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《地獄の門》への道―ロダン素描集『アルバム・フナイユ』 【国立西洋美術館 版画素描展示室】

今回も写真多めです。前回ご紹介した国立西洋美術館の常設を観た際、版画素描展示室で《地獄の門》への道―ロダン素描集『アルバム・フナイユ』という展示も観てきました。この展示も撮影可能でしたので、写真を使ってご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 《地獄の門》への道―ロダン素描集『アルバム・フナイユ』 

【公式サイト】
 http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2017rodin.html

【会場】国立西洋美術館 版画素描展示室
【最寄】上野駅

【会期】2017年10月21日(土)~2018年1月28日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は「考える人」で有名な彫刻家オーギュスト・ロダンの版画展となります。昔、トリビアという番組でもネタにもされましたが「考える人」は何について考えているか?というと、地獄について考えています。そもそも「考える人」は「地獄の門」の門上部の真ん中に置かれた像(元々はダンテだった)がソロデビューしたようなものなので、本来は地獄の門こそがロダンの代表作と言えると思います。 そしてこの展示では装飾芸術美術館の門扉として「地獄の門」を創作するにあたり ロダンが1年間に渡ってダンテの「神曲 地獄篇」を元に想像した地獄のデッサンを集めた「アルバム・フナイユ」を取り上げています。このアルバム・フナイユは142点のデッサンを版画化したもので、支援者の美術愛好家モーリス・フナイユの名を取ってこの名前となっているそうで、ロダン自身が制作に深く関わった為、高い評価を得ているようです。 とは言え、このデッサンは現実から離れ過ぎた為に一旦放棄して、自然に基づいてデッサンをやり直したそうで、地獄の門の完成作には出てこないモチーフもあるようです。そんな自由過ぎるほどの想像力を働かせた素描版画が並んでいましたので、詳しくは写真を使ってご紹介しようと思います。
 参考記事:手の痕跡 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描 (国立西洋美術館)
  

オーギュスト・ロダン「地獄の門のマケット(第三構想)」
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割と完成形の雰囲気に似ていますがまだ考える人もいないし細部はだいぶ違うかな。既に蠢くような感じは出てます。

冒頭にダンテの『神曲』についての簡単な説明がありました。平たく言えばキリスト教徒によるキリスト教徒の為のあの世の世界観を詰め込んだ本で、地獄篇、煉獄篇、天国篇の3つから成ります。ダンテ自身がローマの詩人ウェルギリウスに連れられて辺獄(リンボ)を抜け、地獄の責め苦を受ける8つの圏谷を観た後、煉獄(頑張れば天国に行ける魂を清める世界)を経て天国へと向かい、ついに神に会うというストーリーです。過去の偉人や罪人などが沢山出て来て、異教徒や異教の神なんかはメチャクチャ酷い扱いだったりするので、国によっては今でも発禁本扱いだったりします。(その様子はこの作品にも表れていますが、その辺の写真は載せないでおきます) 本は読むのが大変な割によく分からないのでwikipediaあたりで一度読んでみると概要が分かるかと思います。
 参考リンク:神曲のwikipedia


<地獄>
この版画集も神曲同様に3つに分かれているのですが、地獄、辺獄、習作という分かれ方で、まずは早速地獄からです。

オーギュスト・ロダン「異端者たち」「岩山の亡霊」
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異端者=地獄行きです。両方何をしているか分かりませんが、苦しみを感じるポーズや所在なげなポーズをしています。

オーギュスト・ロダン「復讐の女神エリニュスの一人」
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殺戮や嫉妬といったヤバいものを司る復讐の女神たちの1人で、勿論 地獄行きです。ぎょろっとした目と表情が怖いw かなりインパクトがあります。

オーギュスト・ロダン「地獄の亡者の像」「亡霊たちの群像」
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筋肉むきむきの亡霊たち。この肉体表現はロダンらしさを感じるかも。

オーギュスト・ロダン「ケンタウロスと子供」「3人の亡霊」
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このシリーズにはケンタウロスがよく出てきます。調べたところ、人を虐げた暴君たちを血の川において懲らしめる獄卒の役目を果たしているとのことで、仏教の地獄絵図の牛頭馬頭に近いかも。躍動感と緊張感があります。

