関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

表現への情熱 カンディンスキー、ルオーと色の冒険者たち 【パナソニック 汐留ミュージアム】

前回ご紹介した銀座の無料で観られるギャラリー巡りの後、汐留のパナソニック 汐留ミュージアムで「表現への情熱 カンディンスキー、ルオーと色の冒険者たち」を観てきました。

DSC01117.jpg

【展覧名】
 表現への情熱 カンディンスキー、ルオーと色の冒険者たち 

【公式サイト】
 https://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/17/171017/index.html

【会場】パナソニック 汐留ミュージアム
【最寄】新橋駅/汐留駅

【会期】2017年10月17日(火)~12月20日(水)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
祝日に行ったのですが、意外にも結構混んでいて場所によっては列を組むような感じでした。

さて、今回の展示はこの美術館が収集しているジョルジュ・ルオーに関する展示ですが、ヴァシリー・カンディンスキーとパウル・クレーとの関わりについてという変わった主題となっています。この美術館では過去にルオーとマティスの関係(2人とも先生がギュスターヴ・モロー)に関する展示など、ルオーの人脈に関する展示もやっていますが、ルオーとカンディンスキーやクレーとの接点についてはよく分からない、強いて言えばこの2人が並ぶと言えば青騎士かバウハウスあたりで接点でもあったのかな?という程度で観に行きました。展覧会ではその3人を含めて他にも様々な画家を紹介していて3章構成となっていましたので、各章ごとに簡単にご紹介していこうと思います。


<第1章 カンディンスキーとルオーの交差点>
まず最初はカンディンスキーとルオーの出会いについてです。この2人はルオーが館長を務めていたギュスターヴ・モロー美術館で出会いました。(ギュスターヴ・モローはルオーの学生時代の先生で、パリにある自邸を自分の作品を飾る美術館にしたいと考えていたらしく、モローの死後の1903年に実現されました。) また、この2人とも1904年のサロン・ドートンヌやアンデパンダン展など同じ展覧会に出品するなど、割と似たようなフィールドで活動していたようです。そしてカンディンスキーは1910年にドイツのミュンヘン芸術家協会の展示で多くのパリの画家を紹介したのですが、その際にルオーの作品も紹介する等、その作風を評価していたようです。(え、それだけ?って感じですが、お互いを認識していたのは確かなようです)

この章には2人の初期作品が並んでいました。ルオーは黄土色が背景の象徴主義的な作品が多くて、モローに通じるものを感じるかな。一方のカンディンスキーはまだ具象的ですが、大胆で力強い厚塗り作品がありました。また、「商人たちの到着」という作品はテンペラで描かれ、やや素朴で民衆芸術からの影響と、ロシアの伝統的な風景が色濃く表されていました。後のカンディンスキーとはだいぶ雰囲気が違いますが、これはかなりの傑作に思います。

こちらは会場を出た所にある「商人たちの到着」をパネルにした記念撮影所。
20171103 160707
この頃から既に色彩感覚の豊かさを感じます。


<第2章 色の冒険者たちの共鳴>
続いては色彩感覚の共有についてです。ルオーは強烈な色彩が野獣のようだと言われたフォーヴィスムの画家として認知されている一方、カンディンスキーは青騎士というグループを作りました。また、青騎士と交流をしたブリュッケというドイツ表現主義のグループもこの章で紹介されていて、この3つの流派は色彩やモチーフの選び方に共通するものを見出すことができるようです。しかし方向性自体は違っていて、青騎士は内的必然性を重視し自分の内なる声を聞くことを標榜し、ブリュッケはアフリカ美術などプリミティブな物や古き良き時代へのあこがれが観られます。ルオーは色彩の強さはフォーヴィスムですが、割と独自の道を進んでいる感じかな。
 参考記事:
  カンディンスキーと青騎士展 (三菱一号館美術館)
  ジョルジュ・ルオー 名画の謎 展 (パナソニック 汐留ミュージアム)
  パウル・クレー おわらないアトリエ (東京国立近代美術館)

[クレー]
ここからは小コーナーに分かれていて、まずは青騎士展に参加したパウル・クレーの初期のエッチングや素描がありました。若い婦人や競馬を描いたものなど、まだ具象的な感じがします。

