関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

オットー・ネーベル展 シャガール、カンディンスキー、クレーの時代 【Bunkamura ザ・ミュージアム】

10日程前の土曜日に渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで「オットー・ネーベル展 シャガール、カンディンスキー、クレーの時代」を観てきました。

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【展覧名】
 オットー・ネーベル展 シャガール、カンディンスキー、クレーの時代 

【公式サイト】
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/17_nebel/

【会場】Bunkamura ザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅

【会期】2017/10/7(土)~12/17(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間45分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
夜に行ったこともあり、空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、今回の展示はドイツに生まれスイスに亡命して活動した画家オットー・ネーベルについての展示です。オットー・ネーベルはパウル・クレーと深い親交を結んだ画家で、割と画風もクレーに似ていているように思います。今回はその2人の交流を軸に、カンディンスキーやシャガールなど周辺の画家も交えつつ あまり日本で知られていないオットー・ネーベルの魅力を伝える内容となっています。時代の変遷や題材によって12の章に分かれた構成となっていましたので、各章ごとに簡単に振り返ってみようと思います。


<プロローグ:オットー・ネーベル -「シュトゥルム」と「バウハウス」時代の芸術家>
まずはオットー・ネーベルの画業の始まりについてのコーナーです。オットー・ネーベルは最初から画家を志していたわけではなく、俳優の養成所に通ったり建築技師として出発したそうです。さらに詩を書いたりもしたそうで、様々な分野への感心があったことが伺えます。その後、兵役中にフランツ・マルクの作品に感銘を受けて絵画への感心を深めていきます。そしてドイツのヴァイマールにある美術学校バウハウスと縁が深い雑誌「シュトゥルム」の仕事や、奥さんがバウハウスでアシスタントとして働いていたこともあってバウハウスにいた面々と知己を得ていき、そこでパウル・クレーやカンディンスキーと出会いました。(オットー・ネーベル自身はバウハウスで直接的な活動をした訳ではないようです)

ここにはバウハウスでデザインされた家具や雑貨、バウハウス展のポスターなどが並んでいました。すっきりしたシンプルなデザインのものが多く、先進的な印象を受けます。また、オットー・ネーベルによる雑誌「シュトゥルム」に載せたリノカット(合成樹脂を彫った版画)がありました。月と十字を組み合わせた絵で、既に斬新なセンスがあるように思えました。


<1.初期作品>
続いては初期作品のコーナーです。オットー・ネーベルの初期(1920年代)の頃の作品は1943年の空襲の際に大半が失われたようで、貴重な品が並んでいます。
ここにはシャガールの作品も並んでいたのですが、この頃のオットー・ネーベルの作品の中にはシャガールからの影響を感じさせる作品がいくつかあります。コラージュ的なモチーフや色合いがそう思わせるのですが、実際にオットー・ネーベルは雑誌「シュトゥルム」の仕事を通じてシャガールの作品を観る機会があったそうです。(2人が会ったことがあるかどうかは不明)

また、重厚な色彩で幾何学的な構成のキュビスム的な作品や、1920年代後半にスイスに篭って描いた南国風の強い色彩の作品など、様々な画風にチャレンジしていた様子も分かります。それぞれ後の作風にも反映されているように思えるので、一旦最後まで展示を観た後に観返してみるのも面白いと思います。

この章にはパウル・クレーの作品もありました。オットー・ネーベルもクレーも「退廃芸術」としてナチスに追われ、1933年にスイスのベルンに移住していて、お互いそこで苦労しながらも家族ぐるみで支え合ったようです。当時は外国人には仕事もなかったようで辛い日々だったのだとか。ここにあるクレー作品には「移住していく」という作品もあり、その時代の立場を感じさせるものもありました。

ちなみにオットー・ネーベルはこの頃に製紙工場を作ったりもしていたようです。すぐに止めてしまったようですが、本当に多彩な活動をしていたようです。


<2.建築的景観>
続いてはスイスに行く少し前の1930年前後に描いた「建築的景観」をテーマにした作品が並ぶコーナーです。建築技師を目指しただけあって建築に興味があったのは想像に難くないですが、ここには直線を多用した海辺の風景を描いたものがあり、三角や四角などを使って建物も描いています。やや抽象的ながらも具象の面白さも残っている作風で、色は強いものと淡いものがありました。色彩が違っても落ち着いた印象を受けるのは同じなので、単に強弱の違いなのかも知れません。
なお、この色彩感覚については後述の4章で出て来る「イタリアのカラーアトラス」という1931年に作った色見本帳が重要な存在で、その作品以降のオットー・ネーベル自身に大きな影響を与えていくことになります。


<3.大聖堂とカテドラル>
続いては教会の内部などを描いた作品が並ぶコーナーで、ここは5点しか無いものの1931~47年頃まで時代の幅があります。やや大きめの作品で、柱やステンドグラスを落ち着いた色彩で平坦に描き、幾何学的な美しさと色彩のセンスが光る作品だと思います。少数ながらもかなり気に入った章でした。


<4.イタリアの色彩>
続いては今回のポスターにもなっている先述の「イタリアのカラーアトラス」があるコーナーです。オットー・ネーベルは1931年にイタリアに3ヶ月滞在したそうで、様々な場所で目にした色を色見本帳という形でまとめました。観た感じはスケッチブックに四角の色面を規則正しく並べているだけに思えますが、微妙な色彩の違いを表してメモなども書き残しているようでした。これがこの後のオットー・ネーベルには欠かせない基礎となっていきます。

ここにはイタリアの町を描いた作品もありました。やはり四角や円を多用する幾何学的な単純化を施していて、落ち着いた色彩で表現されています。クレーの作風に通じるものがあり、いずれの作品にもリズム感があるように思えました。

