関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで (感想前編)【国立新美術館】

前回ご紹介した展示を観る前に、すぐ近くの国立新美術館で「サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで」を観てきました。この展示は撮影可能で沢山撮ってきましたので、前編後編に分けてご紹介していこうと思います。
なお、この展示は森美術館との共同開催となっていて、2館とも写真撮影が可能です。また、音声ガイドも無料となっていました。チケットは2館共通があって、日をまたいでも使えます。(実際、私は金曜日の夜に森美術館、土曜日に国立新美術館という感じで観ました。森美術館の展示についても後日ご紹介の予定です)

 参考記事:
  サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで 感想前編(国立新美術館)
  サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで 感想後編(国立新美術館)
  サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで 感想前編(森美術館)
  サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで 感想後編(森美術館)

DSC08054.jpg

【展覧名】
 サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで

【公式サイト】
 http://sunshower2017.jp/
 http://www.nact.jp/exhibition_special/2017/sunshower/

【会場】国立新美術館
【最寄】乃木坂駅・六本木駅

【会期】2017年7月5日(水)~10月23日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
それほど混むこともなく、快適に鑑賞することができました。冒頭に書いた通り撮影可能なので、たまに写真を撮っている人を避けて鑑賞したりしたくらいかな。

さて、この展示はタイトル通り東南アジアの1980年代以降の現代アートを紹介するものです。今年はASEAN設立50周年だそうで、そうした国々の作家たちによる東南アジアの現代を映すような作品が並んでいました。結構難解な作品も多いですが、作品を通して東南アジアのことを知ることもできましたので、詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。


<うつろう世界>
まずは歴史的・地理的な要素の強いコーナーです。東南アジア(ASEAN加盟10カ国+東ティモール)はタイを除いてヨーロッパ列強の植民地支配を経験し、WW2では一時的に日本に占拠されました。また、この地域は人の行き来が活発だそうで、多様な民族・宗教・文化が共存しているようです。この章ではそうした東南アジアの地政学的見地に着想を得た作品が並んでいました。

イー・イラン「うつろう世界 「偉人シリーズ」より」 マレーシア
DSC08058.jpg
確かこれは地図になっているろうけつ染めの作品です。偉人というのは植民地時代に外国の強奪者から交易権を守った王たちのことのようです。東南アジアのアートはこうした植民地時代の記憶を何らかの形で表現しているのが多いのが特徴と言えそうです。

ウォン・ホイチョン 「移民の皮膚/先住民の皮膚」 マレーシア
DSC08078.jpg
人の顔の形(鼻と唇の辺り)をしていて、タイトルを見るとちょっと怖くなりますが、実はバナナでできた作品。顔はカナダに移住してきた中国系マレーシア女性を表しているようです。発想の面白さと、民族の入り組んだ複雑さが垣間見えるような作品でした。

他にもこんな感じで色々あります。
DSC08084.jpg
どれも顔の断片みたいな感じで、それぞれに何の葉で出来ていて何処の人をモチーフにしているか書いてありました。

アウン・ミン「五大陸に流れ落ちた赤い涙(「ワールド」シリーズより)」 ミャンマー
DSC08090.jpg
こちらは近くで見ると、白い所にムンクの「叫び」みたいな人がぎっしりと描き込まれています。赤い部分は世界中で流される血を表し、戦争や破壊、政治的混乱を示しているようです。割とストレートで分かりやすいかも。地図に日本列島が無いから日本はセーフなのかな??

ウダム・チャン・グエン 「タイム・ブーメラン」 ベトナム
DSC08104.jpg
こちらの解説は複雑で要約が難しいのですが、領土問題によって物を測るという概念を考えた作品だそうです。映像を見るとこの階段に登って上から石膏を下に叩きつける内容でした。

こちらが壊していた石膏。世界地図の形をしているのが意味深。
DSC08106.jpg
苛立たしい新世界秩序を作る という意味が込められているようです。この作品には4つの段階があり、これは4段階目なのだとか。この近くには1段階目の手の形の彫刻もありました。


<情熱と革命>
続いては抑圧との戦いのコーナーです。WW2終了後に独立した東南アジア諸国ですが、民族間の闘争や独裁、内戦などの動乱で多くの人の命が失われました。そんな中、言論や表現の自由、民主化を求める運動は各地で起こり、芸術活動につなげたアーティストが投獄されることもあったようです。この章ではそうした思想や表現の抑圧と戦ったアーティストの葛藤を反映した作品などが並んでいました。

FXハルソノ「声なき声」 インドネシア
DSC08135.jpg
こちらは指文字で「民主主義」を表している写真。右端には指が縛られた写真があり、民主主義を唱えることが困難だったことを示しているようです。その前に置かれているのはスタンプで、左から順に押していくと「DEMOKRASI」(インドネシア語で民主主義)となります。これは体験して持ち帰ることもできました。

この近くには同じくFXハルソノによる「遺骨の墓地のモニュメント」というお墓をモチーフにした作品もありました。中々インパクトがあります。

サンチャゴ・ボセ「受難と革命」 フィリピン
DSC08151.jpg
これはフィリピンの先住民族の伝統文化をモチーフにした作品だそうで、祭壇が作られています。キリスト像はキリスト教の受難を、瓦礫や旗、ドクロなどはスペインからの解放を求めた農民運動と関係があるとのことでした。

ホー・ツーニェン「2匹または3匹のトラ」 シンガポール
DSC08159.jpg
これはシンガポールでの虎と人間の関わりを表した映像作品で、2つ画面に映されます。画面はそれぞれ虎と人間が向き合うような感じです。イギリスが行った虎の大虐殺やマレーの虎と呼ばれた山下奉文などについて奇妙な歌で紹介していきます。

