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パリ♥グラフィック—ロートレックとアートになった版画・ポスター展 【三菱一号館美術館】

先週の金曜の会社帰りに、三菱一号館美術館で「パリ♥グラフィック—ロートレックとアートになった版画・ポスター展」を観てきました。

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【展覧名】
 パリ♥グラフィック—ロートレックとアートになった版画・ポスター展 

【公式サイト】
 http://mimt.jp/parigura/

【会場】三菱一号館美術館
【最寄】東京駅/有楽町駅

【会期】2017年10月18日(水)~2018年01月08日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
金曜の夜だった為か、空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、今回の展示はパリのグラフィックということで、ロートレックらが活躍した1900年頃のポスターや版画が中心の内容となっています。タイトルはロートレックですがそれ以外の画家も沢山出品されていて、想像していたよりも版画が多めとなっていたように思います。あまりメモなどは取って来ませんでしたが、簡単に展覧会の様子を振り返ってみようと思います。


<はじめに 高尚(ハイ)から低俗(ロー)まで>
まず最初は当時の版画とポスターの芸術としての立ち位置が分かる作品が1点だけ展示されています。ウジェーヌ・グラッセの「版画とポスター」という作品で、版画とポスターを擬人化した2人の女性が描かれています。版画の女性は貞淑な淑女として描かれている一方、ポスターの女性は版画を翻弄するかのようで扇情的な格好で描かれています。高尚な版画に対して低俗とされたポスターが新しい芸術として勃興しているのを象徴するような作品でした。


<第1章 庶民(ストリート)向けの版画>
続いては庶民向けの版画やポスターのコーナーです。ここはロートレックのポスターが多かったかな。ロートレックのポスターは過去の展示で観たものが大半でしたが、ロートレックの魅力がよく分かる代表作が揃っていると思います。自転車会社の広告ポスターなどもありますが、カフェのポスターが中心で、色面を使った斬新な構図で描かれています。ロートレックは浮世絵からの影響がよく指摘される画家で、主役の顔が隠れている構図の作品などはそれが端的に出ているように思います。また、ロートレックは戯画的で皮肉を込めたような人物描写もあり、都会的な感性も見て取れると思います。
 参考記事:
  トゥールーズ=ロートレック展 (三菱一号館美術館)
  ロートレック・コネクション (Bunkamuraザ・ミュージアム)

大部屋だけは写真を撮ることができましたのでいくつかご紹介。

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック「ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ」
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これはロートレックの出世作。カンカン踊りをする踊り子のラ・グーリュ(食いしん坊)と、相方で「骨なしヴァランタン」と呼ばれたの男性を描いたもの。ムーラン・ルージュの喧騒や2人の性格まで伝わってきそうな一枚。

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック「アリスティド・ブリュアン、彼のキャバレーにて」
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ロートレックの中でも私が特に好きなのはこちら。ちょっとふてぶてしい感じもする表情がブリュアンの人柄を表しているようで、写楽などの役者絵に通じるものがあります。この後姿の構図も見事で、黒地にオレンジの力強い色彩も印象的です。

1章には他にもシェール・シェレやピエール・ボナール、エドゥアール・ヴュイヤールなど有名な同時代の画家のポスターや版画も展示されていました。

こちらはテオフィル・アレクサンドル・スタンラン「シャ・ノワール巡業公演のためのポスター」
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シャ・ノワール(黒猫)というキャバレーのポスター。スタンランはこうした猫のポスターをいくつか描いていますが、これはこの時代のポスター展には必ず出てくるほどの傑作です。シックな色合いと猫の尻尾の丸まり方から優美な印象を受けます。


<第2章 知的階層(エリート)向けの版画>
続いては版画のコーナーで、点数としては圧倒的にこの2章が多かったです。当時の知的階層は版画を収集しプライベートな空間で楽しんでいたようで、大量生産せずにコレクターの間でのみ流通していたものもあるようです。(刷ったら版を破棄することもあったようです) その私的な目的が故に、世間的な道徳観念や表現の規制に囚われない作品も生まれたようで、多くの人が目にする作品よりも創造性豊かで、神秘的、瞑想的、時に官能的な作品もあるようでした。

大部屋の途中から2章なのでいくつか写真を撮れました。

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック「レスタンプ・オリジナル 第1年次の表紙」
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これは版画集の表紙を飾ったもので、版画をじっと観ているのはジャンヌ・アヴリルというダンサー。後ろにいるのは印刷所の技師です。100部限定だったらしく、これを手にしたのは僅かな知的階層だったようです。