オーギュスト・ロダン「ダンテに話しかける3人の亡霊」「亡霊」
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亡霊たちはもう疲労困憊といった感じ。虚ろな感じがよく出ています。

オーギュスト・ロダン「幻想の馬に乗ったダンテとウェルギリウス」「チャンに放り込む亡霊を見せる悪魔」
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亡霊かと思ったらダンテ一行でしたw ちょっと力ない感じを受けますが…。

オーギュスト・ロダン「牢獄のウゴリーノ」「惨い食事の途中でダンテに身の上を語るウゴリーノ」
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ウゴリーノは中世イタリアの貴族で海軍提督を務めた人ですが、ダンテはこの人を祖国への裏切り者として扱い、裏切り者の氷地獄(これが一番キツい地獄)に登場させています。ロダンはウゴリーノの話が気に入ったのか、何枚もウゴリーノを描いているようでした。

オーギュスト・ロダン「ケルベロス」「地獄に堕ちた亡者」
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ケルベロスって頭が3つある犬かと思っていましたが、ここでは人の身体をしています。メチャクチャ顔が怖い。 一方、亡者のこのスピード感! 残像?w

オーギュスト・ロダン「空中の悪魔」
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悪魔のこの躍動感! 背泳ぎしてるみたいなw 今回の展示で一番気に入ったのはこの作品でした。

オーギュスト・ロダン「空中の悪魔」
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完全にクロールでしょ これはw 地獄では悪魔は好き放題やってるのかも。

オーギュスト・ロダン「愛欲の圏谷」
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愛欲にまみれた男女が暴風に晒される地獄。どういう状況か分かりませんが、力強さと動きを感じます。

オーギュスト・ロダン「考える人」
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考える人もありました。ここまで観てきたような地獄を目の当たりにして考え込んでいます。


<辺獄>
続いては辺獄(リンボ) ここは地獄の入口あたりで、責め苦はありません。善良だけどキリスト教の洗礼を受けていない人が集まる所で、キリスト誕生以前の人はみんなここにいます。案内人のウェルギリウスだってここの住人です。他にもギリシャ神話のイカロスなんかも出てきますが、描かれているのは母子像が多いかな。まあ大半の日本人もここか煉獄行きでしょうねw

オーギュスト・ロダン「女と2人の子供の亡霊」「炎を渡る亡霊」
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右の亡霊の動きが面白いけど怖い! 身体が燃えているように見えます。

オーギュスト・ロダン「ダンテとベアトリーチェ」
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神曲において最も重要なのはベアトリーチェかもしれません。ダンテが子供の頃に心惹かれた女性でで若くして死んでしまい、「永遠の淑女」として愛の象徴として登場します。ダンテとベアトリーチェが会うのは煉獄で、天国へと導いて貰うストーリーです。

オーギュスト・ロダン「男と子供」「アナクレオンとクピド」
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アナクレオンは古代ギリシャの詩人です。どちらも子供と親みたいな感じで描かれていて、ここまで観てきた地獄と違いちょっと親密な空気が感じられました。


<習作>
ここは点数少なめです。ケンタウロスなど地獄篇との繋がりを示す作品もありますが、古代や神話を漠然と表すモチーフが描かれているようです。

オーギュスト・ロダン「2人の亡霊」「ミケランジェロ」
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ミケランジェロはちょっと争っているようにも見えますね…。ちょっとどういう意図か分かりませんでした。

オーギュスト・ロダン「ウェヌスとクピド/放蕩息子/バッカスの祭」「戦い」
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この辺は定番のモチーフといった感じがします。放蕩息子の場面は劇的で目を引きました。


版画はこれで終わりです。最後にこの国立西洋美術館の入口付近にある地獄の門をご紹介。

オーギュスト・ロダン「地獄の門」
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上部中央でじーっと考えているのが恐らくダンテです。版画を観てから実物を観ると色々違いがあるのが分かると思います。


ということで、彫刻家でありながら自由な発想の絵を描いていたことがよく分かる展示でした。この版画素描展示室の展示は観た時はそれほどインパクトが無くても、あちこちで展示を観て知識が深まるに連れて観ておいて良かったと思った展示が多々ありましたので、今回もそうなると思います。ちょっと渋めの展示ですが、北斎展に行かれる方はこちらも是非どうぞ。

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