これはbunkamuraのショーウィンドウに飾ってあったレプリカの写真。
DSC01261.jpg
こうした作品がいくつか並んでいます。

この辺に映像コーナーがありました。クレーとの交流やクレーとの作風の違いなども解説してくれます。風景を幾何学的に描くのはクレーと同じですが、オットー・ネーベルはミリ単位の細かい点描を使っているのが特徴で、一種のタイル画的な感じがします。また、オットー・ネーベルの人柄を表すエピソードも面白くて、自身の全ての絵の解説を記録してらしく、点描の点の数までも把握していたのだとか。 …かなり細かい性格なのかもしれませんねw


<5.千の眺めの町 ムサルターヤ>
続いてもイタリアのコーナーです。1937~38年(スイスに亡命中)にイタリアのフィレンツェに滞在し、シリーズ作「ムサルターヤの町」を描きました。ここはそのうち4点と東洋人を描いた作品1点だけですが、前述した細かい点描を施した「描かれたモザイク画」の技法の絵も展示されています。このシリーズでこの技法が生まれたようで、途方もないほど細かい点が打たれているのがよく分かりました。これを数えたとか嘘でしょ?w


<6.「音楽的」作品>
続いては「音楽的」な作品のコーナーです。何が音楽的かというと、タイトルが音楽用語になっていて、細かい線と点を使いこれまでの直線的な表現とは異なる有機的な形が飛び跳ねるように描かれた抽象画になっています。これはカンディンスキーの得意とする表現に通じるものがあるかな。温かみを感じる色彩が多いのはオットー・ネーベルの特徴かも。本人はこうした作品を「非対象的」と言っていたそうです。

ここにはカンディンスキーの作品も2点あり、その影響や違いなどを観ることができました。カンディンスキーはオットー・ネーベルとは長い間の友人で、ゲッテンハイム財団にかけあってオットー・ネーベルの生活の支援を取り付けるなど、苦しい時に助けてくれたようです。 


<7.抽象/非対象>
続いては徐々に具象から離れていった頃のコーナーです。オットー・ネーベルは1938年から「非対象」という言葉を使い始め具象を離れていったようです。ここにある作品は1936~1973年までかなり幅広い年代になっているので一概には言えませんが、クレーやカンディンスキーの作風に似た幾何学的な作品が多く並びます。やはり細かい点が打たれているところに違いが感じられるかな。色も線も軽やかな印象を受けます。
ちょっと面白いエピソードとして、オットー・ネーベルは1935年のクリスマスに奥さんからプレゼントで中国の易経の本を貰ったそうです。そこに載っていた卦のヘキサグラムを観て自分の作風の後押しであると感じ取ったようで、易経から影響を受けたタイトルの作品もありました(絵自体は他と似た感じでしたが)

ここにもカンディンスキーの石版画が数点ありました。(宮城県美術館からの出品が多く、パナソニックミュージアムにも沢山出品しているのにここにもあるとは…恐るべしコレクション)


<8.ルーン文字の言葉と絵画>
ここから先は時代順が結構バラバラで、題材ごとに章分けされてる感じです。この章ではルーン文字(ゲルマン人が使っていた古北欧語)をモチーフに使った作品が並びます。私はルーン文字を正確に知っている訳ではないのですが、うねった象形文字みたいなものが絵画的に表現されています。これはクレーの作品だろう?と思ってキャプションをみたらオットー・ネーベルだった作品もあって、結構画風が似ているものもありますw ここはやや点数多めでした。


<9.近東シリーズ>
こちらは1962年にイスタンブールやソチに旅行した時に触発された作品のコーナーで、4点しかありませんが先程のルーン文字と似た感じ作風かな。象形文字みたいなモチーフを使った抽象画が並んでいました。(ちょっと具象が入ったのもあるかな。)


<10.演劇と仮面>
続いては演劇などをテーマにした作品のコーナー。若い頃に俳優の養成所に通っていたのが幸いしたのか、スイスの亡命中は演劇で日々の生活の糧を得ていたそうで、奥さんと共演したこともあったそうです。ここにはそうした演劇への感心や仮面などから取材したと思われる作品が並び、色面を使って平坦に表された人物像などがありました。ピカソのキュビスムを思い起こすものもありましたが、基本的にはここまで観てきたスタイルで描いたもので、独特の面白味を感じました。


<11.リノカットとコラージュ -ネーベルの技法の多様性>
最後はリノカット版画のコーナーで、白黒と多色摺りの療法が並んでいます。技法が変わってもオットー・ネーベルらしさが出ているように感じるかな。版木やスケッチブックなども展示されていました。


ということで、bunkamuraらしい良質な展示であまり知らなかったオットー・ネーベルの魅力について詳しく知ることができました。特にクレーが好きな方はきっとこの展示も楽しめると思います。以前の記事にも書いたように、この展示はパナソニック 汐留ミュージアムの「表現への情熱 カンディンスキー、ルオーと色の冒険者たち 」と東京ステーションギャラリーの「シャガール 三次元の世界」と相互半券割引サービスもやっているようなので、三館制覇してみるのも楽しいと思います。
 参考記事:
  表現への情熱 カンディンスキー、ルオーと色の冒険者たち (パナソニック 汐留ミュージアム)
  シャガール 三次元の世界 (東京ステーションギャラリー)

おまけ:
bunkamuraの通り沿いのショーウィンドウにあったレプリカの写真。細かい点の数がいくつあるか数えてみてくださいw 眼精疲労でぶっ倒れると困るので程々にw
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