[理想郷、失われた風景への郷愁]
ここにはブリュッケの画家マックス・ベヒシュタインの版画集「われらの父」6点などが並んでいました。全知全能の神が畏怖すべき存在として描かれているのですが、力強い一方で素朴な味わいがあります。この素朴でプリミティブな感じは後のロシア・アバンギャルドに通じるものを感じました。

また、カンディンスキーの「ファウスト 第二部アーリエルの場」という作品では虹などが描かれ、派手な色合いが使われています。風景や人の描写はデフォルメされているけど色合いが強烈で、確かにフォーヴィスムと似た手法が使われているかも。

その先にはヌードとプリミティブのコーナーもありました。ヌードでも緑とオレンジのような補色関係の色を使って、鮮やかな対比を生み出しています。また、この辺にはルオーの描いた「ユビュ」も展示されていて、人物画は定番ではあるように思いますが、確かに共通したモチーフ選びの様子や、素朴な雰囲気が伺えました。
 参考記事:ユビュ 知られざるルオーの素顔 (パナソニック電工 汐留ミュージアム)

[うどめく色と形]
ここはルオーの風景画などがありました。ルオーらしさを感じる厚塗りの画風で描かれています。それよりも気に入ったのはマックス・ベヒシュタインの「帆船」という船を描いた作品で、緑を背景に太い輪郭の帆船が描かれ力強い印象を受けました。

[人々の姿]
ここはルオーの自画像や画商のヴォラールなどを描いた肖像などがありました。「アヌーシュカ」という作品なんかはルオーっぽくなくてちょっと面白いかな。しかしここで気に入ったのはブリュッケのメンバーの作品で、彫刻刀の太い彫り跡を思わせる線で描かれた女性像(カール・シュミット=ロットルフ「女性頭部」)やゴッホのような筆致の作品もあって、プリミティブな力強さに心惹かれました。(よく知ってる画家よりも未知のものに惹かれてしまいますw)


<第3章 カンディンスキー、クレー、ルオー、それぞれの飛翔>
最後は3人のその後の作品にコーナーです。もうこの辺になるとルオーとの交流の話と関係ない感じですが、それぞれ素晴らしい作品が並んでいました。

[クレー]
クレーは結構多く並んでいました。バウハウスで教師を務めた頃の作品があり、温かみのある幾何学的な抽象画が特徴です。ここで見どころは「橋の傍らの三軒の家」という作品で、家は三軒どころじゃないように見えますが三角と丸を組み合わせた抽象とも単純化とも取れるような画風で描かれています。黒を背景にオレンジや青で描かれた家々は、観ているとちょっと郷愁を誘われるような温かみがありました。
第一次世界大戦以降はサーカスの主題などもあり、クレーらしい作品が多いです。それにしてもこの章は宮城県美術館所蔵の作品が多くて、その質と量に驚かされます。

[カンディンスキー]
カンディンスキーは少なめかな。カンディンスキーもバウハウスで教鞭をとった画家ですが、1920年代には幾何学的なモチーフが中心となっていて、むしろ記号みたいなものが並びます。(観ようによっては微生物みたいな感じw) また、カンディンスキーは音楽のようなリズム感を絵で表現した画家としても知られていて、楽譜のようなモチーフも散見されました。色の取り合わせも素晴らしく、久々に「E.R.キャンベルのための壁画No.4」の習作(カーニバル・冬) も観られて満足。

[ルオー]
ルオーはこの美術館が特に力を入れているので見慣れた感じではありますが、キリスト関連の作品(ミセレーレ等)やサーカス関連など宗教や市井の人々を描いたルオーらしさを感じる作品が多数並んでいました。力強い黒い輪郭と、ざらざらした表面、厚塗りで盛り上がった画面などが特徴です。 バレエ・リュスの舞台装飾の習作などもあり、幅広い活躍をしていたことも伺えました。


ということで、濃密な交流というよりは一時の交差といった感じにも思えましたが、意外な組み合わせを楽しむことができました。また、その他の画家たちの作品が結構好きなのがあって得した気分です。どちらかと言うとこの3人を知っている人向けの展示だと思いますが、単純に良い絵が多い展示ですので、洋画が好きな人は楽しめると思います。

なお、この展示と並行するようにbunkamuraではオットー・ネーベル展が開催され、そこでもクレーの作品が多数展示されています(カンディンスキーも少々)。そちらと半券相互割引もやっているようなので、クレー好きの方は両方楽しむと良いかもしれません。そちらについては後日ご紹介の予定です。
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