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MOMコレクション005 リサイクル&ビルド【森美術館】

前回ご紹介した森美術館の展示を観た後、同時開催されているMOMコレクションも観てきました。こちらも撮影可能でしたので、写真を使ってご紹介しておこうと思います。

DSC07961.jpg

【展覧名】
 MOMコレクション005 リサイクル&ビルド
 MOMスクリーン カミーユ・アンロ
 MOMリサーチ 中国現代写真の現場―三影堂撮影芸術中心

【公式サイト】
 http://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamcollection005/index.html
 http://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamscreen006/index.html
 http://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamresearch005/index.html

【会場】森美術館
【最寄】六本木駅

【会期】2017年7月5日(水)~10月23日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、このMOMコレクションですが、毎回の特別展と同時に様々な新進アーティストを紹介するもので、今回は「リサイクル&ビルド」というサブタイトルとなっていました。また、MOMスクリーンとMOMリサーチという部屋もあり、それぞれ少数ですが面白い展示でしたので簡単にご紹介しようと思います。

<MAMコレクション005:リサイクル&ビルド>
まずはリサイクル&ビルドの展示についてです。戦後の日本は「スクラップ・アンド・ビルド」という最新技術に置き換える手法で発展してきましたが、最近では建築のリノベーションが盛んになるなどリサイクルが注目されているようです。ここではそれをテーマに3人の作品が展示されていました。

宇治野宗輝「ヴァーティカル・プライウッド・シティ」
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最近ヨコハマトリエンナーレでも観たばかりの宇治野宗輝 氏の作品がありました。こちらはやや小規模ですが、古いギターや掃除機、レコードなどが動き出して騒音とも音楽とも言えない音を出しますw プライウッドというのはベニアのことで、ベニアで構成され拡張された都市を表現しているらしく、着想源は出身地である練馬の新興住宅地なのだとか。大量生産・大量消費を象徴すると共に均質化されていく世界も表しているとのことでした。最近気になっているアーティストなので観られて嬉しい。
 参考記事:
  ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス (横浜赤レンガ倉庫1号館)
  六本木アートナイト2013 (後編)
  六本木クロッシング2010展:芸術は可能か? (森美術館)

岩崎貴宏「Out of Disorder」  
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こちらの作品もつい最近どこかで観た覚えがありました(何処だか思い出せませんが…) タオルやシャツ、ズボンなど身近なものをリサイクルして作った山に、ほどかれた糸を使って鉄塔が建てられています。針金かと思いましたが、実際には柔らかい糸というのが面白いです。
 参考記事:
  ヨコハマトリエンナーレ2011 (横浜美術館)
  G-tokyo 2010 (森アーツセンターギャラリー)

こちらも岩崎氏の作品。
DSC07978.jpg
これだけ少ない材料で山と鉄塔のジオラマを見事に再現できているのが面白いです。

このコーナーには他に宮本隆司 氏の写真作品も10点近くありましたが、そちらは撮影禁止でしたので割愛。


<MAMスクリーン006:カミーユ・アンロ>
こちらはヴェネツィア・ビエンナーレで銀獅子賞を受賞したカミーユ・アンロというアーティストの映像作品のコーナーです。短編9本を50分に渡って放映しているのですが、私は10分ほどだけ観ていました。

DSC07985.jpg
ちょっとこれのタイトルが分からないのですが、映像に線描で絵を描くのがこの人の作風のようで、内容はさっぱり意味が分かりませんでしたが作風だけは面白かったです。ちょっと不気味ですがw


<MAMリサーチ 005:中国現代写真の現場―三影堂撮影芸術中心>
こちらは中国人と日本人の写真家ユニット榮榮&映里(ロンロン・アンド・インリ)を中心に2007年に中国に建てられた「影堂撮影芸術中心」という施設についてのコーナーです。建築デザインはアイ・ウェイウェイが手がけているそうで、様々な設備を備える画期的な施設のようです。

まずは中国の芸術写真についての歴史を簡単に紹介していました。中国の芸術写真が出て来る前、文化大革命(1966~1976)の間は中国の写真はプロパガンダの道具になっていたのだとか。

こちらは1979年頃の四月影会の活動を伝えるコーナー。
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文化大革命からの回復期に現れた非公式のアマチュア写真家の集まりだったそうです。自然美やヒューマニズムの尊重、社会問題を捉えてセンセーションを巻き起こしたのだとか。文革の後なら皆そういうのに飢えていそう…。

1980年代は「写真のニューウェーブ」と言われる芸術運動があったそうで、様々な都市で写真クラブが100団体以上作られたそうです。その際、文革の頃に禁じられていた西洋文化が流れこみ、当局の公的なプロパガンダに対抗する写真が現れました。

こちらは1986年に「現代写真サロン」というグループが出した展覧会のカタログ。
DSC08041.jpg
ドキュメンタリー写真の先駆けらしく、写真を社会の現実に対峙するものと位置づけていたのだとか


1990年代は実験的写真の時代で、若手の写真家が主流から離れて独自のコミュニティで活動をしていたようです。その中でも「東村」というコミュニティは前衛的な画家やインスタレーション作家、写真家が集まる画期的なものだったようです。

しかし1994年に東村が解散を余儀なくされると、榮榮は北京郊外の六里屯という小さな芸術家のコロニーに移り住みました。ここで日本人の映里と出会い、共に活動をはじめました。しかしここもやがて開発で取り壊されたそうです。 そして北京オリンピックの開催を控え市場優先になりがちな美術界を危惧するとともに、絵画や彫刻などと比べ関心や理解の少ない写真芸術を発展する場所が欲しいと考え、北京郊外の草場地村というところに2007年に三影堂をオープンさせたそうです。

こちらは榮榮らが1996年頃にてがけた「ニューフォト」という雑誌。
DSC08033.jpg
実験的写真を個性という観点から定義していたそうですが、やがて実験的写真とはコンセプチュアル写真であると考えるようになり、1990年代後半にはコンセプトを制作の源泉や方向性とする実験写真家が増えたそうです。 ちなみにこれはコピー機を使った手作りの雑誌で、美術関係者や北京の大使館関係者に流通したのだとか。

こちらは三影堂の活動や発展について紹介しているコーナー。
DSC08002.jpg
子供から大人まで写真文化に親しむ機会を提供する発信地になっているようです。また、大学の多い地域にあるらしく、写真文化の普及を目指しているそうです。


ということで、それぞれ異なる3つのテーマでちょっと難解なところも多かったですが楽しむことができました。こういう現代アートも苦手ながらもちょこちょこ観てますが、段々と有名になっていく人も出てくるのも1つの楽しみと言えます。これからも活躍が期待できそうな人たちの作品が集まっていたので、今後のためにチェックしておくのも良いかと思います。

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