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現代の写実―映像を超えて 【東京都美術館】

今回は写真多めです。前回ご紹介したゴッホ展で貰った半券で観られると聞いて、同じ東京都美術館のギャラリーA・Cで上野アーティストプロジェクト「現代の写実―映像を超えて」を観てきました。

DSC01911_20171121211456ccf.jpg

【展覧名】
 上野アーティストプロジェクト「現代の写実―映像を超えて」 

【公式サイト】
 http://www.tobikan.jp/exhibition/2017_uenoartistproject.html

【会場】東京都美術館 ギャラリーA・C
【最寄】上野駅

【会期】2017年11月17日(金)~2018年1月6日(土)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。ゴッホ展の半券で観られるのに観ない人が多いのかな? 勿体無い。


さて、今回の展示は現代の写実ということで、現在活躍している画家たちのリアルな描写の作品が集まる内容となっています。東京都美術館は公募展にも力を入れている美術館ですが、この展示では各公募団体との連携展となっているようで、各公募団体から1名ずつの画家が紹介されていました。この展示では撮影することができましたので、写真を使ってご紹介しようと思います。


<Ⅰ. 映像を超えて Transcending Photographic Images>
まずは写真のようにリアルさを持ちつつ、各画家の個性も感じられる絵画のコーナーです。

塩谷亮(二紀会) 「煌」
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この絵は観てすぐに塩谷氏の作品だと分かりました。どこか柔らかい雰囲気をまとった母子像で、古典からの影響も感じさせます。
 参考記事:
  ホキ美術館開館記念特別展 感想前編(ホキ美術館)
  ホキ美術館開館記念特別展 感想後編(ホキ美術館)
  現代の写実。ホキ美術館名品展 感想前編(ホキ美術館)

塩谷亮(二紀会) 「草音」
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こちらはリアルな描写ですが、どこか意味深なポーズの作品。演出されてちょっとシュールさも感じるかな。

塩谷亮(二紀会) 「一の滝」
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人物像だけでなく風景画もあります。静けさの中に滝の音が聞こえて来そうな雰囲気が神秘的。

小森隼人(白日会) 「Consideration」
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こちらは意味深な表情を浮かべる美女。黒い背景と光が当たったような表現の為か、写真を超えた強い色彩に思えます。

小森隼人(白日会) 「驟雨 天色」
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この画家は静物が特に良かったのですが、こちらは陶器の光沢などまでリアルです。このモチーフの選び方などからもフランドル絵画を彷彿とさせます。

小森隼人(白日会) 「黄色い果実と赤い柘榴」
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こちらもフランドル絵画やスペインの絵画を研究したのが伺える作品。しかし光の扱いがより鮮明に感じられるかな。

こちらは布地の部分のアップ。
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縫い目が分かるほどのリアルさと細かさ! これは間近で観ると驚くと思います。


<Ⅱ . 記憶のリアリティ The Reality of Memory>
続いてはどこか懐かしさを覚えるようなリアリティのコーナーです。

橋本大輔(独立美術協会) 「FAC3016」
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この画家は廃墟の中を描いた作品が何点かありました。人がいなくなった建物から寂しさのような神聖さのような雰囲気が漂い、ちょっと神殿みたいにすら思えます。廃墟好きの画家ユベール・ロベールに通じるものがあるかもw

橋本大輔(独立美術協会) 「観測所」
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こちらも廃墟。廃墟なのに明るい雰囲気があって面白いです。この作品は結構大型ですが、緻密に描かれていて吸い込まれるようでした。

こちらは右下あたりのアップ。
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この絵肌のリアルさ。何を使っているか分かりませんが、実物に近づける為に表現の工夫をしているのに驚きました。

小田野尚之(日本美術院) 「映」
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この画家は鉄道に関する風景を描いた作品が並んでいました。この作品は線路が対角線上に伸びる大胆な構図が面白かったです。

小田野尚之(日本美術院) 「くつおと」
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これは以前に観たのを覚えていました。タイトルのように靴音が響いて来そうな静けさが漂っています。
 参考記事:日本美術院再興100年 特別展『世紀の日本画』 感想後編(東京都美術館)

小田野尚之(日本美術院) 「定刻着」
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こちらはローカル線の駅を思わせる作品。こういう景色を観ると旅情を誘われます。


<Ⅲ . リアリズムの諸相 Various Aspects of Realism>
最後は絵画にしかできないリアリズムということで、リアルだけれど現実ではない作品が並ぶコーナーとなっていました。

元田久治(日本版画協会)「Indication : Tokyo Tower 3」
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この画家は何度か観た覚えがありました。(アートフェア東京などでも観た気がします。) 現代の建物を廃墟化したような作品が並んでいて、こちらは東京タワー。リアルさがあるけど誰も観たことがない光景です。
 参考記事:幻想の回廊(東京オペラシティアートギャラリー)

他にも秋葉原や渋谷、スカイツリーなど様々な場所が廃墟になった作品が並びます。

元田久治(日本版画協会)「Foresight : Marina Bay Sands, Singapore 」
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こちらはシンガポールのマリーナベイサンズが廃墟になったもの。日本だけでなく世界中の有名な建物も廃墟化されていますw 

蛭田美保子(新制作協会) 「貴婦人」
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こちらは装身具をまとったトウモロコシ。まさに貴婦人のような華麗さがあります。

蛭田美保子(新制作協会) 「絢爛豪華な装身具」
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こちらは装身具をまとった巻き寿司みたいなもの。描写力も凄いですが、何故こうしたものを思いつくのか発想も独特で面白いw

稲垣考二(国画会) 「三面」
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こちらはかなりの大型作品で、壁画のような感じでした。1枚1枚は花を描いていたりするのですが、離れてみると人物画になっていて、アルチンボルドの絵を想起しました。
 参考記事:アルチンボルド展 (国立西洋美術館)

真ん中の人の顔の一部のアップ。
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これだけ観ると花が咲き乱れているように見えます。

佐々木里加(女流画家協会) 「HYPER BRAIN CYBERNETICS」
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この画家は脳をモチーフにした作品がいくつか並んでいました。脳が高速に情報を処理しているようなイメージに見えるかな。一種の心象風景をリアルに描いていました。

岩田壮平(日展)「flower」
DSC02116.jpg
こちらは琳派を継承している画家で、色彩感覚が非常に好みでした。モチーフも華やかで目に鮮やか。

岩田壮平(日展)「こい」「花の形」
DSC02146.jpg
ちょっとド派手なくらい目を引きます。この画家の作品はもっと観てみたいです。

この後、もう1部屋あり昔の画家の作品が並んでいましたが、そちらは撮影できませんでしたので割愛します。


ということで、ゴッホ展のオマケとは思えないほど楽しめました。一口に写実と言っても様々な手法や表現があり、まだまだ可能性があるものだと感心させられるばかりです。作品の深い意図がわからなくてもパっと観て楽しめる作品ばかりですので、ゴッホ展に行かれる際にはこちらの展示も覗いてみると楽しめるかと思います。

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