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【国立西洋美術館】の案内 (常設 2017年11月)

前回ご紹介した展示を観た後、国立西洋美術館の常設も観てきました。しばらく記事にしていませんでしたが、ブログ休止中などにも新収蔵品が増えてきていましたので久々にご紹介しようと思います。今までご紹介していない作品をピックアップしました。

公式サイト:
 http://collection.nmwa.go.jp/artizeweb/search_5_area.do

 ※常設展はフラッシュ禁止などのルールを守れば撮影可能です。(中には撮ってはいけない作品もあります。)
  掲載等に問題があったらすぐに削除しますのでお知らせください。

参考記事
 国立西洋美術館の案内 (常設 2011年10月)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2011年07月)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2010年10月 絵画編)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2010年10月 彫刻編)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2010年06月)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2010年02月)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2010年01月)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2009年10月)
 国立西洋美術館の案内 (常設 2009年04月)

エヴァリスト・バスケニス 「楽器のある静物」
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こちらは所謂ヴァニタス画かな。本や楽器が並び意味深な感じ。リュートに埃が被っているのを指で擦った跡が残った表現が見事です。楽器による聴覚と触覚が表現されているのかな? 隠された意味を探すのが難しいけど面白い絵です。

スケッジャ(本名ジョヴァンニ・ディ・セル・ジョヴァンニ・グイーディ) 「スザンナ伝」
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こちらは2015年購入の新収蔵品。元々は長持の一部だったようで横長の画面になっています。旧約聖書の「スザンナと長老」という長老たちによるセクハラ&パワハラで濡れ衣を掛けられたスザンナがダニエルの知恵によって逆転する話で、これは最後の辺りのシーンで右の方で長老が石打ちの刑になっています。貞操を主題とした話なので嫁入り道具として作られたのだとか。この話、今期話題のあの展示にもありましたね。
 参考記事:怖い絵展 (上野の森美術館)

アンドレア・デル・サルト(本名アンドレア・ダーニョロ・ディ・フランチェスコ) 「聖母子」
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アンドレア・デル・サルトはルネサンスを牽引したのに今では知る人が少ない気の毒な画家。この聖母子は奥さんと子供をモデルに描いたそうで、生き生きと描かれています。そのうち再評価で有名になるかも?
 参考記事:夏目漱石の美術世界展 感想前編(東京藝術大学大学美術館)

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ 「聖フスタと聖ルフィーナ」
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ちょっと聞いたことが無い聖人ですが、セビーリャの守護聖人とあがめられているそうで、これはセビーリャの聖堂を飾る祭壇画の習作だそうです。棕櫚の葉っぱを持っていることから殉教者であることが分かり、足元に陶器が転がっているのは彼女たちのアトリビューション(持ち物)で異教神礼拝用具を作れというローマ司祭に注文を拒否して殺された為のようです。習作の為か粗めの感じがしますが見事な描写でした。

アントニオ・ベルッチ 「キリスト降架」「羊飼いの礼拝」
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この2点は旧松方コレクションの一部で、2010年に購入したようです。アントニオ・ベルッチはバロック期ヴェネツィア派の画家で、これは天井画の下絵だそうです。キリストの誕生と死を対にして展示しているのが面白いですが、この完成作がある聖堂にはさらにキリストの昇天もあるそうです。

アンゲリカ・カウフマン 「パリスを戦場へと誘うヘクトール」
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こちらは新古典主義の女性画家による作品。パリスは「パリスの審判」で有名な牧童(実は捨てられたトロイアの王子)で、三美神で一番美しい神としてアフロディーテを選んだ見返りとしてスパルタ王の人妻ヘレネーと恋に落ちます(誘拐ですw) その結果、トロイアとスパルタは戦争になって、このシーンではパリスの兄がパリスに戦争に戻れと諌めています。隣に立ってるのがヘレネーかな。気品溢れる雰囲気です。 ちなみに、この戦争の結果、トロイアは滅亡します。

ジャン=ヴィクトール・ベルタン 「イタリア風景」
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新古典主義の画家でコローの師匠の1人でもある画家。風景画というジャンル自体があまり格が高くないとされていた時代ですが、理想的で神話の世界のようにすら感じられます。