こちらは人間の方。いずれもリアルなCGです。
DSC08161.jpg
この歌が妙に頭に残りますw 「We are tiger ,waretiger」(我々は虎だ、虎人間だ)という歌詞を何度も歌っていたのが印象に残りました。

ティン・リン「石けんのブロック」ミャンマー
DSC08177.jpg
これは作者が勾留された際、独房に入れられた人を石鹸に彫って表したものです(再作成のレプリカ) まさに抑圧との戦いの生き証人といった感じの作品と言えるかも。屈んだポーズが怖い。

リー・ダブラー「伝令」 カンボジア
DSC08188.jpg
これは悪名高きクメール・ルージュ時代に伝令として働いていた少年の写真と、当時禁止されていた音楽をスピーカーから流す作品。写真の中には無関係の子も混じっているようですが、見分けがつきません。見た目は可愛い子ども達の写真ですが、クメール・ルージュの行ったことを考えると非常に恐ろしくなる作品でした。

メラ・ヤルスマ「プリブミ・プリブミ」 オランダ・インドネシア
DSC08193.jpg
これは路上で蛙の揚げ物を作って振る舞うという活動を撮影した作品。蛙は中国では食用である一方でイスラームでは不浄とされるようです。様々な民族が行き交う国ならではの文化的禁忌に疑問を呈する作品のようでした。

ヘリ・ドノ「政治指導者へのショックセラピー」 インドネシア
DSC08201.jpg
インドネシアの伝統的な影絵「ワヤン・クリ」から着想を得た作品で、指導者が最高位を巡って争う様子が表されているようです。私は観られませんでしたが30分に1回くらい電動で動くようです。皮肉が効いてて面白いw


<アーカイブ>
こちらはパフォーマンスなど形に残らないアート表現をアーカイブとして残す活動を紹介するコーナー。

日本語の資料も展示されていました。
DSC08220.jpg

沢山の写真でデジタル化も進めているようです。
DSC08229.jpg


ちょっと長くなってきたので、今日はここまでにして残りは後編でご紹介しようと思います。日本の現代アートに比べると、生き死にに直面したような作品が多いように思えます。特に抑圧との戦いのコーナーは非常に恐ろしさを感じました。後半も驚くべき作品が並んでいましたので、次回も写真を使っていこうと思います。

関連記事


記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。

 

更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter



コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

21世紀のxxx者

Author:21世紀のxxx者
 
多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。

関東の方には休日のガイドやデートスポット探し、関東以外の方には東京観光のサイトとしてご覧頂ければと思います。

画像を大きめにしているので、解像度は1280×1024以上が推奨です。

↓ブログランキングです。ぽちっと押して頂けると嬉しいです。





【トラックバック・リンク】
基本的にどちらも大歓迎です。アダルトサイト・商材紹介のみのサイトの方はご遠慮ください。
※TB・コメントは公序良俗を判断した上で断り無く削除することがあります。
※相互リンクに関しては一定以上のお付き合いの上で判断させて頂いております。

【記事・画像について】
当ブログコンテンツからの転載は一切お断り致します。(RSSは問題ありません)

更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter

ピックアップ
オランジュリー美術館展
 前編 後編

コートールド美術館展
 前編 後編

ゴッホ展
 前編 後編

ハプスブルク展
 前編 後編
展覧スケジュール
現時点で分かる限り、大きな展示のスケジュールを一覧にしました。

展展会年間スケジュール (1都3県)
検索フォーム
ブログ内検索です。
【○○美術館】 というように館名には【】をつけて検索するとみつかりやすいです。
全記事リスト

全記事の一覧リンク

カテゴリ
リンク
このブログをリンクに追加する

日ごろ参考にしているブログです。こちらにも訪れてみてください。

<美術系サイト>
弐代目・青い日記帳
いづつやの文化記号
あるYoginiの日常
影とシルエットのアート
建築学科生のブログ
彫刻パラダイス
ギャラリークニャ
「 10秒美術館 」 ~元画商がほんのり捧げる3行コメント~ 
だまけん文化センター
横浜を好きになる100の方法
美術品オークション

<読者サイト>
アスカリーナのいちご日記
Gogorit Mogorit Diary
青い海(沖縄ブログ)
なつの天然生活
月の囁き
桜から四季の花まで、江戸東京散歩日記
うさみさんのお出かけメモ (u_u)
森の家ーイラストのある生活
Croquis
ラクダにひかれてダマスカス

<友人のサイト>
男性に着て欲しいメンズファッション集
Androidタブレット比較
キャンペーン情報をまとめるブログ
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
メディア掲載
■2012/1/27
NHK BSプレミアム 熱中スタジアム「博物館ナイト」の収録に参加してきました
  → 詳細

■2011/11/21
海の見える杜美術館の公式紹介サイトに掲載されました
  → 詳細

■2011/9/29
「週刊文春 10月6日号」に掲載されました
  → 詳細

■2009/10/28
Yahoo!カテゴリーに登録されました
  → 絵画
  → 関東 > 絵画

記事の共有
この記事をツイートする
広告
美術鑑賞のお供
細かい美術品を見るのに非常に重宝しています。
愛機紹介
このブログの写真を撮ってます。上は気合入れてる時のカメラ、下は普段使いのカメラです。
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
18位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
デザイン・アート
2位
アクセスランキングを見る>>
twitter
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

※できるだけコメント欄にお願い致します。(管理人だけに表示機能を活用ください) メールは法人の方で、会社・部署・ドメインなどを確認できる場合のみ返信致します。