作品なので久々に観られて良かったです。


ということで、上村松園だけでなく沢山の画家の美人画を観ることができました。各画風を比べて観ると、上村松園は女性らしいこだわりの視点で女性を観ているところや、清廉な雰囲気で描こうとしていた点が他の画家とは異なっていたのかもしれません。人気の展示ですので気になる方は会期末になる前に早めに行くことをお勧めします。

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