カミーユ・マルタン「レスタンプ・オリジナル 第2年次の表紙」
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こちらもレスタンプ・オリジナルの表紙。マルタンはアール・ヌーボーの画家なので、その特徴が出ています。色々な画家の版画が載っていたようで、非常に意義深いものだったと思われます。

フェリックス・ヴァロットン「可愛い天使たち」
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この美術館が一押ししているヴァロットン。私もその影響でヴァロットンの版画が大好きになった1人です。この白黒のコントラストと簡潔な単純化が魅力。子どもたちの生き生きした感じがよく出ています。

フェリックス・ヴァロットン「版画愛好家」
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エドモン・サゴという人の版画とポスターの店を描いた作品。彼の店は版画収集家の聖地となるほどの人気だったようで、その賑わいがよく出ています。ちょっと皮肉も入ってそうな気もしますw


これ以降の大部屋以外では写真が撮れませんでした。

その後はボナールが描いた画商ヴォラールの肖像とヴォラールが見出した画家たちの版画がありました。特にボナールの作品は粒ぞろいで、「小さな洗濯女」という黒衣の少女の後姿を描いた作品は好きな作品です。また、「画家=版画家集」という作品に関する様々な多色刷り版画があり、ここでもナビ派の画家たちの活躍が伺えました。その先にはアンリ・リヴィエールによる「エッフェル塔三十六景」もいくつかありましたが、これは好みの版画が展示されていなくて残念。非常に素晴らしい連作なので全部展示してくれても良いのにw
 参考記事:北斎とリヴィエール 三十六景の競演 (ニューオータニ美術館)

この近くにあったロートレックの作品では「婦人帽子屋ルネ・ヴェール」という作品が3点並んでいます。これはテーブルの上の花を触っている女性を描いたものですが、その周りに食べ物のメニューが書かれた版と、テーブルが描かれていない版が並んで展示されています。ステートの違いなのかは分かりませんでしたが、比べて観られるのが面白いです。また、上階の最後あたりには蝶のように舞う女性を描いた「ロイ・フラー嬢」がありました。これは色違いで同じ絵柄のものもあり、その違いを楽しむことができます。以前この作品に関する映像を観たことがありますが、ふわっとした服をはためかせて踊る様子は非常に幻想的なので、この作品もよく覚えてました。


下階に移動すると、モーリス・ドニの油彩などもありました。これはファン・ゴッホ美術館の所蔵品なのですが、今回の展示はファン・ゴッホ美術館のコレクションが多数出品されています。(特に下階は見どころが多い) その中でも面白かったのがジャン=エミール・ラブルールの「化粧」のシリーズで、シンプルな白黒で女性の日常を描いています。くっきりとした輪郭でデザイン的な要素が目を引きました。また、他にもファン・ゴッホ美術館所蔵品ではゴーギャンやヴァロットンも良かったですが、結構知らない画家の作品でもこれはと思うものがあり、ジョルジュ・ド・フールの「神秘的で官能的なブリュージュ」というやや奇妙でシュールさを感じる作品群などが印象に残りました。

最後の部屋ではボナールが挿絵を描いたポール・ヴェルレーヌの「平行して」という本を白手袋をつけてめくれるコーナーがありました。これは中々貴重な体験かも。また、ボナールが描いた屏風などもあり、版画とは関係ないけど見応えがありました。他にもゴッホが所蔵していた浮世絵が並んでいたり、文筆家や芸術家が部屋に沢山の版画を並べた写真などが展示されていて、洋の東西を問わず様々な版画が愛好されていた様子が伺えました。最後にあったリヴィエールの絵葉書も影絵のような神秘性があって好みでした。


ということで、確かにロートレックが中心でしたが予想以上に様々な画家の版画とポスターが楽しめました。ロートレックは定番の作品が揃っているので、ロートレックを知らない方には良い機会かもしれません。一方でこの美術館が得意とするヴァロットンやヴュイヤールといったナビ派の版画は中々観られない作品もありましたので、よく美術館に行っている方にも発見がある展示だと思います。
なお余談ですが、国立西洋美術館で開催中の「北斎とジャポニスム展」でもこの展示に出品された作品が何点かありました。両方見てみると、より一層理解が進むかもしれません。
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