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生誕120年 東郷青児展 【東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館】

2週間ほど前の土曜日に新宿の東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で「生誕120年 東郷青児展」を観てきました。

DSC08531.jpg

【展覧名】
 生誕120年 東郷青児展

【公式サイト】
 http://togoseiji120th.jp/
 http://www.sjnk-museum.org/program/current/4953.html

【会場】東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
【最寄】新宿駅

【会期】2017年9月16日(土)~11月12日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
思った以上にお客さんが入っていてチケットを買うのにちょっと並びましたが、中に入ったら快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はこの美術館の名前にもなっている東郷青児に関する大規模な回顧展となっています。東郷青児はちょっと儚い少女の絵をよく描いていたのでその画風が有名だと思いますが、一方で美術団体「二科会」のドンとしての顔もあった人物です。割と評価の分かれる画家で、活躍していた当時から通俗的であると揶揄されたり、多くの女性とスキャンダルを起こして話題になったり(奥さんがいるのに愛人と心中事件を起して有名になったw)、ヌードモデルを神輿のように街に連れ出して二科展の宣伝するなど、様々なエピソードと評価があったりします。今回はそうしたエピソードはあまり紹介されていませんでしたが、初期から晩年まで網羅的で代表的な作品が集まっていましたので、展示構成に従って各章ごとに簡単にご紹介しておこうと思います。


<第1章 内的生の燃焼 1915-1928年>
まず最初は1915年の18歳の頃からの初期作品のコーナーです。東郷青児は18歳の頃に初個展で未来派風の新人として注目され、翌年には二科展で二科賞を取るなど、最初から華々しいスタートを切ることができました。その後、イタリアやフランスに留学しピカソに出会いキュビスムへの傾倒を見せていくことになります。
ここには二科賞を取った「パラソルさせる女」やピカソを呼びつけて見せた自信作「サンタンバンク」といった代表作が並びます。「パラソルさせる女」はうねった紙状の中に女性の顔が描かれていて、確かに未来派的なものがありますが、ハッキリ言って色も形も野暮ったいですw 当時はこうした新しい潮流が日本ではほとんど無かったので目新しかったのだと思います。似たような作風の「彼女のすべて」などもあり、最初はこれが東郷の持ち味だったようです。それが留学すると逆に具象的になってきて、むしろセザンヌ風に見える作品などもありました。そしてキュビスムに傾倒した自信作の「サンタンバンク」はほぼピカソの作風で、ピカソからも「自分の絵を見るような気がする」と言われたそうですw とは言えこれは確かにキュビスム風の作品として完成度が高くて良い絵でした。 他のキュビスム作品もレジェ等を思わせる作風だったりしますが、良い絵が多いです。


<第2章 恋とモダニズム 1928-1930年代前半>
続いては留学から帰って関東大震災後に装丁や室内装飾などでも活躍した時期のコーナーです。(この頃に心中事件で有名になった) この頃はやはりキュビスム風の人物像が中心ですが、どことなく顔はモディリアーニ風になっているように思えるかな。 また、「超現実の散歩」のようにシュルレアリスム風の作品も現れたようで、いくつかシュールな雰囲気の作品が並びます。
他に、多くの本などが並び、装丁や翻訳を手掛けていたのが分かります。幾何学模様を使ったものや、得意の人物像を使ったりしています。舞台装置についても当時の写真があり、直線的な建物の背景などを手がけていたようです。

余談ですが、このコーナーあたりから片方だけ黒い靴下(ストッキング?)を履いた裸婦が登場し始めますw 会場内に何作もあるので裸靴下の裸婦が何人いるか数えてみてくださいw


<第3章 泰西名画と美人画 1930年代後半-1944年>
続いては戦争へと進んでいく時代のコーナーです。フランスで成功を収めた藤田嗣治が帰国すると、藤田は東郷を助手として壁画の仕事を手伝いました。それがきっかけで藤田と東郷で百貨店の大装飾画(壁画のように大きな絵)を競作するなど新しい境地に至り、「泰西名画」と呼ばれるヨーロッパ風の絵画を手がけるようになりました。
この時代は以前に比べてキュビスム風が抑えられて徐々に柔らかい雰囲気の人物像となっているように思います。また、時局のせいか裸婦像がなくシックな感じの婦人像が多かったようです。色彩も落ち着いていて優美な女性像で、私としてはこの時期の東郷が最も好みです。 藤田との競作は大型の油彩画で、藤田が海の幸、東郷が山の幸を担当する形でレストランの装飾を手がけています。どちらも籠をもった2人の女性が描かれていて対になっているのが面白いです。「泰西名画」は何となくヨーロッパ風という感じで、ややイタリア絵画風味かな。この章は量も多めで充実していました。


<第4章 復興の華 1945-1950年代>
最後は戦後のコーナーです。東郷は戦後直後から仲間に呼びかけて二科会を復興させました。かつて会を支えた上流層が没落していく中で大衆化を図り、派手な前夜祭でマスコミの注目を集めたりしました。(これが色々と批判されましたw) 一方で画風は円熟期を迎え、雑誌の表紙や壁画、カレンダーやマッチ箱など日用品や商店のデザインなど幅広い分野で活躍しています。

ここに並んでいるのはよく知られた東郷らしい柔らかい曲線を使った美人画で、裸婦も復活しています。やや儚さのある官能的な美女は大衆受けしたようで、当時の日本では雑誌やカレンダー等あちこちで東郷の作品を目にすることがあったそうです。ここで面白いのが京都朝日会館の壁画制作に関する展示で、この建物は既に取り壊されてしまいましたが高さ28m横23mにもなるものだったようです。向かいの旅館から双眼鏡で覗きながら現場に指示を出す東郷の写真などもあり、当時の大事業ぶりが伺えました。
東郷青児は1978年まで生きましたが、今回の展示では1960年代以降の作品はほぼありませんでした。60年代は二科会の会長になった頃なのですが、その辺の説明は特になかったかな。


ということで、今までありそうで中々無かった東郷青児の大規模な回顧展でした。流石に面白い作品が多かったので、記念に図録も買いました。分かりやすい画風なので、美術初心者にも楽しめる内容だと思います。 なお、東京の後は福岡、大阪へと巡回していくようです。

おまけ:
記念撮影スポットもありました。
DSC08538.jpg

こちらはこの美術館が誇るゴッホのひまわりのコピー品
DSC08537.jpg
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