ジャン=ヴィクトール・ベルタン 「ギリシアの風景」
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こちたもベルタンの作品。イタリアとの差が分からないw 理想化している為か、どれも似た感じに見えるのがアカデミックな絵画とも言えます。

ウィリアム・アドルフ・ブーグロー 「音楽」
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こちらは2015年購入の新収蔵品。ブーグローも新古典主義のアカデミックな画家ですが、これは平坦で中々大胆な表現に思えます。ちょっとブーグローの印象が変わる1枚でした。

ベルト・モリゾ 「黒いドレスの女性(観劇の前)」
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こちらは2017年の新収蔵品。印象派の女性画家モリゾの第二回印象派展出品作と思われるもの。マネを師と仰いだだけに黒の使い方が見事で、明るささえ感じさせました。主題もモリゾらしい感じ。久しくモリゾ展をやっていないのでどこかでやって欲しい。

ポール・ゴーギャン 「画家スレヴィンスキーの肖像」
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こちらは旧松方コレクション。1891年の作品なのでタヒチに行く直前かな。浮世絵から影響を受けたクロワゾニスムと呼ばれる黒い輪郭線と色面の表現が使われています。花束が明るくて手前に浮いてくるような印象を受けました。

ポール・セリュジエ 「森の中の4人のブルターニュの少女」
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ナビ派としてゴーギャンに指導を受けたセリュジエ。ブルターニュ地方独特の服を着た女性たちをクロワゾニスムで描いていて、色も対比的で目に鮮やかです。左上の女性のポーズの為か、流れるようなリズムも感じられました。

ラファエル・コラン 「楽」「詩」
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両方共2015年購入の新収蔵品。コランは日本洋画の重鎮である黒田清輝や岡田三郎助、和田英作らを指導したフランスの画家で、印象派と象徴主義を合わせたような外光派と呼ばれる形式で清純な女性をよく描いています。この作品でも霧に霞むように清らかな女性が意味深に描かれていました。黒田清輝の作品はコランの画風によく似ているというのも分かると思います。

モーリス・ドニ 「字を書く少年」
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国立西洋美術館はドニのコレクションが充実していますが、これは松方コレクションの1枚。ドニは親密な主題で心休まる絵をよく描いているので好み。この色合も温かみを感じます。

モーリス・ドニ 「若い母」
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これも松方コレクションですが初めて観た気がします。一種のママ会みたいなものでしょうか。昔も今も変わらない微笑ましい光景で幸せそうです。

アンリ=ジャン=ギヨーム・マルタン 「花と泉水」
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新印象主義の点描を使って非常に明るい色彩表現をしたマルタン。象徴主義的な作品も残していますが、ここではそういう神秘性はなく日差しの強い公園の一時といった感じに見えました。

エミール=アントワーヌ・ブールデル 「首のあるアポロンの頭部」
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ロダンの助手をしていたブールデルの作品。西洋美術館の入口にあるヘラクレスのイメージがあるので力強い彫刻家のように思ってしまいますが、こうした精神性を湛えるような作品もあります。


ということで、国立西洋美術館は今なお進化し続けているのがよく分かるコレクションとなっていました。それほどしょっちゅう変わるわけではないですが、この美術館の常設はかなり見応えがある作品が多いので特別展を観た後に併せて観ることをお勧めします。いまやル・コルビュジエの建物群の1つとして世界遺産になっている建物も楽しめます。


おまけ:
久々にカフェすいれん でお茶してきました。
 参考リンク:カフェ「すいれん」 【上野界隈のお店】

私はブリストルというケーキとコーヒー。
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ケーキは美味しかったですが、コーヒーはインスタントみたいな味w

連れはチーズケーキと紅茶。
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ポーションが来るってどうよw こちらもケーキは美味しかったようですが紅茶はイマイチだったようです。

ということで、上野公園のカフェのレベルが上がってきているだけにそろそろここもレベルアップして欲しいかな。世界遺産にあるカフェがインスタント並ってどうなのよw

とは言え、ここの眺めは最高なので、これ目当てに入りたくなりますw
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